一戸建てを購入すると、建物と土地の固定資産税を支払わなければいけません。マイホームの購入が初めてだと、固定資産税がいくらかかるか不安な方もいるのではないでしょうか。
固定資産税の目安は、簡単にシミュレーションできます。この記事では一戸建ての固定資産税の目安や計算方法を解説しています。最後にはお得な納付方法もご紹介しているので、一戸建ての購入を検討している方は参考にしてください。
固定資産税とは、1月1日時点で住宅や土地などの固定資産を所有する方が支払う地方税です。一戸建ての場合、建物と土地に対して固定資産税がかかります。一戸建ての固定資産税は、地域や築年数などによりますが一般的な一戸建ての平均購入価格が2,000万~4,000万なので、10万円~15万円が相場となります。
固定資産税を軽減する措置もあります。建物は新築の場合のみに適用され、土地は面積に応じて評価額が軽減されます。支払うべき固定資産税の金額は、納税通知書にて確認ができ、通知書が自宅に届くのは毎年4月~6月頃です。支払い方法は、現金をはじめ、口座振替、クレジットカードなどが利用でき、支払方法の選択肢が増えてきています。

一戸建ての固定資産税の平均額は10万円〜15万円
一戸建ての固定資産税の平均は、10万円〜15万円です。ただしエリアや床面積、建物の構造によっても変わってくるため、正確な固定資産税が知りたい場合はご自身で調べましょう。
また、固定資産税の標準税率は1.4%です。しかし、市町村などの条例で税率が変更されているケースもあるので、お住まいの自治体のホームページを確認してください。
一戸建ての固定資産税についての基本を押さえよう

まずは、固定資産税の基本的な仕組みを、以下の2つの視点からわかりやすく解説します。
- 固定資産税とは
- 固定資産税は誰がどこに支払うもの?
順番に確認していきましょう。
固定資産税とは
固定資産税は、地方税のひとつで固定資産(不動産や機械設備など)に課せられる税金です。建物や土地などの不動産を保有し続ける限り、毎年納め続けなければいけません。
一戸建ての場合、建物にかかる固定資産税と土地にかかる固定資産税の合計額を支払う義務があります。
固定資産税は誰がどこに支払うもの?
固定資産税は、毎年1月1日時点におけるその建物や土地の所有者(固定資産課税台帳登録者)が支払います。固定資産税は地方税なので、不動産が所在している自治体が納付先です。
ただし一般的には市町村に納めますが、東京都23区では課税を東京都が行うなどの例外もあります。
一戸建ての固定資産税の計算方法について

固定資産税の基本的な計算式は以下のとおりです。
【計算式】
固定資産税額=固定資産税評価額(課税標準)×税率(標準税率1.4%)
※標準税率1.4%は、各自治体の条例で変更可能です。
固定資産税評価額とは、各自治体が算出した固定資産税を決める基準となる評価額です。固定資産税評価額は3年に一度見直されるため、税額が将来的に変動する可能性もあります。
一戸建ての場合、固定資産税は住宅の建物と土地の両方に課されるため、それぞれの計算方法を解説していきます。
- 建物の固定資産税における計算方法
- 土地の固定資産税における計算方法
- 都市計画税が課税される場合も
一つひとつの計算は難しくありません。ご自身で固定資産税を計算したい方は参考にしてください。
建物の固定資産税における計算方法
建物における固定資産税の計算方法を見ていきましょう。計算式は「固定資産税評価額×税率」で、税率は1.4%とします。
建物の固定資産税評価額の計算式は、「再建築価格×経年減点補正率」です。
「再建築価格」とは、評価する時点で同じ建物を新築する場合にかかる建築費です。つまり再建築価格は、現在の物価を反映した建築費ともいえます。。ただし再建築価格を正確に求めることは非常に難しいため、購入価格の50%〜70%を目安にするのが一般的です。
「経年減点補正率」は、建物の経年劣化による価値の減少を表したものです。新築から1年経過した木造住宅は0.80、5年経過すると0.64などと数値が決められています。下記の条件をもとに建物の固定資産税を求めてみましょう。
- 購入価格:3,000万円
- 再建築価格:購入価格×60%
- 新築から10年経過
- 木造住宅
はじめに「再建築価格×経年減点補正率」で、固定資産税評価額を求めます。再建築価格は1,800万円(3,000万円×60%)です。法務局の「経年減価補正率表」によると、新築から10年経った場合の経年減点補正率は0.50なので、固定資産税評価額は900万円(1,800万円×0.50)です。
「固定資産税評価額×税率(1.4%)」の式に当てはめると、固定資産税は12.6万円と計算できます。
参照元:法務局「経年減価補正率表」
土地の固定資産税における計算方法

