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晩秋に行く京都の見どころ|大徳寺と東山に見る京の歴史と荘厳
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晩秋に行く京都の見どころ|大徳寺と東山に見る京の歴史と荘厳

京都観光が最もにぎわうのは桜の春の季節と、紅葉の秋の季節です。京都市内を車で通勤している方々も、その時期は渋滞を避ける工夫をするほどの混雑です。

紅葉は10月下旬から11月が見ごろで、さまざまなメディアで京都の紅葉特集が取り上げられます。当コラムではこの時期ならでは見どころとして、できるだけ混雑せずに楽しめる大徳寺と東山を紹介します。

1.大徳寺

大徳寺というと、まず思い浮かべるのは豊臣秀吉が織田信長の葬儀を盛大に挙行したお寺です。

1326年に大燈国師が京都の紫野(むらさきの)に創建し、「一休さん」として親しまれている一休宗純、「沢庵漬け」を考案した沢庵宗彭らの名僧を輩出しました。日本人ならだれもが知っている千利休や狩野永徳らが活躍した、臨済宗大徳寺派の総本山です。

大徳寺の特徴は塔頭(たっちゅう)が数多くあり、そこにはすばらしい庭園があることです。そして、茶室と美術品が備わっています。

大徳寺ではもちろん紅葉も楽しめますが、2022年はこの紅葉の時期に大徳寺でさまざまなイベントが開催されますので、紅葉+アルファの大徳寺の魅力を堪能されてみてはいかがでしょうか。

※紫野 京都の北部(現在の京都市北区)周辺にあった七つの野原、京の七野(ひちの)のひとつ現在残っている地名は5ヵ所

塔頭は本来はお墓という意味ですが、本山の高僧らが亡くなったり引退したりすると、禅宗では本山の境内地に小さなお寺を造り、弟子たちが守っていくようになり、それが塔頭と呼ばれるようになりました。

安土桃山時代以降、有力な戦国武将たちがこぞって、この塔頭造営のために寄進を始めるようになりました。塔頭を造営し、自分たち一族の京都での菩提寺として考えたようです。大徳寺では一時、60ヵ寺以上の塔頭寺院があり、現在でも24の塔頭寺院があるそうです。

1-1.国宝大徳寺方丈の修理現場を見ることができます

日程:2022年11月5日(土)、6日(日)

方丈は禅宗寺院の僧侶の住居のことです。大徳寺の方丈は1635年に建てられ、これまで何度も修理が繰り返され、保存されてきました。

今回の方丈の修理は昭和7年以来約90年ぶりの大修理で、令和2年度から令和8年度にかけて行われています。国宝に指定されており、修理は京都府が担当し、その途中経過の様子が11月5日(土)、6日(日)の両日、公開されます。

京都府では10月、11月に国宝や重要文化財など、国の指定文化財の修理現場を公開しています。今年は大徳寺のほか4ヵ所で10月13日に事前申し込み制で公開されました。

大徳寺の方丈は午前10時から午後4時までで、事前申し込みは不要です。当日、直接受付が行なわれ、域内を自由に見学できます。貴重な機会ですので、寺院の建造物に興味のある方におすすめです。

1-2.千利休の菩提寺、大徳寺聚光院の国宝壁画里帰り特別公開

日程:2023年3月26日(日)まで

・聚光院(じゅこういん)

千利久の菩提所で、茶道をされている方は必見の塔頭寺院です。1566年(永禄9年)に三好義継が父親の長慶を弔うために創建しました。枯山水の百積庭は千利休の作品ともいわれています。

今回里帰りをして公開される壁画は、日本絵画の最高峰、狩野永徳とその父、松栄による本堂障壁画46面で、すべて国宝です。通常は京都国立博物館に寄託されていて、5年半ぶりの里帰りとなります。その他千利休150回忌に寄進された、重要文化財、茶室「閑隠席」や、現代日本画を代表する千住博画伯の障壁画「滝」も公開されています。

元々納められていた場所での公開はめったになく、日本美術、茶室建築、茶道に興味ある方におすすめの催しです。

・公開
予約優先制となっており、一定の人数ごとに案内人の説明を聞きながら拝観します。展示作品の内容がよく分かります。(時間は40分程度)
拝観料/大人2,000円・中高生1,000円(中学生は保護者同伴/小学生以下拝観不可)

詳細はこちら:京都春秋ー京都の寺院観光情報ー            

1-3.人数限定の大徳寺寺宝特別展示茶会

日程:2022年11月12日(土)~14日(月)の3日間、11月25日(金)~27日(日)の3日間

大徳寺本山が持っている国宝や美術品をじっくりと見ることができます。

この茶会は 国宝大徳寺方丈の修理費用を賄う一環として行われるもので、大徳寺では大変珍しい企画です。大徳寺塔頭の住職による法話や大徳寺ゆかりの道具を使ったお茶席も設けられます。伽藍案内40分、お茶会30分、寺宝拝観50分で約2時間の予定です。

