犬のしつけには、トイレトレーニングや噛み方、吠え方などの生活習慣を教えるだけでなく、日常の行動をしつけるための「おいで」「まて」といった「コマンド」を使った方法があります。生活習慣をしつける際にも、コマンドを用いると、スムーズに進みやすいでしょう。本記事では、犬を飼うなら覚えておきたいコマンドを使ったしつけを紹介していきます。犬をしつける方法を知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
- 犬のしつけは、生後3~12週齢の「社会化期」に行う
- コマンドを使うと犬の動作を誘導できるほか、セルフコントロールができるようになるため、事故防止につながる
- コマンドの単語は、犬が混乱しないように家族間で統一する
- トレーニングがうまくできたら、ごほうびを与える
犬のしつけに関するあれこれ
犬を迎え入れたいと思ったとき、しつけに関する知識がない場合は何をどうすれば良いかわからないことも多いでしょう。そもそもなぜしつけは必要なのか、しつけをしなければいけない理由から確認していきましょう。
犬のしつけが必要な理由
しつけとは、犬に生活上のルールを教えることです。しつけが不充分な場合、家のものを壊される、リビングで粗相してしまうといったトラブルが起こりやすくなります。さらには、外出先でも吠えたり噛みついたりして、迷惑をかけることになってしまいます。愛犬と人が安心して心地良く暮らすためにも、犬のしつけは必要なのです。また、しつけを進めることで、愛犬とのコミュニケーションが増えるので、きずなが深まり良い関係を育むことができます。
子犬のうちにしつけをすることが大切
しつけの基本は、子犬のうちに済ませておくことをおすすめします。なぜなら、子犬は好奇心旺盛でさまざまなことを吸収しやすく、新しい環境にも慣れやすいといった利点があるからです。
特に、犬の生後3〜12週齢は「社会化期」と呼ばれ、しつけをするのに適した時期。社会化期を過ぎると、警戒心や恐怖心が芽生え始めるため、しつけ直すのにも時間がかかってしまいます。
参照:ワンクォール|子犬の社会化期とは?必要な理由と期間中にやっておきたいことを解説【獣医師監修】
「コマンド」を使ったしつけとは?
外出先で、散歩している犬を見かけると、飼い主から「よし」や「まて」といった言葉をかけられているシーンを目にしませんか。実は、この言葉を「コマンド」といいます。この章では、コマンドについて解説していきます。
そもそもコマンドとは
コマンドとは、飼い主が犬にしてほしい動作を求める場合にかける言葉のことです。例えば、来てほしい場合には「おいで/カム」、座ってほしいときには「お座り/シット」といったもの。犬の動作一つひとつに言葉をあてはめ、繰り返し教えることで覚えていきます。
さらに、「ハンドサイン」というコマンドと同時に出す手の動作を加えると、より覚えやすい合図になるでしょう。
コマンドを使うとどのような効果がある?
コマンドを使うと、犬の動作を誘導することができます。もし、愛犬が道路に飛び出そうとした時、「まて」を使えれば行動を制限でき事故を防ぐことができるでしょう。
また、コマンドの中には、「ふせ」をはじめとした犬を落ち着かせる効果が期待できる言葉もあります。コマンドは犬自身が感情をセルフコントロールし、いたずらやトラブルを防止することにつながるのです。
ほかにも、飼い主と愛犬がコミュニケーションを楽しむものとして使うコマンドもあります。ボールを投げて「持ってこい」と言ったり、「ジャンプ」と言ってジャンプをさせたりして遊ぶ時間を過ごすことで、愛犬とよりきずなを深める効果が期待できます。
コマンドを使って覚えたい基本的なしつけはこの7つ!