土地の固定資産税も、「固定資産税評価額×税率(1.4%)」に当てはめて計算してみましょう。
固定資産税評価額は、「固定資産税路線価」を基準に市町村で定められています。固定資産税路線価とは県道や国道の周辺の土地を評価したもので、「土地の面積×路線価」で求めるのが一般的です。大まかで良い場合は、公示価格(国土交通省が公示する地価)の約70%として計算します。
では、購入価格(公示価格)が2,000万円の土地の固定資産税を計算してみましょう。実際には公示価格と購入した時の価格(時価)は異なりますが、公示価格は時価と比較的近い水準なので、固定資産税評価額を購入価格の70%として算出します。
固定資産税評価額は1,400万円(2,000万円×70%)なので、固定資産税は19.6万円(1,400万円×1.4%)です。
都市計画税が課税される場合も
地域によっては、固定資産税と共に「都市計画税」を支払わなければなりません。都市計画税とは、1月1日時点で市街化区域内に建物や土地を所有している方のみが支払う税金です。
市街化区域内とはすでにショッピングモールや住宅が建設されている、今後10年間で開発が進む区域を指します。
都市計画税の計算式は下記のとおりです。
【計算式】
(建物の固定資産税評価額+土地の固定資産税評価額)×税率(制限税率0.3%)
※都市計画税は制限税率のため条例で変更可能ですが、上限は0.3%と決められています。
以下の条件で都市計画税を計算してみましょう。
- 建物の固定資産税評価額:1,800万円
- 土地の固定資産税評価額:1,400万円
この場合の都市計画税は9.6万円{(1,800万円+1,400万円)×0.3%}です。
固定資産税を軽減する特例

固定資産税には軽減措置があり、建物と土地のそれぞれに適用されます。申請には「住宅用地等申告書」をご自身で作成し、市区町村役場への提出が必要です。
本項では、建物と土地にそれぞれ適用される軽減措置について解説します。
- 建物に適用される軽減措置
- 土地に適用される軽減措置
- その他に適用される軽減措置
建物に適用される軽減措置
令和8年(2026年)3月31日までに新築住宅を取得すると、床面積120㎡までの部分の固定資産税が1/2に軽減されます。
※併用住宅の場合は、居住部分のみが減額の対象です。
適用期間は、一般住宅と長期優良住宅によって年数が異なるので、詳しくは下記の表を参照してください。
一般住宅 | 長期優良住宅 | |
---|---|---|
戸建て (2階以下) | 3年間 1/2 | 5年間 1/2 |
参照元:国土交通省「認定長期優良住宅に対する税の特例 P3」
この軽減措置の適用を受けるための条件は、住宅の床面積が50㎡以上280㎡以下であることです。また長期優良住宅は「長期優良住宅認定通知書」またはその写しを添付して市区町村に申告しなければいけません。
申請期限は建築した翌年の1月31日までなので、忘れずに手続きしましょう。
※1月1日に新築した場合は、その年の1月31日が申告期限です。
参照元:東京都「認定長期優良住宅を新築し、1 月31日までに申告された場合、固定資産税が減額されます」
土地に適用される軽減措置
住宅として使用される土地は、面積に応じて固定資産税評価額が軽減されます。
区分 | 面積 | 固定資産税 | 都市計画税 |
---|---|---|---|
小規模住宅用地 | 200㎡以下の部分 | 評価額×1/6 | 評価額×1/3 |
一般住宅用地 | 200㎡を超える部分 | 評価額×1/3 | 評価額×2/3 |
例えば、面積が200㎡で固定資産税評価額が6,000万円の土地の場合、固定資産税評価額を1,000万円、都市計画税は2,000万円としてそれぞれの税額を算出します。
その他に適用される軽減措置
他にも以下のような減税の特例があります。
- 省エネ改修工事を行った住宅に対する減額
- バリアフリー改修工事をした住宅に対する減額
- 耐震改修工事を行った「要安全確認計画記載建築物」に対する減額
上記の特例はリフォームした際に適用されます。要件がそれぞれ定められており、自治体ごとに内容も異なるため、リフォームを行った際は該当するか確認しましょう。
一戸建ての固定資産税をシミュレーション

