福利厚生として生命保険に加入したいけれど、商品が多過ぎると悩んでいませんか?生命保険は法人保険という法人向けの商品もあり、従業員や役員の福利厚生ができるうえ、保険料の全部、あるいは一部が損金にできるメリットがあります。
このコラムでは、福利厚生で活用できる保険種類や、メリット・デメリット、注意点についてご紹介しています。生命保険で福利厚生を充実させたいと考えている事業主はぜひ最後までお読みください。
法人保険は損害保険もありますが、このコラムでは定期保険、養老保険、終身保険、医療保険・がん保険についてご紹介します。しかし、保険料を長期にわたって支払い続ける必要があり、解約するタイミングによっては元本割れするため注意が必要です。法人保険を検討する際は、目先のキャッシュフローだけでなく、企業の収支のバランスを考える必要があるでしょう。
生命保険を使えば福利厚生にもつながる
法人に生命保険はいらないと感じている事業主もいるかもしれません。しかし、法人向けの生命保険は役員や従業員の退職金や、万が一の保障などさまざまな用途があるため、企業の福利厚生の充実に役立ちます。ここでは、なぜ法人向けの生命保険が福利厚生の充実に役立つのか?法人向けの生命保険の種類についてご紹介しましょう。
福利厚生の観点から考える保険とは
法人を契約者とする保険のことを法人保険といい、役員の退職金準備や遺族の生活費の保障、従業員の病気やケガの際の見舞金、従業員が亡くなった際の弔慰金などの福利厚生制度の整備など人材確保や流出などさまざまな目的で加入します。
保険の契約者は、保険の手続きや保険料の払い込みをする役割があるため、法人を契約者として保険に加入することで福利厚生を充実させることができるのです。
保険の種類
このコラムでは法人保険のうち、生命保険に当たる定期保険・養老保険・終身保険と、生命保険の中でも第三分野といわれる医療保険・がん保険についてご紹介しましょう。
定期保険
定期保険とは、一般的に満期がある保険全般を指しますが、ここでは保険期間に満期があるタイプの死亡保険とします。定期保険は保険期間中に万が一のことがあると死亡保険金が支払われますが、満期が過ぎると、万が一のことがあっても保険金は支払われません。
定期保険は更新をすることで、告知をすること無く継続が可能です。しかし、更新の際は更新時の年齢や保険料率に応じた保険料が適用されるため、ほとんどの場合は更新するごとに保険料が高くなります。
一般的に定期保険は掛け捨てで、解約しても戻ってくるお金はまったく無いか、あってもごくわずかです。ただし、法人向けの定期保険の中には、保険期間を長期間に設定することで貯蓄性を持たせた商品もあります。
養老保険
保険期間に満期があり、保険期間中に万が一のことがあると死亡保険金が支払われる点は定期保険と同じです。しかし、養老保険の場合は満期を迎えると死亡保険金と同額の満期保険金が受け取れます。そのため、養老保険は「生死混合保険」といわれます。
例えば、保険期間10年、死亡保険金1,000万円の養老保険に加入していた事例を見ていきましょう。
この場合、保険期間10年の間に万が一のことがあると死亡保険金1,000万円が支払われますが、万が一のことが起こらずに10年経過した場合は、死亡保険金と同額の1,000万円の満期保険金を受け取れます。
ただし、保険会社によっては基本保険金額の2倍の満期保険金が受け取れるなど特殊な商品もあるため、必要な方は探してみましょう。
養老保険は保険期間がありますが、定期保険のように掛け捨てではありません。また、死亡保険金と同額の満期保険金が受け取れるため、定期保険や次にご紹介する終身保険よりも保険料が高い傾向があります。
終身保険
終身保険とは、一般的に保障が一生涯継続する保険全般のことです。そのため、ここでは保障が一生継続する死亡保険とします。終身保険は更新がないことから保険料が変わることがありません。
解約をすると解約返戻金というお金を受け取れるため、定期保険より保険料は高くなり、養老保険よりは安くなる傾向があります。
医療保険・がん保険
医療保険とは、ケガや病気で手術や入院などを保障するための保険。また、がん保険はがんで手術や入院などを保障するための保険です。
医療保険・がん保険にもそれぞれ保険期間がある定期タイプと、保障が一生涯継続する終身タイプがあります。
法人保険に加入するメリット
企業が法人保険に加入するとどのようなメリットがあるのでしょうか?ここでは企業が法人保険に加入するメリットを3つご紹介しましょう。
経営悪化などの事業リスクを回避できる
事業主を被保険者とした法人向けの死亡保険に加入しておくと、事業主に万が一のことがあった場合に、保険金を従業員の当面の給料や、賃料、光熱費などの事業継続資金に充てることが可能です。
特に中小企業は事業主兼、営業パーソンになっている傾向があるため、事業主に万が一のことがあると売上、利益に大きな影響を与え、会社が立ち行かなくなる可能性があるかもしれません。また、借入金が残っていると、事業主の死亡をきっかけに金融機関からの融資引き上げや、新規融資停止によって資金繰りが悪化する可能性もあります。
経営者に万が一のことがあると、会社が多くのリスクにさらされる可能性があるため、死亡保険で備えておきましょう。
福利厚生に利用できる
法人保険の中には、解約をすると解約返戻金が受け取れる商品もあります。法人保険は、万が一のことがあれば役員や従業員の遺族に死亡保険金が支払われるうえ、解約返戻金や満期保険金を利用して役員や従業員への退職金の支払原資にできるなど、福利厚生を充実させることも可能です。
