犬はいったい何時間留守番できるのでしょうか。共働きや一人暮らしなどで、犬に留守番ばかりさせて大丈夫なのか、犬はストレスを抱えていないかなど、気になっている方もいるでしょう。今回は、犬の留守番についてご紹介します。犬に留守番をさせるときに準備しておきたい環境やトレーニングのポイントなども、本記事を参考にしてみて下さい。
犬に留守番をさせている方はどのくらい?
ペットによる癒しや家庭内でのコミュニケーションを目的に、ここ数年で犬や猫などを飼い始める方は増加傾向にあります。しかし外出先によっては、犬を連れて行けない場所やシーンもあるでしょう。実際にどのくらいの方が犬に留守番をさせているのでしょうか。
参照元:2021年(令和3年)全国犬猫飼育実態調査 結果 一般社団法人 ペットフード協会
お留守番経験がある犬は多い
アクサダイレクトが行ったアンケート調査(2018年)によると、ペット保険に加入している方のうち、約91%の方が犬に留守番をさせたことがある、という結果になりました。
留守番の頻度は、毎日と答えた方が約27%、1週間に3~6回と答えた方が約39%。約66%の方が週3日以上、犬に留守番をさせていることが分かります。この調査結果により、留守番を経験したことがある犬は多く、留守番の頻度も高い傾向にあるといえるでしょう。
参照元:愛犬のお留守番 みんなどうしてる?|犬のお悩み相談室|アクサダイレクトのペット保険
1日3時間以上のお留守番は普通?
アニコムグループが行った調査(2020年)によると、犬の留守番時間は、1日当たり3~5時間が約18%、5~8時間が約22%、8~10時間が約19%という結果がでました。約60%の犬が3時間以上の留守番を経験しているのです。また、10時間以上の留守番をしたことがある犬も約6%います。
参照元:飼い犬のライフスタイル|どうぶつkokusei調査2020│ペット保険のご契約は【アニコム損保】
犬は何時間まで留守番できる?
留守番経験のある犬が多いことは分かりましたが、犬はいったい何時間までお留守番できるのでしょうか。
留守番の訓練を受けた犬で10時間
犬の留守番時間の限界は8~12時間程度だといわれています。しかしこの時間は、留守番の訓練を受けた犬における最長の時間です。長時間留守番をさせる場合には、飼い主が不在の間も食事や排泄ができる環境を整えておく必要があります。
また、留守番環境を整えたとしても、飼い主が不在の間に急な体調変化や事故が起きる可能性も考えられます。長時間の留守番は、危険が伴うことを理解しておきましょう。
体調やその子にあった時間で留守番させることが大事
何時間留守番が可能であるかは、犬によってさまざまです。犬の体調や留守番の環境に応じて、様子を見ながら時間を決めていくと安心です。特に子犬やシニア犬の場合は注意してあげましょう。
子犬の留守番にはトイレや食事を考慮
子犬はトイレの回数が多く、トイレトレーニングも大切な時期です。トイレトレーニングができていない子犬の場合、長時間の留守番中にあちこちで排泄をしてしまったり、食糞をしてしまったりすることがあります。トイレトレーニングを終えるまでは、排泄するタイミングで留守番させないよう、留守番の時間を調整するのがおすすめです。
また、子犬は食事の間隔も短く、生後6ヵ月くらいまでは1日3回以上に分ける必要があります。長時間の留守番で食事を摂らない時間が長くなると、低血糖を起こすことがあり危険です。
また、留守番前に食事を多めに摂らせておくことは、子犬にとって胃腸への負担が大きく、下痢や嘔吐の原因になってしまうこともあります。子犬の時期に留守番をさせる場合は、食事やトイレの時間をしっかりと考えるようにしましょう。
シニア犬の留守番には体調や心の変化を重視
シニア犬は、体が不自由になったり、精神面で飼い主に依存する傾向になったりするため、留守番されると不安感が高まることがあります。他にも、トイレの間隔が短くなったり、思うように動けず介助が必要になったり、急な体調変化が起こる可能性も否定できません。
