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円安は投資信託にどんな影響を与える?メリット・デメリットや実施しておきたいこと

円安は投資信託にどんな影響を与える?メリット・デメリットや実施しておきたいこと
セゾンのくらし大研究 編集部

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円安による影響を懸念して、投資信託の購入・売却を迷っている方は多いのではないでしょうか。円安は投資信託の価格や選び方に影響を与えるため、仕組みをしっかりと理解しておくことが重要です。

このコラムでは円安が投資信託に与える影響について解説します。円安局面で実践しておきたい対策を紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。

この記事を読んでわかること
  • 円安でメリットがあるのは国内の輸出企業と海外の輸入企業
  • 円安局面では外貨建ての資産に注目
  • 相場は常に変動するため、投資信託を活用したバランスの良いポートフォリオづくりが重要

円安が投資信託に与える影響について

円安が投資信託に与える影響について

この章では、円安・円高の基礎知識について解説します。

そもそも円安や円高とは?

円安とは円の「価値」が下がり、ほかの通貨と交換できる単位が相対的に少ない状態を指します。一方、円高とは円の「価値」が上がって、ほかの通貨と交換できる単位が相対的に多い状態です。

円安や円高に関する用語の概要と具体例は、以下のとおりです。

用語概要
為替市場異なる通貨を交換する場所円から米ドル
為替相場異なる通貨を交換する際の比率1ドル=100円
円安円の「価値」が下がり、ほかの通貨と交換できる単位が相対的に少ない状態1ドル=100円から1ドル=125円に変動
円高円の「価値」が上がり、ほかの通貨と交換できる単位が相対的に多い状態1ドル=100円から1ドル=80円に変動

例えば、為替相場が1ドル=100円のときに1万円を両替すると、100ドルを受け取れます。一方、1ドル=125円に為替相場が変動すると、同じ1万円を両替しても手元に残るのは80ドルです。1ドル=100円の場合と比べて手元に残るドルが少なくなるため、1ドル=125円の為替相場は相対的に円安の状態といえます。

日本では2022年前半から円安が進んでおり、背景には日米の金利差や各国の中央銀行のスタンスがあります。2022年12月には一時1ドル=151円台後半をつけ、32年ぶりの安値を記録しました。

投資信託において円安と円高どちらが良いのか?

投資信託において円安・円高のどちらが良いかは、組み入れている商品によって異なるため、のちほど詳しく紹介します。この章では、円安・円高が個人や企業に与える影響について解説します。

円安のメリット・デメリット

円安が進むと、個人や企業には以下のメリット・デメリットがあります。

個人企業
メリット・外貨建ての資産価値が上昇する・輸出製品の販売数の増加が見込める
・国内の観光客の増加が見込める
・インバウンド需要が増える
デメリット・輸入品の国内価格が上昇する
・日本株の価格が下がる傾向にある
・海外旅行が割高になる
・輸入産業の業績が悪化しやすい
・原材料の輸入コストが高騰する

外貨建て資産は「価格が円以外の通貨で表示される資産」です。例えば円を元手に投資した米ドル建ての株式を保有している場合、円安時には相対的な資産価値が上昇します。

一方、輸入品価格は上昇するため、円安は輸入産業の業績悪化や原材料費の高騰を引き起こす要因となります。

円高のメリット・デメリット

一方、円高による個人や企業のメリット・デメリットは、以下のとおりです。

個人企業
メリット・輸入品の国内価格が下落する
・海外旅行がお得になる
・輸入産業の業績が向上しやすい
・原材料の輸入コストが抑えられる
デメリット・外貨建ての資産価値が減少する・輸出製品の販売数が減少する可能性がある
・国内の観光客数が減少する可能性がある

相対的に外貨が安くなるため、円高局面では製品や原材料の輸入コストを抑えられる傾向にあります。輸入をメインに扱う企業にはメリットがあるでしょう。

一方、輸出企業は円高によって海外で製品が売れなくなり、業績が悪化する可能性があります。また、外国人観光客にとっては日本旅行が割高になるため、インバウンド需要が減少する要因となります。

