資産運用を始める際に、まず目標の年利を考えることが大切です。年利とは投資した金額に対する利益の割合を指し、理想的な年利は5%とされています。
このコラムでは、資産運用の基本的な用語と年利5%を獲得するためのポイントを解説します。投資初心者の方はこのコラムを読んでいただければ、基本的な資産運用の方法が分かり、ご自身の運用方針を決定できるでしょう。
この記事を読んでわかること
- 資産運用を始める際には、目標となる金利を定めることが大切。投資初心者の方は、理想的な年利といわれている5%を目指そう。
- 目標年利が低すぎると、インフレによる物価上昇に耐えきれず、資産価値が目減りする恐れがある。一方、10%や20%など、高い年利はリスクが高く初心者にはおすすめできない。
- 年利5%を実現するには分散投資を行い、高リスクな金融商品を避けることが重要。また、ご自身の無理のない範囲の資金で長期運用しよう。
- 資産運用する商品のなかには、株式や投資信託、債券などがある。ご自身の運用目標にあった商品を選び、資産形成を進めよう。
資産運用の際に知っておきたい用語
資産運用を始める際には基本的な用語を押さえておくことが大切です。本章では、以下4つの用語を解説します。
- 利回り
- 利率
- 騰落率
- パフォーマンス
順番に見ていきましょう。
利回り
利回りとは、投資した金額に対する利益の割合です。この利益は利息だけではなく、金融商品を売却したことによって発生した売却損益も含まれます。1年間の利回りを年利と呼び、以下の計算式によって求められます。
- 利回り(%)=(分配金+売却損益)÷投資金額×100
例えば、300万円を投資し、1年後に10万円の分配金を受け取った後に305万円で売却したと仮定します。
- 売却損益:305万円-300万円=5万円
- 利回り:(10万円+5万円)÷300万円×100=5%
ただし実際の利回りは税金を考慮するため、この計算式で求められるのはおおよその利回りです。
利率
利率とは年利率とも呼ばれ、投資金額に対して毎年受け取る利息の割合を指します。一般的に利率は預金や債券に対して使われ、他の資産運用方法に利用されることはほとんどありません。利率は以下の計算式で求められます。
- 利率(%)=分配金÷投資元本×100
利回りの計算と同じように、300万円投資し、1年後に10万円の分配金を受け取った場合の計算式は以下のとおりです。
- 利率:10万円÷300万円×100=3.3%
この場合の利率は3.3%となります。
騰落率
騰落率とは、金融商品の基準価額が一定期間でどれだけ変動したかを示すものです。過去の騰落率を確認することで、今後の値動きが予想できます。
例えば、基準価格が1万円の株式が、1年後に1万500円に値上がりした場合の騰落率は5%。
騰落率には手数料や税金が含まれていないため、運用収益とは異なります。また将来の値動きを予想する場合は、他の指標と合わせて判断することが大切です。
騰落率は、取り扱っている金融機関のホームページから確認できるため、気になる銘柄の騰落率を調べてみましょう。
パフォーマンス
パフォーマンスとは投資の運用実績、または過去の動きのことです。パフォーマンスは、ベンチマークを上回っているか下回っているかで判断します。
ベンチマークとは、日本経済新聞社が公表する日経平均株価や、東京証券取引所に一部上場している株式銘柄を対象に算出したTOPIXなどの指標です。
ベンチマークと比較した際に、より多くの利益が出ていればパフォーマンスが良い、利益が少ない場合はパフォーマンスが悪いとされます。
資産運用において年利5%は現実的なのか?
