近年、会社員で副業を始める方は増えていますが、開業届を提出するべきか悩む方は少なくないでしょう。副業でも特定の条件を満たしている場合は、開業届を提出して個人事業主になることが求められます。個人事業主にならないまま個人事業を進めると、本来得られるはずのメリットを享受できない可能性もあります。
このコラムでは副業でも開業届が必要なケースや提出するメリット、注意点などを解説します。副業から独立を目指す方の参考にもなる内容になっているので、ぜひご一読ください。
個人事業主が提出する開業届と副業の関係
開業届とは新しく事業を始める際に提出する書類で、受理されると個人事業主として認められます。提出期限は原則開業から1ヵ月以内ですが、義務ではないため遅れても罰則はありません。
ただし未提出の場合は税務上のリスクを被ったり、信用を得られないデメリットがあるので注意が必要です。
会社員の副業でも条件を満たせば開業届の提出が必要です。ここからは副業でも開業届の提出が必要なケースや、個人事業主に課される税金を解説します。
副業で開業届が必要なケース・不要なケース
開業届の提出が求められるのは、事業活動を行う場合です。「事業」とは利益を得るために商品の販売やサービスを提供し、継続的に対価を受け取る活動を指します。
なお「継続的」には法律上明確な期間の定義はありません。例として国税庁が事業所得と雑所得の判別をする場合、過去3年間の収入で判断します。一方で6ヵ月程度の継続で事業と認められるケースもあるため、判断が難しい場合は税務署へ問い合わせてみてください。
副業であっても継続的に収益を上げることが見込まれる場合は、事業とみなされるため、開業届の提出が必要です。ここからは副業で開業届が必要なケースと不要なケースを見ていきましょう。
【開業届が必要なケース】
- 継続的に利益を得ることを目的として活動する(例:店舗を構えた物品の販売、不動産の賃貸など)
- 定期的な収入がある副業(例:フリーランスでのライティング、定期的に受注するデザイン業など)
【開業届が不要なケース】
- 一時的な仕事や単発の収入(例:スポットのアルバイトや単発の講演など)
- 趣味の活動で継続して利益が発生していない(例:趣味で作ったアクセサリーを友人だけに販売している、バンド活動で一時的に収益をあげたなど)
- 明確な収益化を目的とせず、副収入が偶然発生する(例:不用品をフリマアプリで販売したら高値で売れた、ストックフォトサイトにアップした写真が売れたなど)
※内容によっては事業として捉えられる場合もあります。管轄の税務署や税理士に確認しましょう。
開業届の書き方
開業届は正式名称を「個人事業の開業・廃業等届出書」と呼び、どの事業形態でも提出書類は同じです。最寄りの税務署や国税庁のホームページで入手し、必要事項を記入しましょう。
開業届の「納税地」は、住所地・居所地・事業所等のいずれかを選びます。自宅で副業している場合は住所地を選択し、住所や電話番号を記入してください。
「職業」と「事業の概要」は、具体的な業務内容を記入する欄です。書き方に明確なルールはありませんが、副業の内容が伝わるように書くことが大切です。複数の事業を営んでいる場合は、収入が多い職業のみを記入してください。なお青色申告を希望する場合は、開業届と一緒に「所得税の青色申告承認申請書」を提出しましょう。
参照元:国税庁「[手続名]個人事業の開業届出・廃業届出等手続」
開業届の提出方法
開業届は以下の方法で提出できます。
- 税務署の窓口に持参
- 郵送
- e-Tax
なお提出は原則開業から1ヵ月以内ですが、遅れても罰則はありません。
参照元:国税庁「e-Taxの開始(変更等)届出書作成・提出コーナーについて」
職業による税率の違い
開業届の職業欄は自由に記入できますが、個人事業税の税率に関係するため、虚偽の内容を書いてはいけません。個人事業税とは、個人が事業を営む際に課される税金で、対象になる業種は70種類あります。それぞれに税率が定められていますが、林業や鉱物掘採業など特定の業種には課されません。
なお業種の最終的な判断は確定申告時に下されるため、開業届に記載した職業で税率が決まるわけではありません。また所得が290万円以下の場合は個人事業税は非課税になります。
参照元:国税庁「事業税に関する事項(申告書第二表)を記入する」
開業届を提出して個人事業主になるメリット