主な内容は以下の通りです。

狩野永徳筆「織田信長像」:織田信長の3回忌の際、豊臣秀吉が狩野永徳に描かせたもので、永徳が信長の寵愛を受けていたため、かなり実像に近い肖像画といわれています。

お茶席:有栖川宮家から移築された書院「瑞雲軒」でお茶が振る舞われます。床の間に一休宗純の墨蹟が掛けられています。

一席最大15人限定で1日3席 10時、12時、14時 (事前予約必須)
参加費 一人 23,000円(税込)

詳細はこちら:ことなり塾 KOTONARI JUKU 京都での文化体験 – 京都春秋

1-4.大徳寺塔頭3寺院の特別公開

通常非公開の塔頭寺院の中で、この時期に3寺院で特別公開が行われます。

興臨院と黄梅院、総見院です。※期間中も休止日がありますので、ご注意ください。

・興臨院

日程:2022年12月15日(木)まで

能登の畠山義総が畠山氏最盛期の室町時代に創建しましたが、その後焼失し、前田利家が修復、前田家の菩提寺となりました。

本堂、表門、唐門は室町期の禅宗寺院の代表的建造物といわれ、重要文化財です。方丈庭園は「昭和の小堀遠州」といわれた中根金作が復元し、モミジが多く植えられており、紅葉と庭の美しさが際立っています。

詳細はこちら:加賀前田家ゆかりの寺院大徳寺 興臨院

・黄梅院

日程:2022年12月11日(日)まで

織田信長が初めて入洛した際に、父・信秀の追善菩提のために小庵「黄梅庵」を建立したことが始まりです。豊臣秀吉が増築し、小早川隆景が庫裏を寄進、千利休が「直中庭」を作庭するなど戦国大名や文化人とゆかりの深い塔頭寺院です。紅葉や庭の美しさと共に苔が美しいのも特徴です。

詳細はこちら:大徳寺 黄梅院 – 京都春秋

・総見院

日程:2022年11月30日(水)まで

織田信長の菩提を弔うため、羽柴秀吉(後の豊臣秀吉)が政治的な目的を主にして創建しました。開祖は千利休の師、古渓宗陳です。本堂には秀吉が奉納した、重要文化財の木造織田信長公坐像が安置され、織田一族の墓所もあり、歴史ファンの人気を集めています。

詳細はこちら:織田信長 菩提寺大徳寺 総見院 – 京都春秋

1-5.大仙院|利休と秀吉と沢庵和尚に武蔵をたずねる

大仙院|利休と秀吉と沢庵和尚に武蔵をたずねる

大徳寺の塔頭の多くは、特別公開される寺院のように通常は非公開です。数少ない通常公開のひとつがこの大仙院です。

どの塔頭寺院が公開されているかは、各寺院に尋ねるか、大徳寺に入る総門横の案内所で確認することもできます。

大仙院は、近江の六角氏に連なる古岳宗亘が1509年(永正6年)が創建しました。石組みと白砂で構成された枯山水の庭園は大徳寺山内で最も古い庭です。蓬莱山の滝から水が流れ落ち、石橋をくぐり、堰から大河に流れ込む様子が描かれています。
 
千利休が豊臣秀吉にお茶をたてた茶室や、沢庵和尚が宮本武蔵に剣道の極意を授けた書院、拾雲軒も残されており、吉川英治の小説「宮本武蔵」にも描かれています。廊下を歩くと音が鳴るうぐいす張りの廊下など、室町時代以降の世界に誘い込まれる雰囲気があります。

部屋には大仙寺の尾関宗園和尚が書いた、ユーモアあふれる墨筆や禅語の掛け軸などが掛けられており、ホッとする気持ちになれます。

大仙院|利休と秀吉と沢庵和尚に武蔵をたずねる
大仙院|利休と秀吉と沢庵和尚に武蔵をたずねる

1-6.大徳寺のとなりで、気軽に高級料亭の味

大徳寺のとなりで、気軽に高級料亭の味
五_そば

大徳寺の前の通りをはさんで東南角に「蕎麦と料理の店 五(いつつ)」があります。

ここは京都の高級料亭「和久傳」が経営する店で、お昼の手打ちそばを中心としたセットが4,400円(税込)とやや高めですが、高級料亭の味をリーズナブルに楽しむことができます。  

2人掛けのテーブル席が6席、カウンター席が10席と小さな店ですので、予約をするのが無難です。

そばはうす緑色で、つゆより塩でいただくのが似合うそばです。前菜の季節の盛り合わせは湯葉、鯖寿司、鴨ロースト等、見た目も上品な出汁をうまく使った味わいとなっています。

店名の「五」はそばの色から名付けられているそうです。(花の白、茎の赤、芽の黄、葉の緑、実の黒の五つの色)  

