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退職後は夢の海外移住へ|日本の年金はどうなるの?

セゾンのくらし大研究 編集部

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「定年後は海外移住したいと考えているが、年金は海外からでも受け取れるのか?」「50代でセミリタイアして海外移住したら、年金の掛け金は増やせるのか?」 

近い未来に海外移住を考えている方なら、そんな悩みを抱えていることもあるでしょう。日本国外に住所を移した場合に、年金の扱いがどうなるのか、はっきり答えられない方も多いはずです。 

そこで今回のコラムでは、海外移住した場合の年金の扱いについて解説します。将来の年金の受け取り、そして定年までの掛け金の支払いについて気になっている方は、ぜひチェックしてください。 

1.海外移住しても年金の支払い・受け取りは可能です

まず結論として、海外に移住しても日本の年金の支払い・受け取りができないということはありません。日本国内に住んでいなかったとしても、これまで年金を納めてきた65歳以上の方であれば、年金の受給権が発生します。 

ただし国民年金への加入義務はなくなりますから、国民年金の納付を強制されなくなります。とはいえ、65歳を間近に控える方にとっては、定年まで年金を納めて満額受け取りたいと考えるでしょう。そんな方のために用意されているのが「任意加入」の制度です。 

逆に年金の受け取りの際は、国内で年金を受給する際にも必要な「現況届」を、毎年日本の年金事務所に送付する必要があります。海外に住んでいるからといって現況届の提出が遅れてしまったりすれば、年金の支給がストップしてしまうので注意が必要です。 

ここまで触れてきた「任意加入」と「現況届」について、それぞれ詳しく紹介します。 

1-1.満額受け取るためには国民年金の「任意加入」を 

日本では、年金の加入義務は20〜60歳の「日本国内に住んでいる人」のみです。そのため海外に住所を移した場合には、年金の加入義務がなくなり、保険料を納める必要がなくなります。 

だからといって、その分将来の年金が維持されるというわけではなく、きちんと最後まで払った人と比べると将来の支給額は減ってしまいます。そこで将来の年金額を増やすために検討したいのが、国民年金の「任意加入」制度です。 

任意加入のためには、海外に移住する前の住所を管轄する年金事務所、または自治体の窓口で手続きする必要があります。保険料の納付方法は、次の2つのいずれかとなります。 

  • 日本国内の銀行口座からの引き落とし 
  • 日本国内に住んでいる代理人に収めてもらう 

日本国内に残る信頼できる家族や親族がいる場合には、その人に代理で納めてもらうのが良いでしょう。ただし金銭トラブルなどで納付が遅れたりしてしまうと、未納状態になる可能性もあります。その意味では、日本国内の銀行口座を残しておき、定期的に入金しておくほうが確実です。 

ちなみに、自身の年金記録がチェックできる「ねんきん定期便」は、海外の住所にも送付してもらうことができます。海外送付には所定の手続きが必要になりますから、もし海外の住所でも受け取りたい場合には、年金事務所に相談しておくと良いでしょう。 

1-2.年金の受け取りでは「現況届」に注意 

海外に移住するタイミングで、日本でこれまで暮らしていた自治体に「海外転出届」を出す必要があります。これを出しておけば、老後の年金を海外で受け取ることが可能になります。 

ただし実際に年金を振り込んでもらうためには、65歳の誕生日以前に「年金請求書(事前送付用)」の必要事項を記入し、年金事務所に提出しておく必要があります。年金請求書は海外に住んでいる方には送付されませんから、年金の受給が始まるタイミングで海外に住んでいる場合、日本年金機構のHPから年金請求書をダウンロードして提出する必要があります。 

ここまでの手続きが完了すれば、日本に住む方と同じように、2ヵ月に1回年金が振り込まれるようになります。ただし、年に1回誕生月に提出する必要がある「現況届」の提出を忘れないようにしましょう。現況届の提出は、委任状があれば家族が代わりに手続きをすることも可能です。海外に移住した人向けに年金の手続きを代行してくれる社会保険労務士事務所もありますから、そうした手段も検討してみると良いでしょう。 

なお、今後も受給年齢の引き上げなど、年金制度の変更が考えられますから、最新の情報は日本年金機構HPなどをチェックするようにしてください。 

2.退職後に海外移住するメリット 

年金についての疑問が解消されたところで、ここからは夢の海外生活で豊かなセカンドライフを送ることをテーマに見ていきましょう。まずは退職後に海外移住することのメリットについてです。 

  • 物価の安い国で豊かに暮らせる 
  • セカンドライフを満喫できる 
  • 子どもや孫に喜ばれる 

これらの3つについて具体的に紹介します。 

2-1.物価の安い国で豊かに暮らせる 

日本よりも物価の安い国に移住すれば、ご自身で働く必要はなく、年金だけで暮らしていけるようになります。日本だと老後資金に不安が残るから、物価の安い海外に移住して豊かに暮らすことを考えるシニア世代の方は多くいます。 

特に東南アジア地域であれば日本より物価の安い国が多く、タイやマレーシア、フィリピンなどは50代から60代の方に人気の移住先の1つです。こうした国々での生活は、日本よりも3割程度生活費が安くできますから、その分を貯蓄に回したり日本への帰国、周辺国への旅行に回すこともできるでしょう。 

