自転車による事故の発生は近年増加しており、社会問題になっています。通勤や通学時に自転車に乗ることが多い方は、いつ交通事故に遭ってもおかしくない状況ともいえます。いくら気を付けていても、出会い頭の衝突や自動車との衝突など、万が一のことに備える必要があるでしょう。
そこで今回は、自転車乗車時にぜひ着用してほしいヘルメットについてご紹介します。ヘルメット着用は義務なのか、罰則や罰金はあるのかなど、気になるポイントを解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
自転車関連の交通事故はどれくらい起きている?
始めに、自転車関連の交通事故発生の現状についてお伝えします。警察庁交通局が令和3年2月に示した「令和2年における交通事故の発生状況等について」を参考に、自転車関連の交通事故の状況を確認していきましょう。
交通事故の実態
どのような状態で交通事故が起きているのか、データをもとに実態を確認していきます。同データでは、「歩行中」「自動車乗車中」「二輪車乗車中」「自転車乗車中」の4パターンでの交通事故の実態が集計されています。
<状態別重傷者数の推移>
歩行中:6,998人(25.2%)
自動車乗車中:7,013人(25.3%)
二輪車乗車中:7,246人(26.1%)
自転車乗車中:6,463人(23.3%)
※()内の数字は重傷者数全体の中での割合を示しています。
<状態別死者数の推移>
歩行中:1,002人(35.3%)
自動車乗車中:882人(31.1%)
二輪車乗車中:526人(18.5%)
自転車乗車中:419人(14.8%)
※()内の数字は死者数全体の中での割合を示しています。
上記を見てわかるように、自転車乗車中の交通事故での重傷者数は自動車乗車中や歩行中と大差ありません。また、交通事故による死者数は、歩行中の次に自動車乗車中の数が大きいことがわかります。
参照元:警察庁交通局
ヘルメット非着用の致死率は着用に比べて約3倍に
次は自転車関連の交通事故の状況を確認してみましょう。自転車の事故は対自動車との事故が多く、状況としては出会い頭の衝突が多くあります。
ヘルメット着用の有無で致死率(自転車事故による死傷者のうちの死者の割合)を比較すると、着用時は0.23%、非着用時は0.68%と、約3倍も致死率がアップします。
また、ヘルメット非着用時の事故における死者数、計404人のうち226人(全体の56%)もの方が、頭部損傷が原因で死亡しています。
自転車に乗る際にヘルメットをかぶるとどんなメリットがある?
自転車乗車中の死亡事故では、多くの方が頭部に致命傷を負っていることが前項で分かりました。万が一、自動車と衝突した場合、バランスを崩して転倒した時にヘルメットをかぶっているか否かで、状況は大きく変わります。正しくヘルメットを着用していれば万が一のときも、頭部への衝撃を緩和してくれるでしょう。
自転車に乗る際は必ずヘルメットの着用が必須なの?
二輪車に乗車する時は必ずヘルメットを着用しなければいけません。では、自転車乗車の場合に着用の義務はあるのでしょうか?
13歳未満はヘルメット着用努力義務
「道路交通法 第63条の11」で自転車乗車中のヘルメット着用に関して定められている事項があります。それは、13歳未満の子どもの保護者に対し子どもにヘルメット着用をさせる努力義務です。
努力義務とは、子どもにヘルメットをかぶらせるように「努めなければならない」ということ。保護者の自転車のチャイルドシートに乗せる際も、子ども自身が自転車を運転する際も同様に、「ヘルメットをかぶらせるようにしましょうね」というものです。
自治体によっては賠償保険への加入が義務付けられている場合も
自転車による死亡事故を防ぐために、自治体が力を入れて交通安全条例を改正していく動きが見られています。
なかには自転車に乗る方に対して、自転車保険の加入を義務付けている自治体も。自動車による事故と同様に、自転車事故の「被害者の保護」と「加害者になってしまった場合の経済的負担の軽減」を図ろうとする取り組みです。
自転車保険の加入はすでに、全国の半数以上の都道府県で義務化されています。日常的に自転車に乗るけれど、「まだ自転車保険に加入していない」という方はまずはご自身の住んでいる自治体、通勤や通学で通る地域の条例を確認しましょう。
では自転車の保険加入が義務付けられている場合は、どのような保険に加入すれば良いのでしょうか。自転車保険は、自転車専用の保険へ加入するのがおすすめです。
月々の掛金も低料金のものが多く、気軽に加入できます。自転車事故に対する補償内容が分かりやすく、安心して備えられる保険を見つけましょう。
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- 自転車走行中、相手に大ケガをさせてしまった。
- 自転車走行中、車と接触してケガをした。
- 歩行中、自転車にはねられて死亡してしまった。
補償内容はコースによって異なるので、家族構成や自転車利用の有無に合わせて検討しましょう。 本人コース(月々400円)は本人のみ交通事故によるケガの通院や入院の補償があり、相手への賠償に関してはご家族も対象です。
