奨学金を返せないと、場合によっては訴訟に発展することがあります。実際にどのような処置が取られるのか、段階的に見ていきましょう。また、返せないときの対処方法についても紹介するので、返済が難しいときは参考にしてください。
奨学金を返せない割合は約3.6%
奨学金はいくつか種類がありますが、利用者が多いものとしてJASSO(日本学生支援機構)の奨学金があります。
JASSOは独立行政法人日本学生支援機構法という法律に従い運営されている機関で、日本の大学で学ぶ学生に適切な修学環境を整備する目的で設立されました。実際に約半数の学生は何らかの奨学金を受給しており、そのうちJASSOの奨学金を借りている学生は84%ほどです。
大学昼間部 | 国立 | 公立 | 私立 | 平均 |
奨学金を借りている学生の割合 | 42.3% | 55.0% | 50.8% | 49.6% |
奨学金利用者のうちJASSOの利用率 | 84.5% | 84.9% | 84.3% | 84.3% |
参考:日本学生支援機構「令和2年度学生生活調査集計表 大学昼間部(速報値)」
JASSOの奨学金の返済は卒業後に始まります。しかし、借り入れの額によっては返済が厳しくなることもあるようです。令和元年度末時点では約3.6%の方が奨学金の返済を3ヵ月以上延滞しています。
奨学金延滞者 | 約15万2,000人(約3.6%) |
奨学金無延滞者 | 約411万1,000人(約96.4%) |
参考:日本学生支援機構「令和元年度奨学金の返還者に関する属性調査結果」
なぜ若者は奨学金を返せない?よくある理由
JASSOの奨学金の返済は、貸与終了月の翌月から数えて7ヵ月目に始まります。そのため、学生期間中に返済する必要はなく、また、就職してすぐの時期にも返済する必要はありません。
しかし、奨学金を返済できない方がいるのが現状です。よくある2つの理由について見ていきましょう。
- 給料が低い
- ひとり暮らしの費用がかさむ
給料が低い
就職してもすぐに高給を得られるわけではありません。給料が低く、奨学金の返済にお金を回せないケースもあるでしょう。特に非正規雇用などの場合には、正規雇用と比べても給料が低い傾向があるため、日々の生活だけで精一杯というケースもあるでしょう。
ひとり暮らしの費用がかさむ
ひとり暮らしをしている場合には、家族と暮らす場合と比べて生活費がかさむ傾向があります。家賃や光熱費などもひとりですべて支払うため、給料が低いと手元に残る金額はほとんどありません。食費や通信料金などの生活に必要なお金を払うと、奨学金返済に回せるお金が残らないというケースもあります。
また、学生のときにひとり暮らしをしている場合も、奨学金の返済が難しくなることが多いです。ひとり暮らしの学生は自宅から通学する学生と比べて生活費がかさむため、奨学金の借入(金)が大きくなる傾向があります。そのため、返済額が増え、返済に行き詰まりやすくなるでしょう。
奨学金を返せないとどうなる?
奨学金は借金として扱われるため、返済日までに決まった金額を返済しなくてはいけません。返済できない場合には、次のようなことが起こることがあります。
- 延滞金が発生する
- 督促が始まる
- 訴訟や差し押さえに発展することもある
- 破産が連鎖する
それぞれ具体的にどのようなことが起こるのか、また、いつ起こるのかについて詳しく見ていきましょう。
延滞金が発生する
奨学金の返済期限を過ぎると、延滞金が発生します。延滞金は利息に加算されるため、返済による負担が増えることになるでしょう。
なお、JASSOの奨学金の場合、延滞金の金利は奨学金の種類や貸与終了年度によって異なります。場合によっては年10%ほどの高金利が適用されることもあるので、注意しましょう。
督促が始まる
返済期限を過ぎると、延滞金が発生するだけでなく、同時に督促が始まります。借り入れた本人と連帯保証人に対して、JASSOあるいは督促を実施する専門業者である債権回収代行業者から返済を迫られることになるでしょう。
電話や書面などで督促を実施することが一般的です。すぐに返済できるときは問題ありませんが、返済の目処が立っていない場合には、いつまでに支払えるのか尋ねられることがあります。
訴訟や差し押さえに発展することもある
督促が開始されてから約3ヵ月、つまり元々の返済期限を過ぎてから約3ヵ月が過ぎ、まだ返済をしていない場合には、返済していないという事実が事故情報として個人信用情報機関に記録されることになります。
事故情報が記録されると、金融機関からお金を借りられなくなったり、クレジットカードが作れなくなったりするでしょう。
さらに返済しない期間が長引くと、訴訟や差し押さえに発展する可能性もあります。家財や不動産だけでなく、給料まで差し押さえの影響が及ぶこともあります。また、最終的には返済額に裁判の費用が上乗せされることになるため注意が必要です。
