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資産形成術【FPが解説】
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「昔買ったロレックス」今ではとんでもない価格に…世の中にある“ちょっと変わった”資産形成術【FPが解説】

日本は現在「物価は上がるが所得は増えない」という、いわゆる“スタグフレーション”に陥っています。そのため、このままでは「預貯金をしっかり貯めていた人ほど損をするリスクが高まる」と、FP Office株式会社の髙屋亮FPはいいます。とはいえ、投資というと、株式や債券など“どこか難しいイメージ”があります。

そこで今回「ロレックス投資」をはじめ、インフレ下における“一風変わった資産形成術”を髙屋FPが紹介します。 

“物価は上がるが、所得は増えない”今…資産形成の「戦略」は

“物価は上がるが、所得は増えない”今…資産形成の「戦略」は

2022年春、ロシアのウクライナ侵攻を皮切りにエネルギー・穀物などの輸入価格が上昇し、現在まで続くインフレ。

これまで約20年ものあいだ「物価が下がる、あるいは横ばい」のデフレ時代が続いたところから一転、2022年の1年間でじわじわと上昇を続けてインフレ3%超が常態化し、2023年7月現在も生鮮食品を除く総合指数CPIは3.1%で推移しています。

「需要が増える→値段が上がる→企業の利益が増える→労働者の所得が増える」といったいわゆる“正常なインフレ”であれば歓迎したいところですが、現状は「物価は上がるが、所得は増えない」というスタグフレーションに陥っており、インフレにもかかわらず国民にとっては頭を悩ませる状況となっています。

一方で日本の預金金利の水準は変わらず、超低金利で0.001%~、一部の金融機関で高金利とされるところでも0.1%~程度です。

0.1%で100万円を預けると20年後は102万円ほどとなりますが、仮に現在の物価3.2%上昇が同じく20年続いたとすると、100万円の商品は188万円を出費しないと買えないことになります。つまり、預金しても102万円÷188万円=0.54で、保有資産の価値が54%まで激減してしまうことになるのです

こうなると、預貯金をしっかり貯めていた人ほど、積み上げた資産が目減りするリスクが高まります。

こうした状況から、これまで投資を経験したことがない人であっても、「インフレに負けない」ことを目的として貯蓄以外の資産運用手段を探す人が増えています。

株や債券、投資信託、FXだけじゃない!筆者おすすめの「ユニークな投資対象」

株や債券、投資信託、FXだけじゃない!筆者おすすめの「ユニークな投資対象」

個人の投資や資産運用というと、株や債券、投資信託、FXなどが代表的ですが、なんとなく“小難しいイメージ”があり、なかなかやる気が起きないという人も少なくありません。そこで今回は、「ロレックス投資」を例に、ユニークな資産運用の方法をみていきましょう。

投資の観点からみても魅力的なロレックス 

ロレックスといえば、いわずと知れた高級時計の代名詞です。その技術と圧倒的な認知度の高さから、世界中にその価値を認められています。

リーマンショック前後は、2007年に180万円だったものが翌年60万円まで下がるなど、一時的に価値が急落した場面もありました。しかしその半年後には、ほとんどのモデルが従来の価格まで復活しており、その後も多少の上げ下げはありながら手堅く成長を続けています。

特に、人気のモデルや限定品については桁違いのプレミアがつきます。たとえば、アメリカの俳優・レーサーであるポール・ニューマンが着けていたモデルの通称「デイトナ・ポールニューマン(デイトナRef.6239)」は、その希少性から2017年のオークションにておよそ20億円で落札され、大きな話題となりました。

ポールニューマンモデル以外でも、デイトナはおおむねプレミアがついています。デイトナの定価はステンレススティール素材であれば170万~200万円程度のところ、並行品(市場価格)は400万円台半ば~後半で取引されています。

そのため、お目当てのモデルを定価で購入するために、ロレックスの正規店に何度も通う人も多く、こうした行為は“ロレックスマラソン”と呼ばれています。

このように、ロレックスは純粋な腕時計としての魅力はもちろんのこと、投資の観点からみても非常に魅力的な資産といえるでしょう。

ちなみに、通常の投資なら利益に20.315%の税率がかかりますが、腕時計など生活用動産とみなされるものは税金がかかりませんので、その点も有利です(ただし、継続的に取引する場合は事業所得として税制対象になります)。

