市街化調整区域とは、農地や森林を守るために市街化を抑制する地域です。利便性には欠けてしまうものの、緑が多く静かな住環境を期待できる開放的なエリアが多い傾向があります。このコラムでは市街化調整区域の特徴や注意点、家を建てる方法について詳しく解説します。
1.市街化調整区域とは市街化を抑制する地域
市街化調整区域とは都市計画法で定められた市街化を抑制する区域で、農地や森林を守り無秩序な開発がされないように指定されています。市街化調整区域では原則として住宅や商業施設といった建物は建てられません。
なお、市街化調整区域とは反対に、既に市街化されている区域、今後10年ほどで市街化を優先的にすすめる区域を市街化区域と呼びます。市街化調整区域と市街化区域でエリアの線引きを行うことによって、無秩序な開発が進むのを抑制しています。
2.市街化調整区域の3つの特徴
市街化調整区域は市街化を抑制する区域で、原則として住宅や商業施設は建てることができません。本来農地や森林を守るためのエリアであるため、人が住むことに適していないのではないかと考える方も多いでしょう。
そこで本章では市街化区域と比較した市街化調整区域の特徴について解説します。市街化調整区域の特徴は以下の3つです。それぞれについて解説します。
- 市街化区域よりも土地の価格が安い
- ランニングコストを抑えられる
- 静かな住環境が期待できる
2-1.市街化区域よりも土地の価格が安い
1つ目の特徴は「市街化区域よりも土地の価格が安い」です。 土地の価格は需要と供給で決まりますが、原則として住宅や商業施設を建てられない市街化調整区域では需要が限定的です。
農地や更地としての取引が一般的であるため、利用用途も限られてきます。そのため、市街化区域の土地よりも割安で購入できるのです。 市街化調整区域のなかでも市街化区域に近いエリアであれば、利便性も大きくは変わらないためお得といえるでしょう。
2-2.ランニングコストを抑えられる
2つ目の特徴は「ランニングコストを抑えられる」ことです。 ランニングコストは固定資産税や都市計画税を指します。土地や建物といった不動産を所有していると固定資産税・都市計画税を毎年納めなければいけません。
固定資産税は日本国内において不動産を所有している方や、事業を営んでいる方が所有している機械や船舶などの償却資産にかかる税金です。 一方で、都市計画税は市街化区域内に、土地・建物を所有している方が納める税金であるため、市街化調整区域内に土地・建物を所有している方に納税義務はありません。
市街化調整区域は、固定資産税の計算のもととなる固定資産税評価額が市街化区域よりも低いことに加え、都市計画税がかからないため、年間のランニングコストを抑えられます。
2-3.静かな住環境が期待できる
3つ目の特徴は「静かな住環境が期待できる」ことです。 市街化調整区域は、原則として住宅や商業施設が建てられないため、周囲に大規模な建物が建つ心配がありません。
また、市街化区域のように建物同士が隣接している訳ではないため、一つひとつの家が離れており、開放感のある静かな住環境が期待できます。広い庭や畑などを利用し、家庭菜園やガーデニングなども楽しめるでしょう。
3.市街化調整区域の5つの注意点
市街化調整区域は市街化区域に比べて金銭的にお得、静かな住環境が期待できるといった特徴がありますが、注意しなければならないこともあります。具体的には以下の5つです。
- 生活利便性が低い傾向がある
- インフラの整備が遅れがちになる
- 建築やリフォームに制限がある
- 住宅ローンが通りにくい傾向にある
- 売却するのが難しい
市街化調整区域の購入を検討する際は、注意点も踏まえたうえで決めましょう。それぞれについて解説します。
3-1.生活利便性が低い傾向にある
市街化調整区域は市街化区域に比べ、生活利便性が低い傾向にあります。原則として住宅や商業施設は建てられないため、日用品なども離れたスーパーに買いにいく必要があるかもしれません。 また、買い物だけでなく、学校や病院も遠かったり、数が少なかったりする傾向があります。農地や森林が多いエリアであるため、市街化区域のような利便性は得られないでしょう。
3-2.インフラの整備が遅れがちになる
市街化区域であれば行政が優先的に水道やガス、電気などのインフラを整備しますが、市街化調整区域ではインフラの整備が遅れがちになります。エリアによってはご自身でインフラを引かなければならない場合や、下水道が整備されていない場合もあるでしょう。 都市ガスが整備されていない場合はプロパンガスで対応しなければならず、月々のコストが高くなってしまいます。
3-3.建築やリフォームに制限がある
