一戸建ての購入を検討しているけれど、固定資産税はいくらくらいかかるの?と不安に思っている方もいるかもしれません。固定資産税は、基本的な計算式に当てはめてご自身で算出することが可能です。
このコラムでは、固定資産税の概要や計算方法について解説します。シミュレーションもしながら詳しく説明していきますので、確認してみてください。
この記事のまとめ
固定資産税とは、住宅や土地などの固定資産を所有する方が支払う地方税です。一戸建ての場合、建物と土地に対して固定資産税がかかります。一戸建ての固定資産税は、地域や築年数にもよりますがおよそ100,000~150,000円が相場です。
固定資産税を軽減する措置もあり、建物は新築の場合のみに適用され、土地は面積に応じて評価額が軽減されます。支払うべき固定資産税の金額は納税通知書にて確認することができ、通知書が自宅に届くのは毎年4月~5月頃です。支払い方法は、現金をはじめ、口座振替、クレジットカードなど選択肢が増えてきています。
一戸建ての固定資産税についての基本を押さえよう
まずは、固定資産税の基礎をおさらいしていきましょう。
固定資産税とは
固定資産税は、地方税のひとつで固定資産(不動産など)に課せられる税金のことです。建物や土地などの不動産を購入した場合、毎年払い続ける必要があります。
一戸建ての場合は、建物にかかる固定資産税と土地にかかる固定資産税の合計額を支払わなければなりません。
固定資産税は誰がどこに支払うもの?
固定資産税は毎年1月1日時点において、その建物や土地の所有者(固定資産課税台帳登録者)が支払うものです。固定資産税は地方税となるため、不動産が所在している自治体に納付します。
一般的には市町村に納めますが、東京都23区では課税を東京都が行うなどの例外もあります。
一戸建ての固定資産税の相場
一戸建ての固定資産税の平均は、100,000円~150,000円です。固定資産税の税率は、1.4%が標準となっていますが地域によって変動します。そのため、同じ建物の大きさや土地の広さでも住む場所によって固定資産税額が異なります。
一戸建ての固定資産税の計算方法について
固定資産税の基本的な計算式は以下のとおりです。
「固定資産税額=固定資産税評価額(課税標準額)×税率(標準は1.4%)」
固定資産税評価額とは、建物や土地の購入額ではなく、各自治体の基準で算出される値です。この固定資産税評価額は3年に一回見直されるため、税額が将来的に変動する可能性もあります。
一戸建ての場合、固定資産税は住宅の建物と土地の両方に課されるため、それぞれに計算方法を解説していきましょう。
建物の固定資産税における計算方法
建物における固定資産税の計算方法を見ていきましょう。計算式の「固定資産税評価額×税率(標準は1.4%)」に当てはめてみます。
建物の場合の固定資産税評価額は、税率をかける前に軽減税率などを計算して、調整し終えた実際の建物を評価したものです。建物の固定資産税評価額は、「再建築価格×経年減点補正率」で求められます。
この「再建築価格」とは、新築時の建設費を指します。「経年減点補正率」は、経年劣化などにより価値が減るためそれに応じて減額した率を表します。新築の場合の固定資産税評価額は、建築価格の約60%とされています。
例を挙げてみましょう。建物の建築費が1,500万円の新築では、建物の固定資産税はいくらになるでしょうか。
新築の場合の固定資産税評価額は、建築価格の60%になるため、1,500万円×60%=900万円です。この900万円の固定資産税評価額に1.4%の税率をかけると126,000円となります。したがって、この場合の建物の固定資産税は126,000円です。
土地の固定資産税における計算方法
土地における固定資産税も、先ほどの計算式に当てはめて算出してみましょう。
固定資産税評価額は、「固定資産税路線価」を基準に市町村で定められたものです。固定資産税路線価とは県道や国道の周辺の土地を評価したもので、公示価格(国土交通省が公示する地価)の約70%とされています。
では、土地の固定資産税を計算してみましょう。なお、実際には公示価格と購入した時の価格(時価)は異なりますが、公示価格は時価と比較的近い水準で求められるため、今回は、固定資産税評価額を購入価格の70%として算出します。
土地を2,000万円で購入した場合の固定資産税を求めます。固定資産税評価額は、2,000万円×70%=1,400万円です。この1,400万円に税率1.4%をかけると196,000円となります。よって、この場合の固定資産税は196,000円です。
