学生時代に借りた奨学金の支払いは、社会人になってから支払いがはじまります。と「いつか払えなくなったらどうしよう」といった不安を感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。一方で、まとまった資金があるときに繰上げ返済を利用すれば、奨学金にかかる利子の軽減や保証金の返金といったメリットがあります。
このコラムでは、奨学金の繰上げ返済の概要やメリット、注意点について解説します。繰上げ返済の申請方法や申請できないケースも紹介しているので、最後まで読めば、奨学金の支払いに関する悩みを減らせるでしょう。
奨学金の繰上げ返済とは
奨学金の繰上げ返済とは、返済額の全額または一部をまとめて支払う方法です。
一般的な繰上げ返済には、毎月の返済額を小さくする「返済額軽減型」と返済期間を短くする「期間短縮型」の2種類がありますが、
奨学金に適用されるのは「期間短縮型」のみです。
繰り上げ返済をすることで、残りの返済額を減らせるため、利息額を抑えられたり、精神的な負担が楽になるといったメリットがあります。
繰上げ返済ができる奨学金の種類を確認
奨学金は繰り上げ返済が可能ですが、メリットは奨学金の種類によって異なります。
繰り上げ返済について、有利子の奨学金の場合であれば、早い段階で返済した方がトータルでお得です。しかし、無利子の奨学金の場合は、繰り上げ返済をしても返済総額は変わりません。
そこで、ご自身が借りている奨学金が以下の22つのどちらのタイプであるかチェックしましょう。
- 貸与型奨学金
- 給付型奨学金
なお、自分が借りている奨学金の種類は、独立行政法人日本学生支援機構が運営するスカラネット・パーソナルで確認ができます。
貸与型奨学金
貸与型奨学金は、名前のとおり特定の機関から借りる奨学金です。返済期間は最長20年間で、返済額は借入金と返済期間によって異なります。
また、貸与型奨学金の種類は、以下の2つに分けられます。
- 第1種奨学金
- 第2種奨学金
第1種と第2種で繰り上げ返済のメリットは大きく異なるため、それぞれ詳しく解説します。
第1種奨学金
第1種奨学金とは、利息がかからないタイプの奨学金です。学業で優れた成績を収めている学生や、家庭の経済状況によって就学が困難な学生を利用対象としています。月々の返済は元金部分のみであるため、繰り上げ返済をしても総返済額は変わりません。それでも早い段階で奨学金の返済を終わらせたい方は、繰り上げ返済を検討すると良いでしょう。
第2種奨学金
第2種奨学金とは、返済額に利息が上乗せされるタイプの奨学金です。第1種奨学金よりも利用できる学生の幅が広く、第1種奨学金との併用もできます。在学中は無利息で借りられますが、卒業後は利息が発生するため、なるべく早く返済した方がトータルの返済額を抑えられます。
給付型奨学金
給付型奨学金は、貸与型奨学金と異なり、返還義務のない奨学金です。家庭の経済状況に加え、一定以上の学業成績が必要ですが、給付型奨学金は成績だけで判断するのではなく「学ぶ姿勢」を重視しています。そのため、受給するためには面談やレポートの提出が必要です。給付型奨学金の対象となれば、大学・専門学校などの授業料・入学金も免除または減額されます。
奨学金の繰上げ返済シミュレーション
奨学金を繰上げ返済したときの返済期間や、節約できる利息額をシミュレーションしてみましょう。
シミュレーションの条件は、以下のとおりです。
- 借入れ総額:350万円
- 返済期間:20年間(残り15年)
- 年率:0.94%
4パターンの繰上げ返済額で、それぞれ短縮できる期間と節約できる利息額を以下の表にまとめました。
繰上げ返済額 | 短縮できる期間(残り期間) | 節約できる利息額 |
---|---|---|
50万円 | 2年11ヵ月(12年1ヵ月) | 67,492円 |
100万円 | 5年9ヵ月(9年3ヵ月) | 119,651円 |
150万円 | 8年7ヵ月(6年5ヵ月) | 157,271円 |
200万円 | 11年4ヵ月(3年8ヵ月) | 181,116円 |
繰上げ返済の金額が大きいと、その分返済期間が短縮されるので、より大きな利息額を節約できます。
ただし、無理に繰上げ返済をすると、日常での急な出費に対応できなくなる可能性があります。
上記のシミュレーションを参考にしながら、家計に余裕のある範囲での返済を検討してみてください。
奨学金を繰り上げ返済する3つのメリット
奨学金の種類がわかったとしても、繰り上げ返済するメリットを理解できなければ、自分がどうすべきなのか判断するのは難しいでしょう。そこで本章では、奨学金を繰り上げ返済する3つのメリットについて解説します。ご自身の状況と照らし合わせ、繰り上げ返済するべきかを判断しましょう。奨学金を繰り上げ返済するメリットは以下の3つです。
