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朗読とは?おすすめの朗読小説についてもご紹介

朗読とは?おすすめの朗読小説についてもご紹介
神尾 敬子 声楽・ピアノ・音読講師

執筆者
神尾 敬子 声楽・ピアノ・音読講師

東京音楽大学音楽学部声楽科卒業。イタリアオペラ、フランス及びドイツ歌曲を学ぶ。
虎ノ門病院、東大医科研附属病院、日本音楽療法学会全国大会、アジア・太平洋地域国際エイズ会議にて招待演奏。アレキサンダー・テクニーク、加藤メソッド(呼吸法)等々を習得、音楽講師、ヴォイストレーナーとして活躍中。
また、ナレーションの神様、矢島正明氏にドラマティックリーディングを師事。朗読会開催の要請にも応じている。

マスメディアは日々、人の不安感をあおる話題ばかりを伝えています。日常を明るいメンタルで過ごすことが、これほど重要になってきた時代はありませんね。「朗読」による心の安らぎを求めている方も、少なくないかも知れません。皆さんもぜひ、この機会に朗読を始めてみませんか。

1.  なぜ、いま朗読なのか

 いま、なぜ朗読なのか

1-1.黙読との違い

「新聞を読む」「街で看板を読む」「ネットの情報を読む」、これらの「読む」は全て黙読ではないでしょうか。それを、まず声に出して読んでみてください。黙読した時とは、違う感覚を覚えるでしょう。イメージが少しはっきりしたような気がしませんか。

発した自分の声は、空気振動により聴覚に伝わり、次に脳を刺激します。つまり言葉が肉体を通して分かり始めているのです。声に出して文章を読む時、それは黙読で理解した時とは違った理解度、伝わり方になっています。それぞれの違った肉体を通して発せられた、それぞれの違った声により、また「何か」が違ってくるのです。是非、声に出してみましょう。

1-2.音読との違い

音読も朗読も、声に出して読むということに変わりはありません。声を出す機会の減る方々にとっては、大変に良い習慣になるでしょう。昨年のお誕生日にも上皇陛下は、上皇后さまとご一緒に毎朝食後、音読をなさるという報道がありました。選書は、寺田寅彦の「柿の種」ということでした。

参照記事:「上皇陛下のご近況について(お誕生日に際し)(令和3年)」宮内庁,2021年

さて「朗読」になりますと、より「イメージするという事」「人間の本質を捉える想像力」「状況や環境を捉える力」が必要です。どれだけ作品を自分の中に落とし込み、それにふさわしい声(音色)を出せるか、が重要なポイントです。

作品の理解力が高ければ、自ずとそれに相応しい色(声色)が出てくるのです。感情と豊かな想像力で、出せる声色の数が違ってきます。聴く人は、その声によって映像を思い浮かべるでしょう。朗読会の後で「読んだことのある作品でしたが、全く違ったイメージの情景が浮かびました」と言われることがあります。朗読者の声が、聴く人の想像の扉を大きく開くという現象です。

では次に作品の理解力を高める方法ですが、それには充分な「黙読」が必要になってきます。より良い「朗読」をするための準備として「黙読」の存在があります。理解して、読み切った先にあるのが「朗読」の世界なのです。 

1-3.声を出すということ

声を出す「読み」は、声を出すための筋肉を刺激し呼吸を深くしていきます。声帯ももちろん小さな筋肉であり、筋肉運動につながっています。また、発した声を自らの聴覚で捉え、それを脳が感知し、その声を理想に近付けていくことにもなるのです。

参照元:産業能率大学総合研究所川島隆太教授インタビュー(2019)

1-4.自己の解放

ストレス発散にカラオケにいらっしゃる方は、少なくないでしょう。しかし、歌う環境や機会は少なくなってきました。そんな時、自宅で手軽にできる「朗読」がおすすめ。「歌う」までのエネルギーに至らないときやまとまった時間が無いとき、気軽にチャレンジできます。今、テーブルの上にある新聞でもフリーペーパーでも、さぁ始めてみましょう。

2.  朗読をシニア世代におすすめする理由

朗読をシニア世代におすすめする理由

2-1.朗読は屋内でできる

健康のため、運動を習慣になさっている方は少なくありません。ゴルフ、テニス、ジョギングに散歩。しかし、天候ですとか自らの、あるいは家族の健康問題や介護など、今後屋外に出られないという日々も無いとは限りません。そんな時、屋内でできる趣味を1つあるいは2つ持っておくといいと思います。

