地震に備えて耐震リフォームを検討する場合、気になるのが費用ではないでしょうか。必要となる費用は、築年数や施工内容によっても異なります。
このコラムでは耐震リフォームの施工内容ごとにかかる費用の目安をお伝えするとともに、利用できる補助金制度やローンもご紹介します。
耐震リフォームの費用はどのくらい?
近年、日本各地で地震が発生しており、いつ大地震が起きてもおかしくない状況です。住まいを地震の被害から守るため、耐震対策が求められています。耐震対策は大きく分け、次のような3種類があります。
- 耐震:柱や梁、壁などを補強して揺れに備える
- 制震:ダンパーという部材などの制震具を設置して揺れを吸収する
- 免震:建物と地面の間に免震装置を設置し揺れを伝わりにくくする
耐震リフォームではこのいずれかの工法を採用して地震に備えます。
ここでは、耐震リフォームの費用についてご紹介しましょう。
費用相場は150万円程度
木造住宅の耐震リフォームの費用相場は、一般的に150万円程度です。建物の築年数や面積、老朽化の程度、工法などで金額は前後します。築年数が古いほど耐震基準に合わせるために数多くの工事が必要になり、金額は高くなる傾向です。
特に年数が40年以上の建物(1981年5月31日以前)は旧耐震基準で建築されており、現行の耐震基準を満たしていない場合が多く、費用は高くなるケースが多いと考えて良いでしょう。
築年数別の費用相場
築年数別の費用相場を見てみましょう。
家全体を補強する場合、床面積が60〜80平方メートルの建物の費用相場は以下のとおりです。
- 築20年以内:約90万円
- 築20〜29年:約130万円
- 築30〜39年:約170万円
- 築40年以上:約190万円
部分的な補強工事では、壁の補強で1ヵ所約25万円、土台と柱の補強で65万円程度が相場です。
【施工別】耐震リフォーム費用の目安
耐震リフォームはさまざまな施工方法があり、どの施工内容を組み合わせるかで費用は変わってきます。また、特に補強が必要な場所だけを選んで費用を抑えることも可能です。
耐震リフォームでは、主に次のような施工を行います。
- 壁に筋交いを設置
- 外壁を補強
- 断熱リフォームとの同時施工
- 屋根の軽量化
それぞれの内容と費用相場を見てみましょう。
壁に筋交いを設置する
壁に筋交いを設置する工事は、1ヵ所で約5万〜20万円が相場です。筋交いとは柱と柱の間に斜めに入れる部材で、鉄骨の場合はブレースといいます。設置することにより建物の壁面を補強します。
壁の補強では壁を取り壊して内外装を変える方法もありますが、筋交いの設置であれば大掛かりな工事にならず、工期も短くできるのが特徴です。
外壁に補強材を取り付ける
外壁に耐震パネルを取り付ける工事では、約25万〜65万円が相場です。いったん外壁を取り払って耐震パネルを壁面に設置し、外壁材を新しく被せます。
壁と柱・土台の結合を強める工事で、より耐震効果が高くなります。
断熱リフォームと一緒に行う場合
断熱リフォームを行う場合、耐震リフォームと同時に施工するケースがあります。一度に工事を行えるため、別々に施工するよりも費用を節約できるのがメリットです。
家全体の断熱リフォームと耐震リフォームを同時施工する場合の費用は、断熱リフォームの代金約350万〜600万円に、追加で約40万〜110万円程度が必要です。
屋根を軽量化する
瓦屋根など重量のある屋根材を葺き替え、屋根を軽量化する耐震リフォームもあります。費用は約80万〜150万円が相場です。
屋根の軽量化により建物にかかる負担を軽減し、地震の揺れを小さくすることができます。屋根の軽量化により、万が一地震の大きな揺れで屋根材が落下した場合でも被害を抑えられるのもメリットです。
耐震診断もあり
1981年以前の建物は古い耐震基準で建築されているため、耐震リフォームにあたっては耐震診断が必要です。耐震診断はリフォーム会社で耐震リフォームと合わせて行うこともでき、自治体によっては助成制度を設けている場合もあります。費用は一般的な木造住宅の場合で約10万〜40万円程度です。
築年数が浅い建物でも、耐震診断が必要な場合があります。例えば、増改築をしたことのある場合は構造上必要な壁や柱を抜いている可能性があり、耐震性が低くなっている場合があるでしょう。
耐震に不安がある場合は、診断を受けてみることをおすすめします。
リフォームのときの生活はどうする?
