「ぬか床の手入れって難しそう…」そう思っていませんか?実は、ちょっとしたコツさえ掴めば、ぬか床の手入れは難しくありません。この記事では、管理栄養士の大槻万須美さんから伺ったぬか床の失敗しないための簡単なお手入れ方法や、よくある疑問への答えをわかりやすくご紹介します。
正しい知識とちょっとしたコツさえ覚えれば、ぬか床ライフをもっと楽しく、安心して楽しむことができます。美味しくヘルシーなぬか漬けを楽しんでみませんか。
「ぬか床」を始めるあなたへ!失敗しないための基礎知識
ぬか床とは、日本の伝統的な発酵食品の一つで、米ぬかに塩や水を加えて発酵させたものです。この発酵床には乳酸菌が豊富に含まれており、野菜や食材を漬け込むことで独特の風味を楽しむことができます。ぬか床の管理には少し手間がかかりますが、正しく育てることで長く使い続けることができます。
ぬか床の最大の魅力は、その発酵力によってさまざまな食材を美味しく変化させる点にあります。特に、ぬか漬けには腸内環境を整える効果が期待される乳酸菌が豊富に含まれています。また、ぬか床は日々の手入れを通して風味が変化するため、自分だけの味を育てる楽しみもあります。さらに、野菜だけでなく肉や魚も漬けることができるため、食事の幅が広がります。
ぬか床は、精米する際に出る米ぬかに水と塩を混ぜ合わせて作る漬物床です。ぬか漬けは江戸時代から400年以上続く日本の伝統的な発酵食品です。誰でも手軽にはじめられるので、ぜひ試してみてくださいね。
ぬか床の材料
ぬか床を作るには、以下の材料と道具を準備しましょう。
<材料>
米ぬか:1kg
塩:130g(10-15%)程度
水:米ぬかと同量
容器:陶器やプラスチック製の容器、ジップロックなど蓋つきの容器や密閉できるもの。容器の大きさは、ぬか床の量が容器の7~8分目を超えないくらいが目安。
※お好みで風味を豊かにするために昆布や唐辛子など
ぬか床は、精米する際に出る米ぬかに水と塩を混ぜ合わせて作る漬物床です。ぬか漬けはぬか床に使われる糠には、大きく分けて生糠と加熱処理された糠の2種類があります。どちらが正しいというわけではなく、それぞれに特徴があります。生糠は糠本来の風味が強く残っており、酵素が活性化しやすく、発酵が進みやすいといった特徴があります。また、無農薬の生糠を使うと、より美味しいぬか漬けになると言われています。一方、加熱処理された糠は、雑菌が繁殖しにくいため扱いやすく、ぬか床作りが初心者でも失敗しにくいというメリットがありますが、加熱しているため酵素の働きは若干弱まっていることもあるようです。純粋な生糠を入手したい場合は米屋さんがおすすめです。最近のスーパーではすでに調合された「ぬか床の素」なども販売されていますので、使いやすいものを選びましょう。
ぬか漬けの作り方
ぬか漬けを作るためには、はじめに「捨て漬け」を行い、その後「本漬け」へと移行します。
<作り方>
- 容器に米ぬかと塩、昆布や唐辛子などの材料を入れ、しっかりと混ぜ合わせます。
- 水を少しずつ加えながら、粉っぽさがなくなり、耳たぶよりやわらかく、握った時に水分がにじんでくるくらいの硬さになるまで混ぜます。塩加減を見てしょっぱい程度が目安です。
- ぬか床の表面を手のひらや拳で押さえてしっかりと空気を抜きます。
- 4くず野菜やキャベツの外葉などをよく洗って水気を拭き取ってから漬け込みます。表面を平らにならしてしっかりと押して空気を抜き、ふたをしておきます。
- 5ぬか床は毎日上下を返すようにかき混ぜます。2~3日ほど漬け込みくず野菜がしんなりしていたら取り除きます。
- くず野菜を新しいものに取り替えながら、4と5の手順を3~4回繰り返します。こうすることで発酵が進み、ぬか床が育ちます。
- 捨て漬けが終了したら、本漬けに入ります。お好みの野菜を洗って、水気を拭き取ります。
- 野菜をぬか床に漬け込みます。
- 漬ける時間はお好みで調整してください(浅漬け:6時間~根菜類1日程度)
ぬか床は、精米する際に出る米ぬかに水と塩を混ぜ合わせて作る漬物床です。ぬか漬けはぬか床に使われる糠には、大きく分けて生糠と加熱処理された糠の2種類があります。どちらが正しいというわけではなく、それぞれに特徴があります。生糠は糠本来の風味が強く残っており、酵素が活性化しやすく、発酵が進みやすいといった特徴があります。また、無農薬の生糠を使うと、より美味しいぬか漬けになると言われています。一方、加熱処理さぬか床は、微生物の働きによって発酵するため、初回に行う「捨て漬け」は、ぬか床を育てるために重要なプロセスです。捨て漬けした野菜は、まだ美味しく発酵していないため風味が劣り、食べられない状態であることも多いため、食べずに捨てましょう。