- 返済期間が短縮され利息分を節約できる
- 機関保証の保証料が一部返金される場合がある
- 繰り上げ返済の手数料はかからない
返済期間が短縮され利息分を節約できる
繰り上げ返済をすれば、返済期間が短縮され利息分を節約できます。例を挙げると、240万円の奨学金を金利1%、返済期間15年で返済する場合、総返済額は2,585,413円です。しかし、10年間返済したタイミングで残りの5年分を一括返済すると、本来支払う予定であった利息分21,505円を節約できます。
機関保証の保証料が一部返金される場合がある
借入時に機関保証を選択していた場合、繰り上げ返済によって、保証料の一部が返金されるケースがあります。例えば、日本学生支援機構の奨学金は、在学中や在学猶予中など、返還開始前に一括返済すると、約7割の保証料が返還されます。あまり大きな金額は期待できませんが、在学中に返済できれば、奨学金による金銭的な負担を減らせるでしょう。
参照:公益財団法人日本国際教育支援協会(JEES)機関保証センター|機関保証に加入している方へ
繰り上げ返済の手数料はかからない
奨学金の繰り上げ返済には手数料がかかりません。銀行のローンなどは繰り上げ返済時に手数料がかかる場合があるため、計画的な返済が求められます。一方、奨学金の繰り上げ返済は手数料がかからず、資金に余裕がある際のこまめな繰り上げ返済が可能です。自分の都合のいいタイミングで適宜繰り上げ返済できるのは、大きなメリットでしょう。
奨学金を繰り上げ返済する際の3つの注意点
奨学金を繰り上げ返済する際は、以下の3つに注意しましょう。
- 繰り上げ返済は返済期間短縮型のみ
- あくまでも余裕がある時に返済する
- 親が繰り上げ返済する場合には金額を確認する
繰り上げ返済は返済期間短縮型のみ適用できる
奨学金の繰り上げ返済には、返済期間短縮型のみ適用できます。支払期間が短縮されるだけであり、月々の返済額は変わりません。そのため、月々の支払いが苦しいと感じたときは繰上げ返済をせず、毎月の支払い分のみ返済しましょう。
あくまでも余裕がある時に返済する
奨学金はあくまでも余裕がある時に繰り上げ返済しましょう。特に第1種奨学金は無利息であるため、繰り上げ返済をしても金銭的なメリットはありません。住宅の購入や学費など、直近に大きな支払いが控えていないかなどを考慮した上で利用を検討してみてください。
親が繰り上げ返済する場合には贈与税に注意する
親が奨学金を繰り上げ返済する場合、金額に注意しなければなりません。奨学金の契約者は学生本人であるため、親が代わりに返済する場合は贈与に該当します。贈与税の非課税枠は年間110万円と定められており、11超えた分の金額には贈与税がかかります。親が返済するときは、非課税で返済できる110万円を基準に検討してみましょう。
繰り上げ返済の原資を投資にまわすという考え方
奨学金の繰り上げ返済の原資をあえて返済せずに、投資にまわすという考え方もあります。通常のローンより、奨学金の利率が低いからです。
実際に、第1種奨学金には利率は0%で利息がかかりません。第2種奨学金は利息がかかるものの、最大で3%までと決められています。一方、iDeCoやつみたてNISA投資で購入できる投資商品の利回りは、長期で見ると3〜5%程度の商品が多いといわれています。
例えば、奨学金で年間1%の利息がかかっていても、投資で年間5%の利回りが期待できれば、手元の現金を投資にまわした方が資金を増やすのに効率的です。奨学金は利率が低いので、一括返済するのではなく、その金額を投資にまわすといった選択肢も考えられます。
奨学金の繰上げ返済を申請する方法
奨学金の繰上げ返済は、原則として日本学生支援機構のWEBサイト「スカラネット・パーソナル」から申請する必要があります。
土日でもパソコンやスマホから申し込めるので、平日は仕事で忙しい方でも繰上げ返済しやすいでしょう。
申請の流れは、以下のとおりです。
- こちらからスカラネット・パーソナルにアクセス
- ログイン・新規登録
- 各種届願・繰上を選択
- 繰上返還申込を選択
- 全額繰上・一部繰上のどちらかを選択
- 金額・返済回数を選択
なお、スカラネット・パーソナルを利用できない場合に限り、郵便やFAXでの申し込みも可能です。
こちらのWEBサイトから申し込み用紙をダウンロードし、内容を記載のうえ「独立行政法人日本学生支援機構」に郵送しましょう。
奨学金の繰上げ返済額を決める2つの基準
奨学金を繰上げ返済するときは、以下の2つを基準に返済額を決めましょう。
- 金額で決める
- 返済回数で決める
やみくもに決めるのではなく、計画的に繰上げ返済をすれば、生活に支障が出ない範囲で奨学金の負担を減らせるようになります。
金額で決める
ひとつ目の基準は、一括で支払える金額から決める方法です。