2-2.朗読は道具が少なくてできる

.朗読は道具が少なくてできる

常々「断捨離」で頭を悩ませていらっしゃる方も多い中、これはとても良いポイントだといえるでしょう。「趣味が増えると道具が増える」と言う方がいらっしゃいますが、その点「朗読」は手軽で良い趣味です。

気に入った書籍は手元に置きたいものですが、図書館を利用するという方法もあります。読後は返却すれば、モノが増える心配もありません。Kindle(Amazonが提供する電子書籍)を利用しても、モノは増えませんね。青空文庫(インターネットの電子図書館)という方法もあります。

文庫本の後ろにあるような解説者による解説が読みたければ、紙の書籍がおすすめです。

2-3.朗読は脳の活性化にもなる

「テレビを見る」「ラジオを聞く」などの受動的活動に対して、「朗読」は能動的活動です。それだけ身体的にも精神的にも刺激が多く、脳の活性化につながります。

2-4.朗読は回想療法にもなる

物語の中に自らを埋没させる事は、日常からの解放につながります。若かった頃の自分を、昔訪れた土地のことを、離れて暮らす人のことを思い出すこともあるかも知れません。昔の自分が、今の自分を励ましてくれることもありますね。

2-5.朗読はコミュニケーションに役立つ

朗読はコミュニケーションに役立つ

慣れてきたら、ご家族に聞いていただくのも上達のためには良い方法です。お孫さんの誕生をきっかけに、絵本の読み聞かせを始めた方もいらっしゃいます。はじめは全く声が出なかったと仰っていましたが、積み重ねにより安定した声になってきました。1冊の本をきっかけにして、また新しいコミュニケーションが生まれるでしょう。会話のきっかけにもなります。

参照元:公益財団法人長寿科学振興財団 第4章 認知症の予防 6. 社会的交流・知的活動の視点から

3.  朗読で何を読むか

朗読で何を読むか

3-1.小説

●王道〜リズムの良さは身体に気持ち良い

昔、教科書で1度は目にしたことのある作家を、再び読んでみるのはいかがでしょう。特に芥川龍之介の文章は、生理的に心地良いリズムがあり、声に出して読むにはこれほどおすすめの作家はありません。その美文(びぶん)の持つ、心地良さを味わってみて下さい。気持ち良さに酔いそうなほどの音律の良さです。難しいイメージのある中島敦も、無駄の無い重厚な文章で慣れてくるとハマります。

おすすめ……芥川龍之介「蜘蛛の糸・杜子春(新潮社 1968)」「羅生門・鼻(新潮社 2005)」

中島敦「李陵・山月記・弟子・名人伝(角川文庫 1968)」

芥川龍之介

●トレンド〜流行りものは読んでみる

芥川賞、直木賞は年に2回発表されます。それを手に取り、人々の話題の中心になるのも良いでしょう。軽く読めるものなら、「本屋大賞」や「このミステリーがすごい!大賞」も人気です。

おすすめ……高瀬隼子「おいしいごはんがたべられますように(講談社 2022)」、窪美澄「夜に星を放つ(文藝春秋 2022)」(167回芥川賞・167回直木賞受賞作品)

逢坂冬馬「同志少女よ敵を撃て(早川書房 2021)」(2022年本屋大賞)

岡崎琢磨「珈琲店タレーランの事件簿1〜8(宝島社 2012〜2022)」(「このミス大賞」シリーズ)

●ブーム〜なぜ、今この作家なのか

42歳の若さで夭折した芥川賞作家、野呂邦暢。活動時期は短い作家でしたが、没後40年を経てもなお、短編集などが続々と出版されています。志賀直哉の再来といわれる美文、人間心理の描写力、ストーリーのアイデア。ミステリーにも、ドキドキさせる魅力があります。「作家は死んだら終わり」とは瀬戸内寂聴の言葉ですが、没後も新刊が書店に並ぶこの作家の魅力を体感して下さい。

おすすめ……野呂邦暢「愛についてのデッサン(ちくま文庫 2021)」「野呂邦暢ミステリ集成(中公文庫 2020)」

3-2.エッセイ(随筆)