家族コース(月々800円)はご家族に対しても交通事故によるケガの通院や入院の補償があり、相手への賠償も対象です。万が一の自転車事故に備えて、自身とご家族を守ることができる安心の保険です。
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自治体によってヘルメット着用の義務化対象者が異なる!一例をご紹介
自治体によっては13歳以下の子どもの他にも、ヘルメット着用について努力義務の対象者を設けている場合があります。一例を紹介しますので、参考にしてみてください。
東京都の場合
対象者:65歳以上の方の親族(または同居人)
内容:ヘルメットの着用や反射材の利用を65歳以上の親族に対して助言すること
また、東京都では子どもや高齢者だけではなく、一般利用者(成人を含む)についても、ヘルメットや反射材などを用いて交通事故の被害軽減に努めるようにと条例で決められています。
大阪府の場合
対象者:65歳以上の方
内容:ヘルメット着用の努力義務
愛知県の場合
対象者:高齢者の親族(または同居人)、未成年者の子を持つ保護者、自転車通学者がいる学校の長、自転車の貸し出しを行う事業者、自転車通勤者(または自転車を利用した事業を行う者)がいる事業者、自転車小売事業者、交通安全に関係する団体
内容:ヘルメット着用の努力義務、助言やヘルメットの着用に関する情報提供などを講ずること
大分県の場合
対象者:小・中学生、高校生
内容:通学時のヘルメット着用の努力義務
また、大分県ではヘルメットや手袋、反射材など交通事故の被害軽減につながる器具の使用を、自転車利用時の安全措置としてすべての方に促しています。
群馬県の場合
対象者:全ての自転車利用者
内容:ヘルメット着用の努力義務
ヘルメット着用義務に違反するとどうなる?
ヘルメットの着用に関する義務は、努力義務なので違反しても罰則や罰金があるわけではありません。しかし前項でも触れていますが、自転車死亡事故の多くが頭部への致命傷が原因です。
損傷部位の割合が死亡事故数全体の約7割にも及んだこともあるほど、事故時の頭部への衝撃は致命的となります。努力義務で罰則がないからと見過ごさず、子どもや高齢者の家族、またご自身の命を守るためにも、できる限りヘルメットは着用した方が良いでしょう。
現時点ではご自身の居住する地域の条例ではヘルメットの着用が義務付けられていなくても、今後条例が改正されることもあります。いつから条例が改正されるのか、条例改正の予定はあるのかなど、こまめに自治体のWEBサイトや新聞などでチェックしておくと安心です。
上手なヘルメットの選び方
自転車用のヘルメットはどのようなものを選べば良いのか、選び方のコツとヘルメットの種類を紹介します。
自転車専用のヘルメットを選ぶ
まずは自転車用のヘルメットを選ぶのが重要です。内側が発泡スチロールで作られていることが多い自転車用のヘルメットは、頭部に生じた衝撃を吸収・分散することで頭を守ります。
自転車事故に備えた作りになっている自転車用ヘルメットでなければ、万が一のときに衝撃から頭部を守りきれない可能性も高くなるでしょう。
例えば工事現場で使用するようなヘルメットは、落下物に備えた作りになっていて、自転車乗車時の転倒における衝撃に対しての効果はあまり高くありません。
このことから、自転車の事故を想定して作られているヘルメットを選ぶことが、自転車用ヘルメット選びの基本だと覚えておきましょう。
頭の形やサイズをしっかりチェック
かぶる時に頭部に痛みや違和感があるなど、かぶり心地が悪いヘルメットだと、かぶること自体が億劫になりがちです。そのため、頭の形やサイズにぴったりなヘルメットを選ぶことが大事になります。
頭の形は日本人と欧米人では多少の違いがあります。日本人の頭の形は丸くて、幅が少し広めな方が多いとされています。日本のメーカーが作るヘルメットは、日本人の頭の形を考えて作られているものが多いので、海外製に比べてフィットするものが見つけやすいでしょう。
しかし、海外メーカーの中にも「アジアンフィットモデル」を設けているブランドは多くあります。まずはヘルメットを販売しているスポーツ用品店や自転車専門店に行き、試着してみることをおすすめします。
安全基準をクリアしたヘルメットを選ぶ
安全基準を満たしているかどうかの確認も大切です。日本では、製品安全協会などが安全性を確認、認定した製品のみに表示が許される安全マークがあります。
このようなマークには、安全性品質が保証されているだけではなく、その製品で万が一、人身に対する損害があった場合、補償が受けられる可能性も。いくつかある安全基準に関するマークの詳細を紹介します。
SGマークとは?
SGマークとは、一般財団法人製品安全協会が認定する制度です。安全基準や事故賠償が一体となった制度で、使いやすさも安全評価の基準とされています。
SGマークの安全基準は検査マニュアルに基づいて審査されていて、日本における安全基準として最もポピュラーなものといえます。構造や外観とともに、衝撃吸収性など事故を想定した検査を行い、クリアしたもののみに与えられるマークです。
CEマークとは?