毎日続けたい!ぬか床のお手入れの基本

野菜を美味しく発酵させてくれるぬか床は生きています。微生物の働きによって野菜を発酵させ、独特の風味を生み出すのです。失敗しないためのぬか床の手入れ方法を知り、毎日の習慣にしましょう。
ここからは、ぬか床を長く使い続けるための手入れ方法をご紹介していきます。
分量
ぬか床に野菜を一度に大量に入れると、発酵がうまく進まないことがあります。一度に多すぎる野菜を入れると、ぬか床が密になり、空気の通りが悪くなり、発酵が停滞してカビが発生しやすくなってしまいます。野菜を付ける際には、ぬか床の量の10〜20%程度の量に留め、野菜同士が重なりすぎないように配置しましょう。
野菜の水分量によって、必要な漬け時間も変わってきます。漬け時間が異なる野菜は、容器を分けて別々に漬けるようにすると管理も簡単です。
かき混ぜ方
ぬか床は定期的に混ぜることで発酵を促して、野菜の風味を均一にしてくれます。一方で、数日放置して混ぜないでいると、表面が乾燥したり、部分的に過発酵が進んだりして、味にムラが出てしまいます。基本的に1日1~2回上下をかえすように底から優しくかき上げるように混ぜましょう。中央部分の層は空気が入らないようにすることもポイントです。
表面だけをさっと混ぜたり、力を入れすぎて激しくかき混ぜすぎたりすると、ぬか床全体の菌のバランスが崩れる原因につながります。また、常温で3日以上混ぜないと風味が大きく変わることもあるため、なるべく毎日かきまぜましょう。
温度管理
ぬか床の温度が高すぎる、または低すぎると発酵がうまく進まず、味が安定しません。そのため夏場の暑い場所や、反対に寒すぎる場所にぬか床を置くと、高温では発酵が過剰に進み酸味が強くなり、低温では発酵が遅く、ぬか床が活性化しません。直射日光に当たらない、風通しの良い場所で常温(18〜25度)で保存しましょう。
乳酸菌が活性化しやすい温度帯は20-25度と言われています。30度を超えると菌の動きが悪くなったり、腐敗菌が繁殖しやすくなったりするため、その場合は野菜室に移動することをおすすめします。長期間不在にする場合は、冷蔵庫に必ず保管し、室温に戻してからかき混ぜる、または、野菜の漬け時間を少し長めにしましょう。
不衛生な手や道具を使わない
ぬか床は衛生的に扱うことが非常に重要です。手や道具が清潔でない状態でぬか床に触れると、バクテリアやカビが繁殖しやすくなり、ぬか床が不快な臭いを発する原因になります。必ず手をきれいに洗ってから作業を行い、異物が混入しないよう、作業場所を清潔に保ちましょう。容器の側面やふたなどにぬかが付着したりこぼれたりした時は、きちんとふき取っておきましょう。
手に傷がある場合は、雑菌が付着しないように使い捨ての手袋の使用をおすすめします。また、手洗い後のアルコール消毒は、ぬか床の微生物のバランスが崩れることがあるために避けておき、しっかりと手を洗ってから作業するようにしましょう。
季節ごとの注意点
ぬか床は季節によって発酵の速度や管理方法が変わります。一年を通してぬか床を最高の状態に保つために、季節ごとの管理のポイントを見ていきましょう。
近年の夏は、ぬか床にとって過酷な日が多くなっています。高温多湿な環境は、微生物の活動を活発にしすぎたり、ぬか床が傷みやすくもなります。室温が30℃を超えるような日は、ぬか床を冷蔵庫の野菜室で保管しましょう。また、夏場は発酵が早いので、室温で漬ける場合は漬け時間を短めに調整しましょう。
一方、冬は、ぬか床の活動が鈍くなる季節です。寒さによって微生物の働きが弱まり、発酵が遅れてしまいます。15度以上の比較的暖かい場所に置きましょう。発酵が遅いので、漬け時間を長めに調整しましょう。
季節の変わり目は、気温や湿度が不安定になり、ぬか床の状態も変わりやすい時期です。特に、梅雨時期は、湿度が高く、微生物が活発になりすぎるため、カビなどにも注意が必要です。毎日しっかりかき混ぜ、カビの発生を抑えましょう。
ぬか床は古くは江戸時代から庶民の間で広まった文化であり、保存食としても重宝されてきました。ぬか床が好む環境を整えながら、美味しく活用しましょう。
