オレンジ色の花が特徴的なキンモクセイは、独特の甘い良い香りを放つ樹木です。キンモクセイが咲くと秋の訪れを感じる方も多いでしょう。キンモクセイは、きれいな樹形を維持するためや、すてきなオレンジ色の花を咲かせて香りを楽しむためにも、定期的な剪定が必要です。
このコラムでは、キンモクセイの剪定が必要な理由やメリット、剪定に適した時期やポイントなどについてご紹介していきます。
そもそも剪定とは?
剪定とは木の枝を切って形を整えたり、木全体の風通しを良くしたりすることを指しており、大きく分けると弱剪定と強剪定があります。まずは、弱剪定と強剪定について解説していきましょう。
弱剪定(じゃくせんてい)
弱剪定とは、樹形を大きく変えずに整える作業や、日当たり・風通しを確保するために行われる軽めの剪定のことをいいます。
弱剪定は、最低限木の健康を保つのに必要な作業のため、豪快に枝を切っていくようなことはしません。不要になった葉や枝を間引いていくのが、弱剪定の主な作業です。弱剪定は、夏から秋にかけて行う場合が多く「夏剪定」と呼ばれることもあります。
強剪定(きょうせんてい)
弱剪定とは反対に不要になった葉や枝を、豪快に切っていく作業が強剪定です。豪快に切っていく強剪定は、木へのストレスが大きくなるので、木の活動がゆるやかになる冬から春にかけて行いましょう。
剪定する時期を間違えてしまうと木が枯れるケースもあり、注意が必要です。強剪定は、冬に行う場合が多く「冬剪定」と呼ばれることもあります。
キンモクセイの剪定が必要な理由!メリットは?
キンモクセイは常緑樹といって葉と枝が対になって出てくる樹木のため、全体的に広がりやすいといった特徴があります。広がりが気にならないのであれば、キンモクセイの剪定を必ずしなければならないというわけではありません。
しかし、キンモクセイの樹高は5m以上、大きいもので8mになる場合もあります。高さがありながら葉や枝が大きく広がってしまうと、圧迫感がでてしまうでしょう。キンモクセイを育てるのに土地が限られている、きれいな状態を保ちたいという場合には、定期的な剪定が必要となるのです。以下では、キンモクセイの剪定を行うメリットについてご紹介します。
管理がしやすくなる
キンモクセイは葉や枝が広がりやすく、放置しておくと電線に引っかかったり、隣の家の敷地内に侵入したりといったトラブルにつながる可能性があります。
周囲の家に迷惑を掛けてしまう場合もあるため注意が必要です。キンモクセイは剪定を行うことで、限られた広さの土地でも管理しやすくなり、コンパクトに育てられるでしょう。
好みの形にできる
キンモクセイは「樹木の形を大幅に変えても強く育つ」という特徴を持っています。そのため、好みの形に整えられるのもキンモクセイを剪定するメリットのひとつです。また、剪定して樹形をきれいに整えることは、キンモクセイの花の付きを良くすることにもつながるでしょう。
害虫や病気のリスクを減らせる
剪定することで、キンモクセイに付く害虫や病気のリスクを減らせます。キンモクセイに限らず、どの樹木も葉や枝が広がって多くなると風通しが悪くなり、害虫や病気が発生しやすくなるのです。
剪定によって木の中の風通しだけでなく日当たりも良くなるため、害虫の発生や病気を予防でき、木を健全に育てることができるでしょう。
キンモクセイを剪定するのに適した時期は?
剪定は樹木の種類によって適した時期が異なりますが、キンモクセイの剪定はいつが適しているのでしょうか。ここでは、キンモクセイを剪定するのに適した時期、剪定してはいけない時期についても解説していきます。
キンモクセイの剪定に適した時期
2~4月がキンモクセイの剪定に適した時期といえるでしょう。地域によって違いはありますが、基本的に暖かい地域は2~3月、寒い地域は3~4月に剪定を行います。
キンモクセイは気温の低い時期に剪定をしてしまうと冬を乗り越えることができないため、温かい時期を待ってから剪定を行うのがおすすめです。しかし、夏に花芽を形成して秋に花を咲かせる樹木のため、花が咲き終わったあとすぐから冬の間も軽めの剪定であればできます。
キンモクセイを剪定してはいけない時期がある?
