精密さと美しいデザインで愛好家が多く存在する自動巻時計。子や孫などに受け継ぎ、長く愛用するためにはしっかりとしたメンテナンスや正しい取り扱い方法を知っておくことが大切です。
このコラムでは、自動巻時計の仕組みや歴史、使用上の気をつけるポイントなどをご紹介します。
自動巻時計を持っている方も、これから手に入れたいと思っている方も、自動巻時計の奥深い魅力に触れてみてください。
自動巻時計とはどのようなもの?まずはムーブメントを理解して
腕時計には「ムーブメント」と呼ばれる針の動きや日付の変更などをつかさどる動力源が存在します。ムーブメントの種類によって時計の機能に大きな違いが表れる、車でいうところのエンジンに当たるといえる部分です。
まずは「クオーツ式」と「機械式」、それぞれのムーブメントの特徴や違いをチェックしていきましょう。
クオーツ式ムーブメント
クオーツ式は中に電池が入っており、毎日メンテナンスを行わなくても自動的に動き続ける点が最大の特徴です。
1969年に初のクオーツ式腕時計「セイコー・アストロン」が登場し、世界的にクオーツ式が普及しました。クオーツ式ムーブメントの誤差は1ヵ月に数秒~数十秒といわれ、腕時計によっては年単位でしか誤差が生じないものも存在します。
毎日使用しなくても、電池が切れない限り正確に時を刻み続けるクオーツ式腕時計は、実用性が高い点が大きなメリットです。
機械式ムーブメント
機械式ムーブメントには「手巻き」と「自動巻き」があり、時計内部のぜんまいを巻き上げる方式によって分けられます。それぞれの特徴は以下のとおりです。
機械式ムーブメント 手巻き
手巻きとは、時計の側面についているリューズ(竜頭)を使って手動でぜんまいを巻き上げ、針を動かす方式のことです。
時計が動いている間はぜんまいがほどけ続けるため、一定期間が過ぎるとご自身でぜんまいを巻き上げる必要があります。デメリットとも感じられる部分ですが、構造がシンプルなため軽量で耐久性が高いこと、手間をかけることで味わいが増すといったことが魅力です。
機械式ムーブメント 自動巻き
自動巻きとは、腕に装着したときの動きによってムーブメント内のローターが回転し、自動的に巻き上げられたぜんまいが元に戻る力を利用して針を動かす時計のことをいいます。
手巻きと違ってご自身でぜんまいを巻き上げる必要がなく、腕に着けるだけで針が動くのが特徴です。
クオーツ式と機械式、さらに手巻きと自動巻き、自身の好みや使い勝手によって選ぶことができますが、長い歴史があり精巧な仕組みを持つ自動巻時計には特に多くの魅力があります。
次項からさらに詳しくチェックしていきましょう。
自動巻時計の仕組みと歴史
ここからは自動巻時計が動く仕組みと、その歴史について解説します。
自動巻きできる仕組みは
機械式時計のムーブメントには「香箱車」と呼ばれる歯車があり、針を動かすエネルギー源となるぜんまいが格納されています。
自動巻時計には半円形のモーターがあり、時計を着けている腕の動きによって回転を開始。その回転運動によってぜんまいが巻きあがる仕組みです。
そして、巻き上がったぜんまいがほどける力によって香箱車が回転し、時針を動かす2番車、分針・秒針を動かす4番車が続いて回転します。3番車は仲介を行う役割です。
歯車はそれぞれ歯の数が異なるため、回転数に差が生まれます。さらに時針を動かす2番車についている筒車が減速されることで、12時間に1回転という動きを実現しているのです。
また、ぜんまいがほどける際は通常あっという間ですが、脱進機・調速機と呼ばれる機構がこの動きを制御しています。
この仕組みは、プルバック式のミニカーと似ているといわれていますが、その理由はプルバック式ミニカーは、車体を後ろに引くことでぜんまいが巻かれ、手を離すとぜんまいがほどけて力が歯車に伝わり、タイヤが動くという仕組みであるためです。
自動巻時計にある脱進機は、ミニカーのようにぜんまいが一気にほどけることを阻止し、調速機によって一定のスピードを保っています。このようにして正しい時間を表示することができるのです。
自動巻時計のはじまりと歴史
身に着けているときの動きによって、自動でぜんまいが巻き上がる自動巻時計。
もともとは手巻き時計が主流だった時代を経て、1780年にスイスの時計技師であるアブラアム・ルイ・ブレゲが「ペルペチュエル」という懐中時計によって実用化しました。時計の針や数字のデザインもブレゲが発案し、多くの時計で使われるようになり、時計界のレオナルド・ダ・ヴィンチといわれるようになったのです。
20世紀には腕時計が浸透したことで、さらに自動巻きの技術が発展します。1924年にイギリスのジョン・ハーウッドが、半回転式のローターを搭載した現在の自動巻時計の原型となる仕組みを開発し特許を取得しました。
さらに1931年には、「ロレックス」が360度回転のローターを搭載したムーブメントを開発し、現在の自動巻時計の主流となっています。日本では1959年に「セイコー」が、部品の少ないマジックレバー式の自動巻時計を開発し、さらに発展させました。
このような進化の歴史によって、自動巻時計は広く使用されることになったのです。
