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昆虫食、あなたは前のめりで受け入れられる?その前に知っておくべきこと

昆虫食、あなたは前のめりで受け入れられる?その前に知っておくべきこと
高山 晴代 料理研究家

執筆者
高山 晴代 料理研究家

婦人服デザイナーから転職し、料理研究家として独立して10年。受講生6,000人以上。現在は八ヶ岳を拠点に発酵と野草、フードロスに特化した講座の開催とオンライン化のプロデュースをしている。コンセプトは命の根っこを強くする。著書2冊。メディア:日本経済新聞、にじいろジーン他。レシピ提供:東京ガス、講談社他。

今はどこに行っても国境を越えたバラエティに富む食事を楽しむことができます。そのような中で、実はひそかなブームが始まっているのが、昆虫食。虫を食べる新しいスタイルの食事です。今回はその昆虫食と未来の食について、考えてみたいと思います。

1.  知っていますか?昆虫食のこと

昆虫を食べる。そう聞いて、あなたはどう思うでしょうか?「見るのも触るのもいや!食べるなんてとんでもない!」という方もいれば、「蜂の子やイナゴを、子どもの頃から食べていた。」という方もいるでしょう。

1-1.なぜ昆虫食がじわじわとブームに?

この昆虫食が、じわじわとアンダーグラウンドでブームになっています。それはなぜかというと、2013年に国際連合食糧農業機関(FAO)が食料問題の解決として、昆虫食の推奨を公表したからです。未来食、宇宙食ともいわれていて、広大な土地がなくても飼育可能であり、環境に負荷をかけない持続可能な高タンパク源であることがメリットだそうです。

とはいえ、正直なところ、前のめりに「美味しそう!」とは思えない人の方が多いのではないでしょうか?できれば私も、食べるのは避けたいものです。まだまだ未開の地の昆虫食ですが、書籍は思った以上にたくさんあります。想像以上の種類の昆虫が、食用可能なことに驚きです。ツイッターでは、昆虫食を発信している方もいますし、1万人以上のフォロワーさんがいるアカウントもあります。

1-2.コオロギは中でも注目食材

その昆虫食の中でも比較的なじみがあるのは、イナゴ、蜂の子、ザザムシ、蚕などです。各地の郷土食として昔から食されてきた歴史があります。とは言いっても、一般的ではない食べ物である昆虫食の中で、最近の注目食材として急上昇しているのはコオロギです。

コオロギ醤油やコオロギ味噌、コオロギせんべい、コオロギ麺にクッキーなどが新商品で開発されています。ちなみにコオロギやイナゴ、甲殻類はエビのような食感のようですね。鳥のささみよりタンパク質が豊富で各種栄養素も含まれていることがメリットのようですが、アスリートに人気の鳥のささみのタンパク質は100gあたり25g。ではコオロギは?というと60g以上とされていて一見確かにタンパク質は豊富に感じます。ただ、乾燥コオロギの100gの量は、乾燥コオロギで1,000〜1,200匹。もはやこれはタンパク源とか、そういうところを抜きにして、個人的に食べるのがむずかしい気がします。

そのコオロギを粉末にしたパウダーを使ったせんべい等は、大手の企業でも開発が進み、無印良品は徳島大学と連携してコオロギせんべいを開発しています。

国立国会図書館のデータベースによると、その昔、信州ではコオロギを炒ったり、佃煮にしたりしていたとあります。また戦中は疎開児童にコオロギを乾燥させて粉末にしたものを、味噌汁に入れて栄養を補給していたともあります。

どうしてコオロギを食べるようになったのか?信州付近の山間部は、海もありませんし、昔は今のように食品が気楽に買えたわけではありません。冬場の食料は特に乏しくなります。ですから、身近なコオロギを食べることから始まったのでしょうか??コオロギは色は違えど、イナゴにも似ていますから、食べやすかったのかもしれません。

脱線しますが、私が働いていた山小屋、尾瀬の檜枝岐村では、サンショウウオを燻製にして食べていました。Oh My God!!

