味噌は、日本料理には欠かせない調味料のひとつです。しかし、「味噌の種類ってたくさんあるけど、どれを選べばいいのかわからない」という方も多いのではないでしょうか?味噌は種類によって、特徴や味わいが異なります。
本記事では、味噌の種類や特徴、そして料理に合わせた味噌の選び方について味噌メーカー「マルコメ株式会社」の須田信広さん監修のもと、詳しく解説します。味噌の種類を知って、あなたの料理の幅を広げてみませんか?
味噌にはなぜたくさんの種類があるの?
日本人の食卓に欠かせない味噌。その種類は数えきれないほど多く、地域や家庭によってさまざまな味が楽しめます。そもそもなぜ、こんなにも多くの種類が存在するのでしょうか?
味噌の種類が多い理由のひとつは、地域ごとの気候風土の違いにあります。寒さが厳しい地域では、保存性を高めるために塩分を多くした辛口味噌が作られてきました。一方、温暖な地域では、素材の甘みを活かした甘口味噌が主流です。
地元の農作物を活用する文化も、味噌の種類を豊富にしました。米どころでは米麹を使った米味噌、麦の栽培が盛んな地域では麦麹を使った麦味噌が発展しました。また、大豆の種類や加工方法、麹の種類、発酵期間など、さまざまな要素が組み合わさり、地域ごとに異なる製法が生まれたのです。
そして、それぞれの地域で育まれた味噌は、地域の伝統料理と深く結びついてきました。郷土料理には、その土地ならではの味噌が使われ、受け継がれてきたのです。このように、味噌は地域の食文化を彩る、大切な要素のひとつとなっています。
味噌の種類とその特徴とは?

味噌は日本の伝統的な発酵食品として知られ、主に大豆、麹、塩を使って作られます。発酵の過程で微生物が重要な役割を果たし、大豆のたんぱく質を分解してアミノ酸を生成し、その結果として旨味が増すのが特徴です。
発酵期間が長くなると、味や香りが変わり、熟成が進むことでより深みとコクが増します。この発酵のプロセスを理解することで、味噌の種類やその使い方をより楽しむことができるようになります。
味噌はその原材料や製法の違いにより、大きく4つに分類されます。それぞれの特徴について詳しく見ていきましょう。
米味噌
米味噌は、大豆と米、塩を主原料とした味噌で、日本で最も一般的に流通している種類です。原料の配合によって「甘口味噌」「辛口味噌」に分かれ、特に東北地方では塩分が高めの辛口味噌、関西や北陸では甘みの強い甘口味噌が親しまれています。色合いも白から赤まで幅広く、料理の用途に応じて使い分けが可能です。クセが少なく、味噌汁や調味料として幅広く活用されています。
麦味噌
麦味噌は、大麦やはだか麦を麹にして大豆とともに発酵させた味噌です。特に九州地方や四国地方や山口県、愛媛県で広く親しまれており、米味噌に比べて甘みが強く、香り高いのが特徴です。発酵が進むことで大麦特有の風味が引き立ち、ほのかに甘みのある味わいになります。
また、麦味噌は塩分が比較的控えめで、口当たりが優しく、熟成期間が短めのものが多いため、色が淡いものが主流です。
豆味噌
豆味噌は、大豆と塩を原料とし、米麹や麦麹を使用せずに作られる味噌です。主に愛知、三重、岐阜など東海地方で親しまれており、八丁味噌が代表的な種類として知られています。発酵・熟成期間が長いため、色が濃く、独特の渋みやコク、深い旨味が特徴です。
塩分は比較的控えめで、抗酸化作用のある成分が豊富に含まれています。味噌汁だけでなく、味噌煮込みうどんや味噌カツなど、地域の郷土料理にも幅広く活用されています。
調合味噌
調合味噌とは、異なる種類の味噌をブレンドして作られた味噌のことです。例えば、米味噌と豆味噌、麦味噌と米味噌などを組み合わせ、それぞれの長所を活かした味わいに調整します。単一の味噌では得られないバランスの取れた風味やコクを生み出せるのが特徴です。
味の違いによる分類もある
同じ味噌であっても、原料の配合によって味の違いが出ます。
味噌の味の違いは主に「塩分」と「麹歩合」によって決まります。麹歩合とは大豆に対する麹の比率のことで、塩分量が同じ場合、麹歩合が高いほど甘口になります。それらによって変わる味の違いは3種類に分けられます。
甘味噌
塩分が低く、麹歩合が高いので、塩辛くなく甘みが強くまろやかな味わいが特徴です。
代表的な味噌:関西白味噌
甘口味噌
塩分も麹歩合も高いので、先味がしょっぱく、後味にまろやかな甘味があります。
代表的な味噌:御前味噌、越中味噌
辛口味噌
塩分が高く、麹歩合が低いので、先味がしょっぱく、後味は塩辛くすっきりとしています。
代表的な味噌:仙台味噌、信州味噌
熟成期間の違いで色が変わる
味噌は同じ仕込み方であっても、発酵・熟成させる期間が変わると風味も変化していきます。その違いをみていきましょう。
色が淡い味噌
熟成期間が短く、風味は「さっぱり・すっきり・あっさり」しているのが特徴です。米味噌の甘味噌であれば、関西のお正月のお雑煮に使われる白味噌は色が淡い味噌の代表格。米味噌の辛口味噌であれば、淡色の信州味噌が広く全国で親しまれています。
色が濃い味噌
熟成期間が長く、風味は濃厚でコクがあり、クセの強いものもあります。味噌業界では色が濃く、黒い色をしていても「黒」ではなく「赤」と表現します。八丁味噌に代表される豆味噌はどれも色が濃いのですが、
米味噌の辛口であれば、色の濃い仙台味噌が有名です。
味噌の正しい保存方法を知ろう