一般的に庭木で花を楽しむ場合、花芽を付けてからは剪定できません。花芽を付ける時期に剪定を行ってしまうと、花の数が減ったり咲かなくなったりするケースがあるためです。キンモクセイは春先から夏にかけて花芽を付けて、開花の準備が始まります。そのため、春から夏にかけての剪定は避けるようにしましょう。
刈り込みと間引き剪定について
キンモクセイを正しく剪定する前に、まずは刈り込みと間引きについて理解する必要があるでしょう。間引きは、不要になった枝を中心に取り除いていく作業です。刈り込みは、伸びた葉や枝を切って形を整える作業になります。
放置しておくと大きくなり過ぎてしまうキンモクセイは、秋の花が終了した直後から次の年の4月上旬にかけて、一度小さく刈り込みます。そして、花が咲き終わってから4月上旬までの間で間引きを行うようにしましょう。
枝枯れを生じやすい強剪定は慎重に行う必要がありますが、木を活性化させるのが目的であれば数年に一度を目安に作業をしてください。
キンモクセイの剪定に必要な道具
ここでは、キンモクセイの剪定に必要な道具についてご紹介していきます。
剪定バサミ
剪定バサミは、葉や枝、幹を切るのに使用する道具です。握る部分がゴム製で滑りにくいものや、軽めの剪定バサミを選ぶのが良いでしょう。通常のサイズより一回り小さい女性用のもの、左利き用の剪定バサミもあるため、ご自身の手の形にフィットして使いやすいタイプを選ぶのがおすすめです。
刈り込みバサミ
刈り込みバサミは、木の表面にある細かい葉や枝を切り、樹木の見た目をきれいに整えるために使用する道具です。刃の長さは短いものから長いものまであり、短い刃の刈り込みバサミは軽量のため作業が疲れにくいでしょう。長い刃の場合は、一度に刈り込める量が多いので作業スピードが速くなり、時間の効率化につながります。
植木バサミ
植木バサミは、込み入った枝の剪定などに使用する道具です。刃先がとがっていて刃の部分も細くできているので、剪定バサミより細かい剪定作業に向いています。太い枝を無理矢理切ろうとすると、刃こぼれが起きる可能性もあるため注意が必要です。
高枝切りバサミ
高枝切りバサミは、名前のとおり高い部分の枝を切るために使用する道具です。小さいサイズのキンモクセイであれば、脚立を使用しなくとも高枝切りバサミで充分剪定できます。慣れない場合は、グリップを握って使うタイプが扱いやすいでしょう。
高枝ノコギリ・ノコギリ
ノコギリは、太く伸びた枝や幹を切り落とすのに使用する道具です。枝の切り口の断面をきれいに切ることができ、さらには水が溜まりにくいといった特徴があります。
また、高枝切りバサミのハサミの部分がノコギリになっているのが高枝ノコギリです。高い場所にある太い枝などを切るのに適していますが、枝の落ちる方向に気を付けながら作業する必要があります。
手袋・脚立
樹高が最大で8mにもなるキンモクセイの剪定に、脚立は必需品といえます。足かけが5~8段程度の大きな脚立を使用すれば、高さのあるキンモクセイの剪定も作業がしやすいでしょう。
そして、キンモクセイの剪定を行う際に、怪我防止のためにも必要なのが手袋です。葉や枝、幹などを素手で触るのは避け、必ず手袋を着用して作業することをおすすめします。手のひらの部分に滑り止めやクッションが付いている手袋が、太い枝などを握りやすくなるため良いでしょう。
キンモクセイの剪定の仕方
ここからは、キンモクセイの剪定の仕方についてご紹介していきましょう。
高さを抑えるための切り戻しをする
まずは、キンモクセイの高さを抑えるために、切り戻しを行っていきましょう。切り戻しは、伸び過ぎた枝や幹を切り取って樹形を整える作業です。
樹形を維持するために木の高さを抑えるには、木の幹が枝先から約50cmの長さになるように、枝分かれしている部分まで切り落としていきます。放置して大きくなり過ぎてしまったキンモクセイを剪定するのは難しいため、早めに切り戻しの作業を行いきれいな樹形を保てるようにしましょう。
不要な部分の枝を間引く
葉や枝が茂り木全体の風通しや日当たりが悪くなると、病害虫の発生や木が弱ることにつながる可能性があります。
そこで、キンモクセイの生長に必要のない枝を間引いていく作業を行いましょう。「透かし剪定」ともいい、植物を健康に育てられます。太い枝や交差する枝、混み合った枝を付け根から切り取っていき、枝の数を減らして木全体の風通しと日当たりを良くしていきましょう。
花の咲いた枝先を2・3節残して切る
キンモクセイの株をコンパクトに維持するには、今年咲いた花の枝先を2・3節残すようにして切るのが最適です。剪定するタイミングは、キンモクセイの花が咲き終わる秋頃、もしくは花芽が出る春先がベストな時期といえます。ご自身のスケジュールに合わせて刈り込みの作業を行っていきましょう。刈り込み後、4月以降に新しく伸び出た枝に花芽が作られます。
