自動車保険の保険料は、等級によって決まります。賢く利用するには等級が上がるまたは下がる条件や、等級ごとの保険料の割引率についても正しく知っておくことが大切です。このコラムでは、自動車保険の等級の仕組みと引き継ぎについても解説します。
自動車保険の等級制度の概要
自動車保険の等級制度は、保険料を決めるための重要な要素です。
自動車保険は契約者が所有または使用する自動車の台数によってノンフリート契約またはフリート契約のいずれかで契約します。契約者が所有又は使用する自動車の台数によって以下のように分かれます。一般的な個人が契約するのはノンフリート契約です。
・ノンフリート契約:9台以下
・フリート契約:10台以上
ノンフリート等級別料率制度における保険料の割増・割引率を決めるための区分が「等級」です。何度も事故などで保険を使って修理している方と、同じ期間一度も保険を使っていない方が同じ保険料を支払うのは公平とはいえません。
「ノンフリート等級別料率制度」は契約者の保険の使用状況を等級で表し、その等級にふさわしい保険料を負担する仕組みとして設けられているのです。
等級の数字によって保険料が変わる
自動車保険のノンフリート契約の等級には、1等級から20等級まであります。1等級の契約者が負担する保険料が最も高く、等級の数字が増えるごとに安くなり、最も安くなるのが20等級です。
保険を使う可能性が高い、つまり事故などのリスクが高い契約者は、支払う保険料以上の保険金を受け取る可能性が高いことから、高額な保険料を負担します。逆に長い期間、保険を一度も使っていない契約者は、これからも保険金を受け取る確率は低いと判断されるため、保険料負担は少なく済みます。
つまり、同じ補償内容の契約者でも、保険の利用状況の違いによって保険料負担のバランスを取るのが等級制度なのです。等級の数字は、そのまま保険料の高さ・安さを表しているといえます。
初めて加入すると6等級からスタート
初めて自動車保険に加入する契約者は、「6等級」からスタートするのが一般的です。保険料が最も高い「1等級」からスタートするように思えますがそうではありません。これはどの保険会社でも同じです。
自動車保険の基本となる保険料は、補償内容によって異なります。最終的に支払う保険料は、そこから等級に見合った「割引率または割増率」を適用した金額です。一般的な例として、1~6等級の割引・割増率を以下に挙げてご説明します。
(例)支払う等級別保険料の割引・割増率(1等級〜6等級)
等級 | 割引・割増率 |
6等級 | ▲19% |
5等級 | ▲13% |
4等級 | ▲2% |
3等級 | +12% |
2等級 | +28% |
1等級 | +64% |
6等級からスタートし、事故などで保険を使うと等級は下がり、保険料は上がります。もし、事故を起こして6等級から3等級に下がると、保険料は「割引」から「割増」に変わり保険料が上がってしまい、家計への負担は大きくなります。
自動車保険で同じ補償が得られるのなら、保険料は安い方が助かります。6等級は決して高い割引率とはいえません。安全運転に努めコツコツと等級を上げて割引率を上げていくのが望ましいでしょう。
ノンフリート等級は20等級が上限
6等級から保険を使わずにいると等級は年々上がります。しかしいつまでも上がり続けるのではなく、上限は20等級です。20等級のまま、何年も無事故で保険を使わなかったとしても、これ以上割引率が上がることはありません。
等級別の割引率は、それぞれ次のようになっています。
(例)支払う等級別保険料の割引率(6等級〜20等級)
等級 | 事故あり係数適用の場合の割引率 | 無事故係数適用の場合の割引率 |
20等級 | ▲44% | ▲63% |
19等級 | ▲42% | ▲55% |
18等級 | ▲40% | ▲54% |
17等級 | ▲38% | ▲53% |
16等級 | ▲36% | ▲52% |
15等級 | ▲33% | ▲51% |
14等級 | ▲31% | ▲50% |
13等級 | ▲29% | ▲49% |
12等級 | ▲27% | ▲48% |
11等級 | ▲25% | ▲47% |
10等級 | ▲23% | ▲45% |
9等級 | ▲22% | ▲43% |
8等級 | ▲21% | ▲40% |
7等級 | ▲20% | ▲30% |
6等級 | ▲19% | ▲19% |
事故あり係数とは、契約の等級が7等級以上の場合に適用する係数のことです。「無事故」は期間内の保険使用がまったくないことを示しています。「事故あり」は、事故によって保険を使ったあとに適用される割引率です。どの等級も「無事故」に対しては割引率が低く設定されています。
