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海外の移住先はどの国が人気?人気上昇と下降の最前線をレポート

セゾンのくらし大研究 編集部

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セゾンのくらし大研究 編集部

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コロナ渦のなかで2020年から、海外に渡航する日本人が激減しています。観光旅行だけではありません。留学も出張も、それぞれの国がさまざまな入国要件を変更した結果、キャンセルせざるを得ない状況となりました。では、海外移住の動向はどうなっているでしょうか。

令和3年版「海外在留邦人数調査統計」データをもとに、各国の状況を調査しました。今後の移住先検討の参考になれば幸いです。(2021年12月現在の情報ですので、最新情報をご確認の上移住先の検討をすすめていただければ幸いです)

1.はじめに

このコラムの執筆にあたって、まず正確な統計データを探しました。ネット上には「海外移住先の人気ランキング」といったコラムがありますが、人気ランキングであって実態を正確に反映しているとは限りません。またWEBサイト運営者による利益誘導の可能性もゼロではありません。

一般財団法人ロングステイ財団が、「ロングステイ希望国・地域」を毎年発表していましたが、2020年のランキングは本稿執筆時点(2021年12月下旬)でも公表されていませんでした。

そして外務省ですが、毎年10月1日現在の「海外在留邦人数調査統計」を発表しています。在留邦人とは、「3ヵ月以上、海外に在留している」日本人であって、駐在員も留学生も含まれた数字です。そのため「在留邦人数」ではなく「永住者数」で2019年と2020年を比較してみました。

以下で説明に用いるデータは、外務省の「海外在留邦人数調査統計」令和3年版から引用した「永住者数」です。令和3年版とは、令和2年10月1日現在のデータとなります。コロナ禍の影響を半年分は反映している数字、とお考えいただければ幸いです。

2.不動の1位マレーシアは来年度急落か

ロングステイ財団が発表している『ロングステイ希望国・地域』ランキングにおいて、14年連続で1位となっているのがマレーシアです。まずマレーシアの動向から探ってみましょう。

参照元:ロングステイ財団調べ『ロングステイ希望国・地域2019

2-1. マレーシアは永住先ではない

マレーシアの日本人永住者数は2020年10月で1,992名です。前年比では▲0.4%と頭打ちとなっています。同じ東南アジアのフィリピンの永住者が6,013名ですから、1/3ほどです。ちなみに上の表で9年連続2位となっているタイは1,828名で、前年比は+3.5%でした。こちらも同様で、実際に永住者となる人数は、人気ランキング通りではないといえるでしょう。

そこで永住者ではなく、3ヵ月以上の「マレーシア長期滞在者」を外務省のデータでみますと、2020年は+17.3%でした。コロナ禍でロックダウンも実行したマレーシアですが、それでも前年比でこれだけ伸びていました。

これらの数字から読み取れる傾向として、マレーシアには「ロングステイ」をしても「永住」はしない、という日本人が多いと考えられます。日本が寒い冬の間だけ、温暖な気候のマレーシアで過ごす、といったスタイルが好まれているようです。

2-2. ハードルが急激に上昇

14年連続でマレーシアが人気ランキング1位でしたが、2022年には陥落する可能性があります。長期滞在者が取得していたマレーシア・マイ・セカンド・ホーム(MM2H)パスの申請要件が、2021年10月から大幅に変更となったからです。発表内容を以下表にまとめてみました。

【マレーシア・マイ・セカンド・ホーム(MM2H)パスの申請要件】

 2021年10月から従来の基準
在住可能な日数年間90日以上年間90日以上
マレーシア以外での収入4万リンギット/月 約109万円/月1万リンギット/月 約27.3万円
マレーシアでの預金額100万リンギット 約2,739万円15万リンギット 約409万円
有効期限5年間10年間
流動資産150万リンギット 4,096万円50万リンギットまで 1,365万円
年間パス500リンギット 約13.7万円90リンギット 2,457円
年間パスの申請費用5,000リンギット 約1.3万円なし

※換算レートは2021年12月25日現在(1リンギット=27.27円)

参照元:在マレーシア日本大使館

このようにかなり大幅な要件変更となっています。たとえばマレーシア以外の国での月収額でいえば、従来は年金額が月28万円あれば要件を満たしましたが、今後は月110万円が必要で、マレーシアでの定期預金額も2,730万円が必要となります。今後はかなりのお金持ちでなければ、マレーシアのMM2Hパスは新規に取得できなくなってしまったといえるでしょう。