キンモクセイを剪定するときの3つの樹形
刈り込みに強いキンモクセイは、さまざまな樹形で楽しめる樹木です。ここでは、キンモクセイの樹形について「長玉作り」「玉物」「盃型」の3種類をご紹介していきます。
長玉作り
長玉作りは、キンモクセイの樹形の中で最もポピュラーな樹形で、縦に長い円柱の形に整える仕立て方です。縦方向に長くなる形ですが、横幅は小さいためスペースのない庭に向いている他、生垣に多い樹形になります。
玉物(玉仕立て)
玉物は別名玉仕立てとも呼ばれ、純和風な庭に合う見た目の美しい樹形です。シンボルツリーとして、見せるための庭で採用されるケースが多く、紹介している3種類の樹形の中では実用より見た目重視の形といえます。
盃型(自然樹形)
自然樹形とも呼ばれる盃型は、お猪口のような形で高さも横幅もある樹形です。人工的な形に仕立てるわけではないので、必要以上に庭を派手にしたくないという場合に向いているでしょう。自然の樹形を生かしている形といえます。
キンモクセイを剪定するときのポイントや注意点
キンモクセイの剪定の仕方を説明しましたが、失敗なく作業を行うことが理想的ですよね。ここでは、キンモクセイを剪定するときのポイントについて解説していきます。
キンモクセイの剪定を失敗させないためのポイント
キンモクセイの剪定を失敗させないために、基本的な部分をポイント別にご紹介していきます。
剪定の位置は対生する葉の上
キンモクセイは、左右対称に葉や枝がつく対生という葉の付き方をする植物です。対生している葉の上の部分を切るようにすれば切り口が目立たなくなる他、枝先が枯れることがなくなるでしょう。
上技を深めにして下技は軽めに切る
全体的に広がりやすいキンモクセイは、上部ほど良く伸びる傾向にあるため、上枝を深めにして下枝は軽めに切るようにするとバランスの取れた樹形を保てます。全体を同じように切ってしまうと、バランスが崩れる場合があるので、注意しながら行いましょう。
葉をすべて切らないようにする
キンモクセイは枝だけでなく、葉をすべて切らないように注意する必要があります。剪定しない枝の葉を切ってしまうと、枝ごと枯れる可能性があるためです。葉を残していると枝分かれしたつけ根からも花を咲かせることができます。
キンモクセイ剪定後のポイント
キンモクセイの剪定後には、癒合剤を枝の切り口に塗ることで防水効果や防腐効果が見込めます。「剪定したら終わり」ではなく、一手間加えることでキンモクセイをより長く健康に保てるでしょう。
害虫や病気にも注意する
キンモクセイを長く健康な状態で育てるため、アブラムシやシャクトリムシなどの害虫、うどんこ病といった木の病気には注意しましょう。これらを放置してしまうと、新芽や花芽に栄養がいき渡らず翌年の開花に影響が出る場合もあります。発見時には殺菌剤や殺虫剤を用いて早急に対処しましょう。
キンモクセイの剪定が難しい場合はプロに任せよう!
キンモクセイの剪定は、多少の知識と道具があれば問題ありません。しかし、一から道具を揃えたりサイズが大きくひとりで剪定するのが大変だったりする場合には、プロに任せるのもひとつの方法です。
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【番外編】キンモクセイをおしゃれに楽しもう!
キンモクセイの剪定について紹介してきましたが、ここからは、きれいに花を咲かせたキンモクセイをおしゃれに楽しむ方法について紹介していきます。
キンモクセイの入浴剤
花びらだけを摘み、ティーバッグに入れたものをお風呂に浮かべるだけで、キンモクセイの入浴剤が完成です。キンモクセイの甘い香りはリラックス効果や安眠効果、暴飲暴食を抑制する作用があるとされています。
キンモクセイの花茶
キンモクセイの花びらを手のひらくらい集め、紅茶などとブレンドして楽しむ方法もあります。お茶にする場合、咲き始めの蕾を使用するのが一番香り良く楽しめるのでおすすめです。
キンモクセイのお酒
中国には桂茶陳酒(けいかちんしゅ)と呼ばれる、キンモクセイの花を白ワインに3年間漬け込んだお酒があります。日本でも知られているお酒で、1週間ほど漬け込むだけで飲めるようになります。
キンモクセイの香水
甘く優しいキンモクセイの香りを香水で楽しむ方法もあります。キンモクセイの香水は市販されているものでも楽しめますが、無水エタノールやウォッカを使用してオリジナルの香水を作るのも楽しいでしょう。
おわりに
キンモクセイの剪定の仕方について紹介しました。キンモクセイはすてきな花を咲かせ香りを楽しむことができますが、剪定せずに放置してしまうと見栄えが悪くなるだけでなく、周囲への影響や病害虫の問題も出てきてしまいます。キンモクセイの剪定は、ポイントを押さえて道具を揃えれば、ご自身でも行うことができますし、大変であればプロに頼む方法もあります。適切な剪定を行い、きれいなキンモクセイを楽しみましょう。