離れて暮らしているご家族がいらっしゃる場合、家がゴミ屋敷にならないよう注意が必要です。身体の衰えや病気が原因でゴミが捨てられなくなることは誰にでも起きます。亡くなったご家族の家がゴミ屋敷になっていた場合は、気を引き締めて片付けないと長期間解決できないかもしれません。今回のコラムでは、ゴミ屋敷の片付け、遺品整理を検討している方に向けて、成功させるためのポイントを解説します。
この記事を読んでわかること
- 高齢者の場合、心身機能の衰えや認知症などの疾患、捨てられない価値観が災いして自宅がゴミ屋敷になりがち
- ゴミ屋敷になっていた家を整理する場合は、リーダーを立ててスケジューリングが必要
- 家自体が広かったり、害虫駆除や特殊清掃が必要だったりする場合はプロに依頼を
- ゴミ屋敷の整理や遺品の買い取りもできる遺品整理会社に頼むのが良い
なぜゴミ屋敷と化してしまうのか?
最初に、なぜ高齢者の自宅がゴミ屋敷になりがちなのか、考えられる理由を解説します。
年齢を重ねると心身機能が低下し、こまめに掃除できるだけの体力がなくなってしまうのがひとつの理由です。認知症、セルフネグレクト、ためこみ症などの疾患が原因になっているケースもあります。また、身体状況が普通だったとしても、ものを捨てられない価値観が災いすることも考えられます。過去の思い出の品や家族の生活用品が増えてしまい、捨てられずに残っていることは珍しくありません。
ゴミ屋敷状態の部屋の遺品整理をする手順
亡くなった方の自宅がゴミ屋敷状態だった場合、スムーズに遺品整理はできません。以下のように、段階を踏んで片付けていく必要があります。
- 遺品整理のリーダーとスケジュールを決める
- 遺品整理・片付けに必要なものを準備する
- 残しておくもの・リサイクルに出すもの・処分するものに仕分ける
- ゴミを処分する
- 部屋を掃除する
①遺品整理のリーダーとスケジュールを決める
最初に、遺品整理のリーダーとスケジュールを決めましょう。遺品整理は亡くなった方(被相続人)の財産の処分にあたる以上、相続の意志がある方全員で進めなくてはいけません。
その際、誰が中心になって進めて行くかを決めておくとスムーズに作業ができます。「●月●日までに作業を終わらせる」と決め、そこから逆算していつ何をするか、計画を立てましょう。
②遺品整理・片付けに必要なものを準備する
遺品整理は大規模な片付けでもあるため、相応の道具を用意して臨む必要があります。一般的に必要になるものは以下のとおりです。
- ゴミ袋
- マスク
- エプロン
- ゴーグル
- 軍手
- 作業靴
- 掃除用具
- 洗剤・殺虫剤
- ダンボール
- ひもやガムテープ
③残しておくもの・リサイクルに出すもの・処分するものに仕分ける
亡くなった方の所有物の仕分けも必要です。形見分けする品や相続財産、貴重品などは残し、その他のものは処分するか残すかを決めて分けましょう。処分すべきか判断に迷った場合は、一度保留にして構いません。
仕分けの例を表にまとめましたが、実際の扱いはその場で他のご家族・ご親族とも話し合いながら決めましょう。
残しておくもの・貴重品 | リサイクルに出すもの | 処分するもの |
預貯金の通帳 | テレビ | 生ゴミ |
印鑑 | エアコン | 紙くず |
クレジットカード・有価証券 | 冷蔵庫 | ペットボトル |
契約書類 | 洗濯機 | カン・ビン |
身分証明書・健康保険証 | パソコン | 新聞紙・雑誌 |
宝飾品 | 衣類 | ガラス |
手紙・写真 | タンス | 粗大ゴミ |
子どもの成績表・賞状 | 書籍 |
④ゴミを処分する
処分するものをまとめられたら、ゴミとして出します。可燃ごみや不燃ごみ、粗大ごみは自治体の規定に従って処分しましょう。あまりに量が多い場合は、地域の清掃センターに持ち込むのもひとつの方法です。
