自転車保険の義務化が全国的に拡がりを見せています。自転車保険は、事故による個人賠償責任を補償するものです。高額な賠償金が請求されるケースが相次いでいることが義務化の進む背景にあります。このコラムでは自転車保険の義務化について詳しく説明し、保険の選び方もご紹介します。
自転車保険の義務化が全国に拡大
自転車保険は2015年10月に兵庫県で義務化されて以降、全国的に拡大しています。拡がりを見せている理由は、自転車事故による損害賠償訴訟が相次ぎ、高額な賠償責任が課せられる例が増えており、被害者の保護と加害者の経済的な負担を軽減するという2つの観点から必要性が増しています。
自転車事故での賠償金の判決事例
近年、自転車事故に対する裁判では、高額な賠償金の請求をされることも多く、2013年には1億円近い賠償金の判決が下されています。
判決が下りた日 | 賠償金 | 事故の内容 |
2003年9月30日 | 6,779万円 | ペットボトルを片手に持ってスピードを落とさず坂を走行してきた男性が38歳女性と衝突して女性は死亡 |
2007年4月11日 | 5,438万円 | 信号表示を無視して交差点に進入した男性が、青信号で横断歩道を横断中の女性と衝突し、女性は死亡 |
2008年6月5日 | 9,266万円 | 男子高校生が車道を斜めに横断し、対向車線を自転車で走る男性会社員と衝突し、男性に重大な障害が残った |
2013年7月4日 | 9,521万円 | 男子小学生が夜間に歩行中の女性と正面衝突し、女性は意識が戻らない状態となる |
2014年1月28日 | 4,746万円 | 男性が昼間、赤信号を無視して交差点を直進、青信号で横断歩道を横断中の 75歳女性に衝突した。女性は脳挫傷などを負い5日後に死亡 |
自転車による重大事故は増加しており、全交通事故件数に占める自転車事故の割合は2割を超えています。また、自転車事故による死傷者数は未成年者と高齢者で半数を占めているのが実情です。
自転車保険の目的
自転車保険の目的は、被害者がしっかり賠償を受けられるよう保護する点と、高額な賠償金による加害者の経済的負担を減らすという点にあります。
自分がケガをする、歩行者にケガをさせる、財物を損壊するという3つのリスクがあります。道路交通法上、自転車も車両の一種であり、法律違反により事故を起こした場合は「重過失致死傷罪」など刑事上の責任が発生することは自動車と変わりありません。
被害者に対しても民事上の損害賠償責任を負うことになり、未成年であっても賠償責任から免れず、親が賠償責任を負う場合もあります。自転車保険に加入していない場合は、このような賠償金の支払いを全額自分で負担しなければなりません。
自転車保険を義務化している自治体
自転車保険を義務化している自治体は増え続けており、2021年10月現在で以下の自治体が義務化、もしくは努力義務としています。
条例の内容 | 自治体 |
義務 | 宮城県・山形県・群馬県・埼玉県・東京都・神奈川県・山梨県・長野県・静岡県・愛知県・三重県・滋賀県・京都府・大阪府・兵庫県・奈良県・愛媛県・福岡県・熊本県・大分県・宮崎県・鹿児島県 ※上記の他、政令指定都市では、千葉市・岡山市において義務条例を制定済み |
努力義務 | 北海道・青森県・茨城県・千葉県・富山県・和歌山県・鳥取県・徳島県・香川県・高知県・佐賀県 |
今後、努力義務が義務に変わるところもあるでしょうし、現在は義務化をしていない地域も条例が制定される可能性があります。居住地域で義務化されていなくとも、ご自身と被害者を守るため、万が一の事態に備えて保険加入が求められている状況です。
自転車保険の補償内容
自転車保険は、高額な賠償に対応できるだけの個人賠償責任補償が付いたものでなければなりません。さらに、自分自身のケガに備えた補償も必要です。自転車保険に加入していても、個人賠償責任補償額が充分でない、運転者の傷害補償がない保険では充分な備えとはいえません。ここでは、自転車保険の補償内容についてご紹介します。
個人賠償責任補償
自転車保険の個人賠償責任補償は、事故により他人を死傷させた場合、あるいは他人の財物を損壊した場合などで損害賠償責任が発生した場合に補填を行うものです。自転車保険には個人賠償責任補償が付いていない商品もあるため、加入時にはよく確認しなければなりません。
保険によっては、被害者から損害賠償を請求された場合、加害者である被保険者に代わって被害者側と保険会社が交渉する示談交渉サービスや、弁護士に委任した場合の費用の補償が付帯されているプランもあります。事故を自身だけで解決するのは難しく、これらのサービスがあれば事故後の手続きもスムーズに進みます。
