横にスライドして扉を開閉させる引き戸は、前後に開閉スペースを要する開き戸と違い、狭いスペースでも設置可能です。引き戸は、高齢者や子どもが開け閉めしやすいことや、下部にレールのない上吊りタイプのものがあることから、バリアフリーの観点からも注目されています。しかし、年月が経つと引き戸の滑りが悪くなり、開閉が困難になることもあるでしょう。このコラムでは、引き戸の滑りが悪くなったときに考えられる原因や対策方法をお伝えします。
引き戸の滑りが悪くなったときは、スプレーや専用のシールなどを使ってご自身で簡単に対処することができます。ただ、それは滑りが悪くなった原因が、ゴミが溜まっていることや戸車やレールなどの劣化などが原因と考えられる場合です。
家の建て付けが悪くなっていたり、引き戸周辺の建具が歪んだりしている場合は、ご自身での修繕は難しいので、専門会社に依頼することをおすすめします。まずは引き戸の潤滑性が低下した原因を探り、適した対策方法を見つけましょう。
引き戸の滑りが悪い!その原因とは~洋室編~
まずは「洋室」の引き戸の滑りが悪い場合に考えられる原因をご紹介します。洋室の引き戸はいくつか種類があり、代表的なのはレールがあるタイプや上吊りタイプなどです。種類や設置場所、設置方法によっても滑りが悪い原因は異なりますが、ここではよくある原因をピックアップしてお伝えします。
戸車の不具合
戸車とは、扉の上下に取り付けられた小さい車輪です。上部にあるのは上戸車・上車と呼ばれ、下部にあるのは下戸車・下車と呼ばれます。
この上下にある戸車が壊れていたり、ゴミを巻き込んでいたりすると動きが悪くなることがあるため確認が必要です。また、戸車の取り付け状態に問題がある場合もあります。傾いていたり、沈み過ぎていたりする場合は、戸車を正確な位置に調節すると引き戸の滑りが直る可能性があるでしょう。
レールのゴミやホコリ
レールタイプの洋室の引き戸には、下部にレールがあり、このレールにゴミやホコリが溜まっている場合も引き戸の滑りが悪くなる可能性があります。特に、扉の下部分の普段は見えない部分のゴミは取り除きにくく溜まってしまいがちです。定期的に扉下のゴミを除去すると良いでしょう。
ゴミを取り除くと改善する可能性がありますが、レール自体が歪んでしまっていることもあります。掃除をしても改善しない場合はレールの交換が必要かもしれません。
家の歪み
家の歪みや建て付けが原因の場合もあります。地震や自然災害、建物の経年劣化によって家自体が歪んでしまうこともあります。家全体の引き戸やドアが開きにくくなった場合は、建物の歪みを疑い、専門会社に確認してもらうのがベストです。
引き戸の滑りが悪い!その原因とは~和室編~
次は「和室」にある引き戸の滑りが悪い場合に考えられる原因についてご紹介します。
和室の引き戸といえば「襖(ふすま)」が一般的です。ふすまは年月が経つと劣化することが多いため、実家や祖父母の家に「開けにくい和室があったなぁ」と思い出す方も多いのではないでしょうか。滑りが悪くなる原因を確認しましょう。
ふすまや敷居のすり減り
ふすまには敷居があります。敷居とは洋室の引き戸でいうレールの役割をする部分です。敷居は一般的に木材で作られているため、何年も開閉を繰り返すことですり減ってきます。すり減りによって表面がザラザラしてきたり、ゴミや砂などが原因で傷が付いたりすると、開閉時に引っかかりができて滑りが悪くなるのです。
鴨居の変形
次に考えられる理由として「鴨居」の変形が考えられます。鴨居とは、ふすまの上部にある横木のことを指しますが、鴨居と敷居があって初めてふすまはスライド開閉ができるのです。ふすまは、上下を鴨居と敷居にはめ込んだ状態で使用するため、わずかな歪みや変形でも開閉に影響が出るケースが多くなります。
ちなみに鴨居の変形は、雪の多い地域によく見られる現象です。家の屋根に雪が積もり、重みによって変形する可能性があります。
ふすまの歪み
ふすま自体が歪んでいるケースもあるでしょう。ふすまには種類があり、それぞれ耐久性が異なります。例えば、使用しているふすまの芯が段ボールや発泡スチロールで作られている量産型のものの場合は、経年劣化が比較的早いです。
ふすまが歪んでいる場合は、ふすまごと取り替えてしまうのが良いでしょう。しかし、サイズを的確に計測しなければ、今ある敷居と鴨居にふすまをはめられないため、取り替える際は注意が必要です。
家の歪み
これは洋室の引き戸と同じく、地震や経年劣化によって家が歪んでいるということです。その他にも、シロアリや地盤沈下などが原因で建物が歪む可能性があります。
引き戸の滑りを良くする方法とは
ここからは、引き戸の滑りを良くするための方法をいくつかチェックしていきましょう。ご自身でできる対策をご紹介します。
引き戸周りの掃除をする
引き戸のレールや、ふすまの敷居にゴミが溜まっていて滑りが悪い場合は、まずは掃除をしてみましょう。可能であれば引き戸やふすまを外して、徹底的にきれいにするのがおすすめです。
引き戸の外し方は意外と簡単で、扉の下車部分にあるネジを緩めると、引き戸が下に下がり取り外しやすくなります。(取り外す際は必ず使用メーカーの取扱説明書をご確認ください。)
ふすまは、左右を持って上へ持ち上げながら敷居から取り外します。歪みがある場合はこの方法で取り外しにくいため、無理に動かすのはやめましょう。
