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歳を重ねても、自分を偽らず等身大で。キャンプとDIYのYouTuber・winpy-jijiiさんの楽しいセカンドライフの過ごし方
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歳を重ねても、自分を偽らず等身大で。キャンプとDIYのYouTuber・winpy-jijiiさんの楽しいセカンドライフの過ごし方

YouTubeで趣味のキャンプ動画を発信し、登録者数25万人を超えるwinpy-jijii(本名:中村カズヒロ)さんは現在73歳。動画の撮影・編集をしながら更新を続けつつ、旅行に出かけたり、中古車を購入して自ら内装してキャンピングカーにしたり、家のリフォームを自ら手がけたりするというアクティブな生活を送っています。

モットーは、「遊ばないから動かなくなる」。70歳を超えても持病はなく、毎日元気に遊びながら夫婦で楽しく暮らす中村さん。「身体が動かない……」と困ってしまう前にどんなことをしたらいいのか、遊びながら楽しく過ごすための工夫や姿勢について語っていただきました。

winpy-jijiiさん

winpy-jijii(中村カズヒロ)さん

1950年大阪市難波生まれ。滋賀県在住。飲食店経営を経て、35歳のときに会社員となり、定年退職後に夫婦で出かけたハワイ旅行の記録をきっかけにYouTubeを始める。趣味のキャンプやDIYをテーマに約15年前から動画を投稿し、2018年に投稿のアルミのクッカーや蓋などに使える「ニベア缶の磨き方」がヒットしたことで登録者数を大きく伸ばした。現在はさまざまな企業の依頼も受けながら、キャンプに役立つ情報やDIY、旅行などについて発信している

1.会社員時代から全力で遊んで、元気な定年後

――YouTubeでキャンプの発信を活発にされている中村さん。元々、どのようなきっかけでキャンプを始めたのでしょうか?

高校生のとき、ワンダーフォーゲル部に入っている同級生から誘われ、一緒に琵琶湖に行ったのがきっかけです。みんなでテントを張って泊まり、それからキャンプが好きになりました。

高校を卒業して家業を手伝った後、自分のお店を経営していたときもありましたが、うまくいかずに35歳くらいで閉じました。当時はやることがいっぱいあって休めなくて、遊ぶ時間すら取れませんでしたね。本格的にキャンプにハマり出したのは、その後会社員になってからです。

会社員になってからはほどよく休みの日に遊べるようになり、そこからキャンプをするようになったんです。仕事をしながらも、次の休みはどこに行こうかなとかよく考えていましたね。

キャンプは自分の時間で進められるところが魅力なんです。旅行のツアーのようにきっちり時間が決まっているわけではないから、自由にそのひとときを過ごすことができるし、朝起きるのがしんどかったらゆっくり起きてもいいし。のんびりその時間を過ごせるのが好きで、今もずっとやっています。

会社員時代から全力で遊んで、元気な定年後

――中村さんの世代は高度経済成長期真っ只中。かなり仕事が忙しい方が多いイメージもありますが、いかがでしたか?

僕が勤めていた職場は「仕事、仕事」という感じでもなく、売上を追いかけるようなきついノルマもなかったので、休日はしっかり遊んでいましたね。そのおかげで今、こんなに元気。出世はしなかったですけどね(笑)。

2.健康のために運動するではなく、好きだから手と頭が動く

――動画を観ていると、キャンプやDIYなど、好きなことに打ち込まれ活力がみなぎっている様子が印象的です。

僕は幸い病気をしたことがなく、今も持病がないんですよ。この前、少し体調を崩して初めて救急車で運ばれてしまって……。でも今ではすっかり良くなりました。体型も若い頃からずっとそのままで、体重もほとんど変わっていません。

歳をとると「身体が動かなくなった」という方がいますが、そういうことも全然ないですね。6月にフェリーで21時間かけて北海道へ行きましたが、疲れを感じず平気でした。途中から船酔いは感じたけど、北海道に着いたら景色が最高で、車の運転も楽しくて仕方がありませんでした。