その村もやはり冬場は食べ物がない山奥の村ですし、食べられるものは有効に食べていたのです。

コオロギ

最近では驚くことに昆虫食の自動販売機もあり、全国に50ヵ所以上に設置されています。ゲンゴロウ、カブトムシ、サソリにタガメに、バッタ、イナゴ、キリギリスなどのグラスホッパー。お値段も一袋1,000円など、なかなかです。長野在住の私の家から一番近い昆虫食販売機は、お隣の山梨県の甲府でした。

昆虫自販機
実際に現地で撮影した写真です

  

参考:昆虫食自動販売機 〒409-3862 山梨県昭和町 上加東923-10

参考:【全国53ヵ所】昆虫食自動販売機の設置場所まとめ(昆虫食のセミたま

千葉県出身の私自身は、子どもの頃にイナゴを食べた記憶がうっすらある程度で、蜂の子も先日初めて口にした程度です。蜂の子に関しては、山小屋で働いている時に、白いブラウスの似合うおとなしい清純な女の子が常食していたのを見て、ギョッとしたことがあります。周りに店のない、北アルプスの山の中でしたので、滋養食にしていたのかもしれませんが、見ていて気持ちの良い食事ではありませんでした。私も一度だけ、勇気を持って蜂の子を試食しました。蜂の子の甘露煮は、鰹の味に似てるような気がしましたが、またリピートしたいかというと・・・正直躊躇してしまいます。

虫たちを食べる時代の波が、身近にやってきているのをひしひしと感じますが、個人的には昆虫食の地味なブームは知っていたものの、“あえて手を出したくない分野の食材”です。宇宙食としても着目されていますが、昆虫を食べるというだけでも頭がショートしそうなのに、宇宙で昆虫を食べる時代がくることが想定されている件は、頭がまったくついていきません。地球で食べられる食料という点ではある意味、着目しておくこともありなのかもしれませんが。

1-3. 生薬としての昆虫

食材としての昆虫はいったん脇に置いて、漢方薬としての昆虫のお話をしましょう。

赤トンボ

まず赤とんぼです。なんとものどかな田園風景にぴったりで、秋のおとずれを告げてくれる赤とんぼですが、その赤とんぼの黒焼きは漢方として喉の痛みや咳、それから扁桃腺の炎症緩和などに使われています。今も漢方薬として販売されていて、そのお値段は100gで2万円以上。漢方薬の中でも高級漢方といえるでしょう。

参考商品:赤とんぼの黒焼き 粉末100g 21,600円(中屋彦十郎薬局)

健康食品、民間では赤とんぼの黒焼きは鼻から吹き入れると伝えられています。

実際、おばあちゃんと一緒に羽をむしって薬にしたことがある東北出身の友人がいますが、喉の痛みには効果的だったといっていました。ちょっと羽をむしるところを想像すると、グロテスクですよね。

セミの抜け殻

さらに、セミの抜け殻も生薬です。セミは幼虫の期間が長く、成虫になってからはたったの1週間が寿命。そのセミが殻から出てくる羽化の様子は、森の妖精かと思うほど。淡みがかった緑色のオーロラのような羽は、神秘的なうつくしさ。誰が見ても神々しく感的動な姿です。

セミは7年間地中で過ごすという説が一般的ですが、実際には種類や環境によってその期間はさまざまのようです。羽化した後の抜け殻を蝉退(せんたい・ぜんたい)といって、生薬に使ってきた歴史があります。メルカリで販売されているほどですから、意外に需要があるのかもしれません。

1-4. 高級漢方の冬虫夏草(とうちゅうかそう)

高級漢方の冬虫夏草

他、珍しいものでは、虫の死骸にキノコの菌が寄生した冬虫夏草もあります。トンボの黒焼き以上の高級漢方ですが、ご存知の方はかなりマニアックですね。

北アルプスの山を散歩している時に、冬虫夏草らしきものを見かけたことがありました。

オレンジがかった淡いピンク色の、ひょろんとした不思議な植物を見つけたのです。当時のガラケーで写真を撮り山の専門家に見せたところ、冬虫夏草ではないか?とのことでした。はじめて冬虫夏草(とうちゅうかそう)という名前を知ったのもその時。調べると高級生薬ではないですか。今となれば、その時の写真が手元にないのが残念ですが、こんな不思議な生き物とも植物ともいえない、珍しいきのこの一種を口にしたり、薬として研究してきた歴史があるということは、人類は思った以上にサバイバルなチャレンジャーだということです。

参考商品:松原無菌養蚕 冬虫夏草 90粒 17,500円税込(カイタックグループ)

参考商品:天然冬虫夏草〈姿)、冬虫夏草(粒)(大山漢方堂薬局の漢方高貴薬 付録)

2.食のハイブリッドはどこへ行く?

