今の時代、セルフネグレクトに陥る人は決して珍しくありません。家族や知り合いで心当たりがあるという方も多いのではないでしょうか?本記事では、セルフネグレクトの特徴や原因、対処法などを説明します。セルフネグレクトの予防法についてもまとめています。セルフネグレクトが心配な方や、家族のことで悩んでいる方は、本記事を参考に対策を考えてみてください。
- セルフネグレクトとは、自分に関心がなくなり、健康面や社会生活に影響が出ている状態
- セルフネグレクトは身体機能の低下や人間関係の希薄化が原因で起こるほか、貧困や虐待が原因になっていることもある
- セルフネグレクトになったときには、家族などのサポート以外に、地域包括支援センターへの相談、各種のサービスの活用も有効
- セルフネグレクトを予防するには、ひとりにさせない、ならないことが大事
セルフネグレクトとは?リスクや注意すべき年代を解説
「セルフネグレクト」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?「セルフ」とは「自分」のこと、「ネグレクト」は「無視する」とか「世話を怠る」という意味です。セルフネグレクトとは、自分に関心がなくなった状態であると定義されます。
自分に関心がなくなれば、自分のケアができなくなってしまいます。食事をしたりお風呂に入ったりすることも、どうでも良くなってくるでしょう。日常生活を当たり前に送ることが困難になってしまうのです。
セルフネグレクトの背景には、うつ病などの精神疾患があることも多くなっています。いくつもの原因が重なって起こることもあり、解決しづらいこともあります。
家族や友人から孤立するリスクがある
セルフネグレクトのリスクとして、社会的に孤立してしまうことがあります。外に出かけることも、人と話すこともなくなってしまうと、だんだん他人とかかわることのハードルが高くなってしまうでしょう。
食事、洗濯、掃除などに関心がなくなれば、身だしなみを整えることができなくなります。そして、ますます家族や友人が離れていくという悪循環に陥ってしまうのです。
高齢者だけでなく若者~中年まで注意が必要
セルフネグレクトになるのは、ひとり暮らしの高齢者が多くなっています。家族がおらず働いていない高齢者は、社会とのかかわりが少なくなってしまいます。体力的にも衰えてくるため、外に出ようという気力がなくなり、孤立してしまいがちなのです。
しかし、セルフネグレクトは高齢者だけの問題ではありません。若者であれ中年であれ、生きる気力をなくしてセルフネグレクトに陥る可能性はあります。年齢に関係なく、注意しておかなければならない問題です。
セルフネグレクトの3つの特徴
セルフネグレクトになると、自分に関心がなくなって、日常生活をこなす気力がなくなります。とはいえ、具体的にどのような状態になってしまうのか想像できないかもしれません。
ここでは、セルフネグレクトにありがちな3つの特徴を説明します。
衛生状態が悪化する
セルフネグレクト状態になると、自分の身体を清潔に保つことができなくなってしまいます。衛生状態が悪化することは、セルフネグレクトの大きな特徴です。
自分をケアする意識がなくなれば、お風呂に入る気も当然起こらないでしょう。入浴しなければ、日々の汗や汚れを落とすことができません。その結果、どんどん不潔な状態になってしまいます。
さらに、家から出ることがなければ、着替えもあまりしなくなります。セルフネグレクトになると、身だしなみが乱れてしまうのです。
自分の健康管理ができない
セルフネグレクト状態になると、自分の健康に関心がなくなります。生きていくためには、食事をして栄養を摂らなければなりません。しかし、そもそも生きる気力がないので、食事などどうでもよくなるのです。
病気で治療中の方も、病気を治したいという意識がなくなり、治療を中断してしまうことがあります。服薬をやめてしまうこともあるでしょう。このようにして、病気も悪化することが多くなります。
家の掃除・片づけができない
セルフネグレクトに陥ると、家をきれいにしておくこともできなくなります。自分の身の周りを片付けることができず、部屋が散らかったままになってしまいます。掃除もせず、ゴミを捨てることもできなければ、家はゴミ屋敷状態になってしまうでしょう。
ひとたび家をゴミ屋敷にしてしまうと、自分の家だけの問題ではなくなります。悪臭が発生したり害虫がわいたりして、近隣に迷惑をかけてしまうことも多いからです。近所から苦情が出て、近隣トラブルに発展する可能性もあるでしょう。