都市計画税が課税される場合も
地域によっては、固定資産税と共に「都市計画税」を支払わなければなりません。都市計画税とは、市街化区域内に建物や土地を所有している方のみが支払う税金です。
市街化区域内は、開発や保全、整備などの必要があるとされた都市計画区域の中において、市街地を形成している区域や、10年以内に市街化すべきとされている区域を指します。都市計画税の計算方法は以下のとおりです。
(「建物の固定資産税評価額」+「土地の固定資産税評価額」)×0.3%
例を挙げてみましょう。新築で建物の建築費が1,500万円、土地を2,000万円で購入した場合の都市計画税を求めます。
建物の固定資産税評価額は1500万円×60%=900万円、土地の固定資産税評価額は2,000万円×70%=1,400万円です。都市計画税の計算式に当てはめて計算すると(900万円+1,400万円)×0.3%=69,000円になります。したがって、この場合は69,000円が年間に支払う都市計画税となります。
固定資産税を軽減する特例
固定資産税は、建物と土地のそれぞれに軽減措置が適用されます。申請方法は「住宅用地等申告書」をご自身で作成し、市区町村役場へ申請します。
新築を建てた場合、建物の申請期限は建築した翌年の1月31日までです。申請期限を過ぎてしまうと軽減措置を受けられなくなるため、注意しましょう。土地に関しては、軽減措置の期限はありません。
建物に適用される軽減措置
建物の軽減措置は、新築住宅の場合のみに適用されます。基本的には新築から3年間は、評価額の1/2が軽減されます。ただし条件が決められているため、以下で確認してみましょう。
【建物が新築の場合の適用条件】
- 2024年3月31日までに新しく建てられた住宅である
- 住宅の居住部分の床面積が50㎡以上280㎡以下である
- 併用住宅の場合、居住部分の割合が1/2以上である
- 長期優良住宅の場合は5年間に延長
- 土砂災害特別警戒区域に建てられた場合は適用対象外
なお、都市計画税における軽減措置はありません。
土地に適用される軽減措置
土地の場合は、土地の面積に応じて評価額が軽減されます。
区分 | 面積 | 固定資産税 | 都市計画税 |
小規模住宅用地 | 200㎡以下の部分 | 評価額×1/6 | 評価額×1/3 |
一般住宅用地 | 200㎡を超える部分 | 評価額×1/3 | 評価額×2/3 |
例えば、土地が250㎡の場合は、200㎡分の評価額が1/6で、残りの50㎡分の評価額は1/3として計算されます。
その他に適用される軽減措置
その他にも以下のような特例があります。
- 省エネ改修工事を行った住宅に対する減額
- バリアフリー改修工事をした住宅に対する減額
- 耐震改修工事を行った「要安全確認計画記載建築物」に対する減額
これら全てはリフォームした際に適用されます。要件がそれぞれ定められており、自治体ごとに内容も異なるため、リフォームを行った際は該当するかどうかを確認しましょう。
一戸建ての固定資産税をシミュレーション
上記の計算方法や軽減措置を踏まえて、以下のケースでは固定資産税がそれぞれいくらくらいになるのか、実際にシミュレーションしてみます。
4新築の一戸建て(木造)を3,000万円で購入した場合
以下の設定条件にて、この場合の固定資産税を計算してみましょう。
【設定条件】
- 建物の固定資産税評価額は、建築価格(1,000万円)の60%とする
- 土地の固定資産税評価額は、購入価格(2,000万円)の70%とする
- 建物面積は80㎡
- 土地面積は120㎡
- 長期優良住宅ではない
- まずは、建物と土地の固定資産税評価額を算出
<建物>1,000万円×60%=600万円
<土地>2,000万円×70%=1,400万円
- 建物と土地のそれぞれに軽減措置を適用させる
<建物>600万円×1/2=300万円
<土地>1,400万円×1/6=約233万円
- 算出した固定資産税評価額に税率をかけ合わせる
<建物>300万円×1.4%=42,000円
<土地>233万円×1.4%=約32,000円
- 建物と土地の固定資産税を合計する
42,000円+約32,000円=約74,000円
よって、年間で支払う固定資産税は約74,000円となります。
中古(築浅)の木造一戸建てを3,000万円で購入した場合
続いて、中古(築浅)を購入した場合の固定資産税を計算してみましょう。
