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春の山菜・野草の種類、料理法と意外な保存方法とは?

春の山菜・野草の種類、料理法と意外な保存方法とは?
高山 晴代 料理研究家

執筆者
高山 晴代 料理研究家

婦人服デザイナーから転職し、料理研究家として独立して10年。受講生6,000人以上。現在は八ヶ岳を拠点に発酵と野草、フードロスに特化した講座の開催とオンライン化のプロデュースをしている。コンセプトは命の根っこを強くする。著書2冊。メディア:日本経済新聞、にじいろジーン他。レシピ提供:東京ガス、講談社他。

ここ数年、野草に関する興味が高まってきています。それは身近な食材として、野草が知られてきたこと。自然のものを身体に取り入れることで、健康的な生活を送りたいと思う方が増えてきたからでしょう。今日は春の山菜、野草のおいしい食べ方と、簡単で意外に知られていない保存方法についてお伝えします。

1.春の芽吹きの山菜&野草を取り入れるメリット

春は山菜、野草のおいしい時期です。都会ではなかなか目にすることはできないと思いきや、道端には食べることのできる野草も、多く生えています。山菜に関しては、自然豊かな場所に生えるものですが、最近は、スーパーにもよく並んでいます。今回はおいしい山菜と野草を写真付きでご紹介します。

1-1.春の山菜10選

春の山菜の代表的なものを10選ご紹介します。

タラの芽

タラの芽のおすすめ料理

天ぷらや油炒め、チヂミ等に美味しい山菜です。日当たりの良い場所に生えます。とげがあるので、山菜採りの際は、手を切らないようにご注意ください。タラの芽というぐらいなので、芽の部分をいただきます。とげを避けるために、芽の根っこを針金のハンガーの柄の部分や、傘の柄の部分を使って採ると良いでしょう。

タラの芽のおすすめ料理

コシアブラ
タラの芽の天ぷら

コシアブラ

コシアブラのおすすめ料理

コシアブラも天ぷらや油炒め、胡麻和えなどがおすすめです。少しタラの芽に似ていますが、以下の写真ですと、タラの芽との違いがよくわかるでしょう。

コシアブラのタラの芽との違い

コシアブラのおすすめ料理

コシアブラのおすすめ料理
コシアブラのおひたし

アク抜きをしてから、白だしとわさび醤油で。

春の風物詩。タケノコを見ると、本格的に春がきたと感じます。毛羽のある皮を剥き、ヌカでアク抜きをしたものをお料理しましょう。新鮮なものはアクが少なく、炙っただけでも美味しくいただくことができます。たくさん採れたら、アク抜きしたものを冷凍保存しておくと便利です。タケノコご飯や、天ぷら、すまし汁、煮物、炒めものなど幅広く使えます。

タケノコ

タケノコ

春の風物詩。タケノコを見ると、本格的に春がきたと感じます。毛羽のある皮を剥き、ヌカでアク抜きをしたものをお料理しましょう。新鮮なものはアクが少なく、炙っただけでも美味しくいただくことができます。たくさん採れたら、アク抜きしたものを冷凍保存しておくと便利です。タケノコご飯や、天ぷら、すまし汁、煮物、炒めものなど幅広く使えます。

タケノコのおすすめ料理

タケノコのおすすめ料理
タケノコご飯

みりんと醤油で、濃く煮たタケノコと油揚げを、硬めに炊いたご飯に混ぜるのが簡単で美味しいです。この時、みりんと醤油は1対1。甘めが好きな方はみりんを多めに調節してください。

ウド

ウド

ウドは本来は山菜ですが、最近では栽培したものも多くなっています。比較的、山菜の中ではエグミが少ないので、天ぷらの他、煮物、酢の物にも適します。酢の物に使う時は、酢水にさらし、アク抜きの下準備をしましょう。ウドは捨てるところがないといわれ、皮を向いたら、きんぴらにしたり、素揚げや唐揚げのようにすると余すところなく、美味しくいただけます。

食用にするのは30〜50cm程度の新芽の部分です。ウドの茎は、地上に出る前の若芽の時は食用とされますが、大きくなると食用になりません。さらに成長すると高さ2メートルほどにもなりますが、草なので柔らかくて弱いため、建築用材にも使えません。このような役に立たない成長したウドに例え、『体ばかり大きくて、役に立たない人』の例えとして「ウドの大木」というようになりました。ウドの花(以下) は、ご覧になったことがある方も多いのではないでしょうか?