味噌は発酵食品で、適切に保存しないと風味が変わったり、劣化したりすることがあります。味噌のおいしさを長持ちさせるためには、正しい保存方法を知っておくことが大切です。
買ったらすぐに冷蔵庫または冷凍庫へ
味噌は温度と時間によって熟成が進み、時間が経つと、色が濃くなり、香りや味が変化します。また、空気に触れることで酸化が進み、色がくすんで黒ずんだり、風味が損なわれてしまいます。このため、味噌を美味しく保つには、空気に触れさせないことと、温度管理が重要なのです。
高温では熟成が早まり、好みの味のピークを過ぎると風味が損なわれていきます。この変化は「褐変」と呼ばれ、糖とアミノ酸が反応するメイラード反応によって起こるものです。熟成には適度な温度と時間が必要ですが、ピークを超えると風味の変化が進むため、購入後は開封前でもすぐに冷蔵庫で低温保存するのが理想的です。冷蔵庫で保存し、空気を遮断することで、味噌の風味を長く保つことができます。
さらに、冷凍庫での保存もおすすめです。味噌は塩分が多いため、冷凍庫に入れても凍ることはありません。低温環境により熟成や酸化をさらに遅らせることができるので、長期間美味しく味噌を楽しめます。
開封後は空気に触れにくくする工夫を
カップに入った味噌の蓋を開けると、白い薄い紙と小さな袋が入っていますよね。袋の中身は脱酸素剤といって、味噌の品質を保つためのものです。
カップ詰めの味噌は味噌とふたの間に隙間があるため、その間の酸素を吸収するために置かれています。しかし、開封後に入ってくる酸素までを吸うことはできないため、開封したら捨てて問題ありません。さらに、敷かれている紙は脱酸素剤が味噌に埋もれてしまわないよう置かれているだけなので、こちらも捨ててしまってOK。開封後は味噌の表面にラップを密着させ、空気との接触を防ぎ、酸化を遅らせるようにしましょう。
調理道具にも注意を
味噌汁などを作る時、お玉やスプーンで味噌をすくうことがあると思いますが、その場合は乾いた状態で使用するようにしましょう。
味噌は発酵食品なので、水分が入るとカビが生えやすくなったり、腐敗する可能性があります。
スプーンなどの水分をしっかり拭き取ってから、味噌をすくうことを心がけてください。
味噌の使い分け術をマスターしよう

味噌は、発酵の期間や原料の違いによって風味や色合いが異なります。味噌の特性を活かして使い分けることで、料理の味わいがぐっと引き立ちます。
味噌汁は“色”で使い分けてみる
味噌は、熟成期間が長くなるほど色が濃く、味わいも深まり、コクが増します。そのため、味噌の色を意識して使い分けることで、味噌汁の仕上がりが大きく変わります。
さっぱりとした味わいに仕上げたい場合は、淡い色の味噌を選ぶのがおすすめです。これらは具材から出る風味をより引き立てます。例えば、豆腐や薄切り大根、油揚げなどのシンプルな具材と合わせると、やさしい味わいの味噌汁になります。また、白味噌は関西地方でよく使われ、お正月のお雑煮などにも用いられるほど、まろやかで上品な風味が特徴です。
一方で、色が濃い味噌は、熟成期間が長く、濃厚でコクのある味わいが魅力です。深い旨味があるため、こってりとした味噌汁に仕上げたいときにぴったりです。濃い色の味噌は、個性の強い食材とも相性がよく、例えば、独特な風味を持つシジミやアサリと組み合わせると、貝の出汁と味噌のコクが合わさり、奥深い味わいになります。
洋風アレンジで味噌を使いこなす
味噌は和食だけでなく、洋風の料理にも意外なほどマッチします。発酵食品ならではのコクと旨味が、洋風食材と絶妙に絡み合い、新たな味わいを生み出します。
例えば、いつもの味噌汁にトマト・シュレッドチーズ・ベーコンなどを加えると、まるで洋風スープのような仕上がりに。トマトの酸味と味噌のコクが合わさり、チーズがとろけてまろやかな味わいになります。色が濃い味噌を使うと、さらに深みのあるスープになります。
また、サラダにも味噌を活用できます。顆粒状の味噌をドレッシング代わりにふりかけたり、オリーブオイルやビネガーと混ぜて味噌ドレッシングを作るのもおすすめです。特に、ナッツやチーズを使ったサラダには、白味噌の甘みがよく合います。
味噌を上手に使いこなせば、いつもの洋食がワンランクアップ!ぜひ、いろいろな料理に取り入れてみてください。
味噌が口に合わなかったらどうする?
普段と違う味噌を購入してみたものの、「思ったより味が濃い…」「ちょっとクセが強いかも…」と感じることもありますよね。
そんなときは、いつも使っている味噌に少しずつブレンドして使うのがおすすめです。
ブレンドすることで風味が増し、まろやかさが増したり、コクが深まったりと、味わいに奥行きが生まれます。「ちょっと味が単調かも?」と感じたときに、ブレンド味噌を試すと、新しい発見があるかもしれません。
まとめ:味噌の種類と特徴を知って料理を楽しもう

味噌は日本の食卓を彩る万能調味料。その種類は実に多彩で、それぞれに個性的な持ち味があります。料理に合わせて使い分けることで、味の奥行きが増し、食事がより楽しくなるはずです。
しかし、育った環境で慣れ親しんだ味を変えるのは、意外と難しいものです。例えば、長年米味噌を使っている方なら、同じ米味噌でも甘口や辛口があるので、まずは馴染みのある素材の中でバリエーションを試してみるのも良いでしょう。いろいろな味噌を試しながら、自分好みの味を見つけてみてくださいね。
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