シニア犬に留守番をさせる場合は、できるだけ短時間にすることが望ましいでしょう。
犬に留守番をさせるときのポイント
犬に留守番をさせるときは、どのような点に気を付けたら良いでしょうか。
まずは短時間から慣れさせよう
留守番に慣れていない犬に、突然長時間の留守番をさせると不安になります。中には強い不安のせいで、家の中で荒れたり、物を壊してしまったりすることも。また飼い主が出て行こうとするだけで、鳴いたり暴れたりしてしまう犬もいます。
留守番をさせるときは、短時間から慣れさせましょう。まずは、飼い主が出て行っても必ず帰ってくると、犬に覚えさせることが大切です。
留守番トレーニングは、生後3ヵ月を過ぎた頃から始めます。最初は数分間飼い主が部屋の外に出ていき、すぐ戻る動作を繰り返します。出ていく時間を10分、20分と少しずつ長くしていき、飼い主が出て行っても戻ってくることを覚えさせましょう。
ひとり遊びをさせる
留守番中は、犬用のおもちゃを活用しましょう。飼い主がいなくても手持ち無沙汰にならず、さみしいと感じさせないことが大切です。
ひとり遊びできるよう、日頃からおもちゃを使って犬自身で遊べる環境を作ってあげましょう。
犬との適度な距離感を保つ
定期的に自宅のケージで過ごす時間を設け、適度な距離感を保つことも大切です。飼い主と一緒にいる時間が長い犬ほど、留守番に強い不安を感じてしまう傾向があります。日常で飼い主と犬とが別々に過ごす時間を作ってあげましょう。
犬が安心できる環境作りをする
犬が留守番中でも安心できるようにするために、環境作りも重要です。
安全を確保
留守番中、犬にケガや事故がないようにするためには、ケージに入れておいた方が安全です。ケージの中にベッドや水、トイレなどを準備しておくことで、犬自身もケージを心地良い場所と判断でき、苦痛に感じることなく安心して過ごせるでしょう。
快適に過ごせる居場所を作る
ケージは安心できる場所になり得ますが、この中に入ってしまうと、犬は思うように移動できなくなってしまいます。そのため、ケージを設置する環境には注意が必要です。
犬が快適に感じるのは、犬種により異なりますが、温度は22~24度、湿度は約50%といわれています。直射日光が直接当たらない場所やエアコンの風が直に当たらない場所、風通しが良い場所を選び、空調設備を利用して適度な室温を保ちましょう。
また、1日の温度変化が大きい季節は、出かけるときの気温だけでなく、帰宅するまでの気温も考慮することが大切です。他にも、窓の近くは外の音が気になりストレスになることもあるため、犬が落ち着いて過ごせる場所で留守番させてあげましょう。
水分と食事の準備
水分と食事はたっぷりと準備しておきましょう。水は倒しにくい容器を選んだり、複数用意したりしておくことがおすすめです。犬の食事時間と帰宅時間が合わない場合は、自動給餌器を使う方法もあります。しかし、大型犬の場合はいたずらをして壊してしまい、破片を誤飲してしまう可能性もあるため、事前に様子を確認しながら練習してみましょう。
特別なおもちゃを準備
犬が留守番を受け入れられるよう、留守番のときにだけ遊べる特別なおもちゃを用意してあげるのも良いでしょう。留守番するときに特別なおもちゃで遊べることを認識させるため、飼い主が帰宅した後は回収してください。
ただし、飼い主が見ていない中で遊ぶことから、おもちゃ選びには注意が必要です。誤飲する可能性があるサイズのものや、首が絡まる危険のあるようなものは控えましょう。
3-5.在宅中には充分なスキンシップを
犬は基本的にひとりで過ごすことが苦手な動物です。留守番のトレーニングを積んだ犬でも、飼い主と離れるときは寂しさを感じていることを忘れてはいけません。在宅中は、適度な距離を保つことも必要ですが、スキンシップをとるようにしてあげましょう。
犬の留守番時に気を付けたいこと
犬に留守番をさせておく際は、下記のような点に気を付けておきましょう。
