欠かさずお手入れをしていても、寒くなる季節は庭が寂しくなりがちです。そんな寒い時期の庭を鮮やかに彩ってくれるのが、冬に花を咲かせる椿。椿は比較的手がかからない植木ですが、健康を保つため、美しい樹形を維持するためには剪定が欠かせません。今回は椿の特徴や剪定方法について詳しく解説します。ご自宅の庭に椿を植えている方や植えたいと考えている方は、ぜひお役立てください。
この記事を読んでわかること
- 椿は11~4月の寒い時期に美しい花を咲かせる常緑高木で、藪椿や雪椿、唐椿などの品種がある
- 美しい樹形や健康を保つためにも椿の剪定は欠かせないもので、花芽がつく前の4~5月が剪定におすすめ
- 椿の剪定には透かし剪定と切り戻し剪定の2種類があり、樹形を整えたり病害虫を防いだりする目的がある
椿(つばき)の特徴
ツバキ科ツバキ属の椿は、年中緑の葉をつける常緑高木です。光沢がある丸いフォルムの葉と可憐な花が特徴で、代表的な品種の藪椿(やぶつばき)は九州から青森まで広い範囲に分布しています。
花が咲き終わると、夏頃に青い実をつけるのが特徴で、この実は秋になると割れて、黒い種が顔を出します。この種を圧搾して抽出されるのが椿オイルです。椿オイルは、髪や肌をツヤやかに仕上げ、美しく整えてくれるとして美容にも用いられています。
椿の開花時期
椿の開花時期は11~4月と寒さを感じる季節です。品種にもよりますが、9~11月頃から咲き始め、極寒期には開花が落ち着きます。
品種によっては2~4月の間で開花するなどタイミングが若干異なりますが、がらんとした冬の庭を彩ってくれるのでおすすめです。庭先や歩道沿いはもちろん、鉢植えとしても楽しめるでしょう。
椿の種類
ここでは3つの品種の椿についてご紹介します。
藪椿(やぶつばき)
日本の至るところで見られる藪椿(やぶつばき)は、一重咲きの赤い花が特徴です。一般的に椿といえば藪椿をイメージする方も多いでしょう。過去に椿ブームが起きた際には、白に赤の絞りが特徴的な源氏車や、ふっくらとした小花の侘助などの園芸種が作られました。
雪椿(ゆきつばき)
主に日本海側に自生する雪椿は、一重咲きで赤く小さめの花を咲かせます。八重咲のものや白花のものがあり、さまざまな表情が楽しめるのが特徴です。豪華な八重咲の乙女椿や花びらがフリルのような可憐な桜貝など、愛らしい園芸種が作られています。
唐椿(とうつばき)
中国で唐の時代から栽培されてきた唐椿は常緑低木から高木のものまであり、飾り花としても人気があります。花や葉が大きく、ピンクに色づく花は八重咲や半八重咲で華やかなのが特徴です。ローズ・ジェムという名のように薔薇のように重なりあった花びらが特徴のものや、濃いピンクが美しいディスカンソ・ミストなど華やかさが魅力の品種が作られています。
椿は剪定しないとどうなる?
椿は比較的手がかからないため、育てやすいといえますが、健康や美しい樹形を保つために剪定は欠かせません。不要な枝木をそのままにして風通しが悪くなると、病害虫の被害に合いやすくなります。
また、枝や葉が伸びて不揃いになると、樹形が崩れみすぼらしくなってしまうでしょう。大きくなり過ぎると、全体に栄養が行き渡りにくくなって、花つきが悪くなるケースも考えられます。毎年美しい花を楽しむため、健康を保つためにも正しい剪定知識を身につけましょう。
椿の剪定時期は4~5月頃がおすすめ!
