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退職金の無い自営業者の老後の備え方とは?おすすめの方法もご紹介

セゾンのくらし大研究 編集部

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日本の就業者のうち、10人に1人は自営業をされているといわれています。会社員であれば福利厚生も手厚く、なかには「退職金」が用意されている企業にお勤めの方も多いでしょう。一方、退職金が無い自営業の方は、会社員より退職後や老後について備えておく必要があります。このコラムでは、退職金が無い自営業者がどう老後に備えていけば良いのかを解説します。

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1.会社員の老後にもらえるお金

会社員の方が定年時・定年後にもらえるお金は、主に退職金と厚生年金です。勤続年数に応じてもらえる厚生年金の受給額には差がありますが、国民年金だけの自営業の方に比べれば、老後の収入が多いといわれています。具体的にもらえる金額を確認していきましょう。

1-1.退職金

退職金は一律の金額が定められていないため、企業によって異なります。また業種や学歴、退職理由などさまざまな関係で金額に差がでてきます。学歴別による定年まで働いた場合の退職金のそれぞれの平均は、以下のとおりです。

このとおり、大卒・大学院卒が多いという結果になっています。一方で、高校卒業の方は、大学卒業の方より、約4年間先に働いていますのでその分の給与を含めて計算するとあまり変わらないという見方もできます。

大卒・大学院卒(管理・事務・技術職)19,830,000円
高校卒(管理・事務・技術職)16,180,000円
高校卒(現業職)11,590,000円

1-2.厚生年金

厚生年金は、会社員がもらうことのできる公的年金の一つです。厚生年金に加入していると、自動的に老齢基礎年金(以下、国民年金という)にも加入することとなるので、年金受給時に厚生年金と国民年金の両方を受け取れます。

国民年金の保険料が定額(令和3年度は16,610円)なのに対し、厚生年金の保険料(標準報酬月額の18.3%を会社と本人で折半拠出)は給与によって異なるため、受給額は一定ではありません。支払っている保険料が多くなるほど受給額も増えることになります。

厚生労働省の厚生年金保険と国民年金事業の概況によると、令和元年度において月額平均は、男性が357,000円、女性が247,000円です。

2.自営業者が老後にもらえるお金

自営業者は会社員とは違い、退職金がなく、老後にもらえるのは国民年金のみとなります。老後に必要な費用と合わせて、国民年金について確認してみましょう。

2-1.国民年金

自営業者は基本的に老後の収入が国民年金のみです。国民年金は、原則20歳から60歳まで納付するようになっています。日本年金機構によると、現在この40年間全額を納付することで65歳から月々65,075円受け取ることが可能です。

では、老後の生活に月々いくら費用が必要なのか見てみます。

単身の場合夫婦の場合
139,739円239,947円

上記表を参考に老後に必要な費用と受け取れる国民年金の受給額を照らし合わせると

単身の場合139,739円-65,075円=74,664円

夫婦の場合239,947円-130,150円(国民年金の夫婦2人)=109,797円

となります。老後を国民年金のみの収入で過ごそうとすると、この算出した金額分、生活費が不足するということが見えてきます。

先ほどの国民年金の受給額は、40年間全額納めた場合の金額です。未納の期間があれば、それだけ受給額が減ることになります。実際には、全員が満額を受け取っているわけではなく、令和元年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況によると、国民年金の受給額の平均は56,049円という統計も出ていることから、老後にかかる費用の不足分の負担はさらに増すものと考えます。

このため、自営業者は老後の備えを会社員よりも充実させておく必要があるでしょう。

国民年金

3.自営業者が退職金を用意する2つの方法

自営業者の老後資金の備え方としては、①小規模企業共済制度や、②個人型確定拠出年金(iDeCo)など、国民年金以外にも用意されています。したがって制度をうまく活用することで国民年金以外の退職金、年金をつくることができます。以下でご紹介する2つの方法は併用可能ですので、うまく活用してみましょう。

3-1.小規模企業共済制度

自営業者がご自身で退職金を用意するのに活用できる制度が「小規模企業共済制度」です。小規模企業共済制度は、小規模企業の個人事業主又は会社等の役員の方が退職された場合や事業を廃業した場合に、その後の生活安定や事業再建を図ることを目的にあらかじめ資金を準備しておく共済制度です。いいかえるならば、小規模企業者ための退職金制度といえるでしょう。本制度は、掛金が全額所得控除できるなどの税制メリットがある制度です。詳しく確認してみましょう。