また、契約する段階で、解約したときの解約返戻金や満期保険金のおおよその金額がわかるため、退職金を計画的に準備できるでしょう。
資金繰りに利用できる
終身保険の解約返戻金や養老保険の満期保険金といった貯蓄性のある商品は、企業の資金繰りに利用することが可能です。保険の中には、解約返戻金や満期返戻金の一定割合までお金を借りることができる、契約者貸付制度が利用できる商品もあります。
こうした契約者貸付制度を利用できる保険に加入しておくと、企業の資金繰りが悪化した場合でも審査なしで一定額まで資金調達をすることが可能です。
法人保険に加入するデメリット
法人保険に加入する際はデメリットもあります。主なデメリットについて3つご紹介しましょう。
保険料の支払いが負担になる
節税対策や福利厚生のために法人保険に加入すると、保険料の負担が生じます。事業資金に余裕がない企業や、一時的に業績が厳しい企業にとっては、保険料の支払いが負担に感じるでしょう。
解約するタイミングによって損するケースがある
法人保険を解約したときに受け取る解約返戻金は、解約するタイミングによっては、払込保険料総額よりも解約返戻金の方が少ない、いわゆる元本割れが生じる可能性があります。
特に保険に加入して早期に解約すると大きな損失になる傾向があるため、保険料を継続して払うことができるのか、加入を決める前に慎重に検討しましょう。
保険金や解約返戻金には税金がかかる
法人保険に加入して、万が一のことが起こったときの保険金や、解約したときに受け取れる解約返戻金を受け取ると、会社の益金になることから法人税の課税対象となります。法人保険で相続税や贈与税の納税資金や福利厚生の資金を準備するときは、法人税を支払うことを考慮して保険金額や解約返戻金、満期保険金を設定することが大切です。
<役員向け>福利厚生のための生命保険
福利厚生を充実させるための生命保険は、大きく役員向けと従業員向けに分けられます。まずは役員向けの生命保険についてご紹介しましょう。
定期保険
定期保険は保険期間に満期がある掛け捨ての保険のことをいいますが、法人向けの定期保険は万が一のことが起こったときは死亡保険金が受け取れるのはもちろんのこと、保険の満期を99歳や100歳とすることで、解約返戻金が受け取れる設計にできる商品があります。
この解約返戻金は役員に退職金として支払うと法人にとっては適正額であれば損金算入できるうえ、個人にとっては退職控除額を差し引くことが可能です。
終身保険
定期保険で退職金を準備していると、保険商品の仕組上、一定年齢を超えると受け取れる解約返戻金が減少していく傾向がありますが、終身保険は万が一のことがあれば死亡保険金が受け取れるうえ、基本的に解約返戻金が減少することがありません。支払った退職金は定期保険のケースと同様に適正額であれば損金算入ができます。
ただし、終身保険で会社負担した保険料は損金にならないため注意しましょう。
<従業員向け>福利厚生のための生命保険
次に従業員の福利厚生を充実させるための生命保険と、医療保険・がん保険の活用方法について見ていきます。ここでは、生命保険のうち養老保険を使ったプランと、医療保険・がん保険に加入するプランの2つをご紹介しましょう。
養老保険
養老保険を使って従業員の福利厚生を充実させることができます。
従業員を被保険者として養老保険に加入することで、途中退職、定年退職の時には退職金の支払原資として、また従業員に万が一のことがあったときは、遺族への死亡退職金や弔慰金の支払原資として活用が可能です。
また、法人向けの養老保険は契約形態を以下のようにすることで、会社負担した保険料の1/2を福利厚生費として損金算入できます。
契約者 | 被保険者 | 保険金受取人 | |
法人 | 役員・従業員(普遍的加入) | 満期保険金 | 死亡保険金 |
法人 | 被保険者の遺族 |
医療保険・がん保険
従業員の福利厚生を充実させる方法として、医療保険・がん保険に加入する方法も有効です。これらの保険を会社で準備しておけば、ケガや病気、がんなどで手術や入院したときに、従業員が抱える経済的な不安を軽減できるでしょう。
充実した福利厚生は、従業員の長期定着や離職防止、新たな人材採用につながることも期待できます。
福利厚生で生命保険を利用する際の注意点
福利厚生を充実させると、従業員のモチベーションが上がり、長期定着や離職防止に役立つメリットがある半面、注意点もあるため、確認しておきましょう。
収支のバランスを考えて加入することが大切
法人保険に加入すると役員や従業員の福利厚生を充実させることができますが、保険料を長期にわたって支払い続けていくことが前提です。
企業で利益が出ているときは保険料を支払う余力があるかもしれませんが、業績が厳しいときは保険料が負担になる可能性があります。
しかし、保険料が負担だからといって解約をすると大きく元本割れする場合がありますが、元本割れを避けようとして無理に保険料を支払い続けると会社のキャッシュフローをさらに悪化させてしまいかねません。
法人保険に加入するときは目先のキャッシュフローだけではなく、収支のバランスを考えながら将来を見据えたプランを提案できる、法人保険の経験が豊富なコンサルタントに相談することが必要です。
おわりに
法人向けの生命保険に加入することで、役員や従業員の福利厚生を充実させることができます。ただし、保険に加入するということは保険料を支払う必要があるため、加入後、長期にわたって保険料を支払い続けられるか加入前に慎重に検討しましょう。また、法人向けの生命保険は役員向け、従業員向けなどさまざまな種類があるため全て加入するわけにはいきません。企業の状況を考慮して優先順位を決めて加入を検討しましょう。