雨から守ってくれる傘。なにげなく使っていますが、お手入れを意識していない人が少なくありません。そこで、傘の魅力を広く伝える世界初の「傘ソムリエ」として活動している土屋博勇喜さんに、正しいお手入れ方法や意外に知らないお手入れのNGについてお話を伺いました。
雨の日に傘を使った後のお手入れは?
傘を長く使う上で一番避けたいのは、濡れた傘を“そのまま放置”すること。使った後にひと手間を加えることで、劣化を抑え、撥水力の高い状態を長く保つことができます。
傘表面の汚れを落とす
傘を使った日に、習慣付けたいお手入れはあるのでしょうか?
ちょっと面倒に感じるかもしれませんが、大切な傘を長持ちさせるためには雨で付着した汚れを早めに取り除いてしまうことが大切です。傘の撥水機能を維持するためにも、傘を使用した日には、38~40度くらいのぬるま湯に設定したシャワーで表面を軽く洗い流すようにしましょう。
温度設定以外に注意点はありますか?
シャワーは意外と水圧があるので、あてる時間は10秒以下にしてください。忙しくて毎回は無理という場合でも、2,3回使用したら必ず1回は洗い流すよう習慣付けてください。
陰干しして乾かす
表面の汚れを落とした後はどうすれば良いのでしょうか?
傘表面の汚れを洗い流したら、必ず陰干ししてしっかり乾かしましょう。濡れたままだとカビも生えやすく、ポリウレタン生地の場合は水分や空気中の湿気によって分解反応を起こしやすくなります。
広げて干すスペースがない場合はどうすればいいのでしょうか?
玄関先でもいいので傘を広げた状態で風通しのいい日陰で陰干ししてください。スペースがない場合は、S字フックにかけて半開きの状態で干しておくのでも良いでしょう。日光に当ててしまうと、紫外線で生地の劣化や色落ちといった問題が出てきてしまうので、風通しのいい日陰で陰干しすることが大切です。しっかり乾かすことで、傘と傘の骨の繋ぎ目の歯止めのサビ防止にもなります。
傘を長持ちさせるために効果的なお手入れ、使い方は?
防水スプレーをかける
お気に入りの傘を長持ちさせるため、できることはあるのでしょうか?
防水スプレーで撥水効果をよみがえらせることができます。新しい傘は撥水加工の効果がしっかりあるので、防水スプレーは必要ありません。使いこんで水が少し染みるような状態になったら、メンテナンスをしていただき、生地が完全に乾いた状態で防水スプレーをかけるようにしましょう。
注意点はありますか?
生地によってはシミになる場合があるので、目立たない場所で試してから防水スプレーをかけるようにしましょう。
濡れている傘表面には触れない
撥水加工に使用されているフッ素樹脂は、水を弾く性質があります。傘の生地にはこのフッ素樹脂の粒が縦に細かく並べられているので、雨に濡れても生地に水分が染み込まず撥水するのです。しかし、濡れている状態の時に表面を手で触れると、手の皮脂と摩擦でフッ素樹脂の粒が倒れて並びが乱れてしまい、撥水機能が失われてしまいます。
無意識のうちに傘表面に触れることも、傘の寿命を縮める原因になっているとは驚きです。
そうなんです。傘表面に、触れていいのは傘が完全に乾いている時だけ。その際もハンドクリームを塗った後などは油分が付着する恐れがあるため、触れないようにしましょう。
きれいにたたむ
きれいにたたむということも長持ちさせるために効果的です。仕事の合間の移動中など、忙しいとついつい適当にたたんでしまいがちですが、生地同士が正しくない状態で張り付くと、傷ついたり、骨が傷む原因になることがあります。
たたむ際にも表面に触れないよう注意が必要ですね。
そうなんです。内側から手を入れて折り目に沿わせていくようにしてたたむようにしましょう。最近では手間をかけずに折りたためるよう加工されているタイプもあるので、チェックしてみてください。
折り畳み傘の場合はすぐにバッグにしまってよいのでしょうか?
すぐにバッグに入れたい場合は、なるべく撥水性の高いタイプを選んで、水滴をしっかり落としてから畳んでください。そして家に帰ってからの洗って陰干しはマストです。
長期間使わないときは開閉して傘に空気を入れる
傘は湿度など保管場所のコンディションも変わるため、使わずに置いておくだけで傷んでしまうことがあります。こまめに使用するのが理想的ですが、実際に使わなくても、たまに開閉するようにすれば中に空気が入り、過度な劣化を防ぐことができます。
傘の寿命を縮めるNGな使い方
せっかくのお手入れを台無しにしないためにも、普段から傘の使い方に気を付けることが大切です。傘の寿命を縮める、間違った使い方をご紹介します。
いきなり開く
傘を開く前に、振ってほぐさずに開くのも良くありません。骨が絡まった状態で人の力が加わると、破損や変形のおそれがあります。完全に折れていない場合でも、ひびなど目に見えない損傷が起こっている場合があるので、よく生地をほぐしてから開くようにしてください。
激しく横に振る
力強く振ったり、地面に打ち付けて水切りをしたりすることは絶対に避けてください。傘の骨は左右の動きに弱いため、斜め下に向けて、傘を軽く開いたり、閉じたりを複数回繰り返して水滴を払うようにしてください。開いたままクルクル回すと、骨を繋いでいるパーツや骨を痛めてしまいます。
長持ちする傘の選び方ポイントは?
一口に傘と言っても、強度や機能はさまざまです。お手入れの手間を軽減するためにも、長持ちする傘の選び方をご紹介します。
身長に合ったサイズを選ぶ
標準的な傘のサイズとしては 50 ㎝、 55 ㎝、 60 ㎝、 65 ㎝などがあり、その中でも成人男性は 65 ㎝、成人女性は 60 ㎝の傘が一般的なサイズとされています。身長に合った最適なサイズの傘を選べば、「濡れたくない」「小回りがきく方がいい」など必要な条件と組み合わせて、傘に無駄な負荷をかけずに使うことができ、結果的に寿命を伸ばすことにつながります。
折りたたみ傘・長傘によってサイズ感が異なるのでチェックしてみてください。
耐風構造をチェック
風に煽られにくく、壊れにくい傘を求めるなら、耐風構造に注目してみましょう。衝撃を受け流す耐風構造が備わった傘は風に強く、強風でひっくり返っても一度閉じれば元に戻りやすいのが特徴です。さらに、親骨に樹脂を繊維で補強したFRP(繊維強化プラスチック)などが使われていれば、風に強いだけではなく折れにくさも期待できます。軽量なので、女性や小さなお子さんでも扱いやすくなっています。
撥水効果の高いものを
撥水性の高い傘を選ぶことも、長持ちさせるためには有効です。水滴が傘からスムーズに落ちるので、手で触れることなくたたむことができます。お手入れの手間も軽減できます。
お手入れを習慣に、お気に入りの傘を長持ちさせよう
何気ない動作や、気付かず受けた衝撃が、傘にとって大きなダメージとなることがあります。無意識のうちに傘に負担をかけてしまわないよう、丁寧に扱いましょう。また、使用した傘を休ませるため、数本の傘をローテーションして使い回すのも、傘の寿命を伸ばす有効な方法のひとつです。工夫してお気に入りの傘を長持ちさせましょう。
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