投資先別円安のメリット・デメリット

投資先別円安のメリット・デメリット

円安による影響は、投資する商品によって異なります。

  • 外国債券
  • 米国株式
  • 国内債券
  • 日本株式

商品ごとの影響を理解しておくことで、円安時の投資方針の検討に役立ちます。それぞれ順番に見ていきましょう。

外国債券

外国債券とは、以下のいずれかが外国に属する債券を指します。

  • 発行体
  • 通貨
  • 発行市場

保有期間中は金利を受け取れ、満期には額面金額100%を償還金として受け取れる仕組みです。一般的に、日本の債券と比べて高い金利が設定されています。

円安局面では相対的に外貨の価値が上がるため、円に換金した際に為替差益が期待できます。一方、円高局面では外貨の価値が下がり、為替差損が発生する可能性がある点に注意が必要です。

米国株式

米国の株式市場に上場している株式を「米国株式」と呼びます。ニューヨーク証券取引所(NYSE)やナスダック証券取引所(NASDAQ)は、いずれも米国の証券取引所です。

円安局面においては米国株の評価額が上昇するため、為替差益の発生が期待できます。米国で輸入事業を手掛ける企業は、円安が業績向上や株価上昇の要因となるでしょう。

ただし、米国で輸出事業を展開する企業は、円安による業績悪化や株価下落の影響を受ける可能性があります。

国内債券

国内債券とは、日本政府や国内の企業などが投資家から資金を借り入れるために発行する証券を指します。為替相場が債券に与える影響のモデルケースは、以下のとおりです。

為替相場市場金利債券価格
円安傾向上昇下落
円高傾向下落上昇

例えば、円安ドル高が予想される局面では、ドルで預金や資産運用する方が増加するため、一般的に金利は上昇します。市場金利の上昇は債券価格が下落する要因の1つです。一方で、円高局面では債券の価格が上昇する可能性があります。

日本株式

円安局面では、製品の販売数の増加による輸出企業の業績アップが見込まれます。株式の評価額が上がる可能性があるため、輸出企業の株をもっている投資家にはメリットのある局面です。

反対に輸入を手掛ける企業は、輸入品の国内価格が上昇するため、業績悪化が懸念されます。円安局面において輸入企業の株式の評価額は下がる可能性があるでしょう。

円安局面で実施しておきたいこと

円安局面で実施しておきたいこと

円安局面で実施すると効果的な投資は、以下の4つです。

  • 外国債券を含む投資信託へ投資
  • 米国株式を含む投資信託へ投資
  • 輸出やインバウンド関連の日本株が含まれる投資信託へ投資
  • 割安な日本株を含む投資信託へ投資

それぞれ順番に解説します。

H3:3-1.外国債券を含む投資信託へ投資

外国債券は、円安局面が進むにつれて換金の際に為替差益を狙える可能性が高くなります。また国内債券に比べると、外国債券は利回りが高い傾向にあります。実際に各国の10年国債の利回りを比較した表は、以下のとおりです。

国名利回り(年率)
日本0.72%
米国4.48%
イギリス4.27%
ドイツ2.74%

※2023年9月22日時点

円安局面では、外国債券を含んだ投資信託をポートフォリオに組み込んでおくと良いでしょう。

米国株式を含む投資信託へ投資

米国株は円安時の投資先の候補に挙げられます。円安によって米国の輸入企業の業績が向上すると、株式の評価額が上昇する可能性があるからです。

今後も円安局面が続くと予想すれば、米国株式を含む投資信託はリターンを狙えるでしょう。投資信託を選ぶ際には、組み込まれている米国株式の事業内容に注目してみてください。

輸出やインバウンド関連の日本株が含まれる投資信託へ投資

輸出企業やインバウンド関連の日本株が含まれる投資信託には注目しておきましょう。円安が進むことで、日本国内の輸出企業やインバウンド関連企業は業績の向上が見込めます。株価が上昇すれば、購入時と売却時の価格差を利益として獲得可能です。