ここでは副業で開業届を出すメリットを紹介します。
- 青色申告が利用できる
- 損益通算や赤字の繰越が可能
- 屋号で銀行口座やクレジットカードを作成できる
- 将来独立・開業する際の足がかりになる
開業届の提出前に、個人事業主になる利点を把握しておきましょう。
青色申告が利用できる
開業届を提出して個人事業主になると、最大65万円の税控除を受けられる「青色申告制度」を利用できます。
青色申告制度とは、事業所得や不動産所得、山林所得を得ている方を対象にした、節税効果の高い納税制度です。利用する場合は、原則として申告する年の3月15日までに「青色申告承認申請書」を提出する必要があります(ただし、1月16日以降に開業した場合は、事業開始から2ヵ月以内)。
青色申告制度を利用すると、給与を支払って家族を雇っている場合、その支払った給与は全額経費として計上できます。なお、事業所得を得ている方が65万円の所得控除を受けるには、以下の条件を満たす必要があります。
- 複式簿記での記帳
- 確定申告時に貸借対照表と損益計算書を添付すること
- e-Taxでの確定申告もしくは電子帳簿での保存
複式簿記とは、1つの取引を「借方」と「貸方」の2ヵ所に記入する方法です。単式簿記(1ヵ所のみ記入する方法)と比べて手間がかかりますが、貸借対照表や損益計算書などの財務諸表を作成できるため、財務状況を把握しやすくなります。
参照元:国税庁「No.2072 青色申告特別控除」
損益通算や赤字の繰越が可能
個人事業で損失が発生した場合、本業の所得との損益通算や、赤字を翌年以降に繰り越すことが可能です。
例えば本業の所得が400万円で個人事業の損失が100万円出た場合、損益通算により課税所得が300万円に減額されます。また損失が大きく、1度の確定申告で控除しきれない場合は、最長3年間にわたり繰越可能です。
なお損益通算は雑所得では認められず、事業所得・不動産所得・譲渡所得・山林所得のみ対象になります。
屋号で銀行口座やクレジットカードを作成できる
開業届を提出すると、屋号で銀行口座やクレジットカードを作成できます。事業用と個人用を分けておくと、経理業務の効率化が期待できるでしょう。
個人事業とプライベートの支出を混同してしまうと、どれが経費なのかわからなくなるケースが多々あります。事業と私的な支出を別に管理することで、帳簿付けも用意になるでしょう。
さらに屋号付き口座やクレジットカードの作成は、社会的な信用を高める効果もあります。個人事業を大きくするには、取引先から信用を得るのが必須です。まずは屋号付きの銀行口座やクレジットカードを作成し、真剣に事業に取り組んでいる姿勢をアピールするところから始めましょう。
事業用クレジットカードでおすすめなのが「セゾンコバルト・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カード」です。個人与信で審査されるため、申し込み時に決算書や法人の登記簿の提出が必要ありません。
個人用のクレジットカードよりも限度額が比較的高く、事業関連の支出をカード1枚にまとめられます。年会費が永年無料で追加カードの発行も費用がかからないため、コストを抑えて事業用のクレジットカードを持ちたい方にも向いているでしょう。
セゾンコバルト・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カードの詳細はこちら
将来独立や開業する際の足がかりになる
開業届を提出して個人事業主になると、将来の独立や開業する際の練習になります。
個人事業を立ち上げると、税理士などに依頼しない場合は、資金の管理や確定申告などを自分で行う必要があります。また、案件を獲得するための営業活動や、マーケティングの知識も重要です。
将来独立を考えているならば、これらの業務や知識は必須なので、早いうちから経験しておくと良いでしょう。
開業届を提出して個人事業主になる際の注意点
個人事業主として副業する際は、以下の点に注意してください。
- 失業給付を受けられなくなる
- 青色申告をする場合は手間がかかる
- 会社で副業が禁止されている場合がある
開業届を提出するデメリットをしっかり把握しましょう。
失業給付を受けられなくなる
開業届を提出すると、本業を退職しても失業保険が給付されないため注意が必要です。詳しくはハローワークにご確認ください。
青色申告をする場合は手間がかかる
