皆さまの中には、ペット、特にご長寿になったペットや闘病しているペットと暮らしている方、あるいはペットが永眠して間もない方もいらっしゃることでしょう。当記事をお読みになってペットとの永遠のお別れの日を想像したり思い出したりしてしまい、悲しい気持ちになるかもしれません。しかし、ペットと死別した際に遺骨を供養する際のご判断の一助になり、悲しみを乗り越えるお力の一端になれば幸いです。
この記事を読んでわかること
現代社会では、ペットと一緒に暮らすことが過去に比べてより一般化してきています。また、ペットと飼い主さんとの関係もより親密なものとなり、家族の一員と考えられる傾向が強くなっています。そのため、ペットが亡くなった際も遺骨をより丁重に供養したいとお考えの飼い主さんは少なくありません。現代日本で一般的なペットの遺骨供養法としては、手元供養、埋骨(埋葬)、散骨、納骨、分骨、合同火葬・共同墓地などが挙げられますが、残された家族全員がより納得できる形を選びたいものです。
ペットの葬儀と火葬は増加傾向
先進諸国において、動物が癒しを与えてくれるなどの理由によって、以前に比べペットの飼育数が増えてきています。
そして、ペットはもはや家族の一員であり、自分の人生にペットがなくてはならない存在と感じている方も多いものです。
実際、日本や他の国の各種SNSや動画投稿サイトには、飼い主さんによるペットの可愛らしく微笑ましい姿を活写した動画や写真がひしめいています。中には、そうした動画や写真が人気となってアイドルスターのようにもてはやされるペットや飼い主さんも現れているほどです。
このように、ペットと飼い主さんの関係性が以前とは比べものにならないほど親密になってきているのです。これは、ペットがやがて永眠した際、人間が永眠した際に執り行われるものに近い葬儀や火葬といった儀式が一般化しつつあるということも意味しています。
現在の日本では、ペットの死後(火葬後)の供養・管理方法には実は特定の法律上の決まりがありません。現代の日本で代表的なペット遺骨の供養方法としては、以下のようなものが挙げられます。
ペットの遺骨はどうしてる?その1|手元供養
実際に永眠したペットの遺骨をどうするかについて、まず初めに手元供養という選択肢について紹介します。
手元供養とは、埋葬や納骨をせず、一般に自宅にペットの遺骨を安置して保管・供養することです。他の方法もありますが、詳しくは後述します。
手元供養を行う場合、ペットの遺骨の置き場所はどこにするかという問題が出てきます。玄関などは来客や配達員など第三者の目に触れやすく、価値観の違いにより不謹慎とみなされトラブルになるリスクがあるのでおすすめしません。
また、高い場所や奥行きのない家具の上、お子さんや他のペットが触れてしまうことのできる場所は事故や破損などの危険があるのでやめましょう。なお、遺骨安置のために専用仏壇などの祭壇を用意する飼い主さんもいらっしゃいます。
また、手元供養の方法としては遺骨を家に置くだけでなく、粉砕した遺骨を少量入れられるペンダントなどのアクセサリーを使うタイプもあります。ただし、これはあくまで少量の遺骨を入れるものなので、どちらかといえば後述の「分骨」タイプ向けです。
このタイプには、死去したペットの体毛・羽根を素材としたチャームやストラップ、ぬいぐるみなども含まれることがあります。
補足ですが、現在の日本で一般的なタイプのペット火葬のバリエーションについてここで紹介しておきます。
日本で一般的なタイプのペット火葬の様式は大きく分けて次の3つがあります。
- 合同火葬
- 一任個別火葬
- 立ち会い個別火葬
一任個別火葬は、ペット火葬施設のスタッフにお任せする、基本的に一度で一体のペットの遺体を火葬するものです。飼い主さんによるお骨拾いはできないものの、骨壺に入れられたお骨を引き取ることが可能です。
立ち会い個別火葬は、飼い主さんが最後まで立ち会い、お骨拾いもできるタイプです。合同火葬については後述するので、ここでは割愛します。
メリット
手元供養の大きなメリットは、やはり遺骨という「愛するペットの身体」を自分のそばに置いておけるということです。
また、これは特に遺骨をただご自宅で保管するタイプの手元供養についてですが、納骨や散骨などに必要なさまざまな費用がかからないので、資金はあまり必要ないという点も魅力です。
デメリット
骨壺に入れられたペットの遺骨はカビが生えやすいものです。そのため、対策としてシリカゲルを入れるなどの工夫が求められます。
また、手元供養されている遺骨や、遺骨・体毛・羽根の加工品がさまざまな災害や事件事故などに巻き込まれて失われてしまうリスクもあります。
ペットの遺骨はどうしてる?その2|埋骨