セルフネグレクトになる5つの原因
セルフネグレクトになるには、さまざまな原因が考えられます。今は関係ないと思っている方でも、自分や家族がセルフネグレクト状態になってしまうリスクがないわけではありません。ここからは、セルフネグレクトの主な原因を5つ挙げてみます。
身体機能・判断力の低下
普通の生活を送りたいと思っていても、身体機能が低下すれば、それが叶わなくなります。思うとおり身体が動かなくなれば、日常生活に対する意欲もだんだんなくなっていくでしょう。
身体機能の低下は、事故や病気により起こることもありますが、加齢が原因になることもあります。加齢は避けられません。ネグレクト状態を引き起こさないように注意が必要です。
加齢によって判断能力が低下し、認知症になってしまうこともあります。認知症がセルフネグレクトを引き起こすことも多くなっています。
社会・人間関係の希薄化
社会との接点がなくなり、人間関係が希薄になると、セルフネグレクトが進行する可能性が高くなります。特に高齢者は、定年退職や配偶者との死別、熟年離婚などにより、突然人とのかかわりが少なくなってしまうことがあります。
人間は、社会とつながりを持つことで、生きがいを感じることができます。社会との接点がなくなって孤立すれば、生きる気力がなくなっても不思議ではないのです。
経済的な困窮
貧困からセルフネグレクト状態に陥ることも多くなっています。経済的に困窮すれば、自分のために食品や日用品を購入する意欲も低下するでしょう。金銭管理ができず、必要な支払いもできなくなってしまいます。
医療費が払えなければ、体調が悪くても病院へ行けません。高齢者は国民健康保険に加入しているケースが多いですが、国民健康保険料が未納ならば、病院へ行っても全額自己負担になります。こうしたことから、病気やケガを放置してしまうことがあるのです。
家族から受けている虐待
家族からの身体的・精神的虐待が原因でセルフネグレクトになるケースもあります。身近な人から日常的に暴力、暴言を受けていると、だんだん「自分は生きている価値がない」と思うようになります。こうしたところから、セルフネグレクトになる可能性があるのです。
家族から虐待を受けている場合、周囲に助けを求められないことも多いでしょう。誰にも気づかれないまま、セルフネグレクトが進行してしまうことがあります。
原因がわからない
セルフネグレクト状態になっていても、必ずしも原因がはっきりしているとは限りません。原因については、本人も思い当たるふしがないことがあります。セルフネグレクトについては、まだ不明点も多くなっています。
セルフネグレクト状態になっても、早めに対処すれば、問題はそれほど深刻化しません。誰もがセルフネグレクトになる可能性があることを知っておき、問題が起こったときすぐに対処できるようにしておくことが大切です。
セルフネグレクトに気づくためのチェックリスト
ここまでを読んで、自分や家族がセルフネグレクトではないかと思った方や、セルフネグレクトになりかかっていると思った方もいらっしゃるかもしれません。
ここでは、セルフネグレクトに気づくためのチェックリストを作ってみましたので、チェックしてみてください。あてはまるものの数が多いほどセルフネグレクトの可能性が高いので、注意しておきましょう。
- ゴミが捨てられずに溜め込んでいる
- いつも同じ服を着ている
- 服が汚れているのに着替えない
- ごはんを食べない
- 栄養を考えずお菓子やインスタント食品だけを食べる
- 何日もお風呂に入らない
- 歯磨きをしない
- 散髪しない
- ひげを剃らない
- 爪を切らない
- 失禁しても放置している
- 病気の治療を拒否する
- 処方された薬を飲まない
- 他人と関わることを嫌がる
- 窓や壁に穴が開いていてもそのままにしている
- 介護サービスを拒否する
- 郵便物を確認しない
- 金銭管理ができず家賃や公共料金を滞納している
セルフネグレクトの治療・対処法
セルフネグレクトは、放置しておくと進行してしまう可能性があります。家族など身近な方がセルフネグレクトと疑われるときには、どのようにすればよいのでしょうか?セルフネグレクトの治し方や対処法について知っておきましょう。
本人の気持ちや考えを聞く