火事などの事故
製品事故情報の収集や分析を行う、独立行政法人製品評価技術基盤機構「NITE」が2017年に公開した資料によると、平成24~28年の間に起きた製品事故のうち、78件がペットや小動物、害虫が原因です。そのうちの56件が火災につながっており、この中には、IH調理機やガスコンロなどの電源を入れてしまい、火災につながったケースもあります。
犬が操作してしまわないようにするために、留守番をさせる際は以下の点に気を付けると良いでしょう。
- 犬をケージに入れる
- ガスの元栓を閉める
- 電気機器にロックをかける
- 電気機器のコンセントを抜いておく
参照元:身近な動物が思わぬ火災事故を引き起こします~ペットだけでなく、ネズミやゴキブリなどにも気を付けて~ | 製品安全 | 製品評価技術基盤機構 (2P-3P)
病気やケガ
留守番が多くなり一緒にいる時間が短くなると、犬の病気やケガに気付きにくくなります。一緒にいるときは、スキンシップで動きに異常がないかどうかを確認してあげましょう。
犬によるいたずら
留守番中は、飼い主と一緒にいるときにはおとなしい子でも、下記のようないたずらをしてしまうこともあります。
- クッションやソファーの中身が出されて、ボロボロになっている
- ゴミ箱がひっくり返されている
- ペットシーツが引き裂かれている
- ケージをこじ開け、入ってはいけない場所に入っていた
- 物を壊したり散らかしたりしてある
このようなことが起こらないように、留守番中の環境を整えてあげましょう。
犬が留守番中に抱えるストレスは?
犬の留守番中のいたずらは、ストレスからの可能性も考えられます。飼い主と離れることで犬は不安を感じ、この不安が強く表れた状態を「分離不安症」といいます。
犬の分離不安はどのような状態?
犬の分離不安症は、主に飼い主の不在中に以下のような症状が見られます。
- 犬自身の身体を噛んだり毛をむしったりするなどの自傷行動
- 物を壊す
- 誰もいないのにずっと吠える
- 足を舐め続けるなどの常同行動
- 下痢や嘔吐、食欲低下
- 飼い主の帰宅後に飼い主から離れられない
- 飼い主が帰宅するとおしっこを漏らすほど喜ぶ
- 普段は決まった場所でトイレができるが、リビングやソファーで排泄している
このような行動は、特に留守番を開始して30分以内に出やすいといわれています。前項で紹介した留守番中のいたずらは、分離不安症の症状である可能性もあるため、ただのいたずらと捉えず対応する必要があるでしょう。
分離不安の原因は?
犬の分離不安の原因は、特定されていませんが、さまざまな要因があると考えられています。
生育環境による原因
- 捨てられたなどで飼い主が何度も変わった
- 子犬の時に長時間の留守番をしたことがある
- 母親や兄弟と早い時期に別れて育った
恐怖体験をしたことがある
- 留守番中に雷や地震など、恐怖を感じたことがある
- 飼い主の長期不在で不安や恐怖が強かった
生活環境の変化
- 引っ越しや家族の状況変化(進学や就職、出産、死別など)
- ペットホテルや病院、知らない環境へ預けられたことがある
加齢によるもの
- 加齢による視力低下や聴力低下で不安感が強くなった
疾患に伴うもの
- 副腎皮質機能亢進症、甲状腺機能低下症、神経疾患、認知機能の低下、脳腫瘍などが不安を引き起こしている
分離不安と考えられる場合は克服トレーニングが必要
分離不安症は、症状が重くなっていくことがあるため、おかしいなと感じたらトレーニングやしつけが必要です。
飼い主さんと離れることに慣れる
過度なスキンシップは避け、飼い主への依存を減らすことで分離不安は軽減されます。普段から犬がひとりでいる時間を作り、独立心を育んであげましょう。ひとり時間におもちゃやガムを与え、退屈にさせないようにすることも大切です。
フォーマットトレーニングを行う