椿の剪定時期は地域によって多少異なりますが、花が咲き終えた4~5月頃が適しています。6月頃には次に咲く花芽を切り落としてしまう恐れがあるので、遅くても5月頃までに剪定するのがおすすめです。
もし、すでに花芽がついてしまっている場合は、切り落としてしまわないよう注意しながら剪定してください。葉芽との区別がややこしいですが、よく見るとそれぞれ特徴があります。花芽は丸くて膨らみがあり、葉芽は細くとがっているのが見分けるポイントです。
椿を剪定するのに準備する道具
ここでは、椿の剪定をするために、準備しておくべき道具をご紹介します。まず、枝や葉を切り落とすための剪定バサミや植木バサミが必要です。剪定の際は枝や葉でケガをしないよう、軍手などを着用して手を守りましょう。
耐久性があり、滑り止めが付いている軍手なら、剪定バサミも扱いやすいのでおすすめです。長袖や長ズボンで作業をすれば、腕や脚も枝や虫などから守ることができます。剪定する前に椿の周囲に新聞紙やビニールシートを敷いておけば、切り落とした枝や葉の掃除が楽に行えるでしょう。また、病害虫が気になる場合は、殺菌剤や殺虫剤なども用意しておきます。
椿の剪定方法
椿の剪定方法には、「透かし剪定」と「切り戻し剪定」の2種類があります。それぞれ詳しく見てみましょう。
椿の透かし剪定
透かし剪定は、伸び過ぎた枝やバランスの悪い枝を切って、樹形のボリュームを均一にする剪定方法です。全体の大きさやバランスを整えながら、日当たりや風通しも良くすることができるため、病害虫の予防にもつながります。ここでは、透かし剪定で切り落とすべき枝の特徴を解説しましょう。
長い枝
整えたいイメージの樹冠からはみ出ている長い枝は切り落としましょう。このような長い枝を切って整えることで、椿全体が小さくなっていき、理想の樹形や大きさに近づけられます。剪定の際、枝は分岐点のつけ根で切るようにしてください。
混み合った枝
椿の内側の方にある混み合った枝は、放っておくと風通しを遮って病害虫が発生する原因につながります。内側の枝を切っても、樹形の大きさを変えることはできませんが、椿の健康を維持するためには切り落とすことが大切です。混み合った枝を剪定する場合は、木の向こう側が透けて見える程度を目安として、思い切って切り落としていきましょう。
不要枝
樹形を乱す不要枝には12もの種類があります。以前剪定した枝の切り残しや、交差した枝、枝元や根元から伸びている弱弱しい枝などの不要枝は、樹形を整えるために切り落としましょう。また、不要枝を切り落とすことで、椿全体に栄養が行き渡りやすくなり、花つきもよくなります。逆さ枝や下り枝など種類が多いですが、選別して剪定していってください。
椿の切り戻し剪定
切り戻し剪定とは、伸び過ぎた枝を切り落とし、全体の樹形を整える選定方法です。剪定後の切り口が湿ったままでは、病害虫の被害にあいやすく切り口から枯れてしまう恐れがあるので、切り戻し剪定は切り口が乾燥しやすい晴れた日の午前中に行うよう心がけましょう。
椿の剪定を失敗しないためのポイント!
ここからは、椿の剪定を失敗しないために意識したいポイント3つをご紹介します。
剪定前に完成後のイメージを明確にする
仕上がりをイメージせずに、思うままに剪定を行うと樹形が崩れたり、切り過ぎたりしてしまう恐れがあります。
まず、椿をどれくらいの高さにしたいのか、樹形はどのように仕上げたいのか、理想のイメージを明確にしましょう。椿は庭の地植え、鉢植えを問わずクリスマスツリーのように円錐形に仕上げるのがスタンダードです。剪定後に半分から三分の二ほどの大きさになるよう、バランスを見ながら剪定していくと良いでしょう。
基本的に6月以降の剪定は控える
剪定時期でも解説したように、6月以降に剪定をすると花芽も切り落としてしまい、翌年に咲く花の数が減ってしまう恐れがあります。
花芽を避けながら剪定することも可能ですが、素人には難しい作業になるため、6月以降の剪定は控えるのが無難です。
剪定後は切り口に癒合材を塗る
癒合剤とは剪定後、枝の切り口に塗るための薬剤です。これを塗ることで、切り口から侵入する腐朽菌を防ぐ効果が期待でき、椿の健康を守ることができます。必須というわけではありませんが、用意できるのであればぜひ塗布しておきましょう。
椿を健康に育てるために大切なことは?