ウドの花

ウドのおすすめ料理

ウドのおすすめ料理
キンピラ

キンピラにする際は、ごぼうやニンジンと合わせても美味しくいただけます。

コゴミ

コゴミ

コゴミはワラビの仲間。同じ種のものに比べ、灰や重曹でアク抜きをしなくて良く、お料理しやすい山菜です。茹でてマヨネーズ和え、胡麻和え、お吸い物、お味噌汁、天ぷら、炒めものなど幅広く使えます。

フキノトウ

フキノトウ

写真を見ただけで、フキノトウ特有の苦味が伝わるようです。フキ味噌、天ぷら、刻んでお吸い物など、ほろ苦い独特の香りが味わえます。春先にしか採ることができませんが、保存できる方法がありますので、この後詳しくご紹介します。

1-2.春の野草4選

ヨモギ

ヨモギ

天ぷらの他、アク抜きをしてワカメと和えたり、白玉やお餅に混ぜて和のスイーツとしても使われます。ヨモギパンも、最近はよく見かけますね。ちなみに、ヨモギの学名はアルテミシア。ギリシャ神話の月の女神、アルテミスからその名が来ています。韓国では女性の美容サロンでヨモギ蒸しに使われていますが、血の道のケアにも昔から使われている野草です。お灸のもぐさは、ヨモギの毛羽と繊維からできています。

ハコベ

ハコベ

小さな白い花を咲かせます。花の大きさは、5ミリ程度。ハコベはあまり食用で知られていませんが、実はおひたしや、胡麻和え、マヨネーズ和え、炒め物、お味噌汁の具にピッタリのおいしい野草です!春先の柔らかいものを選ぶようにしてください。

ハコベのゴマ和え

写真はハコベのゴマ和え。春の柔らかなハコベを使用します。熱湯に塩を入れ、ハコベを茹でます。茹でたハコベに、お醤油をちょっぴり加え、ざっと混ぜ、水気を軽くしぼります。これは和食特有の手法で、しょうゆ洗いといいます。アク抜きと下味つけの両方のメリットがあり、ほうれん草や小松菜にも合います。味付けはすりごまと、みりんと醤油。みりんと醤油の配分は1:1です。

菜の花

菜の花

アクも少なく、ほんのり感じるほろ苦さが独特の美味しさです。食用のものは、太めのものが販売されています。アブラナ科​​の植物で大根、白菜、キャベツ、チンゲン菜の仲間となります。同じような甘みがありますね。こちらも天ぷらはもちろん、おひたし、煮物、炒め物、さまざまなレパートリーの広がる野草です。花が咲き切ったものより、つぼみから少し黄色のお花が覗いているぐらいが、見た目も美しく美味しいです。 

1-3.春の芽吹きの山菜&野草を取り入れるメリット

四季のある日本では、春夏秋冬で、私たちの身体の動きもそれに伴い変化します。夏はエネルギッシュに、冬がゆっくりとした気持ちや行動になるのは、人間も自然界の季節の流れに沿っているからです。冬は特に身体の代謝もゆっくりになります。春の山菜は、冬に溜まった不要な老廃物や脂肪をデトックスし、身体に春が来たことを告げてくれます。良薬口に苦しといわれますが、山菜の苦味は植物性アルカロイドやポロフェノール。抗酸化作用や免疫力のアップが期待できます。ただし、大変エネルギーの強いものですから、食べ過ぎには注意しましょう。

2.山菜&野草を食べる時の注意点

2-1.食べてはいけない山菜2選

食べていいものの他に、毒草(食べてはいけない山菜)もあるのでご紹介します。

トリカブト

トリカブト

トリカブト。全草猛毒です。ニリンソウの葉と間違えて採取して、事故になることが多いです。

ハシリドコロ

ハシリドコロ

ハシリドコロは誤って食べると、走り回って苦しむためにその名がつきました。反対に、微量を薬にも使いますが、素人は手を出してはいけない山菜です。新芽はフキノトウの芽と少し似て見えます。

2-2.食べてはいけない野草2選

ヨウシュヤマゴボウ

ヨウシュヤマゴボウ

最近ではお花屋さんでも見かけるようになりました。ブルーベリー色の実をつけます。葉っぱの上に食べ物をおき、それを食べても食中毒を起こします。子どもがおままごとで、ヨウシュヤマゴボウの実で色水を作って遊びます。口にはしないように一言添えましょう。

ヒガンバナ

ヒガンバナ

秋に綺麗な赤い花を咲かせるヒガンバナですが、触るだけなら問題はないですが、特に球根には注意が必要です。ヒガンバナは1gあたり0.15mgのリコリンが含まれています。リコリンは10g摂取すると致死量になるので、少しかじったくらいでは死に至らないものの、激しい下痢や嘔吐を起こすことがあります。

他、スズランやスイセン、福寿草、イヌゼリなども毒草です。ちなみに毒草は、使い方次第では薬になるものが多いです。薬の字は、草冠に楽しいと書きますが、自然散策して楽しみながら、名前や植物の種類を覚えて行くことをおすすめします。

2-3.山菜&野草を食べる時の注意点

自然界のものはエネルギッシュでパワフルです。毒も強いので、知らない品種は口にしないように気をつけましょう。アクが強いものが多いのも特徴。アク抜きをきちんとしてからお召し上がりになると良いでしょう。また、専門家と一緒に野山に出て覚えたりすることも大切です。以前は、本や図鑑を片手に、調べるしかありませんでしたが、今では、さまざまなアプリがあり、比較的植物の名前がわかりやすくなっています。中でも”picture this”は、とても使いやすいアプリです。有料版を使う前に、無料版でお試しされることをおすすめします。