また、家電は家電量販店に引き取ってもらいましょう。家電リサイクル法との関連で、ゴミ捨て場に出しても回収してもらえません。
⑤部屋を掃除する
ゴミの処分が一段落したら、部屋を掃除します。掃除機をかけたり、床を水拭きしたり、窓を拭いたりするなどの一般的な作業をしましょう。また、虫が出てこないよう、タイミングを見て燻蒸型の殺虫剤を使うのも効果的です。
最後に忘れ物がないか確認すれば終了です。
ゴミ屋敷での遺品整理・片付けをスムーズに進めるポイント
ゴミ屋敷での遺品整理や片付けをスムーズにするためのポイントとして、以下の4つを紹介します。
- 残すものの優先順位を考えておく
- 不用品の処分方法を確認しておく
- 片付ける部屋の順番を決めておく
- まずは足場を確保してから進める
残すものの優先順位を考えておく
遺品整理をする際は、残すものの優先順位を考えておきましょう。「基本的に捨てるもの」「あとで取捨選択するもの」「絶対に残すもの」程度の大まかな分類で良いので、最初に決めておくとスムーズに進みます。
そうはいっても、思い入れのあるものを捨てることに抵抗を覚える方もいらっしゃるかもしれません。思い入れがあって捨てられない品は一度保留にしておき、最後に取捨選択をしましょう。
不用品の処分方法を確認しておく
不用品の処分方法を確認しておくのも重要です。ゴミの収集日や粗大ごみの捨て方など、基本的なルールを確認しておきましょう。
実際のところ、地方自治体によって、ゴミ捨てのルールはかなり異なります。他の地方自治体に比べ細かい分別が必要だったり、指定されたゴミ袋以外は使えなかったりすることもあるため、注意が必要です。
片付ける部屋の順番を決めておく
複数の部屋がある家を片付ける場合は、どの部屋から片付けるのか順番を決めましょう。その時に意識したいのは「ものを外に出しやすいか」です。おすすめの順番を紹介します。
- 玄関
- リビング
- 各部屋
- トイレ
- キッチン
- 洗面所
キッチンや洗面所は他の場所を掃除する際に水をくむこともあるため、最初に掃除しても汚れてしまいがちです。また、トイレは作業中に使う可能性があります。このような事情を考えると、なるべく後回しにしたほうが良いでしょう。
まずは足場を確保してから進める
家がゴミ屋敷状態になってしまっている場合は、最初に足場を確保してから進めましょう。足元がゴミだらけだと危険なものを踏んでしまったり、作業中に足を滑らせたりなど非常に危険です。状況次第では安全靴を履いて、足元を保護しながら進めましょう。
遺品整理やゴミ屋敷の片付けをプロに依頼する判断基準
遺品整理やゴミ屋敷の片付けは、ご自身や家族だけで行うには限界があります。ご自身や家族での対応が難しい場合、プロに依頼したほうが手間は省けますが、具体的にどのような状態なら依頼すべきかを解説しましょう。
- 電気や水回りが機能していない
- 3DK以上の広さがある
- 害虫が大量に発生している
- 貴重品が見つからない
- 特殊清掃の必要もある
電気や水回りが機能していない
電気や水回りが機能していない場合は、プロに頼むことを検討します。水道から水が出なかったり、電気がつかなかったりした場合にできることはほとんどありません。ご自身や家族だけで進めるのは難しいので、プロに依頼したほうが無難です。
3DK以上の広さがある
掃除するのが3DK以上の広さがあるマンションや一軒家だった場合も、プロに頼むことを検討しましょう。部屋数が多く、広い家の場合、それだけ掃除しなくてはいけないスペースは増えます。ご自身や家族だけでは長時間かかっても終わらない可能性が高いです。
害虫が大量に発生している
家に害虫が大量に発生している場合、そのまま入って掃除するのはやめましょう。害虫に刺されたり、感染症にかかったりなどのトラブルにもつながります。また、知識がない状態で道具を買い込んで対応したとしても、根本的な解決はできません。家庭用よりはるかに強い業務用の薬剤で燻蒸処置を行うなど特殊な工程が必要になるので、プロに頼むほうが無難です。