資産運用において、理想の年利は5%とされています。10~20%の高い年利を設定して運用した場合、リスクが高く、資産を大きく失ってしまうケースも珍しくありません。
本章では、理想の年利が5%の理由と年利を実現するために注意すべきポイントを解説します。
理想的な年利は5%
理想的な年利は5%とされています。インフレによる資金の目減りを防ぎながら、比較的低リスクで運用できるためです。
日本銀行では「物価安定の目標」として、消費者物価の前年比上昇率2%を目指しています。仮にインフレ率が2%にあがると、20年後に現在の100万円の価値は67万円まで下がります。
そのため、5%よりも少ない年利で運用すると、インフレによる物価上昇スピードに付いていけず、資産が目減りする可能性があるのです。
一方で、年利10%や20%を目指した運用もできますが、ハイリスクの商品に投資しなければなりません。リスクとリターンは表裏一体の関係であり、多くのリターンを得るには相応のリスクを負う必要があります。比較的安定した運用をしたい方は、年利5%を目指しましょう。
参照元:日本銀行 金融政策運営の枠組みのもとでの「物価安定の目標」について、野村アセットマネジメント お金を育てる研究所 2.インフレ
年利5%を実現するために注意したいこと
年利5%を実現するためには、以下の4つのポイントに注意する必要があります。
- 分散投資する
- 高リスクな金融商品は避ける
- 長期運用する
- 無理のない範囲で投資する
順番に解説します。
分散投資する
1つの金融商品のみに投資するのではなく、商品や国、通貨、時間などを分散させましょう。
投資の世界には「卵は1つのかごに盛るな」という格言があります。複数のカゴに分けて盛ることで、1つのカゴを落としたとしても、他のカゴに入れた卵に影響はありません。1つの銘柄に絞って投資すると、株価が暴落した際に大きな損失を被る恐れがあるため、なるべく幅広く分散することが大切です。
また、タイミングをずらして投資することも重要です。タイミングをずらすことで相場の変動による価格変動の幅を抑えられます。
高リスクな金融商品は避ける
資産運用を続けるためにも、高リスクな金融商品は避けましょう。高リスクな商品は大きなリターンを得られる可能性がある一方で、資産を失う恐れもあるためです。
初心者が投資するなら、リスクの低い商品から始めるのがおすすめです。例えば、定期預金や国債、投資信託が挙げられます。
リスクの高い商品に投資するのは、リスクの低い商品に投資をして慣れてからでも良いでしょう。
長期運用する
安定的に年利5%を目指すために、長期運用をしましょう。毎月定額で長期運用をすると、平均購入単価が低く抑えられ、価格変動リスクを低減できます。
定期的に一定額の投資をする方法を「ドルコスト平均法」と呼びます。ドルコスト平均法に沿って購入することで、金融商品の価格が高い場合は少なく、安い場合は多く購入でき、変動する金融商品価格を平均化できるのです。
無理のない範囲で投資する
投資は100%利益が出るものではないため、無理のない範囲で始めましょう。投資で失ったとしても、生活に影響が出ない余剰資金で始めることをおすすめします。
いきなりまとまった金額を投資すると、相場が急変した場合にマイナスになるリスクがあります。また、投資に慣れていないため、価格変動によって一喜一憂してしまうでしょう。
一括で投資するよりも、無理のない範囲の資金で積立投資して、徐々に投資に慣れていくことが大切です。
年利5%のシミュレーションをしてみよう
年利5%で運用すると、どのくらい資産が増加するのでしょうか。
本章では、金融庁の資産運用シミュレーションを用いて、毎月一定金額を年利5%で資産運用した結果を紹介していきましょう。
毎月3万円を年利5%で運用した場合
毎月3万円を年利5%で10年間と20年間運用した結果を紹介します。
以前のつみたてNISA制度では、年間40万円までの上限が定められています。毎月で割ると3万3,000円であるため、今回のシミュレーションと近い数値になるでしょう。
10年間運用
10年間運用したシミュレーションは、以下のとおりです。
元本 | 運用収益 | 最終積立金額 |