傷害補償
自転車保険に加入する際は、運転者自身の死傷に備えることも必要です。傷害補償の内容は、被保険者が死亡した場合に受け取る死亡保険金、事故による入院や手術を行なった場合に受け取る給付金、さらに入院を伴わない通院で受け取る通院給付金などがあります。金額や補償内容は保険によってさまざまであるため、内容をよく確認して契約しましょう。
自転車保険の選び方
自転車保険を選ぶときは、義務化の趣旨に沿って個人賠償責任補償が付いたものを選ぶことが大切です。セットされていない商品もあるため、加入の際には補償内容をよく確認しましょう。また補償の額は、賠償を補填するのに充分でなければなりません。家族全員が補償される商品を選べば、それぞれが契約するよりも保険料がお得になります。ここでは、自転車保険の選び方について見ていきましょう。
個人賠償責任補償付きを選ぶ
自転車保険を義務化する条例では、主に加害事故を起こした場合に、被害者への個人賠償責任補償が付いている保険に加入することを定めています。多くの自転車保険には個人賠償責任補償が付いていますが、付いていない保険に加入している場合は賠償責任が補填されず、加入義務に沿わないことになるため注意が必要です。
補償額の目安
近年の裁判例では1億円近い賠償金が課せられてたことがあります。個人賠償責任補償は、そのような高額な賠償責任も補填できるような内容でなければなりません。補償は1億円以上や金額が無制限というものもあるため、できるだけ高額の補償を選ぶのが良いでしょう。
高額であるほど安心ですが、一般的に、補償金額が上がれば保険料も高くなることが一般的です。毎月の保険料が過度の負担にならないか、確認しておきましょう。
家族全員が補償されるものを選ぶ
自転車保険の加入義務はすべての方が対象です。家族全員が補償される保険を選ぶようにしましょう。特に子どもや高齢者は自転車搭乗時に自身が事故に遭う確率も高く、保険に加入する必要性が高くなります。
自転車保険は月額数百円程度の保険料で加入できる場合がほとんどですが、家族が個別で加入する場合、家族の人数によっては保険料が大きくなります。
家族全員が補償される保険を選べば、それぞれに加入するよりも保険料の節約になります。家族を対象にした自転車保険はたくさんありますが、補償内容や対象の範囲は異なるため、よく確認して選ぶようにしてください。
おすすめは「自転車トラブル安心保険」
自転車保険としてさまざまな商品が販売されています。おすすめはセゾン自動車火災保険株式会社が提供する自転車トラブル安心保険です。自転車保険の加入義務化に対応しており、申し込み日時点で満65歳以下であれば加入できます。
最大2億円の個人賠償責任補償が付いており、高額な賠償責任にも対応できるため安心です。ご自身のケガの補償やお相手への個人賠償責任補償が付いている他、ご家族がケガをした場合に備えるプランも用意しています。提供するプランは以下の通り2種類あり、どちらもお相手への個人賠償責任補償はご家族にも適用されます。
コース名 | 月額保険料 | 補償内容 |
本人コース | 400円 | ・本人、配偶者、家族※1の個人賠償責任補償 ・交通事故でのケガによる死亡保険金 ・入通院保険金、手術保険金※2 |
家族コース | 800円 | ・本人、配偶者、家族※1の個人賠償責任補償 ・交通事故でのケガによる死亡保険金 ・入通院保険金、手術保険金※3 |
- ※1 本人またはその配偶者の同居の親族(6親等内の血族および3親等内の姻族)、本人またはその配偶者の別居の未婚の子
- ※2 本人のみ対象
- ※3 本人、配偶者、本人またはその配偶者の子(生後15日以上満25歳未満)が対象
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自転車保険の義務化における注意点
自転車保険に関しては、いくつか注意しておきたい点があります。加入義務が生じるのは条例がある地域に居住している場合だけでなく、その地域を自転車で走行する場合も含まれます。
また、自転車保険を単体で契約しなくても、他の保険の特約で補償できる場合があります。補償が重複していないか、確認が必要です。ここでは、自転車保険加入に際して注意したい点についてお伝えします。
義務化地域で運転する場合は加入が必要
加入を義務付けている自治体では「地域外の居住者が訪れて自転車を運転する場合も条例の対象となる」としています。居住する地域の自治体では義務でない場合でも、自転車で走行する地域で義務とされていれば加入が必要です。