上記の計算方法や軽減措置を踏まえて、以下のケースでは固定資産税がそれぞれいくらになるのか、実際にシミュレーションしてみます。
- 新築の一戸建て(木造)を3,000万円で購入した場合
- 中古(築浅)の木造一戸建てを3,000万円で購入した場合
- 中古(築古)の木造一戸建てを3,000万円で購入した場合
順番にシミュレーションしていきます。
シミュレーションは以下4ステップで行います。
- 建物と土地の固定資産税評価額を算出する
- 建物と土地のそれぞれに軽減措置を適用させる
- 算出した固定資産税評価額に税率をかけ合わせる
- 建物と土地の固定資産税を合計する
新築の一戸建て(木造)を3,000万円で購入した場合
以下の設定条件にて、この場合の固定資産税を計算してみましょう。
【設定条件】
- 建物の固定資産税評価額は、建築価格(1,000万円)の60%とする
- 土地の固定資産税評価額は、購入価格(2,000万円)の70%とする
- 建物面積は80㎡
- 土地面積は120㎡
- 長期優良住宅ではない
1.建物と土地の固定資産税評価額を算出する
<建物>1,000万円×60%=600万円
<土地>2,000万円×70%=1,400万円
2.建物と土地のそれぞれに軽減措置を適用させる
<建物>600万円×1/2=300万円
<土地>1,400万円×1/6=約233.3万円
3.算出した固定資産税評価額に税率をかけ合わせる
<建物>300万円×1.4%=4.2万円
<土地>約233.3万円×1.4%=約3.2万円
4.建物と土地の固定資産税を合計する
<合計>4.2万円+約3.2万円=約7.4万円
よって、年間で支払う固定資産税は約7.4万円です。
中古(築浅)の木造一戸建てを3,000万円で購入した場合
続いて、中古(築浅)を購入した場合の固定資産税を計算してみましょう。
【設定条件】
- 築4年目の一軒家で、長期優良住宅ではない
- 建物の固定資産税評価額は、建築価格(1,000万円)の60%とする
- 土地の固定資産税評価額は、購入価格(2,000万円)の70%とする
- 建物面積は80㎡
- 建物の「経年減価補正率」は東京法務局のデータを参照
- 土地面積は120㎡
1.建物と土地の固定資産税評価額を算出する
今回は中古の一戸建てのため、建物部分については「経年減価補正」を行います。東京法務局の資料によると、築4年時点における木造住宅の経年減価補正率は「0.67」です。
<建物>(1,000万円×0.67)×60%=402万円
<土地>2,000万円×70%=1,400万円
2.土地の軽減措置を適用させる
建物については新築から3年以上経過しているため、軽減措置は適用されないので、土地のみ軽減措置後の固定資産税評価額を求めます。
<土地>1,400万円×1/6=約233万円
3.固定資産税評価額に税率をかけ合わせる
<建物>402万円×1.4%=約5.6万円
<土地>約233万円×1.4%=約3.2万円
4.建物と土地の固定資産税を合計する
<合計>約5.6万円+約3.2万円=約8.8万円
よって、年間で支払う固定資産税は約8.8万円です。
中古(築古)の木造一戸建てを3,000万円で購入した場合