詳しくは在マレーシア日本大使館のホームページをご覧ください。

3.オーストラリアとカナダ人気のあおり

3-1. オーストラリアの傾向

もう一度、ロングステイの人気ランキングを見てみましょう。21世紀の初頭、オーストラリアはトップクラスの人気国でした。

参照元:ロングステイ財団調べ『ロングステイ希望国・地域2019

しかしご覧の通り人気ランキングの順位は右肩下がりです。実は以前のオーストラリアは、ビザの取得要件が今ほど厳しくありませんでした。そのイメージが21世紀初頭の頃は残っていたと考えられます。ですが査証要件が厳しくなり、移住先としての人気が下がってきました。またオーストラリアに旅行した人数のデータを振り返りますと、2001年から2002年は約66万人いました。それが2014年には半分の33万人強まで減少しています。ここ数年の旅行者は増加傾向とはいえ、移住先としてのオーストラリアは以前ほどの人気はないと考えられます。

参照元:Commonwealth of Australia

参照元:トラベルボイス

現在オーストラリアの退職者ビザを取得するには、マレーシア以上の投資額が必要となります。地方と都市部とで違いはありますが大都市ならば75万豪ドル、約6,200万円です。

他にいくつか、永住権を得る方法はあります。しかしそのためには高度な英語力と職業スキルが求められるため、若いうちからオーストラリアで働き続けなければ取得はかなり難しいでしょう。

参照元:海外移住.com

3-2. カナダの傾向

オーストラリアと同じことはカナダにもいえます。20世紀には人気移住先のトップ5に入っていましたが、2019年には10位まで順位を下げています。

社会全体として多様性が尊重されてきたカナダは、アジアや南米など多くの地域からの移住者をこれまで積極的に受け入れて来た国です。国籍や人種に対して常に平等であるという価値観が根付いていました。

しかし制度を詳しく見ると、無条件で移住を認めてきたわけでは決してありません。教育水準や仕事のスキルなどをポイント化して、カナダに貢献できる人を受け入れてきたのです。いわば経済政策の一環ともいえます。

参照元:https://synodos.jp/opinion/international/24087/

2021年から2023年にかけて、カナダ政府は毎年40万人以上の新規永住者を受け入れると発表しています。それだけを聞けば、移住希望者に門戸を開いている国という印象を受けます。しかし永住権取得のためには英語力の向上やカナダでの就労経験がないと、現実は厳しいです。

参照元:幻冬舎ゴールドオンライン

4.その他移住しやすい国

マレーシア、オーストラリア、カナダの移住要件をみて、気持ちが滅入ってしまった方もいらっしゃるかもしれません。そこで最後に、まだ永住ビザの要件が比較的緩い国を紹介しましょう。それはブラジルです。

4-1. ブラジルの退職者査証の要件

ブラジルの年金受給者査証は、年金を日本からブラジルに送金するという、銀行発行の送金手続承諾証明書が必要になります。ですが、月額で2,000アメリカドル(約23万円)という基準額なので、庶民的な日本人でも手の届く人は相当数いらっしゃるでしょう。

参照元:在東京ブラジル総領事館HP

そしてブラジルの退職者ビザの大きなメリットは、有効期限がないことです。無期限でブラジルに滞在することができるうえに、2名までなら扶養家族も同伴できます。年金生活者を対象とした査証は多くの国で制度化されてはいますが、何かと煩わしい制限や条件が付いていることが一般的です。世界的に見ても、ブラジルの退職者査証は好条件といえるでしょう。

参照元:https://www.kaigaiijyu.com/ranking/overall.php

ただし、一般用永住査証に比べ取得しやすくなっている退職者査証ですが、取得するにはブラジル国家移住審議会や外務省移民課などの審査があります。そのため、日本での申請から取得までに6ヵ月ほどの期間が必要になることもありますのでご注意ください。

参照元:http://www.interq.or.jp/tokyo/ystation/r6.html

4-2. ブラジルの移住環境

外務省のデータによれば、ブラジルの日本人永住者は46,118名です。この人数はアメリカ、オーストラリアに次いで実は世界で3番目に多いです。また「長期滞在者」との割合を見ますと、永住者が92.7%と圧倒的に多いこともブラジルの特徴です。

日本人が多く暮らしているアメリカ合衆国で、永住者の割合は44.6%なので、いかにブラジルが異例なのかお分かりいただけるでしょう。

ご存知のように、もともとブラジルには多くの日系移民が住んでいます。なかでもサンパウロは、世界でいちばん日系人が多く暮らす都市とされています。ですから和食のレストランも多いですし、日本人向けのサービスも充実しているため、とても暮らしやすい面があります。

また最近はサンパウロ以外の地域にも、日系企業の工場が次々と進出しており、日本人が増えてきています。

ただ、ブラジルといえば地球の裏側ですから、日本との頻繁な往来が大変なことは覚悟しなければなりません。治安の悪い地域もいまだにありますから、行動には注意が必要です。

おわりに

 このコラムでは人気の海外移住先について、データを踏まえていくつかの国を紹介いたしました。ブラジルの査証要件が比較的緩いと書きましたが、それはあくまでも本稿執筆時点のことです。査証の要件はどこの国でも頻繁に変わる可能性がありますので、最新の情報には常にご注意ください。

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