遺品整理をしようとしている方の中には、親しい方を亡くした悲しみからなかなか遺品に手をつけられないでいる方や、時間が取れずに先延ばししている方も多いでしょう。しかし遺品整理を長期間行わないでいると、思わぬリスクを招くこともあります。本記事では、遺品整理を開始するのに適した時期や遺品整理の進め方についてご紹介します。トラブルになる前にぜひ参考にしてみてください。
この記事を読んでわかること
- 遺品には、故人にゆかりのあるものの他、スマートフォンやパソコンデータといったデジタル遺品も含まれる
- 遺品整理を行う時期に決まりはないが、葬儀後や四十九日のタイミング、相続税の申告前などに行うのが良い
- 遺品整理を進めるときはスケジュールを組み、相続に関わる遺族全員で行うのがベター
- 遺品整理で処分に悩んだ場合はできる限り残しておくと良い
遺品整理とは?
遺品整理とは、亡くなった方の残したものを捨てることや片づけることをいいます。遺品とは、故人が使用していたものや家族のために遺したものなど、故人にゆかりのあるものです。
また、パソコンやスマートフォン、SNSやネット銀行口座などのインターネット上の個人情報はデジタル遺品と呼び、これらも遺品に含まれます。
遺品整理をする間は、故人と再び向き合うことになるため、悲しさを感じてしまいますが、故人の大切にしてきたものを整理し、片づけていく中で、気持ちが整理されていきます。遺品整理は、故人とのお別れができる良い機会になるため、大切な作業にといえるでしょう。
遺品整理を開始する時期やベストなタイミングは?
遺品整理の開始時期や、期限についての決まりは特にありません。そのため、ご遺族の気持ちが落ち着いた時期や、時間的な余裕があるタイミングを見計らって手をつけることが大切です。ちなみに、以下のようなタイミングで行うと区切りが良く、さまざまなメリットもあります。
葬儀を終えた後
ひとりで遺産整理をして、万が一他の遺族にとって大切なものを処分してしまった場合、トラブルになりかねません。葬儀を終えた後であれば、遺族が集まっている状態で話し合いながら遺品整理を実施できます。
特に遠方に住んでいる遺族が多い場合は、葬儀後に行うことが適しているでしょう。もしも葬儀のタイミングで遺品整理をする時間を確保できそうにない場合は、いつどのように遺品整理を進めるか、話し合いだけでもしておくと、相続トラブルの予防になるでしょう。
故人に関するさまざまな手続きを終えた後
故人に関するさまざまな手続きが終わった後も、時間や気持ちにも余裕が生まれ、焦らずにゆっくり遺品整理を行えるのでおすすめです。人が亡くなると、死亡届や健康保険証の返納など、多くの手続きに追われます。
これまでの生活で発生していた水道代やガス代の支払いや停止の手続き、またクレジットカードや年金受給に関する手続きなども必要です。これらの手続きがひと段落してから遺品整理を始めると、落ち着いて故人と向き合えるでしょう。
四十九日の法要を終えた後
四十九日後は、一般的に遺品整理を始めやすいといわれる時期です。四十九日法要は、故人の命日から四十九日目に行う法要のことで、仏教では喪に服していた期間を終える日とされています。
四十九日法要後は、上述したような手続きも落ち着いている頃なので、自分たちのペースで遺品整理を行えます。また四十九日法要は、葬儀の際と同様に親族が集まるため、話し合いながら遺品整理でき、トラブルも防げるでしょう。
相続税を申告する前
故人が持っていた生前の財産を正確に把握していない場合は、相続税を申告する前に遺品整理をして確認しましょう。相続税とは、遺産を相続する際に課せられる税金で、死亡を把握した翌日から10ヵ月以内に手続きを行う決まりがあります。
亡くなった後、時間が経過してから遺品整理を始めると、遺品を確認している間に相続税の申告や納税の期限を過ぎてしまう可能性があります。期限が過ぎると、延滞税や無申告加算税などが発生してしまうため、遺品整理は、遅くても7~8ヵ月後までには開始し、相続財産を把握するようにしましょう。
参照元:税務署|相続税のあらまし|P.2
遺品整理の進め方
遺品整理は経験する機会が少なく、どんな流れでどのくらいの時間を要するものなのかわからない方が多いかもしれません。いつ開始したらいいのか判断するためにも、大まかな進め方を紹介していきます。
スケジュールを立てる
遺品整理をするときは、あらかじめ計画を立ててから始めないと、作業の見通しが立たずいつまでも終わらないことがあります。