健康のために運動するではなく、好きだから手と頭が動く

――YouTubeに動画をアップロードするのも、フットワークの軽さを感じます。

最初は記録のために始めたんですよ。元々20歳の時から写真が好きで、プロのカメラマンとして活躍していた親戚に憧れながら、ずっと趣味でやってきました。旅先で写真を撮るたびにアルバムにしていたのですが、保管が大変じゃないですか。データで記録を残しておけば、わざわざアルバムを引っ張り出してこなくてもいいわけです。

そこで定年退職後に夫婦でハワイ旅行へ行ったとき、「記録用にスマホで動画を撮ってみよう」と思って。それをYouTubeにアップロードし、何度も更新を続けていくと2万円くらい収益が生まれて、そのお金で「こんなもの買おかな」とか「おいしいものでも食べよか」と思いついて、それがとにかく楽しくて。

するとあるとき、動画を観てくれた東京のクリエイターさんから連絡があって。実際に会ってみると、さらに良い動画を更新できる方法をいろいろ教えてくれたんです。著作権のこととか何も知らなかったから、BGMは普通に山下達郎とか入れていたのですが、「こんな音楽が入れられるサイトがあるよ」など情報を提供してくれて、実際にその方法をやっていくともっとチャンネル登録者数が増えていきました。

――中村さんの世代は、デジタル機器を扱ったり技術を習得したりすることに敬遠される方も多いのではないかと思います。中村さんご自身は、抵抗感はなかったのですか?

ありませんでした。そもそも人間って、自分のしたいことならどんなことでもすると思っていて。僕自身、仕事でずっとパソコン使うこともなかったから、WordやExcelは今も使えないんですよ。だから最初は「動画編集って難しいな」と思っていた時もありましたが、やりたいことだったので一生懸命取り組みましたね。

あと、若い頃から写真がずっと好きだったのも大きかったです。だから動画撮影も抵抗なくできたし、編集作業も最初はパソコンに付属されていたソフトで始めました。最初は写真をスライドみたいに並べるくらいのクオリティでしたね(笑)。

そこから少しずつやりたいことも増えてきて、編集のソフトを変えたり、YouTubeを通して知り合ったクリエイターさんから教えてもらった音楽を取り入れたりして、上達していきました。動画制作の方法は自分で調べて覚えていったんですよ。好きなことやったら、楽しいですからね。やっていくとレンズ高いなって思いながらも、調べていくといろいろとわかっていって、レンズにもどんどんハマっていきました。

健康のために運動するではなく、好きだから手と頭が動く

3.できることが増えたら、楽しいことも増える

――独学で動画の編集を覚えていくだけでなく、キャンピングカーの内装を自身でされたDIYも器用にこなされていて、遊びの範疇を超えている気がします。

それもね、好きやからできるんです。僕は大阪の下町で子ども時代を過ごしたんですが、学校から帰るときに町工場があって、中をのぞいては「あんなふうに作ってるんやぁ……」とじーっと見るのが好きでした。自分でも何か作ってみたいと思い、高校時代にDIYを始めて。最近では家のリフォームも自分でやりましたね。

子どもの頃は貧乏でお金がなかったから、自分で作るしかなかったんです。キャンプ道具や車など、いいものを持てなかったから、「人の持ってないものを自分で作ったらオンリーワンでいいやん」って。持ち物について「これどうしたんですか」って聞かれた時に、「自分で作ってん」って答えるのが今でも嬉しいんです。

基本的に「自分で何でもできる」と思っていますが、もちろん失敗もします。でも、しばらくしたら「失敗も成功やな」って思うんです。失敗することでいろんなことを覚えるし、できることが増えたら、楽しいことも増えるでしょ。

――キャンピングカーも、自分でDIYして環境を整備されたとか。

そうなんです。きちんとしたキャンピングカーを買おうと思ったら、やはり値段が張ってしまいますよね。だから中古車のバンを買って、木材を使って中身をキャンピング仕様にDIYしました。そしたらだいぶ安く抑えられたんです。ただ、防炎のカーテンを取り入れたりして、しっかりとした作りになるようにも意識しました。

できることが増えたら、楽しいことも増える

――このキャンピングカーは奥さんも手を加えているんですね。一緒に旅行に出かけるなど動画からは仲が良さそうな雰囲気が伝わってきますが、普段はどんなことをやり取りされているのですか?

