トイレを覚えているはずの愛猫が、部屋の壁や家具に“粗相”をする行動に驚いた経験のある飼い主さんもいるのではないでしょうか。これは通常の排泄とは異なり、「マーキング」のひとつであると考えられています。なぜ猫はマーキングをするのでしょうか?理由がわかれば、適切な対処方法も見えてきます。この記事では、猫のマーキングに困っている方や初心者飼い主さんに向けて、マーキングの理由や対処法を解説します。
猫のマーキングってなに?
“しるし”を付けるという意味を持つマーキング。その正体は一体何なのでしょうか。
マーキングとは
自分の縄張りを示す行動で、室内の壁やカーテンなどに自らのニオイを付けることで、「ここは自分のテリトリーだ!」と主張しています。
オシッコをかける「スプレー行動」以外にも、体を擦り付けたり、壁やカーペット、家具で爪とぎをしたりする行動もマーキングとして考えられています。
粗相との違い
スプレー行動とトイレ以外で排泄する粗相は、似て非なるものです。
スプレー行動は、多くの場合立ったまま、壁やカーテンのような垂直面に対して、少量のおしっこをします。普段のおしっこを凝縮したように強烈なニオイがするのもスプレー行動の特徴です。
一方の粗相は、トイレトレーニング中の子猫や、「トイレが気に入らない」「汚れていて使いたくない」といった理由で、トイレ以外の場所におしっこをしてしまう行動を指します。粗相の場合は、猫のお気に入りの場所に座っておしっこをするのが特徴で、量も多いです。
猫がマーキングをする理由
どうして猫はマーキングにより自らの縄張りを主張しようとするのでしょうか。そこには、さまざまな理由が隠されています。
未去勢である
去勢手術を受けていないオス猫は、発情期のメスのフェロモンを受け取ると、自分の存在をアピールするようにマーキングをします。
去勢をするとおさまる場合もありますが、手術後もマーキングをする子や、メスでもスプレー行動をする子もいます。
他の猫に自分の縄張りをアピールしている
新しい猫をお迎えしたとき、先住猫がテリトリーを主張する意味でマーキングをすることがあります。このとき、先住猫は「自分の縄張りが奪われるかもしれない」と考え、不安や緊張を感じています。
急激な環境の変化は互いのストレスになりますので、同居に慣れるまでは短時間から徐々に一緒に過ごす時間を延ばすなど、距離を縮められるような工夫をしてあげましょう。
ストレスが溜まっている
他の猫の登場に加え、引っ越しや部屋の模様替えによる変化や、室内での騒音や振動、飼い主が構ってくれないなど、猫がストレスを抱える原因はさまざまです。
情緒的な不安があるときに、マーキングにより室内に自分のニオイを付け、気持ちを落ち着けようとすることがあります。
トイレが気に入らない
トイレトレーの形状やサイズ、猫砂の種類などが気に入らないがために、スプレー行動をすることがあります。粗相との区別がつきにくい行動ですが、これは縄張りの主張というよりは、トイレの使い心地が悪く、気に入らない不満やストレスからスプレー行動につながっているケースです。
粗相なのかマーキングなのかを見分けるのは難しいですが、どちらにせよ対策を考える必要があるでしょう。
猫にマーキングをやめさせるには
マーキングはいわば猫の本能です。完全にやめさせられるかどうかは個体差がありますが、飼育環境などの改善により、回数を減らすことができるのは確かです。
愛猫のマーキングに悩む方は、以下で説明する方法を一つひとつ試してみてはいかがでしょうか。
去勢手術を受けさせる
特にオス猫の場合、去勢手術によりマーキング行動がおさまるケースは多いです。はじめての発情期を迎える前に手術すると、かなりの確率でスプレー行動はおさまる(やらない)でしょう。
手術の時期は、生後半年~10ヵ月ごろに受けさせるのが理想とされています。
ストレスを取り除く
マーキングの原因となっている、ストレスを無くす・減らす方法です。マーキングをするようになった前後で環境の変化はないか?猫が不快に思う原因はないか?十分にスキンシップを取れているか、逆に構いすぎていないか?飼育環境をひとつずつ見直しましょう。
トイレの見直し
トイレの形状や猫砂の種類、また設置場所や数の不足などが粗相の原因になることもあります。以下のようなポイントを見直し、猫にとって快適なトイレ環境を作りましょう。
猫砂
ベントナイト(鉱物)、木材、紙(パルプ、再生パルプ)、おからなど、さまざまな材質の猫砂が販売されています。
- 排泄後の穴掘りや砂かけがしやすいか
- 周囲に飛び散ったり、舞い上がったりしないか
- 清掃が簡単にできるか
といったポイントで、愛猫に合ったものを選びましょう。
トイレの形状、サイズ
市販されているものには、浅い箱型のオープンタイプ、壁付きのハーフカバータイプ、屋根が付いたドームタイプ、自動洗浄機能が付いた自動タイプなどがあります。猫が出入りしやすく、穴掘りや砂かけをできるようゆとりがあるサイズを選びましょう。
一般的に狭く・暗い場所を好む猫は、ドームタイプのように周囲を囲まれたものを好む傾向もあるようです。
場所
猫のトイレは設置場所も非常に大切です。猫が出入りしやすく、安心して排泄ができる静かな場所を選びましょう。なるべく猫の生活圏内に近く、かつ人間や他の動物に邪魔されない位置に置くのがベストです。
またトイレは猫の食事スペースからも離すようにしましょう。
設置数
猫は汚れたトイレでの排泄を嫌がる清潔な動物です。いつでも綺麗なトイレを使用できるよう、こまめな掃除はもちろん、留守番時には余分にトイレを設置するのがよいでしょう。
多頭飼いの場合は、「飼育頭数+1つ」が理想です。また戸建てで猫が階段を行き来する場合は、階ごとにトイレを用意してあげると安心です。
猫にマーキングされてしまったら
スプレー行動で付いたニオイは強烈で、適切に対処しないといつまでもニオイが残ってしまうことも。
まずは乾いた布や新聞紙、キッチンペーパーなどの吸水力の高いものでおしっこを拭き取りましょう。ある程度湿り気が取れたら、消臭スプレーを振りかけてニオイを消し去ります。
強烈なニオイの原因であるアンモニアはアルカリ性のため、酸性のもので中和するときれいになります。
自宅にあるミョウバンやクエン酸を使い、手作りの消臭スプレーが作れますよ。
<ミョウバンスプレーの作り方>
- ミョウバンまたは焼ミョウバン…50g
- 水…1.5ℓ
少量のぬるま湯でミョウバンを溶かし、さらに水を加えます。ミョウバンスプレーを使うときは、さらに水で10倍程度に薄めましょう。スプレーヘッド付きの容器があると便利です。
<クエン酸スプレーの作り方>
- クエン酸…大さじ1
- ぬるま湯…500mℓ
ぬるま湯にクエン酸を溶かして作ります。ミョウバンと同様、スプレーヘッド付きの容器に入れ、マーキング箇所に噴射してみましょう。
ニオイが落ちにくいときは、熱湯とスプレーを交互にかける方法も試してみてください。
まとめ
私たち人間にとっては不思議な猫のマーキングについて説明しました。室内でやられてしまうと困りものですが、その行動には猫なりの理由があるとわかりましたね。
マーキングの原因となるものを取り除き、飼育環境を改善するとともに、いざという時には消臭効果の強いスプレーを使ってみてくださいね。
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