ぬか床を長く美味しく楽しむためのコツ

ぬか床は、適切な手入れをすることで、長く美味しく楽しむことができます。管理栄養士の大槻さんに、ぬか床を長期間おいしく保つための秘訣を教えていただきました。
野菜は新鮮なものを使おう
まず、大前提として、新鮮な野菜を使うことが大切です。 新鮮な野菜には、ぬか床の微生物が喜ぶ栄養がたっぷり含まれています。 また、新鮮な野菜を使うことで、ぬか漬けの風味も格段に向上します。
<選ぶときのチェックポイント>
- みずみずしさを確認する(シナシナした野菜は避ける)
- 傷や変色がないものを選ぶ
- 可能な限り旬の野菜を選ぶ(栄養価が高く、ぬか床も元気になる)
野菜の下処理はぬか漬けの味を左右します。野菜はよく洗い、キッチンペーパーで水気をしっかり拭き取りましょう。アクのある野菜や水分の多い葉物野菜などは塩でもんでから漬けるようにします。大根やにんじんなどの大きな野菜は皮をむいて縦割りなどにカットすると漬かりやすくなります。生で食べられないじゃがいもやサツマイモなどは蒸したり湯通ししたり、軽く加熱してから漬けます。
ぬか床の状態は毎日チェックする
ぬか床は生き物のようなもの。毎日の観察が大切です。
<状態のチェックポイント>
- 香り:健康なぬか床は爽やかな酸味のある香り。酸っぱすぎる、あるいは不快な臭いがする場合は要注意
- 色:均一な薄茶色が理想的。部分的に黒ずんだり、赤みを帯びたりしていないか確認
- 触感:指で触ってみて、べたつきすぎないか、または乾燥しすぎていないかチェック
- 味:少量を指先でなめてみて、塩味のバランスを確認(手はきちんと洗いましょう)
ぬか床は気温や湿度の変化にも敏感。味は毎日でなくても良いですが、水分が多すぎないか、色や香りがおかしくなっていないかなどはしっかりと観察してくださいね。
管理栄養士が解説!ぬか床のお悩みQ&A

ぬか床は、微生物の力によって野菜を美味しく発酵させてくれますが、生き物であるがゆえに、さまざまなトラブルに見舞われることも。ここでは、ぬか床の腐敗、味の変化、カビ、発酵の進みすぎといった、よくある問題とその解決策を大槻さんにご紹介いただきます。
白い膜状のものは産膜酵母の可能性があり、必ずしも腐敗とは限りません。また、表面だけの問題であれば、その部分を取り除けば使用可能な場合もあります。ただし、黒や緑色のカビが生えている場合は、ぬか床の腐敗が進んでいる可能性が高いです。また、米ぬかや発酵の匂いではない明らかな腐敗臭など、通常とは異なる臭いがする場合は、腐敗している可能性があります。
白い膜状のカビは産膜酵母の可能性が高く、必ずしも有害ではありません。しかし、黒や緑色のカビは有害な可能性があるので、しっかりと取り除くようにしましょう。カビが生えている部分とその周辺のぬか床を、広めに取り除きます。取り除いた部分に、新しいぬかを加えてよく混ぜ、ぬか床の水分量や塩分濃度を調整し、適切な環境を整えましょう。
ぬか床の発酵が進みすぎた場合は、ぬか床を薄く平らに広げ、日陰で短時間風にさらすことで、過剰な酵母や臭いを軽減することができます。また、ぬか床を混ぜる頻度を増やし、空気を含ませることで、微生物のバランスを整え、風味の安定化を図ります。さらに適切な水分量を保つことも重要です。ぬか(と食塩)を足して、キッチンペーパーなどで余分な水分を吸い取るなどして、水分量を調整しましょう。
まとめ:もっと楽しく!ぬか漬けライフを満喫しよう

ぬか床というと、なんだか難しそう、手入れが大変そう、と感じる方もいるかもしれません。しかし、ぬか床は基本と手入れ方法さえ押さえれば、誰でも気軽に楽しめるものです。まずは気軽に始めて、毎日触って、変化を観察すること。そうすることで、ぬか床とのコミュニケーションが生まれ、自然と手入れのコツも身についていきます。そして何より、自分だけの味を育てていく楽しさをぜひ味わってください。
ぬか床は、作り手の個性が表れるといわれるほど実は奥深いものですが、誰にでも簡単に始められます。愛情をもってぬか床を育てることもでき、食卓を豊かにしてくれるだけでなく、心も豊かにしてくれる存在です。まずは短期間からぬか床づくりにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。