親世帯と子世帯が一緒に暮らす二世帯住宅。マイナス面が指摘されることもありますが、デメリットだらけというわけではありません。
当コラムでは、二世帯住宅のデメリットだけではなく、メリットも詳しくご紹介します。世帯間のトラブルを避けるための工夫についても解説していますので、二世帯住宅を検討している方は参考にしてください。
この記事のまとめ
二世帯住宅には、プライバシーがない、生活に干渉される、共有スペースを自由に使いにくいなどのデメリットがあります。また、建築費や相続の問題が発生する可能性もあることから「デメリットだらけ」との声が聞かれることも少なくありません。
しかし、二世帯住宅には、2軒分の建築費や光熱費が安くなる可能性があるだけではなく、子育てや介護、家事などを分担できるという大きなメリットもあります。
メリットを最大限に活かしてトラブルを回避するためには、ご自身に合ったタイプの住宅を建てること、間取りの工夫をすることが重要です。また、ルールをある程度決めておけば、トラブルにもなりにくいでしょう。
二世帯住宅のデメリット
二世帯住宅と聞くと、デメリットの多いイメージがあるという方もいるのではないでしょうか。まずは、二世帯住宅を建てることによる8つのデメリットを以下に分かりやすくまとめました。
プライバシーがない
二世帯住宅で生活する多くの方が感じるのが、プライバシーの問題です。同じ建物の中に住んでいるため、どうしてもお互いの行動が筒抜けになってしまいます。同居しているのが実の親子ではない場合は、特にストレスを感じやすいでしょう。玄関やリビングなど共有するスペースが多ければ多いほど、より大きなストレスを感じる可能性があるのです。
また、家の中で顔を合わせなくても、プライバシーがないと感じる方もいます。同じ家に住んでいれば、生活音によって在宅かどうか、今何をしているかなどが分かることもあるでしょう。このように、生活音から行動を察知されてしまうことでストレスを感じる方も少なくありません。
生活リズムのズレ
生活リズムの違いによるトラブルも多く発生しています。特に親世帯がすでにリタイアしている場合は、子世帯と生活のサイクルが合いにくくなるものです。
子世帯が夜遅くまで起きていたり親世帯が朝早くから起きていたりといった生活上のズレによって、お互いに安眠を妨害されて弊害が起こることもあるでしょう。生活リズムを合わせられれば、それほどストレスを感じることもないかもしれません。
しかし、長年の生活習慣もありますし、活動の時間帯もそれぞれ異なるため、生活リズムを合わせるのは困難なことも多いでしょう。
生活は毎日続いていくものです。短期間だけであれば我慢できるかもしれませんが、長い期間同居しているとお互いの不満も大きくなっていく可能性があります。
生活への干渉
お互いの生活への干渉も、二世帯住宅のストレスの原因です。とはいえ、親はいつまでたっても子どもに干渉したがるもの。また反対に、親が高齢である場合、子どもが親を心配するのは自然なことです。
しかし、実際に二世帯住宅で暮らす方からは「心配をしてくれているのは分かるけど、毎回口を出されると疲れてしまう」といった意見も多く聞かれます。初めは心配する気持ちから声をかけたつもりかもしれません。
しかし、お互いの暮らしに関して一度過干渉になってしまうと、すぐに意識改善をするのが難しいため、トラブルにつながりやすくなります。
ジェネレーションギャップが過干渉につながる可能性も否定できません。マナーに対する考え方や教育方針、さらには食事の味付けなど、世代が違えば考え方も違います。どちらかが譲歩せずに考え方を押しつけてしまう場合は、生活への干渉につながるでしょう。
共用スペースを自由に使いにくい
二世帯住宅では、キッチン・浴室・トイレ・リビングなどを共用スペースにしていることが少なくありません。スペースを共有していると、使用する際には譲り合いが必要なのですが、なかには、一方の世帯ばかりが自由に生活していて、残り一方が気を遣い続けているケースもあります。例えば洗濯機ひとつとっても、どちらの世帯が先に使うかでもめることがあるかもしれません。
自宅はプライベートな空間です。しかし二世帯住宅は、使いたいタイミングで共有スペースを使えず、気持ちの休まらない可能性があります。
建築費が高い
二世帯住宅は、建築費用の総額が高くなります。お互いのストレスを軽減するために生活スペースを完全に分ける場合は、それぞれの設備が2つずつ必要になるため、さらにコストが膨らむでしょう。