360万円 | 105万8,468円 | 465万8,468円 |
「ゼクシィ結婚トレンド調査2022」によると、結納から新婚旅行までにかかった費用は、首都圏で421万2,000円であるため、毎月3万円を10年運用すれば、結婚費用をまかなえるでしょう。
20年間運用
20年間運用したシミュレーション結果は、以下のとおりです。
元本 | 運用収益 | 最終積立金額 |
720万円 | 513万1,010円 | 1,233万1,010円 |
10年運用した結果に比べると、265%もの違いが出ています。
参照:金融庁 NISAとは?、ゼクシィ結婚トレンド調査 2022
毎月5万円を年利5%で運用した場合
毎月5万円を年利5%で10年間・20年間運用したシミュレーション結果を紹介します。
10年間運用
10年間運用したシミュレーションは、以下のとおりです。
元本 | 運用収益 | 最終積立金額 |
600万円 | 176万4,114円 | 776万4,114円 |
日本政策金融公庫の「教育費負担の実態調査発表」によると、大学入学から卒業するまでにかかる費用は、国公立大学で481万2,000円、私立大学文系で689万9,000円、私立大学理系で821万6,000円です。毎月5万円を10年間運用すれば、おおよその学費は補えるでしょう。
20年間運用
20年間運用したシミュレーション結果は、以下のとおりです。
元本 | 運用収益 | 最終積立金額 |
1,200万円 | 855万1,683円 | 2,055万1,683円 |
20年間運用した結果は、2,055万1,683円です。元本に対して、運用資金が約171%増加しています。
参照:日本政策金融公庫 子供1人当たりにかける教育費用(高校入学から大学卒業まで)は減少
毎月10万円年利5%で運用した場合
最後に、毎月10万円を年利5%で10年間・20年間運用したシミュレーション結果を紹介します。
2024年からは新NISA制度として、つみたて投資枠が120万円まで拡大されました。このシミュレーションは、新制度で運用した際の目安となるでしょう。
10年間運用
10年間運用したシミュレーションは、以下のとおりです。
元本 | 運用収益 | 最終積立金額 |
1,200万円 | 352万8,228円 | 1,552万8,228円 |
元本に対して、約29%の運用収益が出ています。
20年間運用
20年間運用したシミュレーション結果は、以下のとおりです。
元本 | 運用収益 | 最終積立金額 |
2,400万円 | 1,710万3,367円 | 4,110万3,367円 |
国土交通省「住宅市場動向調査」によると、令和4年度の新築の住宅建築資金は3,866万円です。毎月10万円を20年間運用すれば新築の住宅建築資金を支払えるでしょう。
この結果から運用年数が長いほど複利によって、運用収益が増え、最終積立金額が増加することが分かります。複利とは、元本に付いた利息に対して、さらに利息が付くことです。
資産運用は早いタイミングで始めた方が、より高いリターンを得られます。
参照:金融庁 NISAとは?、国土交通省 住宅局 令和4年度 住宅市場動向調査報告書
資産運用する際の金融商品とは
資産運用する際には、ご自身の運用目標や許容リスクにあった金融商品を選ぶことが大切です。本章では、主な金融商品を4つ紹介します。
- 株式
- 投資信託
- 債券
- 不動産投資
それぞれの金融商品の特徴を解説します。
株式
株式とは、企業が事業を行う資金を集めるために発行されるものです。株式会社が存続する限り払い戻されないため、換金する場合は市場で売却しなければなりません。
株式を保有するメリットは、購入時よりも株価が値あがりしたタイミングで売却すると、値あがり益(キャピタルゲイン)を得られること。また、配当金(インカムゲイン)や株主優待を受けるのもメリットのひとつです。
ただし、日本国内の株式は100株単位からしか投資できないため、必要資金が比較的高くなっていることがデメリットとして挙げられます。
例えば、2023年1月17日時点のクレディセゾンの株式を購入するには、株価が2,721.5円のため27万2150円の資金が必要です。なお現在は、単元未満株として少額から投資できる証券会社も増えています。
