自転車は比較的重量も軽く、盗難に遭いやすい乗り物です。施錠をしたにもかかわらず盗まれてしまうケースも多く、盗まれると戻ってくることはあまり期待できません。自転車の盗難リスクに備えるには、自転車盗難保険の加入などが考えられます。この記事では自転車盗難の実態や、自転車盗難保険の種類、自転車を盗まれにくくする方法などを解説します。
自転車の盗難被害の実態
最初に、最新のデータから自転車の盗難被害の件数や検挙率などの実態を紹介します。
自転車の盗難件数と検挙件数
以下は、警察庁「令和4年の刑法犯に関する統計資料」から、2013年から10年間の自転車盗難件数と検挙件数の推移をまとめた表です。
年度 | 盗難件数 | 検挙件数(検挙率) |
2013年 | 303,273 件 | 16,560件(5.5%) |
2014年 | 292,221件 | 15,320件(5.2%) |
2015年 | 260,530件 | 14,103件(5.4%) |
2016年 | 236,215件 | 13,587件(5.8%) |
2017年 | 205,381件 | 13,191件(6.4%) |
2018年 | 183,879件 | 11,677件(6.4%) |
2019年 | 168,703件 | 11,004件(6.5%) |
2020年 | 120,797件 | 9,559件(7.9%) |
2021年 | 106,585件 | 8,508件(8.0%) |
2022年 | 128,883件 | 8,936件(6.9%) |
盗難件数は、2013年から2021年の間に減少し続けてきました。2022年は若干増える結果となりましたが、2013年から約1/3となる著しい減少となっています。
盗難の検挙率は、少しずつ上昇しているとわかります。とはいえ、10年間で検挙率が10%を超えた例はなく、自転車を盗まれると犯人はほぼ見つからないと考えたほうがよさそうです。
被害に遭いやすい場所
次に、同資料から2022年の自転車盗難の発生場所ごとの件数を施錠の有無ごとに見ていきましょう。
施錠あり | 施錠なし | |
駐車場・駐輪場 | 8,614件 | 13,202件 |
道路上 | 6,601件 | 9,188件 |
住宅 | 19,412件 | 31,329件 |
商業施設 | 3,187件 | 7,770件 |
学校・幼稚園 | 568件 | 1,936件 |
駅 | 3,769件 | 8,337件 |
その他 | 4,589件 | 10,351件 |
合計 | 46,770件 | 82,113件 |
自転車の盗難は施錠の有無にかかわらず、住宅や駐車場(駐輪場)で多く発生していることがわかります。施錠していても盗難を避けきれないケースもありますが、施錠ありの盗難件数は施錠なしの約半分です。自宅の敷地内でも、自転車の施錠を習慣づけましょう。
自転車が盗まれた?と思ったら取るべき対応
自転車の盗難被害に遭った場合、どのように対応すべきでしょうか。取るべき行動の流れを解説します。
慌てずに周囲を確認する
駐輪したはずの場所に自転車がない場合、まずは落ち着いて周囲を確認しましょう。自転車を停めた場所を勘違いしていないかなどを振り返ってみます。
停めた場所が自転車を停めてはいけない場所だった場合、撤去された可能性もあります。撤去されたかもしれない場合、自治体の担当部署に問い合わせてみましょう。
警察に被害届を出す
自転車がどうしても見つからず、撤去されたわけでもない場合、盗まれたと考えられます。警察署または交番に出頭し、被害届を出しましょう。
警察への届け出る際には、自転車の防犯登録番号が必要になります。防犯登録番号は自転車の販売店から交付される書類に記載されています。もし、購入時の書類が見つからない場合、販売店に問い合わせると教えてもらえるでしょう。
その他、届出時には身分証明書、自転車の車体番号がわかる書類、印鑑があれば届出受理がスムーズとなります。
自転車の盗難に対する補償はある?