また前述のとおり、等級は20等級までしか設けられていません。無事故の場合の割引率を見ると、20等級は6等級の保険料の3倍以上の割引率が適用されます。保障内容は同じならば、保険料を安く抑えられる方が家計にはありがたいものです。等級が高い状態を維持できれば保険料の節約につながるため、経済的メリットも大きくなります。
保険の今の等級を調べる方法
今加入している自動車の任意保険の等級は、以下の3つの方法で調べることができます。自分の自動車保険の等級を確認してみましょう。
- 保険証券で確認する
加入している保険会社から送られてくる保険証券には、保険契約の内容や保険金の支払い条件、契約期間、満期日と一緒に、等級も記載されている
- 保険会社に問い合わせる
電話などで加入している保険会社に問い合わせる(等級を含めた契約内容は個人情報にあたるため、現住所や生年月日などで本人確認がある)
- 保険会社の公式WEBサイトで確認する
インターネットを使って、保険会社が設けている「契約内容確認ページ」(「マイページ」という場合もある)で確認する(利用には初期登録やID・パスワードの設定・入力が必要)
等級を含めた任意保険の内容は、保険料の把握だけでなく、事故など万が一のときに保険をスムーズに使うためにも、いつでも確認できるようにしておくことが大切です。日頃から保険証券の置き場所を決めておいたり、PCやスマートフォンのアプリを設定しておくなど、すぐに確認できるように備えておきましょう。
自動車保険で等級が決まる仕組み
任意保険の等級は、保険の使用状況に見合った保険料を定めるために設けられています。つまり、保険期間中に保険を使用したかどうかが等級を決める要素であるということです。また、同じ等級でも保険料が異なる場合もあります。
事故ありの場合、事故あり係数が適用される期間は決まっています。ここでは、任意保険の等級がどのタイミングで、どのように決まるのかを解説します。
等級が変わるのは保険の更新時
等級は、保険契約の更新時に変わります。更新時に、契約開始日から満期日までの間で事故があったかどうか、保険を使用したかどうかがチェックされます。そして、保険の使用状況に見合った等級が適用されるのです。
対象となる保険期間に保険を使用していれば等級は下がり、使用していなければ上がります。その基準は明確に設けられており、使用の状況や原因によってそれぞれ上下する幅も定められています。一般的に保険契約は1年ごとに更新されるため、等級も1年ごとに変わるといって良いでしょう。
保険期間に保険を使わなければ1等級上がる
任意保険の等級は、更新までの1年間に保険を使っていなければ、次年度に1つ上がります。等級が上がれば割引率も上がるため、保険料は下がる仕組みです。もちろん、補償は同じです。その後も無事故であれば最高で20等級まで上がり、同じ補償を最も安い保険料で得ることができます。
保険料の支払いの負担は大きいものです。無事故かつ保険を使用しない状態が続くことは、家計にとっても大いに歓迎すべきことだといえるでしょう。
保険を使えば原則として等級は下がる
更新までの1年間に保険を利用すると、等級は下がるが原則です。ただし、これはあくまで「保険を使う」ことが原因であり、「事故を起こした」ではないことには注意が必要です。事故を起こしても、保険を使わなければ等級には影響しません。
例えば初年度6等級で3等級下がる事故を起こすと、割引率は割引19%から割増12%に転じ、更新後の保険料金額も次年度からアップします。しかし、保険を使わなかった場合は等級が下がることはありません。つまり、自腹で修理代を出せば保険が下がることはなく、むしろ等級が上がり割引率が上がるのです。
自損事故の場合は保険を使用することで上がる保険料と車の修理費用を比較してから、保険を利用するかどうかを検討しましょう。ただし、対人対物事故の場合はすぐに保険会社に連絡してください。
【事故あり係数の適用期間】
事故あり係数が適用される期間は、事故の内容によって異なります。
- 3等級下がる事故の場合:3年間
- 1等級下がる事故の場合:1年間
例えばずっと無事故で20等級だった方が3等級下がる事故を起こして保険を使った場合、割引率は無事故係数適用の63%割引から、事故あり係数適用の17等級の38%割引となります。その後3年間は無事故で等級が上がっても、適用されるのは事故あり係数です。無事故係数が再び適用されるのは、4年目です。
3等級下がるような事故を起こすと保険料負担が大きくなります。前述のとおり、自損事故ならば向こう3年間の試算を行い、保険料アップと自腹での修理代を比較検討してみましょう。3等級下がると、その後3年間は負担が大きくなるため、できるだけ事故を起こさないよう安全運転に努めることが大切です。
