会議やプレゼンで自分の意見がうまく伝わらず、モヤモヤした経験はありませんか?自分の気持ちをもっと上手に伝えるにはどうすれば良いのでしょうか。本記事では、現役フリーアナウンサーとして活躍している塩崎さんに、アナウンサーが実践する効果的な話し方やテクニックをわかりやすく解説していただきます。今日から実践できる簡単なことから、応用的なテクニックまで、あなたのコミュニケーションスキルを飛躍的に向上させる秘訣をお伝えします。
相手に伝わる話し方は学習で後天的に習得できる?

話し上手な人を見て、羨ましいと思っていませんか? 先天的な影響が多い運動神経などと違い、話し方は後天的に誰もが習得できるスキルです。ビジネスシーンで特に重要と言われているのは、「傾聴力」「質問力」「伝達力」の3つです。相手の話をじっくり聞き、疑問点を明確にし、自分の考えをわかりやすく伝える。これらのスキルは、トレーニング次第で身につけることができます。
「話し方は生まれつき」と思っている方もいるかもしれませんが、実は大人になってからでも、相手に伝わる話し方を身につけることができます。昔からの癖がなかなか直らないと悩んでいる方もいるかもしれませんが、大切なのは思考回路を変えることです。特に社会人経験を積み重ねてきた方は、これまでの人生でさまざまな人と接してきた経験があります。今までの経験を生かして、相手に伝わる話し方を習得しやすいといえるのです。
アナウンサーに学ぶ、相手に伝わる「話し方」