椿の健康を保つためには、水やりと肥料も欠かせません。そして、病害虫の知識を身につけ、椿を守ることが大切です。
水やりと肥料
椿の世話をするにあたって、水やりと肥料は健康に育てるためにとても重要です。椿を植えて2年未満の間は、土の表面が乾いたらたっぷり水やりをしてください。
花が咲く時期は、より多くの水が必要になります。夏は朝夕2回、春や秋は2日に1回ほど、冬は3日に1回程度与えてあげましょう。
植えてから2年以上経った場合は、雨が降らず、土の表面が乾いているときに水をあげる程度でかまいません。
肥料は地植えの場合は有機質肥料を、鉢植えの場合は化成肥料を花が咲き終わった頃に与えましょう。葉が黄色っぽく、成長が遅いと感じるときは、生理的酸性肥料を与えて成長促進をサポートしてあげるのがおすすめです。
害虫と病気
ここでは、椿に発生する主な病害虫について詳しく説明します。
チャドクガ
椿を好んで食べるチャドクガの幼虫は、毒針毛と呼ばれる細い毛に覆われています。人間の肌に毒針毛が刺さると炎症が起き、広範囲な赤い発疹と強烈な痛みが1~2週間続く恐れも。チャドクガの幼虫は、近づいたり刺激を与えたりするだけで、この毒針毛を飛ばしてくるため注意が必要です。
万が一、刺さってしまった場合は、粘着テープなどをくっつけて除去し、流水で洗い流しましょう。洗ったら患部に抗ヒスタミン薬を塗ったり、皮膚科を受診したりして対応してください。チャドクガの幼虫は椿の葉の裏に隠れている場合もあるため、見つけたら葉や枝ごと切り落として捨てましょう。市販のスプレーには、チャドクガを固めるものもあります。
カイガラムシ
カイガラムシはその名のとおり、貝殻のような見た目をしています。枝や葉の美観を損ねるだけでなく、樹木を吸汁して椿に悪影響を及ぼすケースも。また、カイガラムシの排せつ物が原因で「すす病」を発症してしまう恐れもあります。幼虫の場合は薬剤で比較的簡単に駆除できますが、殻やロウ物質で覆われている成虫には専用の薬剤でないと効果は得られにくいでしょう。
すす病
前述したように、害虫の排せつ物などが原因で発生する、すす病。椿がすす病を発症すると、葉や枝の表面が黒いすすのような物質で覆われてしまい、光合成が阻害されます。椿が育ちにくくなり、栄養不足で花のつきが悪くなることも考えられるので、原因となるカイガラムシを見かけたら早急に駆除しましょう。
椿の剪定が不安な場合は経験豊富なプロへ依頼しよう!
椿の剪定のポイントは、剪定時期を守ることや完成後のイメージを明確にすることです。間違った方法で剪定をしてしまうと、ダメージを受けた椿が枯れてしまう恐れがあります。ご自身での剪定が難しい場合は、庭木のプロに依頼するのがおすすめです。
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防虫や消毒オプションも利用できるため、害虫予防にもなり、椿の健康を守ることができます。ご自身でのお手入れが難しい方や忙しくて手が回らない方は、利用してみてはいかがでしょうか。
おわりに
年中ツヤのある葉をつけて、庭を彩ってくれる椿ですが、樹木の健康を保つためには剪定が欠かせません。透かし剪定や切り戻し剪定は、樹形を整えて美しい見た目を保持してくれるだけでなく、風通しや日当たりを良くして病害虫を予防できます。剪定には技術や知識が必要で手間もかかるので、ご自身でのお手入れが難しい場合は無理をせず、プロにお任せするのもおすすめです。正しい知識で剪定を行って、美しい椿を咲かせましょう。