そのため、遺品の量や片づけに関わる人数から、いつまでにどの作業を終えられるか、具体的な計画を立てましょう。リビングやキッチン回りなど、エリアごとに区切って計画を立てると効率よく進められます。
遺品を類別する
スケジュールを組んだら、遺品を分類していきましょう。遺品は大きく、故人の形見・貴重品・再利用品・廃棄するものの4つに分類すると、遺品整理を進めやすくなります。
故人の形見
故人の形見になるものは、時計や写真、手紙、趣味でコレクションしていたもの、旅行先で購入したものなどがあります。時計やアクセサリーといった資産価値が高そうなものは、財産相続に関わりトラブルになることもあるため、必要に応じて専門家に相談すると良いでしょう。コレクションが多い場合、可能であれば生前から処分方法について本人と話し合っておくことが大切です。
貴重品
貴重品は、通帳やクレジットカード、貴金属、骨董品などの金品だけではなく、パスポートや年金手帳、土地の権利書、有価証券なども含みます。貴金属や骨董品などは、買い取りしてもらうこともでき、売却したお金を遺品整理にかかった費用に充てることが可能です。遺品整理会社の中には買い取りも行っているところがあるため、確認してみましょう。
また宝石などの貴金属類や有価証券、財産として価値のある土地の権利書など、資産価値が高いものは相続財産として扱われる場合もあります。相続税に関わる可能性もあるため、税理士や司法書士などの専門家に相談すると良いでしょう。
再利用品
遺品の中には、冷蔵庫やテレビ、パソコンなどまだ使用できる家電製品や家具、衣類などもあるでしょう。処分しようとすると、通常であれば処分費用が発生しますが、遺品整理会社の中には無料で引き取ってくれるところもあります。ものによっては買い取りをしてくれるケースもあるため、WEBサイトなどで確認してみましょう。
捨てるもの
再利用もできず、遺族のどなたも形見として受け取らないものは、捨てるものに分類しましょう。処分するものの例として、小物家具や使用していた布団、再利用には向いていない家具の他、電球や食器類などがあります。燃えるゴミ、燃えないゴミ、粗大ゴミなど、市町村の分別方法に従って処分しましょう。
遺品整理を適切な時期に行うときのポイント!
処分してもいいものか迷ったり、具体的にいつまでに作業を進めたら良いのか悩んだりしたときには、以下のポイントを参考にしてみてください。
処分に迷ったものは残しておく
処分に迷ったものは、思い出の品も含めて残しておくようにしましょう。故人を亡くした悲しみの中で遺品整理をしていると、正しい判断ができない場合もあります。処分してしまってからでは取り返しがつかないため、できる限り残す選択をしましょう。
また、書類などの紙類は目を通さずに処分しがちですが、中には故人に関わる手続きに必要な書類が紛れ込んでいることがあります。さまざまな手続きが終了するまでは残しておくと安心です。
故人が遺言書を遺しているか確認する
遺品整理を始めるときには、遺言書の有無を確認しましょう。遺言書は、正式な書式や手続きを経て書かれている場合、法的な効力を持ちます。
つまり、遺品の整理や相続についての記載がある場合は、確認し従わなくてはなりません。法的な効力を持たない遺言書でも、何かしら残されている場合はできる限り故人の意思を尊重してあげましょう。
手帳や手紙は残しておく
故人が使用していた手帳や、生前本人に届いた手紙も残しておきましょう。手紙や手帳には、故人と関係があった方の住所や連絡先が記載されていることがあり、亡くなった後の連絡を取る際に役立ちます。
パソコンやスマートフォンなどに残されている電子データも、機器が使用できなくなる前に別のパソコンや紙に移しておくと良いでしょう。
相続人の全員で作業をする
「近くに住んでいる親族に任せよう」「資産などはないから関係ない」などという理由で遺品整理に携わらないと、後々トラブルになる可能性もあります。
実際に、知らない間に思い出の品を処分されてしまったり、遺品整理の際に発生した処分費用の負担を親族間で押しつけあったりするケースもあります。遺品整理をするときは、できるだけ相続人全員が話し合いながら行うようにしましょう。
賃貸物件は家賃が発生する前に退去する