引き戸周りのゴミはなるべく定期的に取り除くようにするのがおすすめ。なぜなら、溜まったゴミや砂を引き戸扉が引き込み、レールや敷居に傷が付くのを予防できるからです。
戸車・レールの交換をする
戸車やレールに不具合があると感じた場合は、新しいパーツに交換する方法が有効です。しかし、戸車やレールの種類は豊富にあります。現在使用しているものと同じタイプ・同じサイズを選ばなければ適合しません。ご自身で交換を行う場合は、必ず同じタイプのものを手に入れましょう。
また、どちらを交換する場合も、扉を外しての作業が必要になります。扉は重く場所も取りますので充分注意しながら作業をしましょう。戸車は傾き・沈み過ぎ・浮き過ぎることなく、正確に取り付ける必要がありますので、心配な方は専門技術を持つ企業に依頼するのもひとつの方法です。
ロウを塗る
敷居にロウを塗って滑りを良くする方法もあります。市販の潤滑剤を使用するのも良いですが、家にロウソクがある場合はそれを使用しても構いません。手で温めながらロウを敷居に塗っていきましょう。ロウソクを使う場合は、変色の可能性があるため白や無色透明のものを使用するのがおすすめです。
スプレーやテープなどのグッズを活用する
レールや敷居の滑りが悪いときには、専用のグッズを使用する方法もあります。まずはスプレーから確認しましょう。専用のシリコンスプレーを直接レールや敷居に振りかけることで、扉やふすまが滑りやすくなります。敷居に使うために購入する際は、必ず木材に使用可能かどうかを確認しましょう。
次に、テープの活用です。こちらも引き戸やふすまの動きを潤滑にするための専用のテープが販売されています。滑りやすい加工がされているので、貼り付けるだけで滑りの改善が期待できるでしょう。
しかし、使用しているうちにスプレーは効果が減少し、テープは劣化していきますので、滑りが悪くなるたびに塗り直し・張り替えが必要です。
引き戸の滑りを良くする便利グッズ
ご自身でできる対策はいくつかありますが、ここでは引き戸の滑りを改善するのにおすすめの便利グッズを何点かご紹介します。それぞれの使い方も確認していきましょう。購入時の参考にしてみてください。
【ロウ】すべロウ・敷居用(株式会社 建築の友)
敷居専用の「すべロウ・敷居用」は、スティックタイプで手軽に使いやすいのがポイントです。少し塗りにくいと感じる場合は、ドライヤーなどを使って表面を温めると塗りやすくなりますのでお試しください。
【主な特徴】
- サイズが18×21mmと一般的な敷居の溝幅にぴったり
- 溝にはめてスーッと沿わせながら動かすだけで塗り残しなく全体に塗ることができる
- 汚れの防止にも役立つ
【使い方】
- 敷居のゴミやホコリを取り除きます。汚れはしっかり拭き取って清潔な状態にしましょう。
- 敷居の溝に沿って本体を滑らせていきます。すり込むように塗っていきましょう。厚塗りにならないように力加減を調節しながら行います。
- すり込んだあとは、軽く乾拭きをすれば完了です。
商品名 | すべロウ・敷居用 |
用途 | 敷居の潤滑性を高める(塗るタイプ) |
Amazonリンク | https://www.amazon.co.jp/dp/B001WHIPVQ |
【スプレー】多用途すべり剤(KURE)
あらゆる素材に使えるスプレータイプの「多用途すべり剤」は、無色・無臭のシリコンスプレーです。家中のあらゆるものに使えるため、1本持っておくと便利でしょう。
【主な特徴】
- 着色の心配がない
- においに敏感な方も使いやすい
- 敷居やレールはもちろん、窓のサッシや家具、自転車などにも使用可能
【使い方】
- 付属のストロー状のノズルを本体の吹き出し口に差し込みます。
- 戸車の左右部分に直接スプレーしましょう。
- レールに多くかかり過ぎて、人が通るときに滑ってしまう可能性があるので、タオルや雑巾にスプレーして、少しずつ塗るようにします。
※多くかけ過ぎて床や階段などにもかかってしまうと、滑って転倒する恐れがあるので注意しながら使用してください。
商品名 | 多用途すべり剤 |
機能 | 敷居の潤滑性を高める(スプレータイプ) |
Amazonリンク | https://www.amazon.co.jp/dp/B00E59NSKG/?th=1 |
【テープ】引き戸スベリ1K(セメダイン)
テープタイプのおすすめは「引き戸スベリ1K」。直接塗布するのではなく、貼り付けて使うタイプのアイテムです。
【主な特徴】
- 耐磨耗性に優れた素材のテープ
- 木材の風合いにマッチする茶色いカラー
- 木製のタンスや机の引き出しなどにも使用可能
【使い方】
- 貼り付ける部分の汚れやホコリを拭き取ります。木材のザラつきや引っかかりなど、凹凸部分があれば、ヤスリを使って平らにすると粘着力が長持ちするため、丁寧な作業が長持ちのポイントです。
- 裏面の剥離紙を剥がし貼り付けていきましょう。万一敷居の溝の幅よりテープが大きい場合はカットして調整します。
- 敷居の溝の端から端まで丁寧に貼っていき、貼り終えたら木片などで上からこすり付けて密着させましょう。
商品名 | 引き戸スベリ1K |
機能 | 敷居の潤滑性を高める(テープタイプ) |
Amazonリンク | https://www.amazon.co.jp/dp/B00476JFZE/?th=1 |
引き戸の滑りを良くする便利グッズは100円ショップにも!