親世帯が金銭的な援助をできる場合、建築費の高さはそれほど問題になりません。しかしそうでなければ、子世帯が大きな負担を負うことになるでしょう。そのため親世帯の経済状況によっては、二世帯住宅を建てることで子世帯の出費が多くなる可能性があります。
光熱費の負担でもめることも
世帯により異なるのが、電気やガス、水道などの使用量。光熱費をどのように負担するのかということも、二世帯住宅に多い悩みです。メーターを分け、使用量を世帯ごとに負担する場合は問題になりませんが、分けずに折半する場合はご自身が使用した以上に料金を負担する可能性も出てきます。
お金に関することは親子間でも言い出しにくいため、不公平だと感じながら光熱費を折半しているケースもあるでしょう。しかし、何らかのきっかけでお金に関する不満が大きくなれば、それぞれの間にわだかまりができてしまう可能性があります。
売却が困難なことも
購入時にはあまり考えないかもしれませんが、将来売却をしたいと思ったときに二世帯住宅は買い手がつきにくいこともあります。一般的に、二世帯住宅はそれぞれの家族事情に合わせてオーダーメイドで建てるもの。
そのため、中古の二世帯住宅では不便だと感じる方が多いのです。なかでも、世帯が隔てられておらずほとんどのスペースを共有している二世帯住宅は、売却が難しくなる可能性が高いでしょう。
相続時のトラブル
二世帯住宅が親と子の共有名義の場合は、親の他界により共有持分が相続の対象です。そのため、子に兄弟姉妹がいる場合は、遺産の分割方法をめぐってトラブルが起こりやすくなります。
親の遺産が二世帯住宅の共有持分しかないケースでは、住宅を売却して遺産を分配しなければならないこともあるでしょう。その資金をすぐに用意できない状況であれば、家を売却しなければなりません。二世帯住宅に住んでいる子世帯は、親の他界により住む場所を失う可能性もないとはいえないのです。
二世帯住宅のメリット
ここまでご紹介してきたデメリットの多さに、驚いた方は多いかもしれません。二世帯住宅のデメリットを知っている方からは「やめた方が良い」との声を聞くこともあります。
しかし、二世帯住宅には大きなメリットがあるのも事実です。以下にメリットをまとめました。
2軒建てる場合と比べて建築費を抑えられる
二世帯住宅の建築費用は高額になる傾向はありますが、2軒分の住宅を建てることを考えると費用を抑えられるケースがほとんどです。スペースをどれだけ共有できるかにもよりますが、共有できる部分が多ければ多いほど、コストをカットできる可能性があります。
例えば、キッチンやお風呂をまとめることができれば、その分建築費を抑えられるでしょう。また、世帯をまとめることにより、その分大きな家を建てるという選択肢が生まれることも魅力のひとつです。
二世帯住宅は、通常の住宅と比べて広さが必要なため建築費が高くなります。しかし、親世帯と子世帯がそれぞれローンを組むことになれば、資金計画の選択肢も広がるでしょう。
二世帯住宅にして親世帯と同居する場合は、親がもともと持っている土地に家を建てるケースも少なくありません。このようなケースでは土地代がかからないため、建築コストのみで済む、あるいは親からの援助を受けやすいなどのメリットもあります。
家事・子育て・介護を分担できる
二世帯住宅のメリットは、一世帯で生活する場合と比べて人手が多いことです。手が回らないときは、お互いに助け合いながら家事をすることも可能でしょう。
また、子世帯は子育てのサポートを得やすいというメリットもあります。夫婦共働きの場合は、子どもが体調不良の際になかなか休みがとれないこともあるでしょう。しかし、同じ家の中に親がいれば、子どもを預けることも可能です。
親世帯は、介護の援助を得られる可能性があります。親世帯のみで生活していてどちらかが介護を必要とする状態になれば、高齢者が高齢者を介護する老老介護になることも少なくありません。精神的・身体的に負担が大きい介護を1人でしなくてもいいことは、親世帯にとって大きなメリットとなるでしょう。
水道光熱費の基本料金を抑えられる
二世帯住宅において水道光熱費の支払いは、トラブルのもととなりやすい問題です。しかし、世帯ごとの負担についてしっかりと合意がとれていれば、メリットにもなります。メーターをまとめることで基本料金が1軒分になれば、トータルで費用を抑えられるからです。
また使用量は、子どもが生まれるなどして家族が増えたとしても、人数に応じて倍増していくわけではありません。水道光熱費については、二世帯分をまとめるとお得になるといえるでしょう。