【設定条件】
- 築4年目の一軒家で、長期優良住宅ではない
- 建物の固定資産税評価額は、建築価格(1,000万円)の60%とする
- 土地の固定資産税評価額は、購入価格(2,000万円)の70%とする
- 建物面積は80㎡
- 建物の「経年減価補正率」は東京法務局のデータを参照
- 土地面積は120㎡
- まずは、建物と土地の固定資産税評価額を算出
今回は中古の一戸建てのため、建物部分については「経年減価補正」を行います。東京法務局のデータでは、築4年時点における経年減価補正率が「0.67」です。
<建物>(1,000万円×0.67)×60%=402万円
<土地>2,000万円×70%=1,400万円
- 土地の軽減措置を適用させる
建物については新築から3年以上経過しているため、軽減措置はありません。
<土地>1,400万円×1/6=約233万円
- 固定資産税評価額に税率をかけ合わせる
<建物>402万円×1.4%=約56,000円
<土地>233万円×1.4%=約32,000円
- 建物と土地の固定資産税を合計する
約56,000円+約32,000円=約88,000円
よって、年間で支払う固定資産税は約88,000円となります。
中古(築古)の木造一戸建てを3,000万円で購入した場合
ここでは、中古(築古)を購入した場合の固定資産税を計算してみましょう。
【設定条件】
- 築25年目の一軒家
- 建物の固定資産税評価額は、建築価格(1,000万円)の60%とする
- 土地の固定資産税評価額は、購入価格(2,000万円)の70%とする
- 建物面積は120㎡
- 建物の「経年減価補正率」は東京法務局のデータを参照
- 土地面積は250㎡
- まずは、建物と土地の固定資産税評価額を算出
中古の一戸建てのため、建物部分については「経年減価補正」を行います。東京法務局のデータでは、築25年における経年減価補正率は「0.21」です。
<建物>(1,000万円×0.21)×60%=126万円
<土地>2,000万円×70%=1,400万円
- 土地の軽減措置を適用させる
土地の面積が250㎡なので、200㎡までの部分と200㎡を超える部分に分けて計算します。建物については、新築から3年以上経過しているため軽減措置は適用されません。
<土地>
200㎡までの部分:1,400万円×4/5×1/6=約186万円
200㎡を超える部分:1,400万円×1/5×1/3=約93万円
合わせて約279万円
- 固定資産税評価額に税率をかけ合わせる
<建物>126万円×1.4%=18,000円
<土地>約279万円×1.4%=約39,000円
- 建物と土地の固定資産税を合計する
18,000円+約39,000円=約57,000円
よって、年間で支払う固定資産税は約57,000円となります。
固定資産税を納める際のポイントと注意点
固定資産税の納税を行う際のポイントや注意点について説明しましょう。
納付は納税通知書にて行う
固定資産税の納税通知書は、毎年4月~5月頃に自宅に届きます。支払いは4期に分けて納付しますが、一括でまとめて納付することも可能です。
支払い方の選択肢が増えてきている
支払い方法は大きく分けて、現金、口座振替、クレジットカード、電子マネー、スマホ決済があります。クレジットカードであれば、ポイント還元が受けられるメリットもあるでしょう。
クレディセゾン発行の「SAISON CARD Digital(セゾンカードデジタル)」では、ポイントが貯まる上にポイントの有効期限もありません。カード番号などの記載もないため、紛失時や不正利用の心配が軽減されるのも安心です。クレジットカードでの支払いを検討している方はチェックしてみてください。
評価額に不服がある場合は審査の申し出が可能
納税通知書の固定資産税評価額が予想以上に高く、不服がある場合は審査を申し込むことが可能です。ただし、納税通知書を受け取ってから60日以内に申し出なければならないので、注意しましょう。
おわりに
一戸建ての固定資産税の平均は、100,000円~150,000円です。固定資産税の計算方法は一見複雑そうですが、建物と土地の固定資産税評価額をそれぞれ算出して減税措置を適用させ、税率をかけ合わせればご自身でも求められます。
家を建てる前に固定資産税がいくらになるのか不安になったとしても、だいたいの目安であれば把握することが可能です。本記事を参考に固定資産税のシミュレーションをしてみてはいかがでしょうか。