関節リウマチは関節に炎症が起こり、痛みや腫れを伴う病気です。進行すると、関節破壊が引き起こされ、家事や仕事など日常生活に支障をきたすことにもなりかねません。高齢者の病気というイメージがありますが、年齢に関係なく現われる疾患です。現在70~80万人の有病者がおり、発症のピークは50〜60代といわれています。
関節リウマチとは?

「リウマチ」=リウマチ性疾患とは、関節や筋肉など運動器系に痛みをもたらす病気の総称です。古くはリウマチ熱が代表的な病気で、それに似た症状が出る疾患を英語名でrheumatoid arthritis(リウマトイドアセトライズ=リウマチもどきの関節炎)と名付けたのが、関節リウマチの起こりといわれています。
原因について
関節リウマチは、発症にいたる原因が未だに明らかになっていないのが現状です。
ただ発症原因がわからないながらも、関節リウマチがどのような病態であるかは解明されており、治療法が飛躍的に進化しています。残念ながら、未だ完治する例は少ないですが、適切に治療すれば日常生活に支障がないほどにコントロールすることができる病気であると覚えておきましょう。
なりやすい要因
関節リウマチに“なりやすい”要因の研究はさまざま報告されていますが、どれも発症率が高いといわれている程度で、決定的な原因ではないということを理解しておきましょう。
- 遺伝…その病気が必ず繋がっていくというメンデルの法則に従った疾患ではないが、遺伝的要素があることは証明されている
- 喫煙…喫煙者は非喫煙者と比べて、関節リウマチの発症リスクが約4倍高まるといわれている
- 腸内細菌の乱れ…腸内細菌のバランスが崩れると、関節リウマチにつながるような炎症の悪循環が起こる
女性の罹患率が高い
リウマチ性疾患は、男性と女性で罹患率に差がある病気です。特に関節リウマチは中年以降の女性に多く認められ、罹患率全体の男女比は1:4になっています。
しかし高齢発症になると男女差が少なくなります。更年期に女性ホルモンのエストロゲンが減少し、そのホルモンの男女差がなくなることが関連する可能性などが考えられていますが、実際にはわかっていません。
発症のメカニズム
私たちには細菌やウイルスなどから身体を守る“免疫機能”が備わっています。昨今、免疫を高めることが良しとされていますが、むしろ自分の組織などを敵として免疫が高まることが発症のきっかけになる病気があります。自己に対する免疫系が過剰に働くことで起こる疾患を“自己免疫疾患”と呼んでおり、そのひとつが関節リウマチです。
何らかの原因で免疫システムに異常が起きると、健康な細胞や組織を攻撃し、さまざまな部位に炎症が生じます。その攻撃が関節に対して起こると、関節の痛みや腫れといった関節リウマチの症状があらわれます。
免疫異常には、関節の滑膜(かつまく)組織にリンパ球やマクロファジーなどの白血球が集束し、サイトカインという刺激物質を産生→関節内に炎症反応が起こり、悪循環して慢性化する→同時に滑膜細胞が増殖したり、関節液が増加するなどもあり、さらに症状を悪化させる→その結果、軟骨・骨の破壊がすすむ→関節の変化や機能低下や変形が生じる、という背景があります。

関節リウマチの症状

関節リウマチで重要なのが早期発見・早期治療ですが、初期症状を“疲れ”とやり過ごしてしまうこともあるようです。まずは関節リウマチの初期症状のセルフチェックを行ってみましょう。
セルフチェック
こんな症状はありませんか?
(関節の痛みと腫れ)
- 関節痛が3日以上続く
- 痛みや腫れの症状が手指の第2関節に出ている
- 足指(足指)の付け根に痛みや腫れがある
- 手首などの関節に痛みや腫れがある
- 肘や膝の関節に痛みや腫れがある
- 2カ所以上の関節痛がある
- 色々な関節がかわるがわる痛くなる
- 関節の腫れが左右対称に出ている
- 関節が熱を持っているように感じる
- 雨の日や寒い日に関節が強く痛む
(こわばり・他)
- 洋服のボタンを外ずしにくいなど、指関節がなんとなく動かしにくい
- 手がむくみ、腫れぼったい感じがする
- 朝起きて手のこわばり感が30分以上続く
- 朝に身体のこわばり感が30分以上続く
- 昼寝後にこわばり感がある
- 長時間椅子に坐っていた後にこわばり感がある
関節リウマチは、手や足など小関節に痛みや腫れが起こることが多いものの、大関節でも発症します。
進行について
前出のセルフチェックで気になることがあったら、病院で検査を受けてみてください。
関節リウマチは進行性の疾患といわれ、良くなったり、悪くなったりを繰り返しながら、慢性化していきます。
中期以降の症状
関節の炎症が長期間続くと、関節の軟骨・骨が破壊され、関節の変形や脱臼が起こります。関節リウマチ特有の変形といえば、手指ではスワンネックなどが知られていますが、関節が強直したり、関節の曲げ伸ばしが難しくなり、関節の可動域が狭くなるなどの身体症状があらわれます。
以前は関節の破壊はゆっくりと進むといわれていましたが、近年の見解では治療を開始しないと2年以内で急速に進行するといわれています。
また関節以外の症状として、炎症が強ければ発熱、疲れやすさ、倦怠感、体重減少などが見られるようになります。
早期発見の重要性