セルフネグレクト状態の方は、他人とのかかわりを拒むケースが多くなっています。しかし、誰とも話さなければ、本人もどうしたらよいのかますますわからなくなります。まずは、身近な方が本人の気持ちや考えを聞けないか試してみましょう。
セルフネグレクトになると、他人に対して心を閉ざしているので、簡単には話してくれないかもしれません。まずは、話しやすい雰囲気や、本人が心を開いてくれる工夫が必要です。本人を否定するのではなく、本人の気持ちを理解し、認めることを意識しましょう。
地域のサポートを活用する
セルフネグレクトの場合、周りからの支援を拒む方も多くなっています。公的な相談窓口も活用しましょう。セルフネグレクトの相談ができる窓口として、地域包括支援センターがあります。
地域包括支援センターとは、主に高齢者の生活を支援するために、健康面や生活全般の相談を受け付けている総合的な相談窓口です。誰でも無料で相談できるので、困ったときにはぜひ活用しましょう。
介護サービスを有効に利用する
自分で身のまわりのことができなくなっている場合、介護サービスを受ける方法があります。介護認定を受ければ、介護保険により、訪問介護、デイサービス、訪問入浴などのサービスが受けられます。介護認定が受けられないか、地域包括支援センターなどで相談してみましょう。
介護認定を受けていない高齢者であっても、高齢者住宅などの施設を利用することは可能です。栄養のある食事をとったり他の高齢者と交流したりすれば、セルフネグレクトから抜け出せる可能性は高いでしょう。
部屋を片付ける
部屋が散らかっていれば、生きる気力もわいてきません。セルフネグレクトから脱出するために、家がゴミ屋敷状態なら、まず部屋を片付けるところから始めましょう。
家族や親族で片付ければ、費用はかからないかもしれません。しかし、自分たちだけの力では無理なケースもあります。ゴミ屋敷の片付けや不用品回収を行ってくれる専門業者に依頼することも検討しましょう。
家事代行をプロに依頼する
家事が大変な場合には、家事代行サービスに依頼することで、身のまわりを整えることができます。また、「自宅をきれいに整理したい」「重い荷物を自分で運べないので手伝ってほしい」という方は、家財整理などのサービスを利用するのがおすすめです。
高齢になってからは、家の中の大掛かりな片付けは大変で、なかなか取り組めないでしょう。家に物が増えてゴミ屋敷状態になってしまうと、想定外の金額がかかってしまいます。早めに片付けてもらえば、余計な費用もかかりません。
くらしのセゾンが提供する「遺品整理・生前整理」サービスは、幅広い家財整理に対応しています。片付けができなくて困っている場合には、ぜひ相談してみてください。
適切な治療を受けられるようにサポートする
認知症や精神疾患があると、セルフネグレクトになるケースがあります。病気が疑われる場合、医療機関の受診に付き添うなどして、病気の治療を受けられるようにサポートすることも必要です。
セルフネグレクトを予防するためにできること
セルフネグレクトは何より予防することが大事です。セルフネグレクトを予防するためにできることを知っておきましょう。
本人が辛いことを我慢せず、本音を話せる環境をつくる
自分の気持ちを話せる場が全くなければ、本人はだんだん心を閉ざすことになり、やがて日常生活を送る気力を失ってしまいます。家族など身近な方は、本人が辛いことを我慢せずに、本音を話せるような環境づくりを心がけましょう。
セルフネグレクトが進行する前に、カウンセラーなどに相談できれば、改善することがあります。本人が相談に行けるようなサポートも考えましょう。
周りが気づきやすい環境をつくる
孤独な生活がセルフネグレクトを引き起こします。セルフネグレクトを予防するには、ひとりにさせない、ひとりにならないことが大事です。社会とのかかわりをつくることを意識しましょう。
ひとり暮らしの場合は気づいてもらうための仕組みをつくっておくことも必要です。見守りサービスなどの利用を考えましょう。
おわりに
セルフネグレクトとは、自分に関心がなくなり、日常生活を送る意欲がなくなってしまう状態です。高齢化が進んでひとり暮らしの高齢者が増えたこともあり、セルフネグレクトのリスクを抱えた方も増えています。
まずは身近な人が孤立しないよう、見守るようにしましょう。セルフネグレクトが疑われる場合には、本人にはどうしようもないことがあるため、サポートが必要です。相談窓口や役立つサービスについてもチェックしておきましょう。