2-1.地球の進化と食

バラエティに富んだ今の食文化は、チャレンジャーな私たちの祖先の一人ひとりが、試行錯誤してたどり着いたハイブリッドなものです。その歴史の中には、初めて口にしてお腹をこわすものもあったと思います。発酵食などは、発酵か?腐敗か?微妙なラインの時も、もちろんあったと思いますし、保存食を作ったつもりで保管していたら、カビてしまい食べれないものもあったでしょう。キノコ類は、生死に関わるアクシデントを乗り越えての今ですし、フグの毒なども同じくです。

2-2.狩猟採集から現代の食へ

地球が誕生したのは46億年前。生命の起源は海。人類がこの地球上に生まれるよりも、はるかはるか太古の昔、不毛の地に最初に生えてきた植物は、苔シダ類でした。地球の大先輩、苔シダ類から地上の生命はスタートして、そこから長い年月を経てそれぞれの生態系は環境に沿って進化を続けてきました。

狩猟採集時代

人間も自然界の野草、山菜、果樹、野生動物や魚介類を採取して食べてきた歴史があります。野山に生える自然の草を食べたり、狩猟採集で動物や魚、時にキノコをとり、命をつないできました。やがて畑が始まり、江戸の260年で食文化は大きく進化します。白米の技術や醤油ができたのもこの頃です。庶民の食事は一汁一菜が中心で、遠くから食べ物を調達することはできませんでしたので、地産地消でした。

2-3.自然回帰のタイミング

都会の街並み

ところが、今の食を見てみると、輸入食材も多く、食べ物のほとんどが養殖や大量生産となっています。昆虫を高タンパク源として、食べるか食べないか?それも今後の未来には大切なことかもしれませんが、それより先に、自然と離れすぎたライフスタイルを、自然に沿ったものに軌道修正することが、まず必要なのではないでしょうか?

2-4.持続可能な食

昆虫食、あなたは前のめりで受け入れられる?その前に知っておくべきこと

そんな今、プランターで小さな家庭菜園をしたり、身近な食べられる野草を知ることに着目しておくことは大切なことです。タンパク源はお肉や昆虫の他に、卵や乳製品、豆類、豆類加工品でも取ることができますし、もっと広い視野で「食べることと私たちの生活」を見渡すべきでしょう。

産業廃棄物にもなってしまっているおからも、タンパク源として有効に使うことができますし、食物繊維も豊富です。捨てられている「食べ物」をもっと良く知ること、無駄にせずに、今あるものを循環させることの方が必要です。地球上の食べ物の量は足りているともいわれています。一番大切なことは、持続可能な食と、穏やかで平和な健康的な食卓です。

2-5.私たちにできることは、小さな自然回帰

「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録された日本で、今後の食がどのように発展していくのかは、分かりませんが、少なくとも昆虫まみれの市場にはなって欲しくはないですね。私たちにできることは、小さな自然回帰や、応援したい生産者さんの食べ物を買うこと、そして、“食べ物で作られる身体”が喜ぶ食事をていねいに選ぶことではないでしょうか?お皿の上に、当たり前に昆虫が乗っている食卓がやってくるのかもしれませんが、もう少し穏やかな気持ちでいただける、精神的に平和な食卓が未来にあることを想定したいものです。

私たち一人ひとりは、“健康的でおいしくいただける食事”を選ぶことができますし、今後の未来も、多くの情報の中や可能性の中から“選ぶ”ということができます。この先の未来をどのような地球にしたいのか。人間と自然がどのようにして美しく共存していくことができるのか。このコラムが少しでも、健康で快適な美しいライフスタイルを送るエッセンスとなりましたら幸いです。

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