自転車の盗難には、以下の3つの保険で備えられます。
- 販売店・メーカーの盗難補償
- 自転車の盗難保険
- 火災保険(家財保険)の盗難補償
販売店・メーカーの盗難補償
自転車の盗難に備え、販売店や自転車メーカーの取り扱う盗難補償に加入する方法があります。
サイクルベースあさひ「サイクルメイト」
大手自転車量販店のサイクルベースあさひでは、自転車を購入した顧客が加入できる自転車総合保証サービス「サイクルメイト」を提供しています。サイクルメイトは有料のサービスで、3年間有効です。
盗難補償は自転車が盗まれた場合に、所定の割引金額で新車を購入できます。たとえば、30万円未満の自転車(電動アシスト自転車以外)を購入1年目に盗まれた場合、自転車本体価格(税抜き)の20%(消費税別)で新車を購入できます。
ブリヂストン「3年間自転車盗難補償」
大手自転車メーカーのブリヂストンは「ブリヂストン3年間自転車盗難補償」を提供しています。対象車種であれば無料で加入できますが、加入には登録が必要です。盗難補償では、自転車は3,300円(税込み)、電動アシスト自転車はメーカー希望小売価格30%(消費税別)で新車を購入できます。
自転車の盗難保険
最近ではいくつかの保険会社から、自転車の盗難保険が発売されています。補償内容は自転車の盗難を補償するもの、自転車の故障や破損も補償するタイプなどがあります。
加入時に、自転車の購入金額を証明する書類の必要な商品がほとんどです。加入条件や補償内容は商品によって異なるため、希望する条件の商品を選ぶ必要があります。
加入条件や補償内容の例
自転車の盗難保険の商品ごとの加入条件や、補償内容の一例を紹介します。
【自転車の盗難保険の加入条件】
自転車の購入金額 | 5,000円以上 10,000円以上 100,000円以上 など |
盗難保険に加入できる期間 | 購入後1ヵ月以内 購入後90日以内 いつでも加入できる など |
対象となる自転車 | 新車のみ 中古車も可 |
補償期間 | 1年 2年 など |
更新 | なし あり |
その他 | 防犯登録が必要 契約後のプラン変更はできない など |
【自転車盗難保険の補償内容など】
免責金額 | 購入金額×30% など |
保険金額の上限 | 500,000円 995万円 など |
保険金が支払わない条件 | 未施錠自転車放置禁止区域での盗難 警察へ盗難届をしていない など |
火災保険(家財保険)の盗難補償
自転車を盗まれた場合、火災保険の家財の補償に「盗難補償」が含まれていれば、補償対象となる可能性があります。
自宅保管中の自転車が補償の対象
火災保険の家財の盗難の場合、基本的には自宅で保管中であることが補償の条件となります。自宅の敷地内、または集合住宅の指定駐輪場に収容されている状態で盗まれてしまったならば、対象となる可能性は高いでしょう。
一方で、駅やスーパーの駐輪場、公園など自宅の敷地外で盗まれてしまった場合は、補償対象外となってしまうケースがほとんどです。
自転車の盗難に遭わないための対策
自転車は施錠していても盗まれてしまう場合もあり、盗難のリスクをゼロにすることは難しいかもしれません。ただし、自転車は盗まれると戻ってくる確率は低く、盗まれないための工夫は必要です。ここでは、自転車の盗難を防ぐための対策を紹介します。
施錠の工夫をする
自転車の施錠をする際に鍵のかけ方を工夫すると、盗難率の低下が期待できます。以下は、盗難率を下げる施錠方法の一例です。
防犯登録をする
自転車に乗る場合、必ず防犯登録をしておきましょう。防犯登録は自転車に乗る方の義務であり、購入した自転車販売店(「自転車防犯登録所」の看板がある自転車販売店・ホームセンターなど)で登録できます。
自転車を他人から譲り受けた場合も、上記の自転車防犯登録所にて防犯手続きが可能です。
東京都の場合、防犯登録時に以下が必要になります。
- 自転車本体
- 運転免許証などの身分証明書
- 防犯登録料660円(非課税)
防犯登録をしておくと自転車の所有者が明確になり、盗難に遭っても戻ってきやすくなります。
自転車事故への補償は?