価値観が同じやから、ずっと仲良くできるんやと思います。普段は、僕がオートバイであちこち行っている様子を見て「いいなぁ」と言うから、小さいオートバイを買って一緒に出かけています。

ひとつの場所に行くたびに、「次はここに行きたいな」と次の作戦会議ばかりしていますね。これからも、いろんなところに連れて行ってあげられたらなと思っています。

4.若者から学ぶ時は「自分を大きく見せない」

――YouTuberは中村さんよりずっと若い世代の方が多い印象があります。そうした若い人たちと交流することもあるのですか?

そうですね。たくさん交流させてもらっていて、撮影のときはどんなレンズを使っているのかなど、一緒にお話しするのが楽しいです。僕の方が、若い方からいろいろ教えてもらっていますね。

若い世代の方を見ていると羨ましいなと思うことがあります。僕の若い頃は「きちんと仕事して、家を持って、その間に何か余裕があったらキャンプでも」という人が多かったのですが、YouTuberのように好きなことを生業にしている方を見ていると素晴らしいなと。

――シニアの方の中には職場や地域でリーダーとして活躍されてきた経験もあって、若い人から教えてもらうことに抵抗がある方もいるかと思いますが、中村さんはどうですか?

実は僕、定年退職してから1~2年ほど遊んで暮らした後、その生活に飽きてアルバイトしてみたことがあるんです。でも、1ヵ月で辞めてしまって。自分より若い人から「ネクタイはこうやって締めるんですよ」と注意されたりするんですが、今までやってきたことを否定されることに堪えてしまって。だから、若者から教えを請うことに抵抗があるというシニアの方の気持ちもわかりますよ。

でもYouTubeの場合、若い世代の方にいろいろ教えてもらうのが苦ではなくて。やっぱり、好きなことやからでしょうね。今はとにかく、「自分を大きく見せたらあかん」と思っています。どれだけ大きく見せても、話しているうちに本当の姿はバレますし、偉そうにしても意味ないんちゃうかなと思います。

若者から学ぶ時は「自分を大きく見せない」

5.誰にでも好きなことはある。それが糧になる

――「定年退職後、何か新しいことをしなきゃ」と悩む人も多いかと思いますが、中村さんはどのようにライフスタイルを考えていましたか?

僕は定年退職後も年金で生活できるよう、会社員時代から貯蓄を心がけてきました。株や投資は若い頃に失敗して、それ以来やっていません。定年退職後の生活設計として、「このくらいの貯蓄でこんな生活をしていけば、暮らしていけるだろう」という計画を立てて、無理せず夫婦二人で暮らしています。大きな買い物を重ねるより、DIYなどで手作りしていれば、お金はあまりかかりませんし楽しいですよ。

――セカンドライフを中村さんのように元気で楽しく過ごせるコツを教えてください。

僕は定年退職する前から、「退職後はこんなことをして遊ぼう」とばかり考えていました。辞めてから何やろうかな、では難しい。なるべく若いうちから準備しておくと、定年後も思いっきり楽しみながら過ごせると思います。

人はみんな、何かしら好きなものってあるんじゃないですか。僕は若い頃にキャンプの魅力を知って、写真にも夢中になって、ものづくりもやってきた。それが今、こうしてYouTuberとしての活動につながっています。

結局は、自分が好きなことをしているだけ。ずっと生きてきたら、どんな人も何か自分の好きなものができて、それを工夫して組み合わせれば、充実したセカンドライフにつながるんとちゃいますか。

「無理して何かを始めないといけない」ということではなく、自分がやってきたことや好きなことが土台にあれば、自然と身体と手と頭は動くものです。

僕の将来の理想は、コロッと逝くこと。いつか訪れるその日まで、楽しく遊びながら生きていきたいですね。

誰にでも好きなことはある。それが糧になる

(取材・執筆=梅澤杏祐実、撮影=蛭子美和子、編集=桒田萌/ノオト)