故人が賃貸のアパートやマンションに住んでいた場合は、早めに遺品整理に取りかかり部屋を片づけることが大切です。家主がいなくても、荷物が残っていれば家賃は発生してしまうため、翌月の料金の発生日や契約期間を賃貸借契約書で確認し、その月のうちに退去できるようにしましょう。
ただし、故人が亡くなった後は、葬儀や各種の手続きなどやることがたくさんあります。亡くなったのが月の半ばの場合は焦らず、翌月の退去を目標に遺品整理を進めると良いでしょう。
空き家になる場合も早めに遺品整理をする必要がある
故人がひとり暮らしをしていた場合は、住んでいた家が空き家になってしまうケースもあります。空き家になってしまう場合にも早めの遺品整理が大切です。
その理由は適切に管理していない空き家は、自治体から「特定空家等」に指定されてしまうことがあるためです。特定空家等とは、次のような状態にある家、またはそのような状態になる可能性がある家のことを指します。
- 倒壊などの可能性がある
- 衛生上有害になる可能性がある
- 管理不足で著しく景観を損ねている
- 木の枝の越境などにより周辺の生活環境を乱している
特定空家等に指定され、自治体からの助言や指導及び勧告・命令に従わなかった場合、最大500,000円以下の過料が科せられてしまいます。
またこれまで特例措置を受けて軽減されていた固定資産税が、特例措置を受けられなくなり、6倍にまであがる可能性があります。特定空家等にならないためにも、遺品整理を早めに進め、空き家を売却するのか、賃貸物件にするのかなど検討しましょう。
参照元:政府広報オンライン|年々増え続ける空き家! 空き家にしないためのポイントは?、e-Gov法令検索|空家等対策の推進に関する特別措置法(16条)、空家等対策の推進に関する特別措置法 | e-Gov法令検索(16条)
デジタル遺産の確認も忘れずに行う
遺品整理を行う際には、デジタル遺品も忘れてはいけません。故人がパソコンやスマートフォンを使っていた場合、個人口座を持っていたりデータ内に遺書を残していたりすることもあります。中でも早めに対処しておきたいのが、月額課金が発生するアプリやオンラインゲームなどです。故人が亡くなった後も解約手続きをしなければ料金が発生してしまうため、必ず確認してください。
遺品整理を先延ばしにした場合に考えられるリスクとは
期限がない遺品整理は、いつかやろうと先延ばししてしまう方もいるでしょう。しかし、先延ばしすると、さまざまなリスクが伴います。
例えば、ひとり暮らしをしていた方が亡くなった場合は、ガスや電気の停止手続きを行わずに家電などを放置していると火災につながる恐れがあります。
発生した火災で近隣に被害を及ぼしてしまうと、相続人が損害賠償金を支払うことになってしまうでしょう。また空き家にもかかわらず家具などを残して、住める状態をキープしてしまうと、犯罪者やホームレスに侵入される可能性もあります。
この他、家主がいない家は、通常よりも劣化が進みやすく倒壊する可能性が高まったり、遺族のうちのどなたかが勝手に遺品を持ち出してしまったりするケースもあります。さまざまなリスクを避けるためにも、遺品整理や家の管理は、あまり先延ばししない方が良いでしょう。
急を要する場合は遺品整理会社に依頼するのもおすすめ!
親族が遠方に住んでいたり仕事でなかなか時間が取れなかったりする場合、遺品整理がスムーズにできないかもしれません。また、急を要しているときや残されている荷物が多く、人手が足りない場合もあるでしょう。自分たちで行うのが大変なときは、専門の遺品整理会社に依頼するのもおすすめです。
「くらしのセゾン 遺品整理・生前整理」は、残された遺族の方の代わりに故人の荷物を整理するサービスです。相続問題や遺品整理で悩まないよう、専任の遺品整理士が対応してくれます。予算や状況に合わせて見積もりを提案してくれる点もおすすめポイントです。さらに、必要であれば遺品整理と同時にフローリングやクロスの張替えなど一般的なリフォームも行うことができます。遺品整理会社を探している場合には、セゾンの遺品整理・生前整理を検討してみてください。
おわりに
遺品整理には、いつまでに行うという期限はありません。しかし、いつまでも遺品整理をしないでいると、遺品を見るたびに悲しみがよみがえり、なかなか気持ちの整理がつかないこともあるでしょう。
また、相続税や家賃の支払いなどに関わるトラブルに発展してしまう可能性もあるため、スケジュールを組んで早めに取りかかるようにしましょう。自分たちで行うのが大変な場合には、プロに任せるのもおすすめです。