青色申告の際は複式簿記での帳簿付けが求められます。複式簿記では、ひとつの取引を「借方」と「貸方」の2ヵ所に記入するため、1ヵ所のみ記入する単式簿記と比べて手間がかかるうえ、簿記の知識も必要です。
会社で副業が禁止されている場合がある
会社によっては副業が禁止されている場合があるため、開業届の提出前に就業規則を確認しておきましょう。
開業届を提出して個人事業主になると、住民税の関係から会社に副業が知られてしまうケースがあります。違反した場合の対応は会社により異なりますが、懲戒処分を受ける可能性も少なくありません。
そのため、開業届の提出前に就業規則の確認を忘れないでください。
会社員が副業する際に知っておくべき2つのポイント
会社員が副業する場合は、以下の2点を理解しておきましょう。
- 副業する会社員が確定申告すべきケース
- 会社にバレずに副業するなら住民税に注意
ここでは、会社員が副業する際に押さえておくべきポイントを説明します。
副業する会社員が確定申告すべきケース
副業する会社員が確定申告すべきケースは以下のとおりです。
- 所得金額(給与所得と退職所得を除く)の合計額が20万円を超えるケース
- 複数の勤務先から給与の支払いを受けており、年末調整されなかった給与収入と、所得金額(給与所得と退職所得を除く)の合計額が20万円を超えるケース
例えば副業で得た事業収入が150万円、必要経費50万円の場合は事業所得が100万円となり、確定申告が必要です。ただし事業収入が150万円で必要経費140万円の場合は事業所得が10万円のため、申告義務がありません。
上記以外では、1年間の給与収入が2,000万円を超える方や、医療費控除を受ける方なども確定申告が必要です。
参照元:国税庁「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」
会社にバレずに副業するなら住民税に注意
確定申告が不要でも住民税は申告が必要です。副業収入により住民税が増額すると、会社に兼業を知られてしまう可能性があります。
副業を会社に知られたくない方は、納税方法を「普通徴収」にしてください。
普通徴収を選択すると、副業収入にかかる住民税の通知が自宅に届くため、会社に知られる可能性は低いです。申告時に普通徴収を選ぶと本業の納付書は会社に、副業の納付書は自宅に届くため、兼業が発覚するリスクを減らせるでしょう。
とはいえ、会社で副業を禁止しているにも関わらず、隠れて副業をするのは問題になりかねません。就業規則などを確認しましょう。
おわりに
副業でも継続的な収入が見込める場合は、開業届の提出が必要です。開業届を出す主なメリットは、以下のとおりです。
- 青色申告が利用できる
- 家族への給与が経費にできる
- 損益通算や赤字の繰越ができる
- 独立・開業への準備期間になる
- 屋号で銀行口座やクレジットカードが作成でき信用が上がる
将来を見越して個人事業主になるならば、事業用の銀行口座やクレジットカードは必要です。事業の収支が明確になるだけではなく、取引先からの信用も得やすくなります。
事業用のクレジットカードを作成するなら「セゾンコバルト・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カード」を検討してみてください。このカードは個人事業主やフリーランスに向けて作られたクレジットカードで、以下の特典を受けられます。
- 追加カードは9名まで無料
- 「セゾンビジネスサポートローン」で最大950万円まで融資
- エックスサーバーの初回利用料金が最大16,500円割引き
- かんたんクラウド(MJS)の月額利用料が 2ヵ月無料
またクラウドワークスやモノタロウなど、個人事業主が頻繁に使用するサービスでは、永久不滅ポイントが通常の4倍貯まります。さらに年会費は無料で維持費がかからない点も魅力です。個人事業主が便利に利用できる「セゾンコバルト・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カード」をこの機会に検討してみてください。
セゾンコバルト・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カードの詳細はこちら
※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。