引き戸の滑りを良くするアイテムは、実は100円ショップにもあります。
110円(税込)で購入できる「すべるん棒」は、スティックタイプのワックスです。効果も抜群。色が茶色なので、木材の風合いを乱すことなく使用できます。店頭で見つけた場合は、試してみる価値ありです。
もうひとつ100円ショップで購入可能な「シリコンスプレー」もパッケージに敷居・サッシ、鍵・鍵穴、ファスナーなどに使用可能で、引き戸の潤滑剤として使うことができます。プラスチックや木材にも使える万能なシリコンスプレーが110円(税込)で手に入るので、持っておいて損はないでしょう。
引き戸の滑りを良くするには専門会社がおすすめ!
ここまで引き戸の滑りが悪くなる原因や、ご自身でできる潤滑性の復活方法などをご紹介しました。しかし、引き戸のレールや扉の修理、敷居の交換や鴨居の歪みなど、ご自身ではどうにもできない場合もあります。
また、無理にご自身で直そうとするとかえって滑りが悪くなり、結果、引き戸を開けられなくなる可能性もあるので注意しましょう。不安な場合は、専門会社に依頼するのがおすすめです。依頼時に気になるポイントを2つ解説します。
どのような専門会社に依頼するべき?
引き戸の修理や修繕は、建具屋や工務店を含むリフォーム会社、ホームセンターなどに依頼が可能です。
また、住宅の設計・工事を担当してもらったハウスメーカーに相談可能なケースもあるので、確認してみると良いでしょう。おすすめは、建具に詳しい専門家がいる建具屋やリフォーム会社です。工事後、すぐに引き戸が動かなくなったなど、万一の事態に備えてアフターフォローがしっかりしている企業を選ぶのが良いでしょう。
引き戸の修理の費用相場は?
引き戸の修理には、どの程度費用が必要なのかも気になるところです。引き戸・ふすまの修理や調整は、専門会社に頼んでもそれほど高くない値段でできるケースが多いでしょう。費用の相場は約2~4万円です。
しかし、不具合の出ている場所や、破損した部品によっては修理ではなく取り換えの必要があるケースもあり得ます。
引き戸の修理を検討中の方は『住まいのリペアサービス』へ
引き戸やふすまの修理、家の建て付けが気になる方はくらしのセゾンの「住まいのリペアサービス」をチェックしましょう。こちらのサービスでは、対応エリア内からのご依頼を365日・年中無休で受け付けており、専門技術を持つスタッフが対応してくれるので安心して任せることができます。
さらに、1年間の無償工事保証付きなので、アフターフォローがしっかりしている面も嬉しいポイントです。建て付け調整の費用は14,000円(税込)が目安です。まずは相談してみましょう。
引き戸や建て付けの調整以外にも、ドアや壁の穴や傷の修理、壁紙の張り替え、ドアや家具の蝶番交換など、室内の困りごとに幅広く対応してくれます。対応エリアも拡大中なので、ぜひ詳細をチェックしてみてください。
<対応エリア>
宮城県・栃木県・茨城県・群馬県・千葉県・埼玉県・東京都・神奈川県・愛知県・岐阜県・京都府・大阪府・兵庫県
おわりに
引き戸の滑りが悪くなったと感じたときは、まずは原因をチェックしましょう。今回ご紹介したように、レールや戸車の不具合、敷居の歪みや家の建て付けの悪さなど原因はさまざまです。スプレーやテープなど、便利グッズを使って改善できれば良いですが、改善が見られない場合は専門会社に相談してみることをおすすめします。