自動巻時計のメリットとデメリット
続いては、自動巻時計の気になるメリット・デメリットをチェックしていきましょう。
自動巻腕時計のメリット
自動巻時計のメリットとして下記の3つが挙げられます。
巻く必要がない
自動巻時計は手巻き式と違い、針を動かすためにリューズでぜんまいを巻き上げる必要がありません。毎日腕に着用しているだけでぜんまいが巻かれ、針が動き続けてくれます。
さらに、クオーツ式のように電池を使用しないため、電池交換の必要がないこともエコで手間いらずといえるでしょう。
精度が安定している
自動巻時計は腕に着けて日常的な動作を行うことで、常時ぜんまいが巻き足されます。そのため、一度リューズを巻いたらほどけ続ける手巻き式と比べて、時間が狂いにくいこともメリットです。
一般的には、1日10時間ほど使用することで時間の精度が安定するといわれています。
メーカーやデザインの選択肢が広い
現在、機械式時計を手掛ける多くのメーカー・ブランドは自動巻きを採用しています。手巻きは手掛けるメーカー・ブランドが限られるため、デザイン選択の幅が限られる面があるからです。
自動巻時計は、高級ブランドから手に取りやすいブランドまで、幅広い価格帯やデザインから選ぶことができます。そのため、ご自身の理想に合った時計に出会いやすいというメリットがあるだけでなく、日付表示などの機能を持つモデルが多いことも特徴です。
自動巻時計のデメリット
自動巻時計のデメリットといえる点は下記のとおりです。
時計が厚くて重い
手巻き時計は、構造がシンプルでパーツが少ないためムーブメントが薄く、時計自体が軽いという特徴があります。
それに対し自動巻時計は、ムーブメントにローターなどの機構が加わる分、時計のケースに厚みが出て重たいという点がデメリットです。
しかし、近年では技術の進歩によって「オーデマ ピゲ」や「ブルガリ」といったメーカーやブランドから超薄型のモデルが登場しています。自動巻時計の厚みや重みが購入のネックになっている方は、検討してみると良いでしょう。
修理やメンテナンスにコストがかかる
自動巻時計は、手巻き時計に比べてムーブメントの仕組みが複雑な分、取り扱い方によっては故障しやすく、修理などのメンテナンスに費用がかさむ場合があります。
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自動巻き腕時計の選び方
一口に自動巻時計といっても、メーカーやモデルによってデザインや機能はさまざまです。ここでは、自動巻時計の重視するべき3つのポイント別に満足できる選び方をご紹介しましょう。
デザイン
1本目の自動巻時計として、さまざまなシーンで使いたい方には派手な装飾のないシンプルなデザインのものが適しています。遊び心やデザイン性の高さを重視する方は、自動巻きならではのメカニカルなパーツの動きを鑑賞できるスケルトンタイプがおすすめです。
ベルト
腕時計を選ぶ際、ベルトも重視すべきポイントです。ステンレス製ベルトは、周囲に清潔感やスタイリッシュな印象を与えるため、ビジネスやフォーマルなシーンでも使いたい方に適しています。
着け心地の良さを求める方には革製ベルトがおすすめです。色やツヤ感によってカジュアルにもフォーマルにも合わせることができるでしょう。
機能性
自動巻時計の中には、着けたまま水泳やダイビングなどが楽しめる防水仕様のタイプも存在します。また、時間の計測ができるクロノグラフの機能を搭載したものは運動をする方におすすめです。
日付や曜日の表示をしてくれるものもあるので、ご自身の欲しい機能を持つモデルを探してみましょう。
自動巻時計は放置により故障する可能性がある
自動巻時計を故障から守るために、理解しておきたいポイントについてご紹介します。
良い状態を維持するためには定期的に使うことが大切
腕に着けているときの振動によってぜんまいを巻く自動巻時計。数日使わずに置いておくと動きが止まってしまいます。さらに長期間使用しないでいると、内部のオイルが凝固してパーツが劣化して故障の原因になることもあるため注意が必要です。
メーカーなどに修理に出すことは可能ですが、高額な費用がかかる場合があります。定期的に使用して故障を避け、良い状態を維持することが大切です。
毎日使わないならワインディングマシーンを使おう
ワインディングマシーンとは、自動巻時計を着けていないときもぜんまいの動きが止まることを防止できるアイテムです。
ワインディングマシーンに自動巻時計をはめると、はめた部分が回転してぜんまいを巻き上げ、使わない間に故障するリスクを軽減できます。できるだけ腕に着けて動かすほうが理想的ですが、毎日使わない場合や自動巻時計を複数本持っている場合は購入するのもおすすめです。
また、自動巻時計をおしゃれにディスプレイしてくれるビジュアルも魅力的です。複数本収納できるタイプは、コレクションケースとしての役割も担ってくれるでしょう。
性能や価格帯は幅広いので、ご自身の好みに合ったものを選んでみてください。
自動巻時計は定期的なメンテナンスと正しい知識が大事!