同じ等級でも保険料が異なる場合がある
1等級から6等級までは等級ごとの割増引率が適用されるため、事故あり係数・無事故係数による区別はありません。しかし、7等級から20等級は事故あり係数か無事故係数かで割引率が変わり、同じ等級でも保険料が異なるのです。
例えば初年度から1年間無事故という方と、前年10等級だったが3等級下がる事故を起こした方では、同じ7等級でも割引率は異なります。割引率は10%程度の差があるのが一般的でしょう。8等級以上では等級ごとに違いはあるもののそれぞれ13〜22%程度とさらに差は大きく設定されています。
これは等級制度が、等級を一律に取り扱うのではなく、そこに至った経緯を重視しているためです。つまり、等級制度は契約者に対して、無事故であり続けることを求めている制度だということです。保険料を抑えるためにも、無事故で過ごせるように安全運転を心がけることが大切なのです。
事故で保険を使った場合の等級の扱いについて
一般に事故を起こして保険を使うと等級は下がります。等級の下がり幅は事故の内容や原因によって区分けされています。3等級下がる場合や1等級しか下がらない場合、全く下がらない場合もあります。
安易に保険を使った結果、負担が増す事態に陥らないためにも、どのような場合にどれくらい下がるのかを正確に把握したうえで、保険を使うかどうか考えましょう。ここでは、事故で保険を使う場合、どのような事故で等級がどう変わるか、具体的な例を示しながら解説します。
原則として3等級下がる
事故で保険を使うと、原則として3等級下がります。3等級下がる事故は、一般的な多くの自動車事故が該当するといって良いでしょう。つまり、次項で解説する「1等級下がる事故」および「ノーカウント事故(等級に影響しない事故)」のどちらにも該当しないものです。
具体的には対人賠償や対物賠償、自損事故による傷害、接触、自動車が衝突、接触、転覆、墜落した事故を指します。これらの事故で保険を使うと、3年間は事故あり係数が適用されるため割引率は下がり、支払う保険料も上がります。
事故の内容や原因によっては1等級下がる
等級が1つ下がる事故は、事故の内容や原因が定められています。次に示す「内容」「原因」の両方を満たさねばなりません。下がるのが1等級だったとしても、無事故係数適用の方にとってはそれなりの負担増でしょう。なぜなら、事故あり係数が適用されるため、下がる等級は1つでも割引率も下がるからです。
しかし、3等級下がる事故ほどの負担増ではないため、比較的保険は使いやすいケースともいえます。内容や原因から適用できるかどうか、保険を使ったほうが良いかどうかを検討しましょう。
1等級下がる事故の内容
1等級下がる事故の内容とできるのは、以下のいずれかのケースに当てはまる場合です。
- 車両本体のみの補償に使う
- 車の身の回りの品だけの補償に使う
- 上記の1及び2の両方の補償に使う
- 車両本体のみ及びノーカウント事故の補償に使う
- 車の身の回りの品及びノーカウント事故の補償に使う
- 上記の4及び5の両方の補償に使う
1等級下がる事故であるとされているのは、車や車の身の回りの品、ノーカウント事故の範囲内での補償に限定されていることが特徴です。事故によって他の建物や設備、人への補償が必要ない、比較的被害の小さい事故であるといえます。
1等級下がる事故の原因
1等級下がる事故が適用できるのは、以下のいずれかの原因に当てはまる場合のみです。
- 火災または爆発(ただし契約自動車以外のものとの衝突や接触、墜落、転覆を原因とする火災は除く)
- 盗難
- 社会で起こる集団による騒乱または労働争議に伴う暴力または破壊行為
- 台風や竜巻、洪水、高潮など自然災害による水没や浸水
- 契約自動車への落書きやいたずら等の直接的な人為的行為(ただし、契約自動車の運行中の事故や被保険者の行為による損害、契約自動車を破損・汚損する意図がないことが明らかな損害は除く)
- 飛来中または落下中のものとの衝突
- 上記1〜6以外の、偶然な事故によって生じた損害
いずれも防ぐことが難しい、または防げないことが原因のものばかりです。上記のような原因による事故は、保険を使っても1等級しか下がりません。
等級が下がらない事故の例(ノーカウント事故)
自身の保険を使っても等級が下がらない事故をノーカウント事故といいます。このノーカウント事故に該当するのは「契約者の危険度を直接的に示すものではない」ときです。たとえば、下記のような事故に、保険適用された場合をさします。ノーカウント事故の場合、等級制度では事故件数としてはカウントしないため、保険を使っても等級は下がりません。保険期間中、他に事故がなければ次年度も等級が上がり割引率も上がります。
- 人身傷害保険
- 搭乗者傷害保険
