政府は中小企業の資金調達における負担を軽減するため、2026年をめどに手形の利用を廃止することを求める方針を打ち出しました。そこで、手形に代わる決済手段とそのなかでも特に利便性の高い電子記録債権について解説します。
手形のメリット・デメリットとは
個人事業主や中小企業経営者の方であっても、手形についてよく知らないという方は意外と少なくありません。最初に、手形の仕組みとメリット、そしてデメリットについて解説していきます。
手形の仕組み
手形とは、有価証券の一種であり、お金の代わりにビジネスの場で利用されているものになります。手形には120,000円や1,000万円など券面に金額が記載されており、その金額どおりの価値を持ち、売買や金融機関で換金できるようになっています。
そして、一口に手形とはいっても手形には約束手形と為替手形とがあります。約束手形とは、定められた日に定められた金額の支払いを約束して交付される手形です。例えば、AさんがBさんに約束手形を交付した場合、Bさんは指定された期日に、指定された金融機関にその手形を持って行くことで、Aさんの口座残高からお金を引き出すような形で手形を換金することができるというものです。
現在、日本で流通している手形のほとんどはこの約束手形であり、手形といえば一般的に約束手形を指します。
一方で為替手形とは、手形の作成者が、手形の受取人や所有者に対して支払いをするよう第三者に指示して作成される手形です。
手形のメリット
手形にはいくつかのメリットがありますが、手形最大のメリットは支払いを先延ばしにできる点にあります。例えば、仕入れにまとまったお金が必要だが、今は手元にお金がないという状況において、数ヵ月後にまとまったお金が入るとします。
そういう状況で、支払期日をまとまったお金が入る日とする約束手形を作成し、その手形を仕入れ先に渡すことで、実質的に支払いを先延ばしにして必要な仕入れを行うことができます。手形を作成して交付しても融資を受けていることにはならないため利子も発生しません。ある意味では無利子で資金調達をしていることになります。
手形のデメリット
手形は大変便利なものですが、デメリットもあります。最大のデメリットとしては不渡りが起こったときです。不渡りとは、手形の決済時に手形を決済するだけのお金が銀行の口座内に残っていないことです。万が一不渡りが起こって支払いが滞ると、銀行から警戒されて新規の融資を受ける際などに審査が厳しくなり、場合によっては融資を受けられないこともあります。
また、手形の不渡りを6ヵ月以内に2回起こしてしまうと、銀行との取引が一部停止され当座預金を用いた手形取引ができなくなります。当然、融資による資金調達も厳しくなります。そして、この不渡りの情報は銀行間で共有され、どの銀行においても同様の取り扱いを受けます。
このように、手形取引を行っている中小企業において手形取引の停止は死活問題です。そのため、手形の不渡りは事実上の倒産であるといわれることもあるほどです。
2026年に手形は廃止へ
2021年3月15日に約束手形をはじめとする支払条件の改善に向けた検討会の検討結果をwとりまとめた報告書が公表されました。
本報告書では2026年までに手形は廃止される方針となっています。なぜ手形が廃止となるのでしょうか。手形の利用意向と廃止の理由について見ていきます。
手形の利用意向
日本においては古くから手形が使われてきた歴史がある一方、意外にも手形に対する利用者の意向はあまり良いものではないようです。
令和2年度のアンケート調査によれば 、受取人の92.6%が、発行者の76.4%が手形の利用について「やめたい」あるいは「やめたいけどやめられない」と回答していました。
受取人側が手形の利用をやめたいと思う理由としては次のようなものがあります。
・不渡りのリスクがある
・取り立ての際の手数料や領収書の印紙代が負担になる
・現金での支払いを即座に受けることができない
また、やめたいがやめられない理由には次のようなものがあります。
・手形発行者が手形による支払いを希望している
発行者側が手形の利用をやめたいと思う理由としては次のようなものがあります。
・印紙代などが負担になる
・手形は輸送などの手間がかかる
・手形の現物管理が負担になる
