いざという時の備え、できていますか?台風や地震などの災害時、物流が止まり、スーパーやコンビニの棚が空っぽになることがあります。そんな非常時でも、家族の食事を安心して用意するためには、日常生活に取り入れやすい「ローリングストック術」が大活躍します。
本記事では、備え・防災アドバイザーの高荷さん監修のもと、ローリングストックの概念や無理なく続けられるコツをわかりやすく紹介します。今日から始める賢い備えで、非常時にも心に余裕を持ちましょう。
ローリングストックとは?忙しい毎日でもできる備蓄術

「ローリングストック」という言葉、聞いたことはありますか?ローリングストックとは、食料品、飲料水、日用品など、普段使っているものを少し多めに買い置きし、使った分だけ補充していくという備蓄方法です。常に一定量の備蓄を維持しながら、賞味期限切れを防ぎ、非常時にも備えることができるという、一石二鳥の考え方です。
専用備蓄とローリングストックの違い
専用備蓄とは、大地震や台風などの災害時専用に購入した食品や日用品を、普段は使用せず、いざという時のために保管しておく方法です。長期保存可能な缶詰やレトルト食品、水など、災害時にすぐに必要となるものを準備しておきます。
一方、ローリングストックは、普段から食べている食品や日用品を、少し多めに購入し、消費しながら新しいものを補充していく方法です。普段の食生活に組み込めるので、特別な準備は不要で、賞味期限切れのリスクが低いのが特徴です。
専用備蓄 | ローリングストック | |
---|---|---|
目的 | 災害時専用 | 普段の生活と災害時 |
アイテム | いわゆる「非常食」の他、長期保存可能な缶詰、レトルト食品など | 普段食べている食品や、トイレットペーパー、乾電池をはじめとする日用品など |
備蓄方法 | 専用のスペースに保管 | 冷蔵庫や食器棚など、普段の収納スペースを活用 |
特徴 | 管理が簡単、確実に備蓄品が維持される | 追加費用が最小限、特別な保管場所が不要、日常的な防災意識の維持につながる |
防災対策として、専用備蓄とローリングストック、どちらを選ぶべきか迷っている方も多いのではないでしょうか。専用備蓄は、初期費用はかかりますが、手間をかけずに確実に備蓄を維持したい方におすすめです。一方、ローリングストックは、追加費用を抑え、普段の生活の中に防災を取り入れたい方におすすめです。
専用備蓄とローリングストックの両方を組み合わせることもおすすめです。たとえば、長期保存可能な水や缶詰といった食品を専用備蓄にして、普段の食事に使う食材や日用品はローリングストックを行うなど、自分にあった方法を見つけてみましょう。大切なのは、自分に合った方法で、継続的に備蓄を行うことです。
災害時に役立つローリングストックのメリット

ローリングストックは、普段の生活に取り入れやすく、災害時に役立つ備蓄方法です。そのメリットを5つのポイントで詳しく解説します。
1. 普段の生活に取り入れやすい
ローリングストックは、日常で使う食品やアイテムを消費しながら補充していく方法です。特別な準備をする必要がなく、普段の買い物でストックを増やすだけで、無理なく備蓄が続けられます。
2. 新鮮で食べ慣れた食品を確保できる
常に使用・補充を繰り返すため、賞味期限切れの食品ロスを出す心配が少なくなります。また、普段食べているものを災害時も食べるようにするため、食べ慣れた食品を災害時に確保することができます。
3. 経済的で無駄が少ない
日常的に使っているものを少し多めに備蓄として使うため、「本番」となる災害が生じなくとも無駄にならず、経済的に災害へ備えることができます。非常時にも慌てずに済む安心感があります。
4. 家族の好みに合った備蓄が可能
普段から使っている食品をストックするため、非常時にも普段愛用しているものや、家族が慣れた味や好みの食事を楽しむことができます。普段通りの食材が使えるため、精神的な負担も軽減されます。
5. 幅広い災害に対応できる
ローリングストックは地震や台風など、災害の種類を問わず活用可能です。停電や断水時にも手軽に食べられる食品や必ず必要となる日用品を含めて備蓄することで、あらゆる状況に対応しやすくなります。
ローリングストックは、特別な準備なしに、無理なく防災の準備ができるという点が大きな魅力です。アレルギーをお持ちの方や赤ちゃんのおむつやミルク、介護用品などの生活必需品も、使い切れる範囲でストックを持っておくことで、災害時に備えておくことができます。ぜひ、あなたの暮らしに取り入れて、災害に備えましょう。
非常時のためにどれくらい備えればいい?