市街化調整区域では、新築時だけでなくリフォームやリノベーションといった改築、建て替え時にも開発許可が必要です。 そのため、中古物件に手を加えて生活しようと考えても、許可が下りず自由に工事ができない可能性があります。開発許可の基準などは各自治体によって扱いが異なるため、事前に確認しなければなりません。
3-4.住宅ローンが通りにくい傾向にある
市街化調整区域の不動産は住宅ローンが通りにくい傾向にあります。金融機関は住宅ローンとしてお金を貸し出す際に、担保として不動産に抵当権を設定します。 抵当権は、仮に住宅ローンの返済が滞ってしまったり、返済ができなくなったりした際に、不動産を差し押さえるための権利です。
しかし、市街化調整区域の不動産は価格が低いことから、住宅ローンの担保としての価値を満たせないことが多いでしょう。 担保価値が低いと仮に住宅ローンを回収できなくなった際に、不動産を差し押さえたとしても、住宅ローン分のお金を取り戻せない可能性が高いため、積極的に融資してくれません。
市街化調整区域の住宅を購入したいものの、なかなか住宅ローンが組めずに悩んでいる方は「セゾンのフラット35」をご検討ください。 セゾンのフラット35では、幅広い条件の物件に融資を行っています。他の金融機関から融資を断られてしまった場合など、ぜひ一度クレディセゾンのフラット35にお問い合わせください
3-5.売却することが難しい
市街化調整区域の不動産で注意しなければならないのは、売却が難しいという点です。なぜなら、利便性などの問題から購入検討者数が少ないことに加え、住宅ローンを組める金融機関が少なく、購入したくともできない方が多いためです。 市街化区域の物件よりも売却が難しい、売却に時間がかかる傾向があることは覚えておきましょう。
4.市街化調整区域で家を建てる方法
市街化調整区域では原則として住宅は建てられませんが、一定の要件を満たすことで住宅を建てられるようになります。 市街化調整区域で家を建てる具体的な方法は以下のとおりです。
- 都市計画法第34条を満たした土地に建てる
- ディベロッパーが開発した土地・住宅を購入する
- 市街化調整区域に指定される前から存在する中古住宅を購入して建て替える
市街化調整区域で住宅を建てたい方はぜひ参考にしてください。
4-1.都市計画法第34条を満たした土地に建てる
都市計画法第34条では、市街化調整区域における開発の基準が設けられています。大まかな内容は以下のとおりです。
- 市街化区域に隣接しているもしくは同一生活圏にある
- 近くに50戸以上の住宅がある
- 建築予定物が周辺地域の環境保全に支障を与えない
基準に対してどのような解釈が加わるかは自治体によっても異なるため、どのような条件を満たすことで住宅を建てられるのかを自治体の窓口で確認しましょう。
4-2.ディベロッパーが開発した土地・住宅を購入する
ディベロッパーが開発許可を取り、大規模に開発した土地・住宅を購入するのも一つの方法です。現在開発が行われているのであれば、新築を購入できますが、市街化調整区域における大規模開発はそれほど多くないでしょう。 過去に開発が行われたエリアの中古物件を購入することで、制限の範囲内であれば自由に建て替えができます。
4-3.市街化調整区域に指定される前から存在する中古住宅を購入して建て替える
市街化調整区域に良い条件の土地があったものの、住宅ローン審査に通らないため購入できないケースも多くあります。 市街化調整区域の土地は農業従事者や親族しか建築できないと制限されていることが多く、その条件下では用途が限られるため住宅ローンが利用しにくいのが特徴です。
しかし、市街化調整区域に指定される前から存在する中古住宅を購入し、一定の条件を満たすことができれば住宅ローンを組んで家を建てることができます。そのため、古くからある建物を購入するのも一つの方法といえるでしょう。
市街化調整区域の住宅を購入したいものの、なかなか住宅ローンが組めずに悩んでいる方は、幅広い条件の物件に融資を行っている「セゾンのフラット35」をご検討ください。
おわりに
市街化調整区域とは農地や森林を守り無秩序な開発がされないよう市街化が抑制されている地域です.
市街化調整区域は、市街化区域の不動産よりもコストが抑えられる、静かな住環境が期待できるといった特徴がある一方、利便性に欠ける、住宅ローンに通りにくいといった注意点もあります。
原則として住宅が建てられない市街化調整区域ですが、以下の一定の条件を満たすことで建築が可能になります。
- 都市計画法第34条を満たした土地に建てる
- ディベロッパーが開発した土地・住宅を購入する
- 市街化調整区域に指定される前から存在する中古住宅を購入して建て替える
静かな住環境で生活したい方にとっては、市街化調整区域はまさに憧れのエリアといえるでしょう。市街化調整区域でマイホームを持つためには条件に合う不動産を探すことが大切です。