条例で加入義務が定められているにもかかわらず加入しない場合、罰則はなくても条例違反になります。地域によっては、学校や会社で自転車による通学や通勤が認められない場合もあります。
通勤や通学で毎日地域外を走行する場合はもちろん、用事ができて自転車で出向く場合や、観光地でレンタサイクルを利用するといった場合にも加入が必要です。義務とされていない地域に住んでいる場合でも、自転車の利用範囲が広い方は保険に加入しておいた方が良いでしょう。
その他の保険の特約で補償できる場合も
自転車保険を義務とする自治体では個人賠償責任補償を付けていることが必要ですが、自転車保険単体の契約をしなくても、自動車保険や火災保険などの特約で個人賠償責任補償がカバーできる場合があります。これらの特約を契約していないか、チェックしてみてください。
個人賠償責任補償が付いていても、さらに自治体の条例に適応する内容であるかどうかの確認が必要です。特に1億円以上の補償が付いているかどうかを確認してください。
一般的に、特約による個人賠償責任補償よりも単体の自転車保険のほうが補償内容は充実しています。被保険者自身の怪我に対する補償や家族の個人賠償責任補償などは、特約ではカバーできない可能性もあります。
複数の保険に加入している場合、すべての保険において請求できるわけではありません。補償は実際に生じた損害に応じた額だけ補償するもので、一方の保険で損害を補填できれば、それ以外の保険では補償されず、保険として無駄になってしまいます。
自転車保険の方が居住する地域の条例の義務化に対応できると判断できる場合は、その他の保険の特約を外して自転車保険に入ることも検討してみてください。
TSマーク付帯保険の場合
TSマーク付帯保険の存在も把握しておきましょう。TSマーク付帯保険とは、自転車安全整備店の認定を受けた店舗で自転車安全整備士が点検整備した自転車に付けられる保険です。「TS」はTRAFFIC SAFETY(交通安全)の頭文字をとっています。
TSマーク付帯保険は2種類あり、青(第一種)または赤(第二種)のTSマークが自転車に貼付されています。それぞれの補償内容は以下の通りです。
賠償責任補償(死亡若しくは重度後遺障害) | 傷害保険 (死亡若しくは重度後遺障害) | 傷害保険 (入院15日以上) | 被害者見舞金 (入院15日以上) | |
第一種TSマーク(青色) | 上限1,000万円 | 30万円 | 1万円 | - |
第二種TSマーク(赤色) | 上限1億円 | 100万円 | 10万円 | 10万円 |
赤色のTSマークであれば、1億円という高額な補償がつきます。TSマーク付帯保険の有効期限は、マークに記載されている日から1年間です。補償の対象は、自転車の所有者だけでなくTSマークが貼付された自転車に乗る家族や第三者も含まれます。
1年ごとに自転車整備士の点検を受ければ補償が継続するという仕組みで、自転車の安全な整備を確保しながら補償もできるのがメリットです。TSマーク付帯保険を付けるには自転車安全整備店で整備を受けることが必要であり、自転車安全整備店の店章があるところで整備を受けるようにしてください。
罰則の規定はない
自転車保険には罰則の規定がなく、加入していなくても特にペナルティを課せられるわけではありません。しかし、万が一事故を起こした場合の賠償金は全額自分が負担しなければならず、備えとして加入することは必要です。
自転車に乗っていると歩行者や車と接触することが絶対にないとはいえず、その結果損害を与えれば賠償責任が発生します。義務化されているから入るのではなく、自転車に乗ることで事故を起こす可能性があることを想定して備えなければなりません。
おわりに
自転車保険の義務化が加速しています。居住地域で条例の制定がなくても、走行する地域で義務化されていれば自転車保険に加入しなければなりません。住んでいる地域やいつも走行している地域が義務化されているかどうか確認しておきましょう。
自分自身と被害者を守るためには、義務化されているかどうかにかかわらず自転車保険の加入を検討することも必要です。
自転車保険は条例に適応するものでなければならず、個人賠償責任補償が付いていることが必要です。賠償金は高額になる傾向があり、それに合わせた補償金額の商品を選ばなければなりません。
義務化に対応した自転車トラブル安心保険であれば上限2億円の個人賠償責任補償がつき、ご家族も対象です。これから加入を検討される方は、ぜひ下記よりチェックしてみてください。
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