愛犬とうまく付き合いよりよい関係を築くためには、犬の気持ちに寄り添うことが大切です。間違ったコミュニケーションは、犬との関係を悪化させてしまいます。犬との生活が、犬と飼い主両方にとって充実したものになるように、ここでは犬との正しい接し方について解説します。
「犬とよい関係を築く」には
犬と暮らす人は誰でも、愛犬とよい関係を築きたいと願うものです。「よい関係」とはどちらかだけに都合のよいものではなく、一緒にいることが双方にとって心地よく、喜びがある状態を指します。では、犬と飼い主の「よい関係」とは、どのような関係性を指すのでしょうか。
上下関係ではなく信頼関係を築けている
以前は「犬と飼い主との間には上下関係があり、飼い主は犬よりも上に立たなければならない」と考えられてきました。犬の祖先であるオオカミが群れをつくり、そのトップに君臨するボスが群れを率いていると考えられていたため、犬にも同じ習性があると信じられていたのです。
しかし、野生のオオカミに厳格な階級社会があるかどうかは実は定かではなく、犬にも「上下関係をつける習性はない」とする考え方が近年では主流に。かつてよく言われていた、「人間と暮らす犬は、家族に序列をつけている」といった説も、あまり信ぴょう性がないものになってきました。
最近の研究では、犬と飼い主との関係は人間の親子関係(母子関係)に近いとする説が有力視されています。飼い主と良好な関係を築いている犬は、自分を守ってくれる親のように飼い主を信頼しているというわけです。
双方向のコミュニケーションが取れている
犬と人間は言葉で会話をすることはできません。しかし、しぐさや表情で相手の気持ちを読み取ったり、自分の気持ちを伝えたりすることはできます。
お互いにコミュニケーションを取れること、取ろうとしていることこそが、互いによい関係性を築いているといえるでしょう。
飼い主が犬の習性を理解し気持ちに寄り添っている
犬は人間とは異なる生き物であり、異なる習性をもっています。
犬の気持ちを知るには、まず犬の習性を理解することが第一のステップです。
習性がわかれば、犬の気持ちを想像することができます。犬は時に人間からすると不可解な行動をとるものですが、習性によるものだということがわかれば、犬の気持ちに寄り添いやすくなるでしょう。
犬が喜ぶ接し方
穏やかな態度で接する
犬は落ち着いた雰囲気を好む習性があります。家族が常にバタバタとせわしなかったり、相手が急に動いたりすることを好みません。
犬の前にいるときはゆったりと動くことを意識し、落ち着いて接しましょう。犬と接するとき以外でも、突飛な行動やせわしなく動くことはなるべく避け、犬を不安にさせないようにしましょう。
【注意したいポイント】
大きな声も苦手なので、穏やかで優しい声で話しかけるようにします。犬の前で家族がケンカすることも控えましょう。
犬のペースに合わせる
犬と適度な距離を保つことも、よい関係性を築くことにつながります。人間も自分一人になれる場所や時間が必要ですが、それは犬も同じ。ストレスをためないよう、スキンシップの時間は大切にしながらも、構わない時間もつくるようにしましょう。
犬がそっぽを向いていたり、休憩していたりしたら触らないようにするなど、愛犬のペースに合わせることも必要です。
【注意したいポイント】
人間と暮らす以上、犬にも飼い主の生活に合わせてもらう必要があります。食事や散歩など、愛犬に催促されてから行動を起こしていると、要求吠えにつながることがあります。愛犬の気分は尊重しますが、散歩や食事のタイミングは飼い主が決めてよいでしょう。
褒める
犬は褒められることが大好きです。褒められることで「うれしい」「楽しい」という気持ちになり、もっと飼い主に褒められようと自発的に行動するようになります。愛犬の信頼と愛情を得るためにも、犬がよい行動をしたらたくさん褒めてあげましょう。
【注意したいポイント】
しつけは叱るのではなく、褒めるのが基本。犬は叱られても、なぜ自分が叱られているのか、なかなか理解できません。さらに、飼い主への信頼まで失くしてしまうこともあります。信頼関係を壊さないためにも、褒めて犬を育てましょう。
アイコンタクトを取る
アイコンタクトを取ることも、犬が喜ぶことの一つです。
人間の母子が視線を交わすと分泌されるといわれる、オキシトシン。別名「幸せホルモン」「愛情ホルモン」とも呼ばれ、安心感や幸福感をもたらすホルモンです。
人間と同じように、犬と飼い主の間でも、目が合うとホルモンの分泌は促進されます。このため、アイコンタクトを取ることで、犬は安心し、幸せを感じるのです。
【注意したいポイント】