①制度概要

小規模企業共済制度とは、独立行政法人 中小企業基盤整備機構が運営する退職金制度です。小規模企業の経営者や個人事業主が利用可能で、掛金を積み立てることで退職金として備えることが可能です。掛金合計額の最大120%の共済金が受け取れます。

掛金は、月々1,000円から70,000円の間(500円単位)で自由に設定でき、加入後も減額や増額が可能です。そして、この支払った掛金は全額が所得控除の対象となり、高い節税効果が期待できます。

共済金受け取り時においても、受け取り方法により異なりますが、一括受け取りの場合は、「退職所得扱い」、分割受け取りの場合は、公的年金等の「雑所得扱い」として所得控除扱いとなります。この所得控除の効果は小規模企業共済を利用するうえで大きなメリットです。

また小規模企業共済には貸付制度もあり、掛金の範囲内(掛金納付月数により掛金の7~9割)で低利率(年利)の融資を利用できます。種類は豊富で以下のとおりです。(2021年9月現在)

貸付けの種類利率(年利)
一般貸付け(事業資金)1.5%
緊急経営安定貸付け0.9%
傷病災害時貸付け0.9%
福祉対応貸付け0.9%
創業店行事、新規事業展開等貸付け0.9%
事業承継貸付け0.9%
廃業準備貸付け0.9%

さまざまな場合に備えることもでき、即日融資も可能なため、とても便利な制度です。

②条件

小規模企業共済制度は誰でも加入できるわけではなく、以下のいずれかの加入資格を満たしている必要があります。

建設業、製造業、運輸業、サービス業(宿泊業・娯楽業)、不動産業、農業の個人事業主または会社の役員従業員の数 20人以下
商業(卸売業)、サービス業(宿泊業・娯楽業以外)の個人事業主または会社の役員従業員の数 5人以下
企業組合の役員 協業組合の役員事業に従事する組合員の数 20人以下
従業員の数 20人以下
農業の経営を主に行っている農業組合法人の役員従業員の数 20人以下
弁護士法人 税理士法人等の士業法人の社員従業員の数 5人以下
1・2に該当し経営に携わる共同経営者個人事業主1人つき2人まで
参照元:中小機構 加入資格

③金額例

小規模企業共済は納付月数と共済事由ごとで基本共済金が定められており、それに運用収入に応じた付加共済金が加算され算出されます。では小規模企業共済を利用することで、いくら共済金がもらえるのか例をあげて確認してみましょう。

例)加入年齢 30歳0ヵ月  掛金月々30,000円

年金を受取る65歳0ヵ月まで加入した場合

掛金合計 12,630,000円(納付月数 421ヵ月)
受け取れる共済金 15,195,000円

となります。

条件を掛金70,000円と満額にした場合は

掛金合計 29,470,000円
受取れる共済金 35,455,000円

となります。

上記例は中小機構HPより実際に加入シミュレーションで算出したものです。ご自身の条件を入力して確認することができます。

小規模企業共済制度は共済金で貯蓄が確保でき、さらに税金対策で大いにメリットのある制度です。ただし掛金年数が20年に満たない場合、受け取り金額が掛金を下回ってしまうので、その点を注意して利用するようにしましょう。

3-2.iDeCo(イデコ)

①制度概要

iDeCoとは個人型確定拠出年金といって、ご自身の積み立てによって年金を作る私的年金制度です。積み立てたお金からご自身で資産を運用することができ、運用で得た利益分も60歳以上から年金として受け取れます。

iDeCoの最大の特徴は税制メリット効果です。掛金は全額が所得控除の対象になり、確定申告や年末調整をすることで所得税や住民税が軽減できます。さらに、通常の株式投資などにおいては、運用益に対し20.315%の税金が課税されるのですが、iDeCoの場合は、運用益はすべて非課税になります。

さらに受け取り時にも所得控除があり、年金で受け取る場合には公的年金等控除が適用されるほか、一時金で受け取る場合には退職所得控除の対象となります。

銀行に預金しておくよりも、貯蓄をしながら税制メリットを享受でき、資産運用も可能であるため、効率的に老後の備えを作ることができるでしょう。

また、掛金の上限は下記のとおりです。

自営業者68,000円
専業主婦23,000円
公務員12,000円
会社員(企業年金なし)23,000円

このように自営業者の場合は、68,000円と他よりも高い設定です。iDeCoを利用することで、退職金のない自営業者も老後に少しでも多く備えられるでしょう。

しかし、注意点もあります。iDeCoは一度加入すると60歳まで引き出すことができません。ライフスタイルに合わせて無理のない範囲で長期積み立てをするようにしましょう。