ローリングストックの重要性がわかったところで、実際に何をどのくらい備えておくのが良いのでしょうか。高荷さんによると、食料備蓄の優先順位は災害の種類によって異なると言います。
ここからは、大地震や大規模水害を想定とした非常時に必要な備蓄品の量について、非常食、日用品、その他防災アイテムなど詳しく解説していきます。
「非常食」は行動食、避難用、短期備蓄、長期備蓄の4種類に分けられる
災害時に最も必要なのは食材です。「非常食」といっても、その種類や目的はさまざま。高荷さんの話では、非常食は大きく4つの種類に分けられるといいます。
1.行動食:避難中にエネルギーチャージ
避難中にエネルギーを補給するために必要なのが、「行動食」です。チョコレートやナッツ、ゼリーなど、手軽に食べられるものが中心です。小さく、軽く、すぐに食べられるものが理想です。避難中は体力消耗が激しいので、こまめにエネルギーを補給することが大切です。
2.避難食:避難所や車中泊で食べる食事
避難所や車中泊で、温かい食事が食べられない場合に備えて、「避難食」を用意しておきましょう。パンの缶詰や栄養補助食品など、常温でそのまま食べられ、においが広がりづらい食べ物がおすすめです。避難生活は心身ともに疲れるため、少しでも美味しい食事をとることが、心の支えになります。
3.短期備蓄:インフラ復旧までの備え
電気やガス、水道が復旧するまでの間、食事を確保するために、「短期備蓄」が必要です。普段食べている米やパン、缶詰などを少し多めに備蓄しておきましょう。3日~1週間程度を目安に、ローリングストック方式で管理すると、賞味期限切れを防ぐことができます。カセットこんろがあると食材を食べやすくなります。
4.長期備蓄:大規模災害に備える
大規模な災害が発生し、食料の供給が途絶えた場合に備えて、長期備蓄もあると安心です。長期備蓄はローリングストックよりも専用備蓄が適しています。非常食セットや、長期保存可能な缶詰、乾燥食品などを用意しておきましょう。長期保存できる食品は、賞味期限が長く、保存場所もコンパクトにできるものがおすすめです。
災害時の最初の3日間は人命救助と道路啓開作業(道路の開通作業)に注力され、外部からの支援物資は入ってこないため、最低でも3日分の備蓄は必要不可欠です。ただし、備蓄は必ずしも「普段通りの完璧な食事」を想定する必要はありません。生命維持に必要な最低限の食料と水があれば十分です。このように考えれば、備蓄品の量は現実的な範囲に収まり、準備もより取り組みやすくなります。
3日分~1週間分の備蓄が目標
大きな災害が発生した場合、電気、ガス、水道などのライフラインの復旧には、数週間から数ヶ月の期間が必要となります。この期間をしのぐ備蓄を確保することは難しいですが、1週間をしのぐことができれば支援が本格化したり、被災地の外へ出られるようになります。避難所生活が長期化する可能性も考慮し、1週間分の備蓄があると安心です。ローリングストックで、少しずつ準備を進めていきましょう。
総量が多いと心配になるのが保管場所ですが、たとえば非常用トイレはトイレに、懐中電灯は枕元に置くなど、使う場所で保管することで、定期的なチェックもしやすく、いざという時にもすぐに取り出せます。
災害時に最も必要とする「水」のストック目安
災害時、最も大切なもののひとつが「水」です。飲み水はもちろん、調理や衛生面でも水は必要不可欠です。では、一体どれくらいの水を備蓄すれば良いのでしょうか?
一般的に、1人あたり1日3リットルの水を用意することが推奨されています。これは、飲み水・調理用の水・最低限の生活用水を合わせた量です。これを最低でも3日分、できれば7日分の水を用意しておきましょう。
例:4人家族の場合) 1人あたり3リットル×4人×3日=84リットル
家族全員の1週間分の水を用意するのは、保管場所も必要となるため大変大変ですよね。そこで、生活用水は簡易トイレや洗わないシャンプーなど災害グッズで代用しながら、飲み水として最低2リットル×1箱(6本)×家族人数分(4人家族の場合:2L×6本×4セット=48L)を備蓄することをおすすめします。箱ごと保管できると購入時には楽に運べ、保管時にもコンパクトにまとめることができます。水を定期的に購入する習慣がない方は、専用備蓄として10年保存可能な保存水を用意しておくと便利です。
ローリングストックのおすすめアイテム
ローリングストックに適したおすすめのアイテムにはどのようなものがあるのでしょうか?
