ご自身の家もしくはご実家を処分し、新しい家に住み替えることを家じまいといいます。その家にご自身以外は住む予定がなかったり、住み替えたほうが快適だったりする場合は、家じまいを検討すべきでしょう。家の処分と引っ越しという手間と費用がかかる作業を一気に進める必要があるので、失敗なく進めたいところです。この記事では、家じまいを検討している方のために、具体的にやるべきことと注意点を詳しく解説します。
この記事を読んでわかること
1.先を見据えて行う「家じまい」

そもそも、家じまいは具体的に何をするのかわからないという方もいらっしゃるかもしれません。ここでは、家じまいの基本的な意味や行う理由、家じまいをした後の生活について詳しく解説します。
1-1.家じまいとはどんな意味?
家じまいとは、基本的にはご自身の代で家を処分し、新しい家に住み替えることです。しかし、家じまいをする理由を基準にすると、以下のようにさらに細かく区分できます。
- 終活の一環としてご自身の暮らしている家を処分するケース
- ご家族が亡くなったなどの理由によりどなたも住まない実家を処分するケース
いわゆる「実家じまい」も含まれると考えましょう。
1-2.家じまいをする理由は?
家じまいをする理由はそれぞれに異なります。ここでは、一般的な理由として考えられるものとして、以下の4つを紹介します。
- 家を引き継ぐ人がいない
- 住みにくさを感じている
- 空き家トラブルが発生する可能性がある
- 固定資産税等の費用も引き続き必要になる
・家を引き継ぐ人がいない
現時点でどなたも住んでいない、もしくは住まなくなることが予想される場合、家じまいを検討しなくてはいけません。お子さんが遠方にお住まいのため管理できなかったり、利便性向上のために戸建てからマンションの住み替えを検討なさったりしている場合も、家じまいが選択肢に入ります。
加えて、ご本人が亡くなったあとのお子さんの負担を考えて家じまいを行う方も珍しくありません。家も相続財産に含まれる以上、ご家族の誰かが引き継ぐことになります。引き継いだとしても住む予定がなければ、最終的には引き継いだご家族が処分しなくてはいけません。
・住みにくさを感じている
住みにくさを感じたという理由で家じまいを選択する方もいます。古い建物の場合、玄関や室内の段差が大きいなど、バリアフリー対応でないことが多いです。
また、建物が古くなると、耐震性能に問題が出てきます。安全面・利便性の面から、古い家に住み続けることが適当でない場合、家じまいをして快適な場所に移り住むことも視野に入れましょう。
・空き家トラブルが発生する可能性がある
どなたも住まない家を空き家のままにしておくのは避けましょう。倒壊したり、木が生い茂って景観が悪化したり、不審者が侵入したりなどのトラブルにつながります。近所に住んでいる方にも迷惑がかかるので、注意が必要です。
・固定資産税等の費用も引き続き必要になる
どなたも住んでいない家であっても、所有権がある以上は固定資産税等の費用も引き続き払わなくてはいけません。長期的にはかなりの出費になるため、家じまいをすることで大幅に費用を節約できます。
1-3.家じまい後の生活は?
家じまいをした後どこで暮らすかは、個々のケースによって異なります。考えられるパターンは以下のとおりです。
- 賃貸マンションへ住み替える
- 施設に入所する
- 二世帯住宅にしてお子さんのご家族と同居する
2.家じまいの手順5ステップ

家じまいの基本的な流れは以下のとおりです。
- 引っ越し先と暮らし方を決める
- 引空き家の処分方法を決める
- 荷物を整理する
- 新しい住まいに引っ越す
- 家を処分する
それぞれのステップにおいてやるべきことを解説します。
2-1.引っ越し先と暮らし方を決める
ご自宅の家じまいをするにあたっては、最初に「家じまい後はどこで、どういう暮らしをするか」を考えましょう。
以下の暮らし方が選択肢として考えられます。
- 賃貸アパート・マンションで暮らす
- 高齢者施設に入居する
- お子さんなど他のご家族と同居・近居する
ご自身の年齢や健康状態なども加味し、無理のない形で決めましょう。
2-2.家の処分方法を決める
そのままの状態で売却する、解体して土地を売却する、解体後に土地を保有するなどの選択肢がある。
家じまい後の暮らし方が決まったら、次は処分方法を決めなくてはいけません。以下の方法が選択肢として考えられます。
- そのままの状態で売却する
- 家を解体して土地を活用する
- 家を解体して土地を売却する
・そのままの状態で売却する
家を解体せず、そのままの状態で売却してもかまいません。ご自身で買い手を探すこともできますが、手間を考えると不動産会社に依頼するのがおすすめです。
依頼すれば、チラシの印刷やWEBサイトへの掲載などの広告・販売活動をしてくれます。不動産会社が買い取る場合を除いて仲介手数料が必要になるため、事前に見積もりを取ってもらいましょう。
・家を解体して土地を活用する
家を解体して土地を活用するのも選択肢のひとつです。土地活用とは「土地を何らかの目的で利用してもらうために貸して、賃料を受け取る」ことと考えましょう。
ただし、土地がある場所によっては利用できない活用法もあるため事前に確認しましょう。
・家を解体して土地を売却する
家が老朽化している場合は、解体も選択肢に入れましょう。ただし、解体・整地費用がかかるため、まとまったお金を用意しておく必要があります。複数の解体業者から見積もりを取り、どこに依頼するかを決めましょう。
2-3.荷物を整理する
引っ越しをすることになる以上、荷物の整理も重要です。まずは貴重品が含まれていないか確認してから荷物の整理を行いましょう。ただし、長年暮らしてきた家の場合、子育てをしていた時期のものも含めると、想像以上に荷物が多くなっているかもしれません。
自宅・実家のどちらを整理する場合であっても、負担に感じたならご自身で進めるのではなく、専門会社に依頼するのもおすすめです。
くらしのセゾンでは、遺品整理・生前整理のお手伝いも行っております。遺品整理のエキスパート「遺品整理士」が心を込めてサポートします。生前整理・空家整理・リフォームなど幅広い家財管理に対応しております。調査・お見積りは無料対応なので、まずは一度ご相談ください。
2-4.新しい住まいに引っ越す