犬を家に迎え入れたら、以下の基本的なコマンドを覚えさせましょう。
- おいで(カム)
- まて(ステイ)
- ハウス(ハウス)
- よし(ゴー/オーケイ)
- ダメ(ノー)
- お座り(シット)
- ふせ(ダウン)
以下で、基本的コマンド7つについて説明します。言葉とやり方を覚えて、実践してみましょう。
おいで(カム)
コマンドのしつけの中でも「おいで」は、使用頻度が高い単語です。飼い主から離れた犬を呼び戻す意味を持ちます。散歩中やご飯のときなど多くの場面で役に立つでしょう。また、リードが外れて犬が逃走した場合など、事故やトラブルの防止につながります。
「おいで」を覚えさせたいときには、犬が飼い主に気づいていないところから優しく「おいで」と呼びかけます。反応を示したらたくさん褒めてごほうびをあげましょう。静かな環境から始めて、慣れてきたら犬がほかのことに集中しているときに挑戦してください。
まて(ステイ)
犬の行動を制止したいときには「まて」を使います。例えば、ご飯を食べる前に「まて」をすることで我慢を覚えます。どんなときにでも「まて」が使えるようになると、「おいで」と同様に万が一の事故を未然に防げるので安心です。犬が興奮している場面でも、心を落ち着かせるのに有効です。
衝動性を抑える「まて」は、片手にオヤツを持ち、もう一方の手で「まて」と犬に手のひらを向けながら声をかけます。犬の目線より高く持つことが、犬が集中して「まて」ができるコツです。数秒待ち、犬が動かないことを確認したら「よし」と言ってオヤツを持った手を口元へ持っていき食べさせます。だんだんと時間を延ばして訓練していくと良いでしょう。
ハウス(ハウス)
「ハウス」は、来客があったときなど、家で犬のゲージやサークルに入ってほしいときに使う合図です。始めのうちは、ハウスを行き来することに犬が恐怖心を感じることがあります。「ハウス」を日常的に使えるようにしておくことで、犬は安心感を覚え、自由に行き来できるようになるでしょう。
最初に入ってほしいゲージなどにオヤツを入れておきます。「ハウス」と声をかけ、入ったら褒めましょう。慣れてきたら、扉を閉める訓練です。閉めてもすぐに開けることを繰り返し行い、徐々に長く閉めても平気なように慣れさせます。
犬が不安がっているうちは、ゲージなどに入れた後にそばから離れないようにするとだんだんと自信がついてきます。
お座り(シット)
「まて」を使う前、一度落ち着かせるために「お座り」は使われます。信号待ちをする時や、ドアを開けてもらう時などにも応用できる合図です。注意点として、足裏の毛が長い犬やフローリングの上で行う場合、後ろ足が安定せず滑ってしまうことがあります。指示をするときには、場所を考えて声をかけることが大切です。
オヤツを持った手をグーにし、犬の鼻先へ近づけます。犬が集中したところで、「お座り」といってその手を上へ持ち上げます。犬の目線が上がり、お尻が自然に床についたところでお座りの完成です。できたときには、静かに「グッド」といって褒めてあげましょう。
ふせ(ダウン)
犬が後ろ足と胸、肘をつけた状態を「ふせ」といいます。「ふせ」ができると、病院内での待ち時間やドッグカフェなどでも落ち着くことができ、犬にとっても安心できるスタイルです。
「ふせ」をトレーニングする場合、まず「お座り」をさせます。ここで一旦褒めると、「お座り」が褒められた、と犬は認識します。お座りの態勢から数秒待ち、オヤツを握った手を床まで下げて犬が足をたたんだら「ふせ」と声をかけましょう。褒めることを忘れないでください。
よし(ゴー/オーケイ)
「よし」は、「お座り」や「ふせ」、「まて」といった制限している行動の状態から、動いても良いという合図で使います。「よし」のトレーニングは、「まて」とセットで行うと覚えやすいでしょう。前述した方法を参考にトライしてみてください。
ダメ(ノー)