●全ての人に〜困った時は向田邦子

エッセイは個人の日常の出来事などを切り取り、自分の思いなどを表現するものです。没後何年たっても変わらず人気があるエッセイなら、向田邦子。決して古くならない、いつも新鮮な感覚で読むことができます。

私は朗読会のための選書に迷った時「困った時の向田邦子」と決めています。困ったあげくに、向田邦子のエッセイを読むのです。そこには、時を超えて共感できる人間の優しさ、家族というものの複雑さ、日常のおかしみがあります。共感してこそ、その作品にふさわしい声が出てきます。

おすすめ……向田邦子「眠る盃(講談社文庫 2016)」「父の詫び状(文藝春秋 2005)」「思い出トランプ(新潮社 1983)」「夜中の薔薇(講談社文庫 2016)」

●自分と似た境遇や考えを持つ作者を探す

エッセイは第一人称で描かれることが多いので、自分と照らし合わせながら、自分の日常や感覚と比較しながら読むことが楽しいです。

数年前の朗読勉強会で、私が白州正子のエッセイを読んだら「君は、男勝りでも貴族的でもないから、白州正子はちょっと……」と不評だったことがありました。自分と似た世代や性格、環境にある作家を選ぶと感情移入しやすく、声に出しても違和感がないようです。毎年、日本文藝家協会より「ベスト・エッセイ」が発刊されますので、その中からお気に入りの作家を見つけるのも楽しいでしょう。

おすすめ……「ベスト・エッセイ2022(日本文藝家協会 2022)」「ベスト・エッセイ2021(日本文藝家協会 2021)」

3-3.コラム

新聞雑誌などの短い評論記事のことですが、初心者の朗読には短くてピッタリです。中でも、朝日新聞の「天声人語」は最も有名なコラムといえます。 

おすすめコラムニスト……天野祐吉、小田島隆、青木雨彦、稲垣えみ子、内田樹、冷泉彰彦、山口洋子、ジェーン・スー。

3-4.自作

「朗読」に慣れてくると、どなたかに聞いてもらいたくなるものです。最近は手軽にYouTubeや、音声SNSなどで発信ができます。ところが注意しなければならないのは著作権問題です。発信したいからといって、勝手に発信はできません(青空文庫であれば著作権フリー)。そこで試していただきたいのは「自作を朗読する」ということです。自分で書いたエッセイや日記、物語なら、著作権は自分にあるのでフリーです。「自作朗読」をして、音声アプリに公開するのはどうでしょう。また新しい世界が広がるかもしれません。

ライブ配信についてはこちらのコラムも読まれています

新しい自分を発見できる「自分発信の魅力」

4.  朗読の際に心掛けておくと良いこと

心掛けておくと良いこと

4-1.身体の状態を整える

心身の状態は声に出ます。常に健康的な生活を心掛けましょう。

4-2.作品のイメージを持つ

声の世界には、映像がありません。いかに映像的に作品を捉えることができるかが「朗読」の鍵といえるでしょう。

4-3.究極の一文(一語)を見つける

作品の中で、作者が最もいいたかったことを表す一文(一語)を見つけます。 あるいは、自分自身が1番グッと来た一文(一語)でも構いません。思い入れの深さが声の深さにつながり表現の幅を増すことになるでしょう。

4-4.自分自身が楽しむ

ここまで色々と申し述べてきましたが、この全てを忘れて、とにかく好きなものを好きなように楽しみながら「朗読」してみてください。それが1番です。ぜひ一緒に朗読を始めてみましょう

5.朗読おすすめアプリのご紹介

.朗読おすすめアプリのご紹介

5-1.Audible

Audibleは、プロのナレーターが朗読した本をアプリで聴けるサービスです。

ナレーションの神様と呼ばれる矢島正明による、中島敦の「文字禍」「憑依」は、特におすすめです。

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5-2.AuDee

AuDeeは、ここでしか聴けない音声コンテンツを、インターネットで楽しめる無料アプリです。今をときめくショートショート作家の田丸雅智作品を、プロの声優が朗読しています。

ショートショートを創作したい方、自作朗読したい方の参考に。

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おわりに

昔好きだった書籍や今話題の書籍を朗読で楽しんでみてはいかがでしょうか?ご紹介したアプリで気軽に露独を始めることができます。ぜひ寝る前や朝の時間、隙間時間に初めてみませんか?

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