埋骨は、基本的にご自分の財産(不動産)として土地(特にご自宅の庭)をお持ちの飼い主さん向けの供養法です。広い意味での手元供養や、遺骨を骨壺に入れず土に還す場合には自然葬の一種でもあります。
具体的には、ペットの遺体をご自宅の敷地内の土に埋葬することです。特に現代日本では、火葬した後に遺骨を埋葬します。
実は、現代の日本でもペットの遺体をお骨とせず土葬することは法律上認められています。特に割と近年まで人間も土葬されていたような地域では、ご年配の方を中心に火葬に対するネガティブなイメージが強く残存し、ペットを火葬することに抵抗をお感じの飼い主さんも少なくありません。
しかしながら、ペットの遺体を火葬することで腐敗による悪臭や害虫の発生、野生鳥獣による遺体の食害を防げるなどの理由で、近年はご自宅の敷地内への埋葬でも火葬するのが一般的になってきています。この場合は、先述の「一任個別火葬」「立ち会い個別火葬」が適します。
特にクマのような大型哺乳類が生息する地域では、ペットの遺体の食害が人間への警戒心を喪失させるきっかけとなって、人間を襲う原因になることもあるので注意が必要です。どうしても土葬をしたい場合には、少なくとも地表から50cm以上は掘りましょう。
メリット
先述のように、この葬法はご自宅の敷地内にペットの遺骨を埋葬するものなので、いわば広い意味の手元供養や、遺骨を骨壺に入れず自然に還す場合には自然葬としての側面もあるわけです。これは見逃せないメリットです。
デメリット
一方で、デメリットも少なくありません。まず何といっても、ご自分の財産としてご自宅と土の地面がある敷地を所有している飼い主さん向けの葬法であるという点であり、その意味でかなり「特権的な」供養法であることは確かです。
また、そうしたご自分の財産としてのご自宅や敷地をお持ちであっても、例えば引っ越しの予定がある場合には、やはり難しい葬法です。
ペットの遺骨はどうしてる?その3|散骨
散骨は、近年人間の葬法としても取り入れられ始めている葬法で、いわゆる自然葬の一種です。
火葬後の遺骨を粉骨して海や山林など自然の中にまく方法で、ペットの遺骨を土に還す志向の強い方におすすめの供養法です。
メリット
現在(2023年6月)の日本では一部の自治体を除き、ペットの自然葬については特定の決まりがありません。
したがって、例えばペットとの思い出の場所やご自宅の敷地内などの好きな場所に散骨できます。そして何よりペットの遺骨を自然に還す葬法なので、自然から生まれ自然に還っていくという世界観をお持ちの方には、願ってもないメリットがあるといえるでしょう。
デメリット
先にペットとの思い出の場所にも散骨は可能だと述べましたが、例えばお気に入りの散歩道に散骨した場合、パウダー化した遺骨が犬など他の動物や人間に踏まれたり、他の動物がなめたり上に排泄したりするなどのことも当然あるわけです。
そうしたことによって亡きペットは自然に還っていくのだ、という一種の割り切った思いを持てないと、心情的にマイナスに感じてしまうこともあるかもしれません。
こうしたことに抵抗がある飼い主さんは、例えば散骨式の樹木葬が可能なペット霊園や、海への散骨を選ぶと良いでしょう。
ペットの遺骨はどうしてる?その4|納骨
納骨は、霊園や納骨堂でペットの遺骨を保管・供養することです。
人間用の霊園や納骨堂には、いわゆる合祀式という遺骨を骨壺から取り出して納骨・埋葬する仕組みのものもありますが、ペット用にもそうしたタイプの合祀墓があります。
このタイプには、特に遺骨を自然に還す仕組みの合祀墓などにおいて粉骨が必要になる場合もあります。なお、こうした合祀墓への納骨は合同火葬とセットになっているケースもありますが、詳しくは後述します。
合祀式でない個別式タイプのペット納骨堂を利用する飼い主さんの中には、将来ご自分が亡くなった際に一緒に入れるお墓を準備しておき、それまでの間ペットの遺骨を供養・保管するために選択する方もいます。
メリット
まず、これは個別式の霊園や納骨堂の場合ですが、きちんとした供養・保管がしやすいということは大きなメリットです。
先に若干触れましたが、人間用の霊園の中にはペットと飼い主さんが一緒にお墓に入れる霊園もあるわけです。飼い主さんが亡くなりお墓に埋葬(納骨)されるまでの間、納骨堂にペットの遺骨を納骨しているケースもあります。
ただし霊園によっては、宗教上の理由や宗教的信条も含めた異なる価値観を持つ他の利用者への配慮などのため、人間とペットが一緒のお墓に入ることを禁止している場合も少なくないので注意しましょう。
デメリット
納骨による供養のデメリットも忘れてはいけません。まず利用料・管理費などといったコストがかかるという点は重要です。また先述のようにペットの遺骨を飼い主さん=人間の遺骨と一緒に埋葬することが可能な霊園はまだ決して一般的ではなく、探すのは大変です。
納骨先をスムーズに探すなら?