フォーマットトレーニングは、犬とかかわる前に必ず行う、アイコンタクトとオスワリ、マテのことです。フォーマットトレーニングには、リラックス効果や行動の抑制効果などさまざまな効果があります。このトレーニングを行うことで、鳴いても飼い主は戻ってこないと犬が理解し、無駄吠えの軽減にもつながります。
留守番中のいたずらを叱らない
留守番に慣れていないと、家具を壊したり、普段とは違う場所で排泄をしてしまったりすることがあります。しかしこのときに叱ってしまうと、犬はかまってくれたと勘違いし、いたずらを繰り返すようになるのです。いたずらがあった場合でも、叱らず淡々と片付けや処理をしましょう。
外出前はあまりかかわらない
外出の直前まで犬とべったり過ごしてしまうと、犬は飼い主が外出することに大きな不安を感じてしまいます。飼い主にとっても我慢しなければならないトレーニングですが、外出前は、目を見て話しかけたり、ハグをしたりするなどの行動は控えてみましょう。また帰宅時にも、犬が飼い主の帰宅で興奮している状態が冷めてから、スキンシップをとりましょう。離れているときとギャップを減らすことが大切です。
犬の留守番時に役立つグッズ
留守番はなるべく短い時間が理想ですが、どうしても長時間になる場合は以下のような方法もあります。犬を連れて行けない場所への長時間の外出や災害時など、もしもの場合を考慮して、次のような方法を検討しておくことも必要でしょう。
見守りカメラ
留守番中に犬が何をしているのか、どのように過ごしているのか気になる場合は、見守りカメラを利用してみるのもおすすめです。最近ではスマートフォンと連携させて、外出先から犬の様子を確認できるもの、遠隔操作により声をかけたり食事を与えたりできるものもあります。
外出先でも犬を見守りたい方には、くらしのセゾンの提供する見守りサービス相談窓口のペットの見守りサービスがおすすめです。外出先でもスマホを使って犬の観察はもちろん、エアコンの操作や温度調整ができます。その他にも、カメラ機能や家電リモコン機能、ドアロック機能などさまざまな機能も。留守番中も快適な環境にしてあげられるので安心です。
長時間の留守番なら預けることも考慮して
長時間留守番をさせなければならない場合は、ペットシッターや犬の保育園などの利用も考えてみましょう。
ペットシッター
ペットシッターは、犬がひとりで留守番するのをサポートしてくれるサービスです。シッターが自宅に来てくれるため、犬はいつもと同じ環境で過ごせます。
環境が変わるとストレスを感じてしまう犬もいるかもしれません。そういった性格の犬の場合は特に、ペットシッターを利用してみると良いでしょう。
犬の保育園
犬の保育園は、日中飼い主に代わって世話をする場所です。月に数回から利用できるところもあり、子犬から成犬、老犬まで預けられるところもあります。トレーナーによるしつけを受けたり、他の犬と過ごしたりするなど、家ではできない経験が可能です。
これから飼うことを考えているなら
犬に留守番をさせることに不安を感じ、犬を飼えないでいる場合には、留守番が得意な犬種を選ぶのもひとつの方法です。
留守番が得意な犬種を選ぶ
穏やかで自立心が強く、辛抱強い性格の犬種は、飼い主の不在にも適応しやすいでしょう。
犬種の特徴として、ラブラドールは、飼い主がいなくても比較的落ち着いて過ごせる傾向にあります。また柴犬やシーズーなどもマイペースでひとり遊びが得意なので、留守番に順応しやすいでしょう。
ただし個体差があるため、あくまで犬種選びの参考程度にしてください。
生後半年以上の犬を選ぶ
留守番させる可能性があるなら、生後6ヵ月以上の犬がおすすめです。ブリーダーやペットショップによっては、生後6ヵ月くらいまでにしつけを終えているところもあります。生後半年以上の犬を選んだ方が留守番中の不安も少なくなるでしょう。
おわりに
犬に留守番してもらうには、トレーニングや犬と適度な距離感を保つことなどが大切です。犬は留守番している間、少なからず不安を感じています。外出時に困らないよう、普段から訓練や準備をしておくと安心でしょう。