では、相手に伝わる話し方にはどんな特徴があるのでしょうか?ここからは、プロの言葉で聞衆を惹きつける、現役フリーアナウンサーの塩崎さんに、相手に伝わる話し方のコツを伝授していただきます。
話すスピードと抑揚のつけかた
早口になりすぎると、相手が聞き取りにくく、大切なところが聞き漏れてしまうことがあります。話す際には、ゆっくりとしたペースで話すと、相手に落ち着いて聞いてもらえます。
また、声に抑揚をつけることで、聞き手は話の流れを掴みやすくなり、退屈せずに最後まで耳を傾けてもらうことができます。抑揚とは、話し方にメリハリをつけることを指します。これがないと、話がダラダラと続いてしまい、相手には長く感じられたり、つまらないと受け取られてしまうことがあります。
「抑揚をつける」とは、話す声に高低差や強弱をつけることです。 最初は難しいかもしれませんが、たとえば芸人さんの話を思い出してみてください。 芸人さんは、短い時間で聴衆を笑わせたり、考えさせたりするために、話す声にメリハリをつけています。 おもしろいところでは声を大きくしたり、間を置いたり、逆にシリアスな場面ではトーンを落としたりします。このメリハリが、私たちを惹きつけ、笑いを誘うのです。話し方にも同じことが言えます。 重要なポイントを強調したいときには、少し声を大きくしたり、ゆっくり話したりする。逆に、補足的な説明をする際には、少しトーンを落として話す。このような声の出し方や音量の大小を意識することで、相手に伝えたいことをより効果的に伝えることができます。
抽象的な言葉ではなく、具体的な言葉を使う
抽象的な言葉を使うと、相手は漠然としたイメージしか掴めず、話の内容がぼやけてしまいます。一方、具体的な言葉を使うと、相手は言葉のイメージをスムーズに想像でき、心に響くメッセージを伝えることができます。たとえば、「楽しかった」という抽象的な言葉よりも、「美味しいケーキを食べて、みんなで大笑いした」という具体的な言葉の方が、より情景が浮かび、楽しさが伝わります。
ビジネスの場においては、会話の理解度はテンポが重要です。視覚や、聴覚、触覚、味覚、嗅覚など、五感を刺激する言葉を選ぶと、相手によりリアルなイメージが伝わります。また、「少し」や「たくさん」といった曖昧な表現ではなく、「3時間」や「10個」など、具体的な数字を使うことで、より正確に伝えられます。
聞き手の反応を見ながら話す
会話は一方通行ではなく、相手とのキャッチボールです。一方的に話すのではなく、相手の反応を見ながら話すことで、より円滑なコミュニケーションに繋がります。相手の表情や仕草は、その人が今何を考えているかを教えてくれるサインです。
たとえば、相手が話を聞いて頷いているなら、「理解している」というサイン。逆に、眉をひそめているなら、「よく分からない」というサインかもしれません。相手の反応に合わせて話すことで、「ちゃんと聞いてくれる」と感じ、
質問や意見を気軽に言いやすくなるでしょう。
さらに、自分の話し方も改善するチャンスです。相手の反応を見て、「もっと分かりやすく説明すれば良かったな」「話が長すぎたかな」などと振り返り、次の会話に活かすことができます。
相手が自分の話をしっかり理解しているかは、相手の目線や頷き、表情の変化などが判断材料になります。相手の表情を見て理解度を確認しながら話を進めていきましょう。
表情、身振り手振り、視線の使い方
相手に伝わる話し方には言葉だけでなく、表情、身振り手振り、視線といった非言語コミュニケーションも重要です。
たとえば、プレゼンテーションで重要なポイントを説明する際、手を動かしながら説明することで、より相手に伝わりやすくなります。また、相手の目を見て話すことで、誠意が伝わり、信頼関係を深めることができます。
大勢の聴衆を相手に発表する際、聴衆一人ひとりに語りかけるように意識することは大切です。その際に役立つのが、「Zの法則」です。Zの法則とは、視線を動かす際に、アルファベットの「Z」を描くように、一番奥の左上席から右上、左下、右下へと順番に視線を向ける方法です。この方法を用いることで、聴衆は「自分にも話しかけてくれている」と感じ、発表に集中しやすくなります。Zの法則は、発表の際に聴衆との一体感を高め、より効果的にメッセージを伝えるための有効な手段の一つです。ぜひ、あなたの発表に取り入れてみてください。
専門用語など難しい言葉を使わない
ビジネス用語は相手に合わせて使うのが理想的です。意味が伝わらないと相手が混乱してしまうことがあります。
たとえば、新卒の方が入社してくるタイミングを考えてみましょう。まだビジネス用語に慣れていない場合、「リスケ」などのビジネスの一般的な用語ですら、最初は理解が難しいことも。専門用語や社内でしか通じない言葉を使うと、相手は理解できず、話が伝わりにくくなってしまいます。そうなると、言葉の意味や疑問点に意識が集中し、あなたが本当に伝えたいことが伝わりにくくなってしまいます。
せっかく時間をかけて話したのに、肝心のメッセージが相手に届かないのはとてももったいないことです。大切なのは、相手にしっかりと意味が伝わる言葉を選ぶこと。誰にでも理解できる言葉を使うことで、よりスムーズなコミュニケーションができるようになります。
コミュニケーションで最も大切なのは「相手に伝わるかどうか」です。アナウンススクールでもよくいわれることですが、「中学生が理解できるくらいの言葉遣いを心がける」というのが基本です。中学生でも分かる言葉を使えば、多くの人に伝わりやすくなります。
避けたいNG例!「伝わらない話し方」の典型例