ここでは、中古(築古)を購入した場合の固定資産税を計算してみましょう。
【設定条件】
- 築25年目の一軒家
- 建物の固定資産税評価額は、建築価格(1,000万円)の60%とする
- 土地の固定資産税評価額は、購入価格(2,000万円)の70%とする
- 建物面積は120㎡
- 建物の「経年減価補正率」は東京法務局のデータを参照
- 土地面積は250㎡
1.建物と土地の固定資産税評価額を算出
中古の一戸建てのため、建物部分については「経年減価補正」を行います。東京法務局の資料によると、木造住宅の築25年の経年減価補正率は「0.21」です。
<建物>(1,000万円×0.21)×60%=126万円
<土地>2,000万円×70%=1,400万円
2.土地の軽減措置を適用させる
土地の面積が250㎡なので、200㎡までの部分と200㎡を超える部分に分けて計算します。建物については、新築から3年以上経過しているため軽減措置は適用されません。
<土地>
200㎡までの部分:1,400万円×4/5×1/6=約186万円
200㎡を超える部分:1,400万円×1/5×1/3=約93万円
合計:約279万円
3.固定資産税評価額に税率をかけ合わせる
<建物>126万円×1.4%=約1.8万円
<土地>約279万円×1.4%=約3.9万円
4.建物と土地の固定資産税を合計する
<合計>約1.8万円+約3.9万円=5.7万円
よって、年間で支払う固定資産税は約5.7万円です。
固定資産税を納める際のポイントと注意点
固定資産税の納税を行う際のポイントや注意点について、以下の3つを解説します。
- 納付は納税通知書にて行う
- 納付が遅れると延滞税がかかる
- 評価額に不服がある場合は再審査の申し出が可能
納付は納税通知書にて行う
固定資産税の納税通知書は、毎年4月~6月頃に自宅に届きます。支払いは一括または4期(6月・9月・12月・翌年2月)に分けて納付します。
納付が遅れると延滞税がかかる
納付期限までに納付ができないと延滞税がかかります。延滞税の割合は原則年7.3%です。ただし、納付期限の翌日から2ヵ月経過した後は原則14.6%まで上昇します。
参照元:国税庁「No.9205 延滞税について」
納付が遅れると本来支払う必要のなかった税金を払うことになるため、期限内に確実に納付しましょう。
評価額に不服がある場合は再審査の申し出が可能
納税通知書の固定資産税評価額が予想以上に高く、不服がある場合は、市区町村に設置されている「固定資産評価審査委員会」に再審査の申し出が可能です。再審査の結果、固定資産税評価額が減額され、すでに固定資産税を納付済みの場合は過払い分の還付を受けられます。
ただし、見直しによりかえって固定資産税評価額が上がり、支払う税金が増える可能性がある点には注意が必要です。
なお、審査の申し出は納税通知書を受け取ってから90日以内に行う必要があります。
参照元:資産評価システム研究センター「令和5年度 固定資産税のしおり P42」
一戸建ての固定資産税のおすすめの納付方法

支払い方法は大きく分けて、現金、口座振替、クレジットカード、電子マネー、スマホ決済があります。
現金はすぐに領収書が受け取れる、口座振替は納付忘れを防げる、クレジットカードや電子マネー、スマホ決済はポイントが付与される点がそれぞれのメリットです。
とくにおすすめの支払い方法はクレジットカードです。クレジットカードはオンライン上で決済するため、自宅にいながら固定資産税の支払いを行えます。また支払額に応じてポイントが付与されるため、現金払いや口座振替よりもお得です。
固定資産税の支払いにおすすめのクレジットカードは、クレディセゾン発行の「SAISON CARD Digital(セゾンカードデジタル)」です。「SAISON CARD Digital」では、ポイントが貯まる上にポイントの有効期限もありません。プラスチックカードにはカード番号などの記載もないため、万が一カードを紛失してしまっても不正利用のリスクが低い点も魅力です。クレジットカードでの支払いを検討している方はチェックしてみてください。

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おわりに
一戸建ての固定資産税の平均は、10万円~15万円です。固定資産税の計算方法は一見複雑そうですが、建物と土地の固定資産税評価額をそれぞれ算出して減税措置を適用させ、税率をかけ合わせればご自身でも簡単に求められます。
マイホームを建てる前に固定資産税がいくらになるのか不安になったとしても、おおよその目安であれば把握が可能です。本記事を参考に固定資産税のシミュレーションをしてみてはいかがでしょうか。
※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。