また、企業の倒産によって、株価が0円になる可能性もあるため、分散投資を心がけましょう。
投資信託
投資信託は、投資家から集めたお金を大きな資金としてまとめ、投資のプロに運用を任せられる金融商品です。
投資信託は、1,000円や100円から始められるため、初心者でも始めやすいのがメリットです。また、投資の専門家が市場を分析して運用を行っているため、ご自身でポートフォリオのバランスを整える手間がかかりません。
一方で、専門家が運用する信託報酬や販売手数料などのコストがかかる点がデメリットとして挙げられます。また、価格変動や為替変動があり、組み合わせた銘柄によっては損をする可能性もあります。
運用コストが高すぎる商品は、収益性が低くなるため、運用コストがなるべく低い投資信託を検討しましょう。
債券
債券とは、国や地方公共団体金融機関などが資金調達のために発行する証券を指します。
債券のメリットは、保有期間中に定期的に利息を受け取り、満期(償還)時に元本が戻ってくる点です。また、満期を待たずに売却もできます。
しかし、発行する団体や企業が財政破綻や経営破綻に陥った場合、元本の払い戻しがされません。払い戻されないリスクを回避するためにも、購入を検討する債券の格付けを確認しましょう。
格付けとは、元本支払いの信用度をランク付けし、簡単な記号で表したものです。AAA〜Dまでの評価があり、AAAに近づくほど信用度が高いとされています。
不動産投資
不動産投資は土地や建物を購入し、家賃収入や売却益を得る手法です。アパート1棟を運用する方法や、マンションの1部屋だけを運用する(区分投資)方法などがあります。
不動産投資のメリットは、長期的に安定した利益が見込める点です。入居者がいれば、数年〜数十年単位での収入が期待できます。
しかし、空室が多ければ家賃収入が減少します。また、入居者の家賃滞納が発生することも珍しくありません。このようなリスクを避けるためにも、需要が大きい地域の物件を探したり、入居条件を厳しく設定したりする必要があります。
不動産情報サイトを活用するほか、不動産会社から直接情報を仕入れるなど、好条件の不動産を探しましょう。
資産運用におすすめの証券会社2社
資産運用を進める際は、ご自身にあった使いやすい証券会社を選ぶことが大切です。本章では、初心者におすすめの証券会社を紹介します。
- SBI証券
- 楽天証券
順番に見ていきましょう。
SBI証券
SBI証券は、国内で初めて証券口座開設数が1,000万口座を突破したSBIグループの証券会社です。
2023年度オリコン顧客満足度第1位を獲得し、国内株式取引シェアもNo.1を獲得しました。特に、ネット証券会社のなかでも手数料が安いことで有名です。
1日の注文数によって手数料がかかるアクティブプランと、1注文当たり手数料がかかるスタンダードプランがあり、ご自身の投資スタイルによって使い分けられます。
投資信託を100円から購入できるため、低コストで始めたい方におすすめです。
楽天証券
楽天証券は、新規口座開設数が4年連続で1位を獲得した証券会社です。ポイントが貯まりやすい楽天カードを使って、積立投資ができます。またクレジットカード決済で貯めたポイントを投資に回すことも可能です。
投資信託の買付手数料は無料のため、低コストで投資を始められます。参加費無料のオンラインセミナーや投資情報メディア「トウシル」など、投資初心者に向けた学習コンテンツも充実しています。
参照:楽天証券
おわりに
資産運用を始める際は、目標となる金利を定めることが大切です。投資初心者の方は、理想的な年利といわれている5%を目指しましょう。目標年利を1~2%に設定すると、インフレによる物価上昇に耐えきれず、資産価値が目減りする恐れがあります。一方で、10%や20%などの高い年利はリスクが高く初心者にはおすすめできません。
年利5%を実現するには、分散投資を行い、リスクを抑えることが重要です。また、ご自身の無理のない範囲の資金で長期的に運用しましょう。時間を味方に付けることで、より高いリターンを得られる可能性が高まります。金融商品には株式や投資信託、債券などがあります。ご自身の運用目標にあった商品を選び、資産形成を進めましょう。