ご自分が永眠した際、先に永眠したペットの遺骨と一緒に納骨されることを希望している飼い主さんは決して少なくありません。
一方で、それに対応しているお墓(霊園)はまだまだ少ないのも現実です。
しかし、ペットと一緒に納骨されることが可能なお墓も含めた、お墓探しをサポートしてくれる専門のサービスもあります。「セゾンの相続 お墓探しサポート」では、経験豊富な提携専門家のご紹介も可能です。一度相談してみてはいかがでしょうか。
ペットの遺骨はどうしてる?その5|分骨
分骨は世間的には、「一般的に人間の遺骨を複数の異なる箇所に埋葬・納骨・散骨などすること」という意味で使われる語です。しかし、犬や猫などのペットのお骨の供養法としては、一般に手元供養と、他の供養方法、あるいはペット納骨堂への納骨と散骨の併用のように、「遺骨の異なる供養法同士を併用する保管供養方法」を指します。
メリット
分骨による弔いのメリットとしては、まず異なる管理・供養方法を同時に叶えることができるという点が挙げられます。例えばペットの遺骨をできれば手元に置いておきたいけれど、他の方法でしっかり供養もしてあげたいという方などにおすすめです。
特にペットの遺骨をペンダントなどのアクセサリーにして手元供養をする際には、一般的な犬や猫の場合だと特にそうですが、遺骨はあくまで少量を使うので結果的に遺骨の多くが残るわけです。
その場合に残りの遺骨を他の葬法で供養しておけば、もちろん個々人の思想信条・価値観により個人差はありますが、万一不慮の災難により手元供養の遺骨が失われてしまっても、喪失感や罪悪感が少なくて済む可能性もあります。
デメリット
とはいえ、分骨にもやはりデメリットというべきものはあります。例えば複数の異なる葬法を選択・実行するので、どうしても手間やお金がかかってしまうということは忘れてはいけません。
ペットの遺骨はどうしてる?その6|合同火葬・共同墓地
「納骨」のバリエーションの一種として、合同火葬とその後の共同墓地への埋葬という供養法があります。
これは、他の家の死亡したペットと合同火葬を行い、そのまま飼い主さんがお骨を拾わず共同墓地に納骨したり、自然葬式の場合には埋骨・散骨などをしたりする供養法であり、個別火葬に比べて費用が割安です。
ペットを愛してはいるがやはり人間と他の動物は峻別すべきであり、ペットも自分と一緒に埋葬されるよりは、他のペット動物同士で弔ってもらった方が幸せなのではないかとお考えの飼い主さんに適します。
メリット
先にも述べた通り、費用が個別火葬及びその後のさまざまな供養法の実行に比べて安価であり、手間がかからない点は大きな魅力です。
デメリット
他のペットと一緒に火葬・埋葬されるので、後で考えが変わってやはり自分と一緒に埋葬して欲しいと思っても、それはできません。ですから、この葬法を選択する場合にはよく考えて決断する必要があります。
ペットの遺骨の供養・管理方法はどのように選択する?
これまで紹介しましたように、今ではペットの遺骨の供養・管理方法にはさまざまなものがあります。
これはやはり冒頭でも申したとおり、ペットと人間との関係性が以前よりも格段に親密になってきていることが大きな理由と言えます。
一方でペットと一緒に暮らす家族全員が、ペットに対する価値観を共有しているとは必ずしも限らないのも事実です。ペットと一緒に暮らしているご一家のうち、例えば父か母のどちらかがペットとの暮らしを内心快く思わないというケースはよくあります。
そのため、ご家族の皆さんが、ペットに必ずしも好意的でない気持ちも含めた思いを正直に話し合うことのできる空気を作り、全員が納得できる形で供養・管理できるようにすることが大切です。
おわりに
最後になりましたが、いわゆるエキゾチックアニマルの供養について注意すべきことがあります。エキゾチックアニマルとは、ここでは、犬や猫・一般的にペットとされる小鳥類以外のペット動物のことで、爬虫類などもこちらに含まれます。
エキゾチックアニマルも、多くは犬や猫などと同じような供養法を選べます。ただ、ペット動物としてのエキゾチックアニマルには、ミニブタやニワトリ、ヤギなどといったいわゆる家畜種も含まれており、こうした一般家庭のペットとして飼われている家畜種が永眠した場合、「家畜伝染病予防法」という法律で定められているため、民間のペット葬儀社・霊園では火葬や納骨ができません。
また、小型のサル類(霊長類)も人間に伝染する病原体を持っている危険があるので、やはり民間のペット葬儀社や霊園では受け付け不可のケースがあります。
こうした家畜種や霊長類のペット動物を供養する際は、必ずしも飼い主さんにとって充分満足できるお別れはできないかもしれませんが、都道府県知事の許可のある「死亡獣畜取扱場」に連絡しましょう。
<参考文献>
主婦の友社編『ペットを安らかに送る終活のすべて』主婦の友社、2018
山本宗伸監修『あなたの猫が7歳を過ぎたら読む本 猫専門獣医師が教える幸せなシニア期のための心得』東京新聞、2019