タイ移住について調べると、物価が安く生活費も日本に比べて圧倒的に安いというような情報を目にします。中には月の生活費5万円で暮らせるなどという驚きの情報も!
本当に5万円で暮らせるならこんなに良い話はありませんが、これは事実なのでしょうか。今回はタイでの生活費を、日本の首都「東京」とタイの首都「バンコク」で比較しながら検証していきます。
是非、タイへの留学や移住を決める前に、本当の物価を知ったうえで検討頂きたいと思います。(本記事では1バーツ=4円で換算しています。)
1.タイの物価は1/3?ジャンルごとに比較
一概に物価といっても、比べることが難しいため、まずは、生活にかかるコストを以下のジャンル別に日本とタイで比較してみます。
- 食事
- 家賃
- 交通費
- 通信費・光熱費
- 医療費
それぞれ一つずつ解説します。
1-1.食事
タイでの食事はとても安いイメージがありますが、実はこれはタイ料理に限った事だったりします。
日本食やイタリアンなど、外国の料理をレストランで食べようと思うと、タイの首都バンコクでは、それなりの値段がしてしまうのが実情です。1食当たりにかかる平均的な金額は概ね以下のとおりです。
- 屋台やフードコートでタイ料理:60バーツ(約240円)
- レストランでタイ料理:100バーツ(400円)
- 日本食が食べられる定食屋や日系チェーンレストラン:100~300バーツ(400~1,200円)
- タイ料理やタイ系中華料理屋で飲み会(1軒・1人あたり):500バーツ(2,000円)
- 日本の居酒屋で飲み会(1軒・1人あたり):1,000~2,000バーツ(4,000~8,000円)
- コンビニのおにぎり:30~50バーツ(120~200円)
ご覧の通り、タイ料理と日本食で大きな価格差があり、日本食の価格は日本とあまり変わらない事が分かります。また昨今の円安傾向により、1バーツ=3.3円ぐらいの頃と比較すると、ぐっと高くなってしまった印象もあります。
ちなみに東京都の単身世帯の食費は月およそ45,000円(1日当たり約1,500円)ですので、毎日3食日本食を食べたいと思っている方は、同じくらいの食費かそれ以上がかかるという事になります。
ただし、朝昼はコンビニやローカル飯を中心にして夜だけ日本食を食べたり、たまに食べる日本食を自炊で賄ったりすれば、月の食費を8,500バーツ(34,000円)以内に抑える事は十分可能です。
ということで食事に関しては4分の3という感じでしょうか。
1-2.家賃
バンコクの中心部、特に日本人の多く住む人気エリア「スクンビット」の家賃は東京都とあまり大差がないとよく言われています。一方で、他の記事でも何度かお伝えはしていますが、立地条件や施設内の設備等を考えるとコストパフォーマンスは圧倒的にバンコクのほうが優れているでしょう。
仮に30,000バーツ(12万円)のお部屋をスクンビットで探した場合、以下のような条件になります。
- 広めの1ルームまたは1LDK
- 駅徒歩10分以内
- プール・ジム付き
- 24時間セキュリティ常駐
- 家具・家電・駐車場付き
少し郊外へ行けばモール直結・駅徒歩10分以内の2LDKで30,000バーツ以下といった物件もたくさんあります。
プール・ジムが付いている事や、家具・家電・駐車場付きというのはタイの物件ではスタンダードです。中にはゴルフの練習スペースやサウナまで完備している物件もあり、同じ30,000バーツでも内容が全く異なります。
ちなみに東京都で同条件の物件を探すと高級物件の部類に入るため、安くても20万円以上の家賃となり、選択肢もあまり多くありません。
1-3.交通費
バンコクの主な公共交通機関はBTS/MRTという電車と、路線バス、そしてタクシーとなります。
それぞれの料金は以下の通りです。
- BTS/MRTの初乗り料金:16バーツ(64円)
- 路線バス:8〜15バーツ(24〜60円)※バスの種類によって異なる。
- タクシーの初乗り料金:35バーツ(140円)
そして、東京都で同じ交通機関を利用した場合は以下のとおりです。
- JRの初乗料金:140円
- 都営バス:210円
- タクシーの初乗り料金:500円
バンコクの公共交通機関の方が、およそ1/2かそれ以上安いことが分かります。
1-4.通信費・光熱費