飼い主とのアイコンタクトを犬はよろこびますが、じっと見つめすぎると逆効果になってしまうことも。まだ信頼関係を築けていない場合、犬を緊張させてしまうので、見つめすぎには注意しましょう。
一貫した態度をとる
飼い主が機嫌によって態度を変えたり、ルールをコロコロと変えたりしてしまうと、犬は混乱し、飼い主に対して不信感を抱きます。
しかし、一貫した態度をとる飼い主に対しては、犬は安心感を覚えます。一度決めたルールは二転三転させず、常に同じ態度を貫きましょう。
【注意したいポイント】
からかうような行為も、犬にストレスを与えるので気を付けましょう。おやつをあげるふりをしてやめる、名前を呼んでおいて無視するなど、犬を戸惑わせておもしろがる行為は、犬の気持ちを傷つけてしまうことがあります。
犬の気持ちを知ろう
うれしいとき
飼い主が帰宅したときや飼い主に褒められたときなどに、うれしい気持ちになります。
犬がうれしいと思っているときには、目を細め、口角を上げます。まるで笑っているかのような表情を見せるので、飼い主もうれしい気持ちになれるでしょう。
しっぽは千切れるほど振っていたり、ゆったりと振っていたりします。
甘えているとき
飼い主が休んでいると、そばに寄ってきて甘えることがあります。
甘えているときは飼い主に寄り添ったり、体をなめてきたりします。また、鼻鳴きすることもあります。
遊んでほしいとき
遊んでほしいときには、以下の行動をよく見せます。
- 飼い主のところへおもちゃを持って行く
- 前足を、ちょいちょいと動かす
- 部屋の中を走り回る
- プレイバウ(フセの状態からおしりを上げる)をする
どんな行動を見せるかは、犬によってさまざま。以前に飼い主が構ってくれたときの行動を繰り返します。
たとえば、おもちゃを持って行ったときに飼い主に遊んでもらったことがあれば、犬はそれを学習し、遊んでほしいときに飼い主の元へおもちゃを持って行くようになります。
嫌なとき
嫌な気持ちになったときの行動として、主に以下のものがあります。
- 震える
- あくびをする
- そっぽを向く
- しっぽを足の下に巻き込む
このほかにも、嫌な気持ちになったときにはさまざまな行動があらわれます。
犬が嫌な気持ちになっているときは、その対象を取り除いてあげましょう。
飼育のプロであるブリーダーに聞いてみよう
犬との接し方、関係性作りに不安のある方は、ブリーダーから直接子犬を迎えるのもひとつの手です。『みんなのブリーダー』※1など、全国のブリーダーを紹介するサイトでは、ブリーダーの犬舎から気になる子犬を直接お迎えすることができます。
ブリーダーは犬の繁殖・飼育の専門家なので、購入時やそのあとも、犬とのかかわり方や飼育方法について教えてもらうことができるでしょう。
※1:日本国内の子犬・子猫マッチングサービスサイト 犬猫合わせて3,000~4,000人ものブリーダーが登録する大規模サイト
ブリーダーからアドバイスをもらおう
ブリーダーから子犬をお迎えするときには、直接犬舎に子犬を見に行く必要があります。このときに、子犬のこと、接し方や飼育のポイントなど、気になることを質問してみましょう。犬種ならではの特徴をよく知るブリーダーは、犬の性格やしつけのコツについても有効なアドバイスをくれるはずです。
ブリーダーから社会化の進んだ子をお迎えしよう
ブリーダーから直接子犬を迎えることは、子犬にとっても飼い主にとってもメリットがあります。子犬は犬舎で新しい家族を待てばよいので、幼少期をブリーダーやスタッフに見守られながら母犬や兄弟犬とのびのびと過ごします。
この期間は「社会化期」と呼ばれる、子犬にとって大切な学習期間です。親や兄弟との触れ合いのなかで、犬同士のコミュニケーションの取り方や人間との接し方など、さまざまなことを学ぶことができます。
社会化期を安定した環境で過ごした子犬は、穏やかな気質になりやすいといわれています。飼い主としても、健やかで育てやすい子を迎えられることは、大きな安心感につながるでしょう。
まとめ
この記事では、犬への接し方、犬の気持ちについて紹介しました。犬に不安を与えず、信頼される飼い主になるためには、犬の気持ちを理解し寄り添ってあげることが大切です。日頃から犬のしぐさや行動を観察することで、犬の感情を読み取りやすくなるでしょう。
また、これから子犬を迎える方は、ブリーダーから健やかで気質の良い子をお迎えし、育て方についてアドバイスをもらうことをおすすめします。犬を迎えたら、ここで紹介したポイントに注意し愛犬の反応に関心を向けて、信頼で結ばれたよい関係を築いていってください。