例えば、自分が繰上げ返済に回せるお金が50万円であれば、その金額を基準に返済額を決めます。
注意点としては、奨学金の繰上げ返済は「毎月の返済額=1単位」として行われることです。
仮に、毎月の返済額が15,000円のときに50万円の繰上げ返済を希望する場合、一括返済できる金額は33ヵ月分の495,000円です。
月単位での返済となるため、希望金額から少し外れた金額になる可能性があります。
返済回数で決める
2つ目は「支払い回数をどれくらい減らすか」を基準として、繰上げ返済額を決める方法です。
具体例を挙げると、月の支払いが15,000円で、残りの返済期間が10年のときに5年分の支払いをまとめて行う場合、繰上げ返済に必要な金額は90万円です。
将来的に、住宅の購入や子どもの教育資金などで出費が予想されるときは、完済期間から逆算して返済額を決めると、計画的な返済ができるようになるでしょう。
奨学金の繰上げ返済ができないケース
奨学金の繰上げ返済ができないケースとして、以下の2つが挙げられます。
- 口座の残高が不足している
- 返済による負担を軽くする制度を使っている
この2点をおさえておけばスムーズに奨学金の繰上げ返済ができるので、最大限に利息を節約できるでしょう。
口座の残高が不足している
奨学金の繰上げ返済は、原則として登録している銀行口座から引き落とされます。
そのため、登録している口座内に繰上げ返済予定の残高が不足していれば、支払いができません。
もし残高不足で繰上げ返済ができなかった場合は、改めて申し込みの手続きをする手間が発生します。
繰上げ返済をするときは毎月の支払額より金額が大きくなるため、スムーズに支払いが行えるよう、必ず申請前に口座残高を確認しておきましょう。
返済による負担を軽くする制度を使っている
日本学生支援機構の奨学金は、経済的な事情で奨学金の返済が難しくなったときに、支払いによる負担を減らす制度を設けています。
「返還期限猶予」や「減額返還制度」など、返済による負担を軽くする制度を使っている場合は、奨学金の繰上げ返済ができません。
しかし、通常どおりの支払いに戻れば、翌月以降から繰上げ返済の申請ができるようになります。
返還期限猶予や減額返還制度の適用期間は短縮できるので、日本学生支援機構のWEBサイトから申請しましょう。
奨学金の返済が難しい時の対処法
支払いが苦しく、毎月の返済額を抑えたい時の対処法は、以下の2つです。
- 減額返還制度の利用
- 返還期限猶予制度の利用
上記の制度を利用すれば、毎月の奨学金返済に困っている方でも、生活にゆとりを持てるでしょう。それぞれ解説します。
減額返還制度の利用
ひとつ目の対処法は、減額返還制度の利用です。
減額返還制度を利用すれば、奨学金の返済期間を延ばすことで毎月の返済額を減らせます。
主な利用対象者は、以下のとおりです。
- 経済的な理由で返済ができなくなった方
- 減額によって奨学金の返済を続けられる方
減額返還制度を利用すれば、最長15年間は返済額を減らせるので、毎月の支払いによる負担を感じにくくなるでしょう。
返還期限猶予制度の利用
2つ目の対処法は、返還期限猶予制度の利用です。
返還期限猶予制度を利用すれば、奨学金の返済期限を先延ばしにできます。
主な利用対象者は、災害や病気、失業などが原因で返済ができなくなった方です。
最大10年間も中断できるので、経済的な理由で奨学金の支払いが難しいときでも、生活を立て直すきっかけを作れるでしょう。なお、急な支出に備えて、カードローンを利用できるようにしておくのも対策のひとつです。
セゾンのカードローン「MONEY CARD GOLD」は、資金の利用目的が自由であることに加え、年会費・入会費が0円であるため、保有コストがかかりません。全国のコンビニ・ATMで利用でき、何度利用してもATMの利用手数料は無料なので、安心してご利用いただけます。
資金面で不安がある方は、いざという時のために申し込みを検討してみてはいかがでしょうか。
MONEY CARD GOLDについて詳しく知りたい方は以下をご覧ください。
奨学金はライフプランに応じて繰り上げ返済しよう
奨学金は足りない就学費用を借りられる制度ですが、卒業後に返済が重荷になってしまうケースも少なくありません。特に利息がかかるタイプの奨学金は、返済期間が長引くほど返済額も増えてしまうため、なるべく早く返済したいのが本音でしょう。
しかし、奨学金の利率は一般的なローンより低めに設定されています。奨学金の利率より投資で高い利回りが期待できれば繰り上げ返済ではなく、投資にまわすことも有効な手段です。奨学金を繰り上げ返済する際には、直近で大きな支払いがないか、将来的にまとまった資金が必要にならないかなど、ライフプランを踏まえたうえで検討しましょう。
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