「話したのに、伝わらない…」そんな経験はありませんか? せっかく一生懸命話したのに、相手に理解してもらえないのは、とても残念なことです。 今回は、「伝わらない話し方」の典型的なNG例を3つご紹介します。
声が小さすぎて聞こえない
「え?もう一度言って」と聞き返される経験はありませんか?せっかく重要な話をしていても、相手が聞き取れなければ伝わりません。聴衆にしっかりとメッセージを届けるためには、聞き取りやすい声量が大切です。
顔を上げて、視線を前に向けることを意識しましょう。この姿勢をとることで、自然と胸が開き、腹式呼吸がしやすくなります。腹式呼吸は、安定した声量を出す上で非常に重要です。
余計な「えー」や「あー」といった間の言葉が多い
「えー」「あー」といった間投詞は、多すぎると話を途切れさせ、聴衆の集中力を削いでしまいます。話す内容が明確になっていないと、言葉を探し、ついつい「えー」と間を置きたくなってしまいます。
話す前に、伝えたいことを箇条書きにして整理しましょう。原稿を作成することで、間投詞を減らすことができます。
一方的に話しすぎる
一方通行ではなく、お互いが意見を交換することが大切です。一方的に話すことは、相手を置いてけぼりにする行為です。相槌を打ったり、質問をしたり、相手の意見を尊重するなど、双方向のコミュニケーションを心がけることで、より深い理解へとつながります。相手にも話す機会を与え、共に考え、共に成長するような会話を目指しましょう。
現役フリーアナウンサー直伝!今すぐできる「伝わる話し方」のトレーニング法

最後に、今すぐできる簡単なトレーニング方法をご紹介します。このトレーニング法をマスターすれば、あなたの言葉は、もっと多くの人に届くようになります。
録音して聴いてみる
自分の声を客観的に評価し、改善点を見つけ出すためには、まずは自分の声を録音して聴いてみましょう。
「自分の声が恥ずかしい…」と思う方もいるかもしれませんが、自分の声を客観的に聴くことは、話し方を改善する上でとても大切です。実は、私たちが普段聞いている自分の声と、相手に届いている声は少し違います。それは、音の伝わり方が違うからです。
耳を塞いで話すと、骨を通して響く自分の声が聞こえ、これが相手に届いている声に近いのです。録音した自分の声を聴いてみると、思っていた声との違いに驚くかもしれません。早口になっている、語尾が弱くなっている、など、自分の話し方のクセに気づくことができるでしょう。
実況をして言葉の引き出しを増やす
言葉に詰まるのが怖い…そんなあなたは、普段から「実況中継」をすることを意識してみましょう。
たとえば、街を歩いているときに「今、私は渋谷のスクランブル交差点にいます。人混みがすごいです。あ、ここでは新しい展示会をやっています」と、まるで誰かに話しかけるように、自分の目にしたもの、感じたことを声に出してみましょう。
大切なのは、完璧な日本語である必要はないということ。 思いついたことをそのまま言葉にすることで言語化能力を鍛えることができます。
育児中の方なら、お子さんと一緒に散歩をしながら、「今日は空が青くて雲ひとつないお天気だね。木から鳥の鳴き声が聞こえてくるね。花壇に咲いているお花が綺麗だね。」のように、日常の出来事を言葉にしてみましょう。
完璧に見られたいという思いを手放す
「話が苦手で…」と悩む人は、完璧を求めすぎていませんか?「わからない」と素直に言えなかったり、少しの間違いを恐れて言葉に詰ったり・・・。しかし、完璧である必要はありません。大切なのは、相手に自分の考えを伝えようとすることです。「わからない」と正直に伝えたり、自分の言葉で説明したりする勇気を持つことが大切です。
話した後に「ご理解いただけましたか?ご不明な点はございませんか?」と確認することで、相手への配慮も示せます。完璧を求めるのではなく、相手に自分の考えを伝えることを楽しむことが大切です。少しずつステップアップしていくことで、あなたは必ず成長できるはずです。
まとめ: 「伝わる話し方」を身につけ、コミュニケーションを円滑に

「話すことが苦手」と悩んでいる方も、あきらめる必要はありません。話し方は、後天的に身につけることができるスキルです。「伝わる話し方」という新しいコミュニケーションスキルを身につければ、人間関係が円滑になり、仕事やプライベートでも活躍できるでしょう。「話し方は変えられない」という固定観念にとらわれず、この記事でご紹介したトレーニング方法を参考に、積極的にコミュニケーションを取る機会を作りましょう。
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