その他、サブスク型の動画・音楽配信サービスの料金なども、家族プランでまとめることができます。それぞれにかかっていた料金をまとめられるのは、二世帯住宅ならではのメリットです。
相続税を抑えられる可能性も
相続税を抑えられることも、二世帯住宅の特徴です。土地を相続する場合、上限330平方メートルにかかる課税価格を最大で80%減額できる小規模宅地等の評価額の特例という制度があります。例えば、土地の課税評価額が1,000万円のケースであれば、制度が適用されることで課税評価額が200万円になるのです。
ただしこの制度は、被相続人が暮らしていた自宅を相続して暮らす方の税負担を軽減するものです。区分登記(1軒の家を分けて登記)をしている場合には、一戸分のみ適用になるなど、制度の対象とならないこともあるため注意が必要です。
参照元:国税庁
二世帯住宅でトラブルを回避するためにできること
せっかく二世帯住宅を建てるなら「失敗してしまった」「後悔している」という事態は避けたいものです。前述したデメリットを回避するための成功の秘訣を、最後にまとめましたので参考にしてください。
ご自身に合った二世帯住宅のタイプを選択する
二世帯住宅には、3つのタイプがあります。そのため、家づくりの際は、それぞれのタイプを知った上でお互いが暮らしやすいものを選択するのがおすすめです。
・完全同居型
完全同居型は、家の中のほとんどの空間を共有する二世帯住宅です。ゆとりのある住宅を建てやすい、建築コストを抑えやすいなどのメリットがあります。
しかしその反面、生活リズムのズレや共有スペースの使い方などでトラブルになる可能性も。これらの課題をクリアできるのであれば、広い家に比較的安く住める完全同居型がおすすめです。
・一部共用型
キッチンや浴室などを部分的に共用するタイプを、一部共有型といいます。完全同居型と比べると間取りに制約は生じやすいのですが、生活上のストレスは少ないでしょう。
ただし、共有しているスペースがある以上、プライバシーを完全に確保するのは困難です。完全分離型と比べると、設備がひとつで済むため、同じコストでもゆとりのある家を建てられます。
・完全分離型
完全分離型とは、すべての空間を別々にした二世帯住宅のこと。玄関はもちろん、リビング、キッチン、浴室なども別々になります。完全分離型のメリットは、世帯ごとに生活を送ることができてストレスが少ないことです。そのため、広い敷地だけではなく建築費も必要です。
完全分離型はそれぞれの世帯が完全に分離されているため、将来的に片方の世帯を賃貸に出すなどの活用方法があることもメリットです。
完全同居型・一部共用型では間取りの工夫も必要
完全分離型以外のタイプを選択する場合は、それぞれの世帯がどの時間帯に家にいるのか、誰が家事するのかを考えてみることが大切です。子世帯が共働きの場合は、親世帯が家事をするケースも多いでしょう。
その場合、洗濯スペースをどこにいくつ設置するのかなど、共有スペースの数や配置について検討する必要があります。親世帯だけでなく子世帯も洗濯物を干す可能性がある場合は、洗濯スペースを2ヵ所設置した方が便利になることも多いでしょう。
同様に、収納スペースなどについても検討が必要です。二世帯分を一緒に収納するのか、別に収納するのか、話し合って決めましょう。
ルールをある程度決めておく
共用部分の使い方などのルールを、ある程度事前に決めておくこともおすすめです。その際に、お互いがどのような暮らし方をしているのか、どのような性格なのかを把握しておきましょう。
そして、どのように生活していきたいのか、家計管理をどうするのかなどについても話し合っておくことが大切です。ただし、あまりしっかりと決めてしまうとストレスになることもあるため、必ず決めければいけないこと以外は、生活しながら探っていくのが良いかもしれません。
相続に関しては事前に相談を
相続トラブル回避のためには、家を建てる前に兄弟姉妹と相談しておくことが重要になります。親が亡くなった後のことをいきなり話すのは難しいかもしれません。
だからといって相談を省いてしまうと後でトラブルになる可能性もあるため、ライフステージが変わった後に住み続ける予定なのか、売却するつもりなのかという程度は話しておきましょう。
おわりに
「二世帯住宅はデメリットだらけ」という話をよく聞きますが、実はメリットも多くあります。同居することによるトラブルを回避しながら、お互いが気持ち良く過ごせる工夫をしていきましょう。
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