CEマークも安全基準条件を満たした製品にのみ与えられる認定マークです。EU加盟国間での輸出の際、統一された条件のもとに安全基準の確認をすべく、この制度が設けられました。
公認機関にて条件に適合しているかどうか判定してもらうことで、CEマークを得ることが可能に。「EN1078」というのが自転車用ヘルメットの安全基準で、衝撃に対する検査やあご紐の強度の検査などをクリアしたものだけに与えられます。
CPSCマークとは?
アメリカ国内で一般的な安全基準で、アメリカ合衆国消費者製品安全委員会(CPSC)が判定を行っています。ヘルメットの標準的な安全基準とされているマークです。
衝突や落下など、自転車事故を想定した数々のテストを行って判定。また、5歳未満の子ども用ヘルメットには最新の知見に基づいた規格を設定していることも特徴です。
重さに配慮する
ヘルメットの重さもヘルメット選びの中で重要な事柄です。ヘルメットが重いと肩や首に負担が掛かり、疲れやすくなってしまいます。また、ヘルメットの重さのせいで頭を動かしにくく、動作の低下につながる場合があるので注意が必要です。
自転車の運転で動作が低下すると、後方やサイドの安全確認がスムーズにできなくなり、逆に交通事故につながる可能性も。
しかし、軽ければ軽いほど良いというわけではなく、軽すぎると逆に強度に不安がある可能性もあります。ヘルメットの重量は200~500g程度を目安として選ぶと良いでしょう。
自転車用のヘルメットのほとんどが、この重量で作られているので、自転車用ヘルメットを選べば、ここはクリアできます。
通気性に長けたヘルメットを選ぶ
ヘルメットをかぶっているとどうしても気になるのが、頭が蒸れることです。特に夏場は、ヘルメットを着用していると汗ばむことが。そこでチェックしておきたいのが、ヘルメットの通気性です。
空気穴のあるタイプは通気性に長けていて、蒸れにくく快適に使用できるでしょう。また、通気性の良いヘルメットは空気抵抗を軽減してくれるので、走りやすさも向上します。
デザインもチェックポイント
自転車用のヘルメットと聞くと、競技サイクリングの選手がかぶっているようなもののイメージが強く、「普段着には合わないのでは?」と思う方も多いでしょう。
しかし、最近はカジュアルなタイプから、まるで帽子のような見た目のものも多くあります。スポーツサイクリング、普段の通勤通学に使うなど、シーンに合わせたデザインのヘルメット選びが可能です。
デザインのチェックポイントとしては、最終的には自分好みのものを選ぶこと。普段のファッションテイストと合わせて選んだり、自転車のカラーに合ったデザインのものを選んだりすると良いでしょう。
デザインが気に入ったものであれば、日頃からヘルメットをかぶるのが楽しくなります。お気に入りのものを購入して、ヘルメットの着用を習慣化できるように心掛けましょう。
ヘルメットを購入する際は補助金が出るケースもある
自転車用のヘルメットを買う際、自治体によっては補助金が出る場合もあるのはご存知でしょうか。自転車による交通事故の際に頭部を保護することができるヘルメットの着用努力義務を、多くの方が実施できるように創設された制度です。
ヘルメットを購入した際のレシートや領収書とともに、補助金の交付申請をすれば補助が受けられます。また、自治体によってはWEBサイトからの補助金交付申請も可能です。
この補助制度は愛知県で実施されており、補助対象者は県内在住の児童と高齢者(年齢制限あり)。補助金額はヘルメット1個につき、購入時の費用の1/2(上限は2,000円まで)です。上記で説明した安全基準マークがある、新品のヘルメットが補助対象になります。
正しいヘルメットの装着方法もおさらい!
ヘルメットはただかぶれば良い、というわけではなく正しくかぶらないと意味がありません。自転車用ヘルメットの正しいかぶり方をおさらいしてみましょう。
まずはヘルメットの前後を正しくかぶること。前後を確認したあとはアジャスターを緩めます。自転車用のヘルメットは、後ろ側にアジャスターがあるものが多いので、アジャスターを緩めてから頭にかぶりましょう。
しっかりと深めにヘルメットをかぶり、ヘルメットの前部分を軽く押さえながらアジャスターを締めます。頭を左右に振ってもヘルメットが動かないくらい、ぴったりとフィットしたらOKです。あご紐の長さもぴったりとフィットさせて、万が一のときに脱帽しないようにしましょう。
おわりに
自転車乗車時のヘルメットの着用は、努力義務であり違反したからといって罰則・罰金があるわけではありません。しかし自転車による交通事故では、頭部の損傷が致命傷になり死亡事故につながりやすいです。
ヘルメットをかぶるだけで、ご自身や大切な方の命を守ることができるかもしれません。このコラムが自転車乗車時のヘルメット着用や交通安全に対する意識の向上につながるきっかけになれば嬉しいです。