続いては、自動巻時計を長く愛用するために注意することをご紹介します。自動巻きだけでなく、手巻きも含めた機械式時計全般にとって大切なことですので覚えておきましょう。
強い衝撃に注意!
精巧でデリケートなパーツが搭載されている自動巻時計は、強い衝撃や激しい振動を加えると、破損してしまうおそれがあります。
落下や衝突に注意することはもちろん、テニスや野球、ゴルフなどの腕を強く振るスポーツをする際は外しておきましょう。また自動巻時計を使用しない日に、手に持って必要以上に振ることもおすすめしません。必要に応じてワインディングマシーンを使用するほうが良いでしょう。
水気に注意!
非防水の自動巻時計は、汗や雨のしずくなどがかかっただけでも浸水する場合があります。浸水した場合は、内部のパーツが腐食してしまうおそれがあるため、できる限り避けましょう。
防水仕様の自動巻時計もありますが、着けたままダイビングができる300m防水や、汗に濡れる程度であれば問題ない30m防水など、防水性はモデルによりさまざまです。ご自身の時計の防水性について把握しておきましょう。
また、お湯の蒸気は、防水仕様であってもムーブメントに入り込むおそれがあるため、お風呂やシャワー、サウナなどに着けたまま入るのは避けた方が無難です。
磁気に注意!
時計の内部パーツはほとんどが金属でできています。磁気の影響を受けると時間が狂ったり、動かなくなったりすることがあるため、磁気を発する製品のそばに置かないことが大切です。
電子レンジや磁気ブレス、スマートフォンやパソコン、スピーカーなどには近付けないよう注意しましょう。
自動巻時計の保管はどうする?
就寝時など自動巻き時計を外している間は、ウォッチケースやコレクションボックス、購入時に付属していた専用のボックスに入れておくと良いでしょう。ワインディングマシーンにセットしておくのも、故障防止につながります。
高温多湿な場所に置いておくことや、ベッドサイドなどにスマートフォンと並べて置くことは、磁気を帯びてしまうため避けましょう。
また、美しさを保つため、ケースにしまう前にベルトの裏側などにたまりがちな皮脂や汚れを拭いておくのがおすすめです。
オーバーホールして長持ちさせよう
自動巻時計は使用するうちに、オイルが劣化してパーツ同士が摩擦し合うようになり、精度が落ちていくことがあります。
そのようなことを防ぐため、定期的に「オーバーホール」と呼ばれる分解掃除作業に出すことがおすすめです。オーバーホールは、時計のパーツを一つひとつ分解して洗浄し、消耗したパーツの交換やオイルの注入といったメンテナンスを行うというものです。
故障して高額な修理代を支払うことになる前に、3~5年に一度はオーバーホールを行っているお店に依頼すると良いでしょう。
おわりに
スマートウォッチが普及する現代でも、永く愛され続ける自動巻時計の魅力についてお伝えしました。腕に着けることで動き続ける自動巻時計は、使用する時を重ねるごとに愛着が増していくはずです。
このコラムでご紹介した仕組みや歴史、正しい使い方を知り、ご自身にぴったりの自動巻時計を見つけてください。