住宅を購入する際、支払い方法のひとつとして多くの方が利用する住宅ローン。高額なお金を支払ううえで、心強い味方となってくれるサービスです。住宅ローンを組んだ際、確定申告や年末調整時に、所得税や住民税から住宅ローンの一部が控除されます。
これを住宅ローン控除(住宅ローン減税)といい、2022年度税制改正により、控除が利用できる期間が延長されるなど、変更点が多数ありました。正式には「住宅借入金等特別控除」といいますが、この制度をしっかり活用できるよう、最新の住宅ローン控除の情報をお届けします。
- 2022年の税制改正により、住宅ローン控除期間が2025年まで延長され、控除の対象期間も10年から13年に変更。控除率は1%が0.7%へと引き下げられました。
- 新築・中古・リフォームの種類により要件は異なるが、入居後翌年の3月15日までに確定申告を行うことで控除が受けられます。
- 手続き書類は多く、漏れのないように早めに準備をしましょう。
住宅ローン控除の期間が延長!どういうこと?
2022年度の税制改正により、住宅ローン控除を利用できる期間の延長が決定されました。しっかり理解して、正しい手続きが行えるよう、まずはその概要からチェックしていきましょう。
そもそも住宅ローン控除とは
住宅ローン控除とは「住宅借入金等特別控除」というのが正式名称です。住宅ローンを利用して住宅を購入した方の負担を軽減する制度です。この制度によって税金を控除することで住宅購入者が実質支払うお金を少なくし、より多くの国民が住宅を所有できるようサポートすることを主な目的としています。
2022年度税制改正で期間延長が決定
住宅ローン控除が受けられる対象期間は2021年まででした。しかし、2022年度の税制改正で、2025年末までの期間延長が決定されました。つまり、2025年までに住宅を購入し、入居を開始した場合に適用されるということです。また、住宅ローン控除が受けられる期間が10年から13年に延長されました。
住宅ローン控除対象期間が延長された背景には、コロナウィルス感染拡大による経済低迷を持ち直す目的が含まれています。また、2050年までを目標に温室効果ガスの排出ゼロを目指したカーボンニュートラルを推進するため、省エネ住宅などの環境にやさしい住宅の普及を目指すことも、住宅ローン控除利用可能期間が延長された理由のひとつです。
ただし、今まで年末時点での住宅ローン残高に対して1%だった控除率が0.7%に変更となり、控除率が下げられています。
住宅ローン控除を利用するための要件とは
住宅ローン控除を利用するには、いくつか要件が定められています。新築住宅と中古住宅、増築・リフォームした場合の3パターンで要件が異なるため、それぞれを詳しくチェックしていきましょう。
新築の場合
- 住宅ローンを10年以上かけて返済する契約であること
- 新築住宅の取得日(引き渡し日)から6ヵ月以内に居住を開始し、控除の適用を受ける年の12月31日まで住み続けていること
- 住宅ローン控除を受ける年の所得金額の合計が2,000万円以下であること
- 新築住宅の床面積が50平方メートル以上で、床面積1/2以上が居住用である。ただし、 特例適用の場合には、合計年間所得1,000万円以下であれば床面積40平方メートル以上あれば良い
- 居住を開始した年を合わせた5年間で、家屋や敷地などの居住用財産を譲渡した際に受けられる。ただし、長期譲渡所得の課税の特例措置を受けていないこと
上記の5つが、新築の場合に住宅ローン控除を受けるために満たさなければならない要件です。所得をはじめ、住宅ローンの返済予定期間、床面積などをしっかりチェックしましょう。
中古住宅の場合
中古住宅の場合には、新築住宅と同様の要件を満たすと同時に、以下でご紹介する要件も加えて満たす必要があります。
- 建築後、使用されていること
- 登記簿上、建築された日が1982年以降の住宅で、新耐震基準に適合している住宅であること
今までは、中古住宅の場合、築20年以内の建物、もしくは築25年以内の耐火構造住宅であることが要件のひとつでした。しかし、2022年度の税制改正で築年数に関する要件は撤廃され、新たに「新耐震基準」に関する要件が追加となっています。
そのため、中古住宅における住宅ローン控除が比較的適用されやすくなりました。
増築やリフォームの場合
増築やリフォームを行った住宅の場合には、新築住宅と同様の要件に加えて、以下に記載した要件を満たす必要があります。
- ご自身が所有かつ居住している住宅の増改築であること
- 増改築にかかる費用が100万円超であり、1/2以上が居住用の工事費用であること
上記の要件を満たしていることを基本としたうえで、さらに、住宅の浴室やキッチン、洗面所や玄関など、大規模な修繕か模様替えをする場合や、年間所得金額が2,000万円以下である場合などに該当すれば、住宅ローン控除の対象です。
また、省エネ住宅への改修工事、一定のバリアフリー改修工事などにあてはまる場合や、増改築にかかった費用の返済が10年以上続く契約になっている場合なども、住宅ローン控除の対象となります。これ以外にも、多くの要件が設けられているため、増改築であっても比較的住宅ローン控除が受けやすいといえるでしょう。
住宅ローン控除の手続きはいつまでに行わなければならない?