また、輸出企業は外貨で取引する機会があるため、国内取引をメインとする企業と比べて資産の外貨比率が高い傾向にあります。外貨比率の高い日本企業は、円安によって相対的な資産価値向上が期待できます。

ただし、為替によって企業の業績が変化しても、株価が連動するとは限りません。投資信託を活用してバランスの良いポートフォリオを目指しましょう。

割安な日本株を含む投資信託へ投資

割安株は、銘柄がもつ本来の価値と比較して割安と判断されている株です。円安局面では資金が海外市場に流れ、割安な日本株が市場に生まれる可能性があります。本来の価値が正しく判断されると株価の向上が期待できるため、価格が抑えられている株を探して投資する手法が効果的です。

株価純資産倍率(PBR)や株価収益率(PER)など、割安株を判断する基準にはさまざまな株価指数が用いられます。円安局面では割安株を含んだ投資信託を選ぶと良いでしょう。

円安局面で注意したいことは?

円安局面で注意したいことは?

円安局面では投資信託を使った戦略が有効になるケースがあります。しかし、以下の点には注意が必要です。

  • 外貨建て資産ばかりに投資する
  • 外貨建て資産から手を引く

注意点を理解しておくことで、リスクの軽減につながります。それぞれ順番に解説します。

外貨建て資産ばかりに投資する

円安局面は外貨建て資産に注目が集まるタイミングです。しかし、外貨建て資産ばかりに投資してしまうと、円高になったときに資産が目減りしてしまいます。

将来の為替相場を完璧に予測するのは、プロのファンドマネジャーであっても困難です。投資比率の極端な調整は控えて、バランスの良い投資を心がけましょう。

外貨建て資産から手を引く

円安局面に入る以前から保有していた外貨建て資産がある場合、売却によって利益を確定し手を引くケースが考えられるでしょう。含み益が出ているときには、利益を確保する方法として効果的です。

しかし、実際には長期的に積み立てておいたほうが良い可能性があります。すべての外貨建て資産から手を引く前に、さまざまな視点から運用方針を検討したうえで判断しましょう。

投資信託の購入で意識してほしいこと

投資信託の購入で意識してほしいこと

投資信託を購入する際に意識しておくべきポイントは、以下の3つです。

  • 投資商品の分散
  • 投資エリアの分散
  • タイミングの分散

投資商品の分散

リスク軽減のために、投資する商品は分散することが重要です。株価の下落や為替が変動したときなど資産が大きく目減りする恐れがあるからです。投資商品には、以下のような種類があります。

  • 投資信託
  • 株式
  • 外貨預金など

単一銘柄の株式にのみなど投資する商品を極端に絞っている場合、保有している銘柄の株価が上昇した際には全体のリターンが大きくなります。しかし株価が下落した場合のリスクも大きくなります。資産を守るためには、投資商品の分散を意識しましょう。

投資エリアの分散

日本国内や海外など、投資信託を購入する際は地域分散を意識することが重要です。投資する銘柄の価格は、投資対象が存在する国や地域の状況によって左右されるからです。例えば、特定の国の財政が不安定になると、関連する銘柄は値下がりする可能性があります。以下のように異なる地域の商品を組み合わせたポートフォリオをつくることで、地域的なリスクをカバーできます。

  • 国内株と米国株
  • 先進国と新興国
  • 円とドルなど

投資エリアを分散させて、価格変動のリスクを軽減しましょう。

タイミングの分散

複数回に分けて投資する手法は、価格変動リスクの軽減に効果的です。定期的に一定額を購入することで購入額が平均化されます。とくに積立投資は購入価格の平均化に有効です。

おわりに

円安局面では外貨建て資産の評価額が相対的に上昇するため、外国債券や米国の輸入企業に注目が集まります。国内では本来の価値より割安感のある銘柄が生まれる可能性があります。

円安局面の投資方針は、商品ごとに受ける影響を踏まえて検討することが重要です。投資信託を活用して、円安局面に合わせたバランスの良いポートフォリオづくりを目指してみてください。

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