3.家庭でもできる、おいしい天ぷらの料理法

3-1.天ぷら粉の混ぜ方

天ぷらの衣はさっくりと混ぜるのがコツ。混ぜ過ぎるとグルテンがねっとりしてしまうので、天ぷらが重くなります。混ぜすぎ要注意。かき混ぜ過ぎないことが大切です。少しダマが残るぐらいでちょうどよく、衣がねっとりしているよりは、気持ち水が多めの方が美味しく仕上がります。

天ぷら粉の混ぜ方

3-2.温度計がなくてもOK。油の温度の計り方

温度計がなくてもOK。油の温度の計り方

温度計がなくても、油の適温がチェックできる方法があります。天ぷら用の油に菜箸を入れた時に、シュワっと気泡が出ます。このシュワッが箸を入れてすぐにブクブクすると、油の温度は高めのサイン。箸を入れても泡が出ないようでしたら、まだまだ低音で適温ではありません。

油に入れてから、でき上がりまでのサイン

この写真のように、2cmぐらい箸を入れて、細かい泡が出るぐらいがちょうど良いです。ただし、葉物を揚げる時と、フキノトウのような丸いものを揚げる時では、適温が違いますので、臨機応変に調節しましょう。慣れてくると油の量が少量でも上手に揚げることができます。一人暮らしや、ご夫婦お二人の家庭などは少量の油でも充分でしょう。


3-3.油に入れてから、でき上がりまでのサイン

油に入れてから、でき上がりまでのサイン

天ぷらに火が通ると、油の中で揚げ物が上に浮かびます。箸でつつくと軽くなってきたのがわかります。揚げ物が軽くなって、箸でつついた時に、油の中でスイスイ泳ぐように移動すると引き上げ時です、

3-4.最後の肝心なポイント。揚げた後の天ぷらの置き方で雲泥の差がでる

天ぷらに火が通ったら油から引き上げます。その際、油の上で2〜3秒、静かに待ちます。余分な油を落とすためです。網を敷いたバットの上に天ぷらを置きますが、この時、横に置かないことが重要です。必ず立ててください。今回、写真がフキノトウで、立てにくかったのですが、例えばエビフライなどの場合は特に横にしないこと。横にすると、揚がった天ぷらの余熱で、蒸気が出て水っぽくなってしまいます。立てかけるようにするだけで、美味しさが変わってきます。また、バットがない場合は、ボールの上に、ザルを置いてそこに天ぷらを置いても良いです。

最後の肝心なポイント。揚げた後の天ぷらの置き方で雲泥の差がでる

また、ザルの上に新聞紙やキッチンペーパーを敷いておくと、洗い物が楽になります。さらに、排水に油が流れず、環境に負担をかけずに済むので一石二鳥。

フキノトウの天ぷら

4.発酵食と野草の保存は、相性抜群

発酵食と野草の保存は、相性抜群

野草は一年を通じて、採れる時期が限られています。そのため、塩漬けや醤油漬け、蕗味噌のように味噌を併せることで、保存がきくものになります。この方法は野草のみならず、さまざまなものに使うことができます。

5.意外に知られていない、フキノトウのおいしい保存方法

最後にフキノトウのおいしい保存方法です。フキノトウは3月〜4月にかけて、大地からニョキッと顔を出します。気がつくと、食べ頃を過ぎてしまうので、蕾のうちに摘んでおきましょう。フキノトウは小麦粉や片栗粉をまぶし、ジップロックで冷凍保存しておくと、いつでもすぐに天ぷらにすることができます。

フキノトウ白く

白いおしろいが、天ぷらの衣をつけた時に、つなぎ役になります。フキノトウにおしろいでお化粧する感覚で、軽く粉をまぶして冷凍保存しておきましょう。そうすることで、摘みたての風味が味わえますよ。とっても意外で、簡単に風味を閉じ込めて保存ができるので、ぜひお試しください。

フキノトウおしろい

おわりに

今回は、春の山菜・野草の種類と料理法、意外な保存方法をお伝えしました。天ぷらは、山菜&野草を美味しくいただく、魔法のお料理といっても良いでしょう。高温の油で揚げると、アク抜きの必要もない為、昔から親しまれてきました。ですが、それだけだと飽きてしまいます。酢の物や油炒め、胡麻和え、チヂミなど、アレンジするとお料理が楽しく、美味しくなります。山菜&野草の種類は年に2〜3種でも覚えると、10年経てば20〜30種になります。それだけ知っていたら、野山を散歩するのが楽しくなります。山菜や野草、大地のめぐみは、食用のみならず漢方や民間療法にも使われてきました。自然界は私たちへ、さまざまなメッセージを与えてくれる他、山菜や野草をいただくことで、私たちの中にも自然の息吹きが入ってきます。そのダイナミックな命のエネルギーを上手に取り込み、いつまでも元気に過ごしていきたいですね。このコラムがあなたと自然が一歩近くなる、そのようなきっかけになりましたら幸いです。

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