やめたいけどやめられない理由としては次のようなものがあります。
・取引先が電子手形に対応していない
・手形を利用することが業界の習慣になっている
手形廃止の理由
手形はかつて資金調達が今よりも大変であった高度経済成長期を支えてきた伝統的な支払い方法でした。しかし、時代は流れ、現在では金融緩和などから資金調達が容易になっており、すぐに現金で支払いを受けられない手形取引は取引先に資金繰りの負担を強いることになることから、ベンチャー企業や中小企業支援のためにも見直すべきであるとの考え方が強くなってきています。
また、紙の手形は紙で取り扱うことによる事務負担や保管時のリスクもあります。そういった理由から、すぐに紙の手形を完全に廃止できない場合でも、いずれ紙の手形は廃止して電子手形へ移行するべきであろうという結論に至り、紙の手形は廃止される方針となっているようです。
手形廃止後の決済手段としての電子記録債権とは
電子債権とは
手形廃止後における決済手段の候補としては、まず電子記録債権が挙げられます。電子記録債権とは、手形に代わる新たな決済手段として誕生したもので、手形にまつわる問題を解決して事業者の資金調達の円滑化を目的としています。
電子記録債権の仕組みとしては、支払企業と納入企業との間で発生した債権について金融機関と電子債権記録機関を通じて債権の譲渡から発生、支払いまでを安全かつ迅速に済ませられるものになります。要は、手形の発行から支払いまでの全てを電子上で済ませることができるイメージとなります。
電子記録債権は、原材料の仕入れをして支払いをする企業と、商品やサービスの納入をする支払いを受ける企業、双方にとってメリットがあります。支払企業と納入企業双方のメリットについて順に解説します。
支払企業のメリット
電子記録債権を導入することによる支払企業側のメリットとしては、電子化による事務手続きの簡略化が挙げられます。これまで行っていた手形の発行や振り込みの準備、手形の搬送など面倒な作業が簡素化できます。また、電子データでやり取りするため、郵送コストや印紙税も不要となり経費削減にもつながります。
納入企業のメリット
納入企業においても電子記録債権はメリットがあります。電子データでペーパーレス化が促進できるため、手形の紛失や盗難がなくなり、管理の手間とコストが削減できてリスクも低減できます。さらに、紙の手形と異なり、支払期日になると自動で入金されます。そのうえ、電子債権は流動性も高いため手形よりも資金繰りが円滑になります。
電子記録債権を活用した資金調達方法も
ファクタリングは企業が所有している売掛債権を売却することで、入金を待つよりも短期間で現金を入手することができるサービスです。電子記録債権を活用したファクタリングであれば、これまでにあげた電子記録債権のメリットがあります。電子記録債権を活用したファクタリングサービスには、セゾンファンデックスの「今スグまとめ払い」があります。
「今スグまとめ払い」は毎月の請求データをセゾンファンデックスへ送るだけで、5営業日以内にまとめて売掛金の現金化が実現できます。請求業務はセゾンファンデックスが行うため、余計な手間もかかりません。
このように、「今スグまとめ払い」なら、資金調達と請求業務効率化という課題を同時に解決できるため資金調達と日々の業務効率に悩んでいる企業にとってはメリットがあります。
実際、経理事務負担と資金繰りについて悩む運送業において「今スグまとめ払い」を利用することで経理事務の負担削減と事務業務全体の効率化を図りつつ、資金調達もできたというような事例や、売掛金について支払いを受けるまでの時間が長く、資金繰りに苦しんでいたアパレル業において資金繰りを改善できたというような事例もあります。
また、セゾンファンデックスの「今スグまとめ払い」は国から指定を受けている、Tranzax株式会社の電子債権の仕組みを利用して行うため、非常に高い安全性と信頼性を誇っています。
おわりに
手形は2026年に廃止となる方針です。そのため、今手形を利用している事業者においては手形廃止後の代替手段について検討しておくべき必要があります。手形廃止後の代替手段は支払企業と納入企業双方にメリットのある電子記録債権をおすすめいたします。