関節リウマチは発症後、半年以内に適切な治療をはじめることがベストです。逆に関節痛の痛みなど症状が2年以上経っていると、治療をしても回復が難しくなるといわれています。
関節リウマチに関する情報を得る
関節リウマチといっても関節症状が強くない方もいます。また初期症状である手足のこわばりは、更年期の方やほかの病気の方でもみられることがあります。まずはネットなどで関節リウマチについて調べてみましょう。
自己流ケアに注意
関節リウマチを疑う場合は、サプリメントや民間療法など自己流ケアは避け、クリニックで病状を診断してもらうことが早期治療につながります。
また温泉の効能にリウマチがよく挙げられていますが、一般的に運動器の傷害に良いということであって、関節リウマチに特に効果があるというわけではありません。
クリニック選び
免疫系の疾患である関節リウマチは、どこで診察すべき?と迷う方もいるかもしれません。
日本では“日本リウマチ財団”や“リウマチ友の会”の働きかけによって、政府に「リウマチ科」という標榜科を認めてもらった経緯があります。
海外では、最初は家庭医で診断を受ける方も多いようですが、日本の場合は筋骨格系の手術が関係するということもあり整形外科で診察を行うことも多いです。一方、関節リウマチも膠原病の仲間で、以前からリウマチ専門医の内科医が診ていました。軽い症状でも自分に当てはまりそうな項目があったら、いきなり大病院などに行くより、まずはリウマチ科を標榜している内科医や整形外科医に相談してみることが大切です。
なお、リウマチを診ている医師や医療機関は、日本リウマチ財団のホームページで調べることができます。
日本リウマチ財団登録医師・看護師・薬剤師・理学療法士・作業療法士の所属する医療機関(日本リウマチ財団)
クリニックでの診断・検査
そもそも関節が腫れたり痛む病気としては、関節リウマチ以外にも、膠原病、さまざまな感染症、軟骨がすり減ることで痛みが生じる変形性関節症、尿酸の結晶が関節に溜る痛風などがあります。
その中でも原因が特定できない関節リウマチは“分類基準”をもとに、関節で腫れを伴う炎症(滑膜炎)、症状がある関節数、血液検査、画像検査などで総合的に判断されます。
「この検査さえ陽性に出れば診断がつく」という病気ではないため、最初に関節リウマチと診断されても、別の膠原病だったりと、途中で診断が変わるケースがあることを覚えておきましょう。
治療について
関節リウマチの治療には薬物療法、手術療法、リハビリテーションなどがあります。
<薬物療法>
第一、第二、第三段階と異なる薬や注射、点滴などで局所の炎症を抑え、QOLを低下させるような身体症状の進行をストップさせます。ただし原因療法ではないので、治療をやめると症状がすすんでしまいます。
<手術>
進行度合いではなく、生活に不都合があるかで選択します。
関節リウマチは薬物療法の確立によって病状が進行しない方が増えている一方、医療費の負担が大きいことが治療課題として挙げられます。また昔、関節リウマチを患い悪化がすすんでしまっている方の治療法も課題のひとつとなっています。
初病期の生活面について
関節リウマチは治療によって症状をコントロールすることができるので、運動などを趣味にできるような普通の生活を送ることができます。また、普段の生活を送ることが、関節リウマチのリハビリテーションそのものになります。
軽いこわばりも見逃さないようにしよう

未だに原因を特定できない関節リウマチは有効な予防策がなく、誰もがなり得る病気といえるでしょう。高齢社会になり関節リウマチの罹患者の増加が予測されていましたが、現実になってきています。
早期治療が一番の解決策です。こわばりなど体のちょっとした異変に耳を傾けることが必要です。 “病院に行くほどではない”と自分で判断してクリニックの受診を後回しにしないようにしましょう。
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