このほか、ワイン投資やアンティークコイン投資、遊休地のコインランドリー投資、トレーラーハウス投資など、投資対象にはユニークなものがさまざまあります。

投資する際は、知識をつけてから

ただし、投資対象が何であっても共通していえることは、「利益を得るためにはその投資分野について一定の知識・理解が必要だ」ということです。かの有名な三大投資家のジム・ロジャーズ氏も、「自分が理解できないことに安易に投資してはいけない」と説いています。

たとえ金融のプロでなくても、自分が興味・関心のある分野であれば、対象となる商品や企業、同業他社について調べたり、成長するまでじっくり応援したりと、積極的に知識・理解を深められるのではないでしょうか。

つまり、「自分の好きなもの・分野」から投資を始めるというのが、資産形成をはじめるひとつの方法です。

NISAを活用して“好きなもの投資”を行った場合、お金はいくら増える?

NISAを活用して“好きなもの投資”を行った場合、お金はいくら増える?

株や投資信託といえば、来年2024年1月から新NISAが始まります。すでに概要は各方面で発表されているとおり、従来は「一般NISA(個別株式などを購入できる枠)」と「つみたてNISA(長期に時間分散しながら資産形成ができる枠)に分かれていたものが、今回から併用ができるようになります。

個別株などが買える「成長投資枠」と長期に適した投資信託を買える「つみたて投資枠」の合計で累計元本1,800万円まで(成長投資枠は1,200万円まで)投資が可能です。

では、これを利用してここまで見てきた“好きなもの・企業への投資”を行った場合、お金はいくら増えるのでしょうか。新NISA上限の1,800万円まで最大限使い切る例を考えてみましょう。

まず、1,000万円を手堅く「つみたて投資枠」に使い、ドルコスト平均法で50万円×20年の分散投資をした場合、仮に年利4%と仮定すると、約5割の利益が乗り1,548万円となります。

残りの800万円は「成長投資枠」に使い、自分の好きな業界の企業4社に200万円ずつ、4年かけて投資したとしましょう。仮に10年後にA社が3.5倍、B・C社が2倍、D社は半減の株価となった場合、(3.5+2+2+0.5)/4=2倍なので、800万円が10年で1,600万円になります(年利に換算すると約7%)

新NISAは「簿価残高方式」で売却した元本分の再投資が可能なので、10年後に売却して800万円の利益を受け取り、11年目に元本分の800万円を同じく4年間で成長投資枠に再投資して、11~20年目で同じ2倍のリターンを得たとすると、20年後の利益は更に800万円加わり、元本800万円+利益1600万円=計2,400万円となります

つみたて枠の1,548万円と成長枠の2,400万円を足すと、20年後に3,948万円となり、原資1,800万円が年利4%ほどで複利運用されたことになります。

上記はあくまで仮定ですが、もし年利4%で運用できれば、直近の物価上昇3.2%が仮に20年続いても、資産価値の下落を防ぐことが可能です。

まとめ…投資を行う場合は「余裕資金の範囲内」で

もちろん、前述した「ロレックス投資」をはじめ、株や投資信託にも元本保証はなく、さまざまなリスクが存在します。大切なのは余裕資金の範囲内で行うことです。

たとえば、5年前後で使う予定のあるお金であれば、預金のまま置いておくことをおすすめします。あるいは、突発的な緊急資金用として平均生活費の半年~1年程度のお金を現金として保有し、それ以外の現金は「当面使わないお金」として積極的に運用に回すという方法もあります。

給料が増えにくく、物価上昇が続く現在。現在の金利水準での預金は「短期には安心だが長期には目減りするリスクがある」という点を忘れてはいけません。

まずは、ロレックスなど好きなものから、「預金以外の方法で自分に合った投資スタイルはあるか」を考えてみてはいかがでしょうか。