自転車に乗る方が備えるべき補償には、自転車事故への補償があります。自転車の盗難保険では、自転車による交通事故の補償はカバーされません。
自転車による交通事故では、加害者に1億円近い損害賠償が命じられた判例もあり、経済的ダメージの大きさは自転車盗難の比ではありません。現在は条例で自転車保険の加入を義務づける都道府県も多く、自転車保険加入は自転車に乗る方の必須条件ともいえます。
自転車保険の主な補償内容
自転車保険とは、自転車事故の被害者への賠償責任補償と本人のケガの補償のセットです。自転車保険の補償内容は、主に以下のようになっています。
- 個人賠償責任:自転車事故で他人にケガをさせたり、他人の物を壊してしまったりした場合に、賠償金が補償される
- 死亡保険金:自転車事故により被保険者が死亡した場合に遺族に支払われる保険金
- 入院保険金:自転車事故のケガで被保険者が入院したときに支払われる
- 通院保険金:自転車事故のケガで被保険者が通院したときに支払われる
- 手術保険金:自転車事故のケガで被保険者が手術したときに支払われる
自転車保険を選ぶときのポイント
自転車保険は加入義務化などにより、多くの商品が販売されています。数ある商品から自分に合う自転車保険を選ぶポイントを解説します。
個人賠償責任保険の保険金額はいくらか
個人賠償責任保険は自転車保険の最も重要な補償であり、補償額がいくらかは必ずチェックしましょう。たとえば、2008年6月の東京地裁では、24歳男性会社員と自転車同士の衝突事故を起こした男子高校生に9,266万円の損害賠償を命じる判決が出されました。
このように、自転車事故でも1億円近い損害賠償をしなければならないケースもあります。個人賠償責任保険の補償金額は、最低でも1億円は確保したいところです。
他の保険と補償内容が重複していないか
現在加入している他の保険と補償内容が重複しないかを確認しましょう。個人賠償責任保険は自動車保険や火災保険に付帯される場合があります。また、傷害保険に別途加入している方は、自転車保険のケガの補償は不要となります。不足分のみ加入すると、無駄な保険料を抑えることになるでしょう。
示談交渉サービスがあるか
自転車事故を起こした場合に示談交渉サービスがあるかも、自転車保険のチェックポイントの一つです。事故の加害者になって、被害者側との交渉を自分で行うのは難しい方も多いでしょう。できれば保険会社の担当者に交渉を任せられると安心です。
自分のケガにどの程度備えるか
自転車事故で自分もケガをした場合、自転車保険からどの程度入院や通院の給付金を受け取れるかもチェックしましょう。自分のケガに対する治療費の補償は、入院・通院の日数に応じて支払うタイプや、発生した治療費を実費で支払うタイプがあります。
自転車保険なら「自転車トラブル安心保険」がおすすめ!
自転車に乗る方が自転車保険に加入するなら、セゾンの「自転車トラブル安心保険」がおすすめです。
セゾンの「自転車トラブル安心保険」では、自転車保険で相手への賠償が最高2億円となっています。自転車事故の加害者となり、高額な損害賠償が発生してしまった場合も、最高2億円の補償があれば安心です。相手への賠償は「本人コース(月額400円)」「家族コース(月額800円)」ともに家族※の事故も補償の対象になります。自転車事故だけでなく、日常の賠償事故も補償対象です。 また、ケガの補償は「本人コース」では申し込まれたご本人のみが対象となりますが、「家族コース」なら夫婦とお子様が対象になりますので安心です。
自転車に乗っていて、まだ自転車保険に加入していない方は、すぐにでもご加入ください。
※ 本人またはその配偶者の同居の親族(6親等内の血族および3親等内の姻族)、別居の未婚(婚姻歴がないことをいいます)の子が対象です。
SA2023-1129(2023.11)
おわりに
日常の足としている自転車を盗まれると、子どもの送迎や通学、買い物などに支障をきたす方も多いでしょう。自転車を購入したときには販売店で防犯登録をして、施錠を確実にする習慣をつけましょう。 電動自転車やスポーツ車のような高価な自転車の場合、盗難保険に加入するのも盗難対策のひとつです。費用対効果を考えて、適切な盗難対策を検討しましょう。