②条件

iDeCoへは基本的に日本国内に在住の20歳以上60歳未満の方が加入できます。ただし、以下の場合は加入できません。

  • 国民年金や厚生年金を支払っていない方(国民年金保険料の全額・一部免除を受けている方も加入資格がありません)
  • 会社で企業型の年金に加入している方(勤務先で企業型の年金とiDeCoの両立を認めている場合は加入できます)

海外在住の方や60歳以上の方も加入資格がないので注意してください。

金額例

iDeCoでの最大のメリットである節税効果を踏まえて金額例を見てみましょう。

(例)加入年齢30歳 年収500万円で毎月30,000円を60歳までの30年間拠出した場合

積立総額は1,080万円で、資産運用をした場合はその運用益がプラスされます。なお、iDeCoによる税制優遇額は、1年間で72,000円になります。内訳は、以下のとおりです。

iDeCoによる所得税軽減額36,000円
iDeCoによる住民税軽減額36,000円

30年間拠出するので、iDeCoによる税制優遇額は合計で216万円(72,000円×30年間)にもなります。

この計算はiDeCo公式サイトでシミュレーションを実際におこなった結果です。節税効果が確認できるので、ご自身の条件に合わせて確認してみてください。

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4.現役時代から老後に備えておく方法

4-1.つみたてNISA

NISAとは、個人投資家向けの「少額投資非課税制度」のことをいいます。日本にお住まいの方で、NISA口座を開設する年の1月1日時点で20歳以上の方を対象とした投資における税制上のメリットがある制度です。

税制上メリットとして、通常株式投資などにおいては運用益などに対し20.315%の税金がかかりますが、NISAを利用することで、運用益の税金を非課税とすることができます。NISAには「一般NISA」と「つみたてNISA」があり、つみたてNISAは長期投資に向いており、老後の備えに最適です。

理由としては、一般NISAの非課税期間が最長5年なのに対し、つみたてNISAは最長20年間投資できるため、長期間非課税で資産運用可能です。つみたてNISAの非課税となる投資枠は年間40万円です。

またつみたてNISAや投資に詳しくないという方でも安心して利用できるように、金融庁が定めた基準をクリアした投資信託(2021年6月現在、投資信託192本、ETF(上場投資信託)7本の合計199本から選択が可能)を選ぶことができ、証券会社によっては毎月自動で買付けをしてくれるので、初心者でも気軽に投資を始めることができます。

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4-2.投資信託

投資信託とは、投資家から集めた資金をもとに、運用の専門家が投資を行う金融商品です。投資信託のメリットは、投資のプロに運用を任せられるということです。投資というと知識が必要で初心者には難しいイメージですが、投資信託を利用すると、資金があれば知識を補いながら投資を始めることができます。

また、株式投資などでの大きな不安要素の1つが投資先企業の倒産リスクです。これはひとつの銘柄に集中して投資し、その企業が倒産した場合、投資額が損害を被ってしまうのですが、投資信託では基本的には1つの銘柄に偏らない分散投資を行っている銘柄がほとんどですので、1つの企業倒産リスクは株式投資よりは軽減されているといえるでしょう。

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4-3.保険

自営業者がご自身で備えておくものとして、医療保険や就業不能保険への加入もあります。病気や怪我をした際に、高額な医療費や入院費を実費で払うのは簡単ではありません。公的保険だけでは、がんなどの高額治療費に対応できないため、任意保険に加入しておきましょう。

また、病気やケガなどにより働くことができなくなる場合もあります。就業不能保険は特定の条件をみたし就業不能とみなされた場合に保険金が支払われます。そのため収入面の心配なく、病気やケガの治癒に集中することができるでしょう。

貯蓄の備えも必要ですが、このように病気やケガに備えることも必要であると考えます。公的保険以外にも任意保険も検討し老後の備えを万全にしておきましょう。将来に備えたお金や保険の基礎知識を身に付けていただくことを目的に「セゾンマネースクール」を開催していますので、学んでみてはいかがでしょうか。ご自身の目的に合った保障に必要な分だけ加入する事が最適な備えになります。

気になる方は下記のリンクからチェックをしてみてください。

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おわりに

自営業者は自分自身での備えがとても重要になってきます。残念ながら、国民年金だけでは、老後の生活費としては期待できません。国の制度には自営業者が有利に利用できるものもあります。制度や資産運用を上手く活用し、効率的に老後の備えをしていきましょう。

有価証券投資に関する重要事項(セゾン投信)
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