耐震リフォームでは、状況によってはそのまま生活できず、仮住まいへの一時的な引っ越しが必要な場合もあります。基本的に大規模な工事は周囲が養生で覆われ、音やホコリなどが発生して普通の生活ができません。部分的な補強工事であれば、住みながらのリフォームも可能です。
ここでは、耐震リフォームするときの生活についてご紹介します。
仮住まいに引っ越しが必要な場合
建物の骨組みを補強する家全体の耐震リフォームでは、仮住まいへの引っ越しが必要です。大規模な工事の場合はキッチンやお風呂が使えない日もあり、日中は大きな音が響きます。施工内容によってはホコリが出ることもあるでしょう。
耐震診断の結果により大規模な耐震補強が必要になった場合、安心して暮らすためには仮住まいの必要があることも想定しなければなりません。
必要ない場合
部分的な補強工事の場合は、特に仮住まいは必要ありません。1階部分のみを補強する、屋根や外壁だけを補強するといった施工の場合には、住みながらのリフォームも可能です。
仮住まいの負担はありませんが、工事関係者が出入りするなど落ち着かない場面もあります。しばらくは普段の生活と状況が変わるということは想定しておきましょう。
耐震リフォームに利用できる補助金や融資
耐震リフォームはまとまった費用が必要ですが、補助金で補うことができます。また、予算が足りない場合には融資を受けることも可能です。税制の優遇措置もあり、一定の要件を満たせば所得税の控除や固定資産税の減税を受けることもできます。
耐震リフォームで利用できる補助金や融資など、詳しい内容を見ていきましょう。
補助制度を設ける自治体
耐震リフォームの費用は、国や多くの自治体で補助金を設けています。補助の内容は自治体によって異なり、例えば東京都中央区では、「耐震診断の費用を全額負担」「耐震補強工事に要した費用は300万円を限度に1/2まで助成」「耐震簡易補強工事は150万円を限度に1/2まで助成」といった助成を行っています。
住まいの自治体でどのような補助制度があるか、まず確認してみると良いでしょう。
住宅金融支援機構による融資
国の政策金融機関である住宅金融支援機構では、耐震リフォームを行う場合のリフォームローンを取り扱っています。低金利で1,500万円までの融資を受けられる制度です。お借り入れには、年収に占める年間合計返済額の割合などの要件があります。
利用に際しては、耐震リフォームの内容が希望する融資メニューに合うことを確認するため、着工前に検査機関などへの適合証明を申請しなければなりません。
参考:住宅金融支援機構|ご利用条件
リフォームローン
耐震リフォームでは、リフォームローンを利用することもできます。クレディセゾンでもリフォームローンを取り扱っています。例えば、住宅金融支援機構の融資の要件に該当しない場合でも、セゾンのリフォームローンであれば融資できる場合もあります。
来店不要でWebから手続きができ、担保や保証人は必要ありません。最短2営業日で審査結果の回答が可能ですので、耐震診断で補強工事が必要になったものの予算が足りないという方は、検討してみてはいかがでしょうか。
節税できる制度もある
耐震リフォームは、所得税と固定資産税について税制の優遇措置がとられています。
減税の内容は、以下のとおりです。
- リフォーム費用の10%(上限25万円)を所得税額から控除(住宅耐震改修特例控除)
- 耐震工事を行った住宅の固定資産税を1年に限り2分の1に減税(耐震改修促進税制(固定資産税))
固定資産税は、工事完了年の翌年度分が対象です。また、適用を受けるには自治体や建築士事務所登録のある事業所の発行する証明書が必要です。対象になるには、以下のような条件などに該当しなければなりません。申請前に必ず確認しましょう。
住宅耐震改修特例控除は、
- 自ら居住する住宅であること
- 1981年5月31日以前に建築されたものであること など
耐震改修促進税制(固定資産税)は、
- 耐震改修費用が50万円超
- 1982年1月1日以前から所在する住宅であること など
参考:国税庁 耐震改修工事をした場合(住宅耐震改修特別控除)
耐震リフォームが必要な家とは?
耐震リフォームの必要性は、耐震診断をして確認することが大切です。特に耐震リフォームが必要な家には、次のような特徴があります。
- 1階の壁面積が少ない
- 地盤が軟弱な場所に建っている
- 1981年以前に建てられている
これらに該当する場合、早めに耐震診断を受けてリフォームを検討しましょう。それぞれ、詳しくご説明します。
1階の壁面積が少ない
1階の壁面積が少ない家は、早めの耐震リフォームが必要です。壁面積が少ないとバランスが悪く、地震により1階部分が倒壊するケースが多くなります。
一例として、次のような場合です。これらに該当する場合は、早めに耐震診断を受けて対策を検討しましょう。
- 1階に大きな窓がある
- 1階を店舗や倉庫にしている
- 南側が開放的な間取りにしている
地盤が軟弱
地盤が軟弱な土地に建っている家も耐震性が低くなります。地盤が軟弱な土地とは水や泥を多く含んでいる土地で、都市開発で海や川を埋め立てた地域などが該当します。
これらの地域に居住している場合は、通常よりも家屋の耐震性を高めたほうが良いといわれています。耐震性に不安がある場合は、耐震診断を受けて状況を確認してみると良いでしょう。
1981年以前に建てられている
1981年6月に建築基準法が改正され、耐震基準が変わりました。1981年5月31日以前の古い耐震基準は震度5程度の地震で建物が倒壊しないことが主な基準でしたが、改正後は震度6〜7の地震でも倒壊しないことが基準とされています。
そのため、旧耐震基準で建築された建物は耐震性が低い可能性があるのです。多くの自治体で1981年以前に建築された住宅に耐震診断の補助金を提供しているため、まずは診断を受けてみることをおすすめします。
おわりに
大地震はいつどこで起こるか予想できず、早めの地震対策が必要です。建物全体を耐震リフォームする場合の平均相場は150万円程度ですが、築年数により異なります。また、部分的な補強工事をする場合は、施工内容により費用も変わってきます。
耐震リフォームについては多くの自治体で補助金を設けているため、リフォームを検討している方は利用してみると良いでしょう。
また、大規模な耐震リフォームで予算が足りない方は、セゾンのリフォームローンもぜひ検討してみましょう。WEBで申し込め、最短2営業日で審査結果が出ます。