荷物が片付いたら引っ越しをします。ご自身で進めることも可能ですが、引っ越し会社に頼んでも問題ありません。
なお、引っ越し会社に依頼する場合は「何をどこまでやってもらうか」を明確にしましょう。やってもらうことが多ければ多いほど、料金も高くなるからです。ご自身の負担の軽減と予算のバランスを考え、依頼内容を決めましょう。
2-5.家を処分する
引っ越しが完了したら家を処分します。
いずれの方法を取る場合でも、不動産会社に依頼するとスムーズに進められます。重要なのは、信頼できる不動産会社を選ぶことです。以下のポイントに着目してみましょう。
- 物件があるエリアの不動産会社を選ぶ
- 担当者の対応をチェックする
- 不動産業の免許を確認する
なお、担当者の対応をチェックするには、以下の点を参考にしてください。
- できるだけ専門用語を使わず、誰にでも理解できるようなやさしい言葉に置き換えて話をしてくれるか
- こちらの希望を把握して真剣に考えてくれるか
- 話をはぐらかしたり、ぼかしたりしないか
3.家じまいの費用相場を知っておこう

家じまいをするには費用がかかります。
実際の費用は家の広さや何をするかによっても異なりますが、一般的な広さ(30坪程度)の一軒家を想定し、費用の一例を示しました。
項目 | 費用 |
転居費用(引っ越し業者) | 7万円~(季節・荷物量による) |
荷物整理の費用(不用品回収業者) | 30万円~ |
荷物整理の費用(自分ですべて荷物整理した場合) | ~数万円(粗大ゴミ、家電リサイクル費用) |
解体工事費用(解体業者) | 60~180万円(構造による) |
不動産売却に関する費用 ・仲介手数料(不動産業者) | 上限:売買価格の5%以内(売買価格により変動) |
印紙税 | 5000円~1万円 |
測量費 | 40万円前後 |
譲渡所得税 | <保有期間5年以下> 税額=課税短期譲渡所得金額×30%(住民税9%) <保有期間5年超> 税額=課税長期譲渡所得金額×15%(住民税5%) |
参照元:ReLIFE|実家の家じまいで失敗しない進め方|後悔しないコツ
4.家じまいをする際に注意したいポイント

家じまいはご自身以外のご家族にも影響する話である以上、慎重に進めるのが重要です。以下のポイントを意識しましょう。
- 家族と話し合って決める
- 転居先は慎重に決める
- かかる費用を把握しておく
- 時間に余裕を持って家じまいに取り掛かる
4-1.家族と話し合って決める
家じまいに先立ち、他のご家族にもその旨を伝え、進め方を話し合いましょう。
家じまいをすると実家がなくなる以上、昔使っていたものなどを独断で処分してしまうとトラブルにつながることがあります。ご自身にとっては思い入れがなくても、他のご家族にとっては大切なものだったりすることがあるためです。
処分して問題がないもの、取っておいてほしいものなど、家じまいをするにあたってのルールを決めておきましょう。最初からすべてのケースを網羅できない場合は、都度話し合いをすることも重要です。
4-2.転居先は慎重に決める
転居先は慎重に決めましょう。家じまいにあたって住み替える場合、そこが終の棲家になる可能性も出てきます。引っ越したものの、不満の残る生活になったということがないよう「ここでなら暮らせそうか」を踏まえてリサーチをしてください。
4-3.かかる費用を把握しておく
家じまいにあたり、どのぐらいの費用がかかるかを計算しておきましょう。ご自身ですべて対応するのが難しい場合は、専門業者に依頼することになるため、その分の費用も確保しなくてはいけません。
また、家や土地が売れるまでは、固定資産税を払い続ける必要があります。その分も必要経費として織り込んでおきましょう。
4-4.時間に余裕を持って家じまいに取り掛かる
家じまいは時間に余裕を持って取り掛かりましょう。「何歳までに済まさないといけない」という決まりはありませんが、高齢になるほど体力的に厳しくなるので、早めに済ますのがベターです。また、引っ越し先がなかなか決まらないこともあるので、スケジュールには余裕を持ちましょう。
おわりに
家じまいをせずにご自身に万が一のことが起きた場合、遺されたご家族がやらなくてはいけないことが大幅に増えてしまいます。ご家族の負担を減らすためにも、家じまいの必要性を感じたら少しずつ動き始めてみましょう。また、ご自身だけでの対応が難しいなら、プロに頼るのも効果的です。実際に依頼をしなくても、相談するだけでも十分参考になるでしょう。