貴重品が見つからない
貴重品が見つからない場合も、プロに相談します。通帳や印鑑など貴重品が見つからない場合、遺品整理会社に依頼すると捜索も行ってくれます。経験・実績の豊富な会社であれば「このあたりに隠されていることが多い」など、捜索のポイントを心得ているので、短時間で見つかるかもしれません。
特殊清掃の必要もある
特殊清掃とは、事件や事故、自殺等の変死や孤独死により遺体の発見が遅れた場合に、遺体の腐敗・腐乱によって部屋に生じた汚れを除去する業務を指します。亡くなった方の血液・体液や害虫などの汚れ、異臭が残っている場合、一般的な掃除では除去できません。
また、ノウハウがない状態で手当たり次第に掃除しても汚れを落とせないばかりか、感染症などの事故にもつながります。次亜塩素酸ナトリウムなどの薬剤や洗剤を使った清掃が必要になるため、プロに依頼しましょう。
プロによる遺品整理やゴミ屋敷の片付けを安くする方法
ゴミ屋敷の掃除や遺品整理をプロに依頼した場合の相場は以下のとおりです。
部屋の広さ(作業員数) | 費用例(税込) |
1K(作業員2名) | 3万8,500円~ |
1DK(作業員2名) | 6万500円 |
1LDK(作業員3名) | 7万7,000円~ |
2K(作業員3名) | 9万9,000円~ |
2DK(作業員3名) | 12万1,000円~ |
2LDK(作業員4名) | 15万4,000円~ |
3LDK(作業員6名) | 20万9,000円~ |
実際の費用は遺品・家財の量や作業環境によって変わります。
できる限り自分で片付けておく
ゴミ屋敷の掃除や遺品整理は、ものやゴミの量によって料金が変わってきます。それは量が多ければ多いほど、その分作業量も増えるからです。業者が入る前にご自身や家族でできるだけ片付けておくと良いでしょう。
平日を狙って依頼する
可能であれば、遺品整理業者には平日を狙って依頼すると良いでしょう。仕事が休みになる休日や長期連休中は依頼したいと考える方も多くなるので、割高になりがちですが、その分、平日は安くなるので都合がつくのであれば検討しましょう。
買い取りサービスを行っている会社を選ぶ
遺品整理会社を選ぶ際は、買い取りサービスの有無を確認しましょう。ご自身やご家族にとって必要のない遺品であっても、金銭的価値がつくことはあり得ます。しかし、遺品整理が終わった後にご自身や家族でリサイクルショップに持ち込むのも手間がかかるので、なかなかできることではありません。
遺品整理が終わった段階ですぐに買い取ってもらえれば、費用の節約にもなるうえに、処分の手間もかからないので良いことづくめです。
ゴミ屋敷の対応もしている遺品整理会社に依頼する
遺品整理とゴミ屋敷片付けの両方を行いたい場合は、別々に依頼するのではなく、1社ですべて行ってくれる会社を選びましょう。その分、手間と費用が省けます。
遺品整理会社を選ぶ際は「何をどこまでやってくれるか」を基準にしましょう。くらしのセゾンが提供している「くらしのセゾン 遺品整理・生前整理」では、ゴミ屋敷の対応も可能です。退去日まで日数がないなど、難易度の高いケースの実績もあります。
遺品整理士・遺品供養士資格を有するスタッフが、お客さまとコミュニケーションを取りながら真摯に進めていきますので、まずは一度ご相談ください。
おわりに
亡くなった方の自宅がゴミ屋敷になってしまっていた場合は、遺品整理もなかなか進みません。ゴミを捨てるだけで数ヵ月かかり、そこからやっと遺品整理に着手できるというケースも珍しくないでしょう。
害虫が発生していたり、孤独死が起きたりしていた場合、さらに高度な対応が必要になります。ご家族・ご親族の負担を和らげ、事故が起きないようにするためにもプロに頼むのは有効です。「何をどこまで頼みたいか」を明確にしたうえで、実績・経験が豊富で信頼できる会社に頼みましょう。