破産が連鎖する
どうしても返済できないときは、自己破産を選択できます。自己破産をしたという事実も個人信用情報機関に記録されるので、一定期間は金融機関からお金を借りられなくなったり、クレジットカードを作れなくなったりするでしょう。
また、奨学金の場合は連帯保証人を定めていることが一般的です。借り入れた本人が自己破産をすると、返済の義務は連帯保証人に移ります。連帯保証人が返済できない場合は、連帯保証人も自己破産を選択することになりかねません。
連帯保証人に他の借金がある場合は、さらにその借金の連帯保証人が自己破産に陥るなど、破産が連鎖する可能性もあります。
奨学金を返せない場合の対処策
奨学金を返済できないときは、早めに何らかの手を打つことが大切です。延滞期間が長くなればなるほど返済負担は大きくなり、家計に重くのしかかることになります。例えば次の対処策を実施することで、奨学金の返済の目処がつくかもしれません。
- 新型コロナウイルスによる影響のときはJASSOに相談
- 生活保護受給中のときもJASSOに相談
- その他の状況もJASSOに減額・猶予を相談
- クレジットカードでキャッシングをする
- カードローンで借り入れる
それぞれの対処策について、詳しく解説します。
新型コロナウイルスによる影響のときはJASSOに相談
新型コロナウィルスの影響により勤務先が休業し、給料を得られなくなったというケースもあります。新型コロナウィルスの影響によって奨学金の返済が厳しいと考えられるときには、JASSOに相談することで、返済義務のある貸与型の奨学金から返済義務のない給付型の奨学金に切り替えてもらえることがあります。ただし、この制度を利用できるのは在学中に限られる点に注意が必要です。
生活保護受給中のときもJASSOに相談
生活保護を受給することになったとき、あるいは受給中のときも、JASSOに相談してみましょう。奨学金の返済が一時的に猶予される可能性があります。
なお、生活保護の受給期間中であれば、奨学金の返済猶予期間の制限はありません。ただし1年ごとに猶予手続きは必要となるので、生活保護を受給している限りは、忘れずに申請しましょう。
その他の状況もJASSOに減額・猶予を相談
コロナ禍や生活保護以外の理由であっても、返済が難しいときはまずJASSOに相談してみましょう。月々の返済額を減らして借入期間を延長する「減額」や、一定期間は返済義務を免れる「猶予」で、返済の負担を軽減できることもあります。
例えば、給料が低い場合や、借り入れている本人や扶養している家族の医療費がかさんでいる場合などは、減額・猶予が適用されるかもしれません。返済できないからと放置するのではなく、都度、JASSOに相談した上で何らかの対策を行いましょう。
クレジットカードでキャッシングをする
返済が難しいときはJASSOに相談すれば対応できることもあるでしょう。しかし、減額や猶予の措置の適用を受けるためには、JASSOが実施する審査に通過する必要があります。
出費がかさみ、返済が一時的に難しいときなどは、JASSOの減額措置や猶予措置の対象にならないかもしれません。一時的に奨学金の返済が難しいときは、クレジットカードのキャッシングを活用するという選択肢も検討してみましょう。
セゾンカードデジタルは、アプリで利用できるデジタルクレジットカードです。最短5分で発行できるので、今すぐ利用したいときなどにもお使いいただけます。また、後日郵送されるプラスチックカードも、ナンバーレスなので盗み見されることもありません。
カードローンで借り入れる
一時的に奨学金の返済が難しいときは、カードローンを活用して対処できます。ショッピングの際にも利用できるクレジットカードとは異なり、カードローンはお借り入れ専用の商品です。
クレディセゾンの「MONEY CARD(マネーカード)」であれば、手続きがスピーディで、ATMを使った借り入れだけでなく、口座振込による借り入れ「振込キャッシング」も利用することができます。使用用途が自由で、利用可能枠も最大300万円なので、利便性の高いカードローンをお探しの方は、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。
おわりに
奨学金は学生自身が背負う借金です。返済は社会人になってから始まりますが、給料が低いときやひとり暮らしのとき、家族や自分自身に医療費がかさむタイミングなどは返済が難しくなるかもしれません。
長期的に返済が難しくなるときは、JASSOに相談することで減額や猶予の措置が適用される可能性があります。短期的に返済が難しいときは、カードローンやクレジットカードのキャッシングで対応できることもあります。適切な方法を選び、早めに対応するようにしましょう。