ここからは、食材や日用品など、ローリングストックにおすすめのアイテムをご紹介していきます。
缶詰 | 長期間保存が可能で、栄養価も高い食材です。肉、魚、野菜や果物など、さまざまな種類の缶詰が販売されており、ストックしていると便利です。 |
レトルト食品 | レトルトカレーや丼ものは、温めるだけで食べられる手軽さが魅力です。普段から食べ慣れていることで、災害時にもストレスなく食事を楽しめます。 |
インスタント食品 | カップラーメンやインスタントスープは、手軽に調理できるため、非常時に重宝します。温かい食事は心の癒しにもつながります。 |
米・パックライス | 常温保存ができ、非常食としても、普段の食事としても活用できます。加熱しなければ食べられないため、カセットこんろなどをあわせて準備しましょう。 |
お菓子 | チョコレートやビスケットなどの甘いお菓子は、エネルギー補給に役立ち、気分転換にもなります。非常時でも楽しみを持つことが大切です。 |
ティッシュ・トイレットペーパー | 災害時、水が出ない場合に手や顔を拭くのに必要です。傷口を拭いたり、包帯を固定したりする際にも使えます。 |
ラップ | 断水時など、食器を洗えない場合に、ラップを敷いて食器の代わりとして使用できます。厚みのあるものは、包みやすく、破れにくいのでおすすめです。 |
乾電池 | 懐中電灯、ラジオ、携帯電話の充電など、さまざまな場面で必要になります。漏液防止機能付きのものを選ぶと安心です。 |
ガソリン | 自動車を保有する家庭の場合は、ガソリン残量が半分を切ったら満タンにするなどの習慣を持つことも、ローリングストックのひとつと言えます。 |
このように、日常的に消費するアイテムはローリングストックの必須アイテムです。普段使い慣れたものを選ぶと、災害時にも安心して使用できます。
ローリングストックに向いている食品の特徴は、日常的に消費する頻度が高く、家族が自然に使用するものです。たとえば、毎朝コーンフレークを食べる習慣がある家庭なら、自然とストックが循環していきます。重要なのは、なくなってから買い足すのではなく、常に一定量の予備を持っておく習慣をつけることです。各家庭で定期的に消費する食品は異なりますので、自分の家族の食習慣に合わせて、ローリングストックする食品を選びましょう。
食材や日用品は使い切れる量で2~3個ストックをプラス
ローリングストックの基本は、「普段使っているものを少し多めに購入する」ことです。
具体的には、普段の購入量に2~3個分プラスを目安に購入し、賞味期限が近いものから消費することで、常に新鮮な状態で消費できます。たとえば、醤油、みりん、砂糖などは、いつも購入するサイズのものを2~3本多めに購入しておきます。ストックがあるためうっかり買い忘れを防ぎ、専用備蓄のように賞味期限切れで捨ててしまうことが減り、経済的です。
赤ちゃんや介護用品、アレルギー対応品など特別アイテムは使い慣れたものを
赤ちゃんや介護が必要な方、アレルギーのある方など、特別な状況にあるご家庭では、普段使っている商品を一つプラスして備蓄することが大切です。
災害時に新しい商品でアレルギー反応が出るなどのトラブルを防ぐことができます。慣れた商品を使うことで、ストレスなく避難生活を送ることができます。
無添加食品もローリングストックは可能
「無添加食品は賞味期限が短いから、ローリングストックに向かない」という誤解をしている方も多いですが、使い切れる範囲内であれば、無添加食品もローリングストックの対象になります。賞味期限が7日の食品でも、毎日食べるなら1週間分をローリングストックできることになります。
ただし、一般的な加工食品に比べて、賞味期限が短いものが多いため、こまめな確認が必要です。普段から日常的に愛用しているものであれば、使い切れる範囲内でプラス1個ストックをしておくと便利です。
ローリングストックに向かないものは?
ローリングストックは、災害に備える上で非常に有効な手段ですが、すべての食品がローリングストックに向いているわけではありません。
たとえば、生鮮食品のように、買ったその日に食べきらなければいけない食品は、ローリングストックには向きません。さらに、家族が普段食べないレトルト食品や缶詰は、賞味期限直前に消費する際や、いざという時にも食べずに無駄にしてしまう可能性があります。
まとめ:ローリングストックで災害に備えよう

災害はいつ起こるかわかりません。しかし、今日からできる備えとして、ローリングストックを取り入れてみましょう。ローリングストックは、特別なことをするのではなく、普段の買い物に少しプラスするだけ。無理なく続けられるので、防災の習慣を身につけることができます。
ローリングストックは、あなたと家族の命を守るための第一歩です。今日から、少しずつ始めてみませんか?大切なのは、継続することです。ぜひ、ローリングストックを生活の一部に取り入れて、災害に備えましょう。
※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。