- 無保険車傷害特約
- 弁護士費用補償特約
- ファミリーバイク特約
- ファミリー傷害特約
- 被害者救済費用特約
- 自転車賠償特約
また、無事故係数適用から事故あり係数適用に変更されることもありません。なお詳細は保険会社によって異なるため、あらかじめ確認しておくようにしましょう。
自動車保険の等級を引き継ぐ2つのパターン
被保険者の自動車保険の等級などの情報は、日本損害保険協会によって保険会社各社で共有されているため、以下の2つのパターンで引き継ぐことが可能です。
- 自分の等級を引き継ぐ
- 条件を満たす親族に等級を引き継ぐ
補償と保険料のバランスを考えて、他の保険会社を変更する場合も等級を引き継げますし、配偶者または同居の親族親族にも引き継ぐことができます。例えば、まだ免許を取ったばかりの子どもが、父親の等級を引き継ぐと高い割引率が適用されるため、保険料を安く抑えられます。
それぞれの引き継ぎに必要な条件などについて詳しく解説します。
自分の等級を引き継ぐ
自分の等級を引き継ぐケースとして考えられるのは、今の保険契約に登録している自動車を変更する場合と、今の保険会社から他の保険会社に乗り換える場合です。
- 登録自動車を変更する
変更後の自動車の損害を補償できる金額の車両保険に変更するため、保険料に差額が発生するが、等級はそのまま引き継げる(保険料は高額な自動車に変更すると上がり、低い価値の自動車に変更すれば下がる)
- 保険会社を乗り換える
等級はそのまま引き継げるが、乗り換える時期によって適用される等級が異なる(旧自動車保険の解約日と、新自動車保険の開始日を同日にするのが理想的)
また乗り換えるタイミングは、今加入している保険満期日に、新しい保険の補償開始日にするのが一般的です。同じ自動車に自動車保険を2つかけることはできませんが、保険の効力が発生する「基本補償開始時間」が重ならなければ問題はありません。
ただし、何らかの事情で期間が空いてしまう場合は7日以内に補償を再開しないと、等級がリセットされてしまうため、タイミングに注意しましょう。
条件を満たす親族に等級を引き継ぐ
自分以外にも、次のような条件を満たす親族であれば等級を引き継ぐことができます。
- 記名被保険者(登録自動車の主な運転者)の配偶者(同居でなくても可)
- 記名保険者の同居親族
- 記名保険者の配偶者の同居親族
自動車保険では保険契約者と実際に運転する方が同じことも多いですが、そもそも等級は保険料を支払う保険契約者のものではありません。等級は記名被保険者、つまり保険契約に登録している自動車の主な運転者のものです。
そのため等級を引き継ぐ場合は記名保険者を中心とします。例えば等級は高いがあまり運転しない母親が子どもに等級を引き継げば、本来6等級からスタートするはずの子どもの保険料は、20等級の割引率を適用することも可能です。
子どもに等級を引き継いだ場合、母親は別の保険契約を6等級から始める必要があります。しかし年齢や免許証の色などが考慮されるため、子どもが新規で6等級の保険に入るよりも保険料を抑えることが可能です。家計全体で考えて節約をするのであれば、賢い方法でしょう。
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おわりに
自動車保険にある等級制度は、契約者が支払う保険料を状況に適した金額に調整する仕組みです。6等級からスタートし、無事故で保険を使わなければ1年後に1等級上がります。最高で20等級まで上がり、割引率は19%から63%と保険料支払いも大幅な節約が可能です。
しかし事故などで保険を使うと等級は下がります。下がる等級の幅は使った内容によって異なりますが、一般的には3等級、場合によっては1等級です。
しかも事故あり係数が適用されるため、同じ等級でも割引率が下がり、保険料負担が大きくなります。元の無事故係数適用に戻るまでの期間は内容によって異なりますが、3等級下がる事故なら3年、1等級下がる事故なら1年かかります。
このような等級の仕組みを知っていれば、日頃の安全運転を心がけることがいかに大切であるかがわかるでしょう。上限である20等級なら同じ補償内容でも支払う保険料は低く抑えることが可能です。
また、等級は親族だけでなく、他の保険会社に引き継ぐこともできます。セゾン自動車火災保険の提供供する「おとなの自動車保険 」なら、年齢は1歳刻み、事故率に応じた保険料体系なので、事故率の低い世代はもちろん、20~30代の保険料も納得できる保険料となることでしょう。
等級の引き継ぎを上手に活用して、家計の出費をトータル的に抑えましょう。
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