つぎに生活に必要不可欠な通信光熱費を見ていきましょう。バンコクでの平均的な通信光熱費は以下の通りです。
- インターネット代:500~800バーツ(2,000~3,200円)
- 携帯代:500バーツ(2,000円)
- 電気代:1,500バーツ(6,000円)
- 水道代:100バーツ(400円)
住む場所によってはアパート独自の料金形態で水道代が月に1,000バーツなんてところもありますが、バンコクは水道代が驚くほどに安いです。余談ですが、筆者がかつてバンコクの格安コンドミニアムに住んでいた時は、月の平均的な水道代は36バーツ(144円)でした。
ただし、一年を通して温暖な気候である為、冷房で電気代がかなりかかります。扇風機中心の生活なら電気代を1,000バーツ以下に抑えることも可能でしょう。
通信費はタイの大手キャリアを利用した際の料金ですので、日本と比較すると安くなるのでしょうか。ただ、今は日本でも月額3,000円以内の格安キャリアも多く出てきているのでそこまで大きな差は無いとも言えます。
1-5.医療費
これまでご紹介した各費用はどれも東京よりバンコクの方が安く、タイ移住の魅力的な点としてとらえる事ができますが、1点気を付けておきたいのが医療費です。
日本の病院なら、保険料を支払っている方はどの病院でも医療費3割負担で診察や治療を受けることができますが、タイではたとえ社会保険に加入していようとも好きな病院で治療を受けることはできません。
仮に風邪をひいたとして、日本人窓口のあるサミティベート病院で診察を受け、薬を処方してもらった場合、1回にかかる金額は約2,000~3,000バーツ(8,000~12,000円)となり、定期的に通院や入院ともなると更に高額になります。
その為、外国人の多くは海外旅行保険や現地での民間医療保険に加入し、何かあった時の医療費を賄っています。
移住にあたっての医療事情については『タイの医療事情はいいの?タイ移住する前に知っておきたい保険についても解説』で詳しく解説しています。
2.月の生活費の目安はどのくらい?
当たり前ですがタイに住む日本人はそれぞれ生活スタイルが異なり、タイ人と同じような生活をして生活費を節約している方もいれば、毎日日本食を食べて高級コンドミニアムに住んで贅沢な暮らしを楽しんでいる方もいらっしゃいます。
住む場所にもよりますが、1か月あたり70,000から80,000バーツ(28万円~32万円)+娯楽費ぐらいの生活コストを想定していると、ストレスのない移住生活が送れると思います。
- 食費:30,000バーツ(日本食とタイ料理をバランスよく、日本の居酒屋や喫茶店でゆっくりすごすことも)
- 家賃:20,000~30,000バーツ(バンコク中心部の一人暮らし用コンドミニアム)
- 水光熱費:10,000バーツ(特に節約を意識せず、暑いときにはエアコンを使う)
- 交通費:5,000バーツ
- その他娯楽費:おまかせ
制約をして暮らしたいという方は30,000から40,000バーツ(12万円~16万円)+娯楽費程度で抑えることも、生活スタイルによっては可能です。
- 食費:10,000バーツ(屋台を中心に、月に1回程度、日本食も楽しむ)
- 家賃:10,000から20,000バーツ(バンコク郊外の一人暮らし用コンドミニアム)
- 水光熱費:5,000バーツ(扇風機で我慢できるときは扇風機を使う)
- 交通費:5,000バーツ
- その他娯楽費:おまかせ
おわりに
今回はタイの物価が本当に安いのか、細かく掘り下げて検証してみました。さすがに東南アジアのバンコクでも、1か月5万円生活というのは無理がありそうです。食事に関してはタイ料理も含めてバランスよく考えないと日本と同じくらいの金額、またはそれ以上の費用がかかってしまうということが分かりました。
都心のプール、ジム付きの家に住むことまでも含めてトータルで考えると物価1/3というのはあながち間違っていないかもしれませんが、日本で12万円程度の家賃で暮らしている方が、タイに移住し、生活費が日本の1/3というわけにはいかなそうです。
最後にお伝えした医療費については、移住前にしっかり調べて事前に保険に加入するなりしておけばそこまで心配する必要はないでしょう。
ご自身はタイに移住した際にどんな暮らしがしたいのかをまず想像してみて、その為にかかる生活費を今回のまとめを参考に試算してみてはいかがでしょうか。