 大徳寺のとなりで、気軽に高級料亭の味
 大徳寺のとなりで、気軽に高級料亭の味

1-7.大徳寺一口メモ

大徳寺は多くの著名な作家が訪れ、作品に感想を書き記しているので、一読すると、大徳寺の印象が深くなるのでおすすめです。

・島崎藤村「京都日記」
・司馬遼太郎「街道をゆく 34 大徳寺散歩、中津・宇佐のみち」
・今東光「お吟さま」
・室生犀星「京洛日記」
・有吉佐和子「古寺巡礼京都 〈16〉 大徳寺」など

2.東山三十六峰

京都における東山は昔から歌などで多く語られ、京都の人々に親しまれています。

東山三十六峰とよくいわれますが、明確には決まっていないそうです。具体的には、京都と滋賀の府県境の比叡山から伏見稲荷山上の稲荷山までの36の山を指すといわれ、山麓には京都を象徴する寺社があります。

今回は東山の山上にある寺院とその途中にある神社を紹介します。

2-1.東山ドライブウェイにいきましょう

・青不動(青不動明王二童子像) 

香淳皇后の弟宮が門主をつとめた青蓮院の飛び地、東山ドライブウェイの頂上、将軍塚龍殿に安置されています。

ご神体の色が青黒なことから通称「青不動」と呼ばれ、高野山の赤不動・三井寺の黄不動と共に日本三大不動画として有名です。国宝に指定されており、正式名称は青不動明王二童子像で、平安時代11世紀頃の作といわれています。

朱(あか)く激しく燃え盛り、揺れ動く炎が描かれ、その中央に剣と絹索を持ち、岩座に座り、忿怒の相で煩悩を焼き尽くす不動明王の気迫が観るものを圧倒します。

大きさは縦203㎝、横149㎝で日本仏教絵画史の最高傑作のひとつといわれています。2014年(平成26年)に青龍殿の落慶法要が行われた際に3ヵ月間御開帳されましたが、現在は奥殿に安置され、精巧なレプリカが手前に祀られおり、それを参拝することになっています。

青龍殿には、清水寺の舞台の4.6倍の広さ(延面積:1046㎡)の木造の大舞台が設けられており、眼下に京都市内が一望でき、すばらしい眺めが堪能できます。

青不動(青不動明王二童子像) 
青不動(青不動明王二童子像) 

・ 日向大神宮|京都で伊勢神宮参拝

日向大神宮

創建は第23代顕宗天皇の時代で5世紀頃といわれています。京都で最も古い神社といわれていて、内宮と外宮のほか、伊勢神宮にある神社がいくつもあり、伊勢神宮の代参として人気を集めています。

また、天の岩戸もあり、少し狭い穴をくぐりぬけると厄払いができる、少し変わった神社です。住所は山科区日ノ岡で、地下鉄の蹴上駅から歩いて15分の上り坂です。

車で行くと、東山ドライブウェイの入り口をすぐに鋭角に曲がり登るのですが、道路が狭く行き違いが大変です。でも、行ってみる価値はありますよ。

2-2.電車の中から紅葉狩り

京都は紅葉の季節に変わると、多くの社寺が紅葉の名所になり、どこに行けばいいか迷ってしまいます。そこで、少し変わった電車の中からの紅葉狩りをおすすめします。

・叡山電車の「もみじのトンネル」

京阪電車の出町柳駅と連絡している叡山電車の出町柳駅から鞍馬線に乗車すると、楽しむことができます。

2022年11月5日(土)~27日(日)の期間に、市原~二ノ瀬間にある「もみじのトンネル」で徐行運転が行われます。夜間はライトアップもしますので、より美しい紅葉を鑑賞することができます。

また、同期間に、沿線の貴船神社周辺でも夜間に第20回「京の奥座敷・貴船もみじ灯篭」が開催されるので、あわせて楽しまれるのはいかがでしょうか。

・鞍馬寺門前のそば、甘味の店

叡山電車鞍馬線の終点の駅が鞍馬駅です。義経、弁慶で名が知られている鞍馬寺の門前に、精進料理・そば・甘味の店「雍州路 」(ようしゅうじ)があります。

ごま豆腐や山菜などの精進料理や食用菊、きんぴら、白菜巻きなど七つの薬味で楽しむ名物そば「雲珠そば」、わらび餅もあり、旅の一休みに使えるお店です。

・鞍馬寺には日本一短い鉄道があります

鞍馬寺に参拝される際に、鞍馬山鋼索鉄道(くらまやまこうさくてつどう)という日本で一番短い鉄道のケーブルカーに乗車するのも一興です。

始発の山門駅から高低差90メートル、距離200メートルほどの区間をわずか2分で終点の多宝塔駅に到着します。

おわりに

観光客の混雑から少し抜け出した京都のおすすめスポットをご紹介しました。ぜひ立ち寄ってみてはいかがでしょうか。