2-2.セカンドライフを満喫できる 

「人生100年時代」といわれる現代では、50代や60代の方が海外移住を始めることで、文字通りの「セカンドライフ」「第二の人生」を送ることができるようになりました。今後平均寿命が延びれば、50歳でやっと人生の折り返し地点。そこから見知らぬ海外の地に移住して生活を始めれば、まったく新しい人生がスタートします。 

もちろん言語の壁を乗り越える必要があったり、現地の文化を学ぶ必要があるのは事実ですが、これまでとはまったく違った環境で生活することに楽しみを感じる方にとっては、理想のセカンドライフとなるでしょう。 

2-3.子どもや孫に喜ばれる 

子ども世代や孫世代にとって「実家への帰省」といえば、日本の地方の田舎、特に何もない場所へ行くというイメージが強いでしょう。しかしおじいちゃんおばあちゃんが海外に移住するとなれば、「実家への帰省」がそのまま海外旅行となります。 

海外に住まいを持っていることで安価な宿泊先を提供することもできますから、日本国内にいる頃よりも子どもや孫に会える可能性が高まるでしょう。自分たちのためだけではなく、子どもや孫のためにもなるのが海外移住の魅力です。 

3.退職後に海外移住するデメリット 

一方で、退職後に海外移住することのデメリットにはどんなものがあるでしょうか。冒頭で紹介した年金制度への対応はもちろんですが、それ以外に気を付けたい部分もありますので紹介します。 

  • 年金の手続きがやや煩雑になる 
  • 医療保険への加入が必要 
  • ビザ取得のために老後資金を用意しなければならない 

ここで取り上げるのは、上記の3つです。 

3-1.年金の手続きがやや煩雑になる 

日本国内であれば、年金について手続きしたり相談したい場合には、最寄りの年金事務所に足を運べば事足りました。しかし海外に移住すると、電話で問い合わせるにしても国際電話を使わなければいけませんし、手続きは国際郵便を使用することになります。 

日本国内に住む場合と比べて、時間・費用・労力の面で大変になってしまうのは大きなデメリットでしょう。特に年金の受給の際には、毎年現況届をダウンロードして送付する必要がありますから、うっかり手続きを忘れてしまうと年金がストップしてしまうリスクもあります。 

3-2.医療保険への加入が必要 

海外に移住すれば、当然日本の健康保険は利用できなくなりますから、現地で別の保険に加入しておく必要があります。特に50代や60代以降になるとケガや病気のリスクも上がりますから、健康診断を含めて医療面でのサポートはしっかり確認しておく必要があるでしょう。 

場合によっては、毎年同じ時期に日本に帰国して、日本の医療機関で健康診断を受けるという選択肢もあります。海外での医療体制に不安がある方は、定期的に日本に帰国する計画を立てておきましょう。 

3-3.ビザ取得のために老後資金を用意しなければならない 

海外に移住するためには、必ずビザを取得しなければなりません。ビザ取得のためには、国によって経済条件が設けられていることもあります。たとえば、毎月の最低年金額が設定されていたり、最低預金残高が設定されていたりと、ある程度の資金がないとビザの申請が通らないことも出てきます。 

しっかりと老後資金を蓄えている方であれば問題ありませんが、もし不安がある場合には、今からでも遅くはありませんので老後資金の積み増しを検討しましょう。 

4.ご自身の年金記録をチェックし、お試しロングステイへ 

海外に移住する際には、ご自身の年金記録をしっかりと確認して、移住先でも年金を受け取れるように年金事務所に相談しておくことがもっとも確実です。スマートフォンやパソコンから、24時間いつでも年金記録をチェックできる「ねんきんネット」にも事前に登録しておくと良いでしょう。 

海外移住先でリタイア生活を送り、年金と老後資金だけで暮らしていきたいとなった場合には、年金を確実に受け取れるようにしておくことが不可欠です。もしいきなり海外移住をスタートさせて、イチから年金の手続きを行うことに不安があるのであれば、移住ではなくロングステイという形でお試ししてみると安心です。 

まずは3ヵ月〜半年程度のロングステイで年金を受け取りながら海外生活を体験し、一旦日本に帰国。その後1年〜2年にロングステイ期間を延ばすなど、段階的に移住していけば年金の手続きにも慣れてくるはずです。いきなり移住を決断するよりも周囲の理解を得られやすいですし、現地のライフスタイルにも適応しやすくなりますので、ぜひお試しロングステイから始めてみてください。 

おわりに 

セミリタイア・リタイア後に海外移住を検討している場合には、まず65歳まで「任意加入」の制度を使って年金を支払っておき、満額受け取れるように工夫したいところです。受給開始してからは、毎年の「現況届」を忘れずに日本の年金事務所に送付するようにしましょう。 

海外移住には豊かなセカンドライフをスタートできるというメリットもありますが、年金の手続きがやや煩雑になるというデメリットもあります。年金と老後資金で第二の人生を送ろうと考えているなら、年金の支払い・受け取りに関しては疑問点をしっかり解消してから移住するようにしてください。

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