「ダメ」は、危険な行動や望まない行動のときなどに使用します。「ダメ」を使う際、犬の名前を一緒に呼んだり、連呼したりしないようにしましょう。名前を呼びながら叱られると、犬は「名前を呼ぶ行為」=「いけないことをしたとき」と誤解してしまうので注意が必要です。
教えるときには、「ダメ」と言うのと同時に机や手を叩きます。音がすることで、犬の興奮が少し治まり飼い主に意識を向けます。ほかにも、犬のそばによって手をあてながら「ダメ」と伝えても良いでしょう。2つに慣れてきたら、声のトーンを低めにして「ダメ」と言ってください。
また、どんな時にも「ダメ」と「褒める」はセットにしましょう。
しつけのトレーニングを上手に行うポイント
コマンドの使い方がわかったところで、ここからは、上手にしつけを行うためのポイントを紹介していきます。
コマンドは家族全員で統一する
しつけの際に使うコマンドは、家族全員で統一しましょう。家族でコマンドの言い方がバラバラだと、犬が混乱する可能性があります。トレーニングを始める前に、事前に話し合っておくことが大切です。
また、コマンドの言葉は、短くわかりやすい単語を使いましょう。「ゲージに戻って」という言葉をそのまま伝えるだけでは、犬も覚えられません。その場合、「ハウス」と短くはっきりと伝えることがポイントです。日ごろから、トレーニングの進捗や言葉の使い方などを、家族で共有しておくことをおすすめします。
できたらたくさん褒めごほうびのオヤツを与える
トレーニングをする中で、できたことを褒める時にはごほうびにオヤツを与えると犬も喜びます。おすすめは、持ち運びにも便利なドライタイプのドッグフードです。
普段食べているものと同じもので構いません。ただ、与え過ぎには注意しましょう。褒めるたびにオヤツを与えていては、カロリーオーバーになってしまい、犬の健康にも悪い影響を与えかねません。ごほうびをたくさんあげた日には、ご飯の量を減らすなど工夫をしましょう。
また、食べものをあげてもあまり関心を示さないタイプの犬の場合、オヤツの代わりにたくさん撫でたり、誉め言葉をかけたりしてみましょう。犬にとっては、飼い主からのスキンシップが何よりの喜びとなるのです。
愛犬のペースに合わせて楽しみながら行う
子犬の時期に、しっかりしつけようと飼い主が焦ると、その気持ちが犬に伝わりうまくいきません。覚えることがたくさんあると犬も疲れてしまうので、しつけを始める前に何から教えるか、優先順位を確認しておくと安心です。
また、トレーニング中に失敗したからといって叱ることはやめましょう。できないことを怒られてやる気を失くしてしまうのは、人間も犬も同じです。楽しみながらできないトレーニングは、犬にとってストレスになるので注意しましょう。
犬も人間同様、その日その日で気分も体調も異なります。トレーニングを行う際は、犬の集中力や様子を観察しながら進めていくと良いでしょう。今日は調子が悪いかなと感じた時には、短時間で終わらせることも必要です。
困ったときはプロに相談してみよう
犬のしつけに関して困ったことがあったとき、プロに相談してみるのもひとつの手段です。
「みんなのブリーダー」では、ブリーダーと飼い主を直接つなげてくれるサービスを提供しています。ホームページで気になる子犬を見つけたら、ブリーダーに会ったうえで、直接子犬を迎えられるシステムです。
生まれてからの子犬の様子やしつけのイメージなどを、ブリーダーに聞けるメリットもあります。セゾンのくらし大研究から会員登録を行うと優待特典が付くため、ご興味ある方はぜひチェックしてみてください。
おわりに
犬のしつけは、犬が人間社会で安心して暮らせるためにルールを教えることです。コマンドを使って動作を誘導することで、犬の精神面を安定させ危険から身を守ることができます。
また、周囲の人々からも愛され、お互いが幸せな生活を送ることもできます。トレーニングをする際は、ごほうびとなるオヤツを適度に与えながら、犬の様子を観察し気長に進めていきましょう。家族一丸で取り組むと、スムーズに進みやすくなります。上手なしつけで、愛犬と楽しい時間を過ごしましょう。