住宅ローン控除の手続きは、いつでも行えるわけではありません。期日が設けられており、間に合うよう手続きする必要があります。そこで具体的な手続き期日や、もしも期日を忘れていた場合にはどうなるのかをまとめて解説します。
入居した翌年に確定申告
住宅ローン控除を受けるには、購入した住宅に入居後、翌年の3月15日までに確定申告を行う必要があります。必要書類をそろえて、期日内に税務署できちんと手続きしましょう。近年では、WEBサイトからの確定申告も可能です。ご自身に合った申請方法で、住宅ローン控除を申請しましょう。
住宅ローン控除は、たとえ要件を満たしていても、自動的に受けられる制度ではありません。確定申告の手続きを行わなかった場合、税金の還付がゼロになる可能性があります。
2年目以降はどうする?
自営業やフリーランスの方などは、2年目以降も確定申告の手続きを行いましょう。会社員であれば2年目以降は確定申告を行わなくても、年末調整で住宅ローン控除を受けるための手続きが可能です。
例年10月下旬以降ごろに金融機関より届く「残高証明書」と、税務署より届く「住宅借入金等控除証明書」の書類を勤務先に提出することで、住宅ローン控除を受けられます。
企業で年末調整が開始されるおよその時期である、11~12月ごろにこれらの書類を提出するのが一般的です。各企業によって期日が異なるため、遅れないよう注意しましょう。
確定申告を忘れていた場合は?
住宅ローン控除初年度の確定申告を忘れていた場合は、5年以内に申告すれば控除が受けられます。再び忘れてしまわないよう、早めに申請手続きを行いましょう。住宅ローン控除対象の初年度から5年以内に申告をすると、過ぎてしまった年数分の還付を受けることが可能です。
住宅ローン控除では、所得から控除しきれなかった金額は、控除限度額の範囲内で住民税より控除される決まりがあります。しかし、住民税からの控除については、確定申告を行う以前の還付が受けられないルールです。よって、期限を過ぎてから確定申告を行った場合、住民税からの控除は確定申告以降分の適用になることを覚えておきましょう。
会社員の方が2年目以降に年末調整の申請を忘れてしまった場合には、まだ間に合うようであれば企業側に書類を提出する、ご自身で確定申告をする、という2つの方法があります。
住宅ローン控除の必要書類・手続きと計算方法
住宅ローン控除を受けるために必要な書類は1枚だけではありません。スムーズな手続き完了と不備を防止するため、必要書類や基本的な手続きの流れ、計算方法を詳しく解説します。
住宅ローン控除の手続きで必要な書類
- 確定申告書…確定申告書Aと確定申告書Bのうち、ご自身が該当する用紙を1枚選択、記入して用意
- 住宅借入金等特別控除額の計算証明書…住宅ローン控除額を計算するための書類
- 源泉徴収票…給与所得者のみ
- マイナンバーカード
- 土地・家屋の登記事項証明書…購入した住宅のサイズや構造、権利関係が記載されている書類
- 不動産売買契約書・工事請負契約書…リフォームでローンを組んだ場合はリフォーム工事の請負契約書も用意
- 残高証明書…年末ごろまでに金融機関から送られてくる書類
- 特定要件を証明する書類…「長期優良住宅」「低炭素住宅」など、控除対象借り入れ限度額を引き上げる住宅を購入した場合には、それを証明する書類を用意
以上の8種類が、住宅ローン控除を受けるために必要な書類です。働き方や購入した物件などによって必要書類が異なるため、注意しましょう。
住宅ローン控除の計算方法は?
住宅ローン控除額は「住宅ローン年末残高×控除率」で計算できます。ただし、控除限度額は、購入した住宅の種類や入居するタイミングによって上限があり、限度額よりも高い住宅を購入した場合には、控除金額が低くなることを覚えておきましょう。限度額の一例は以下のとおりです。
新築住宅の場合 | 2022~2023年入居 | 2024~2025年入居 |
長期優良住宅・低炭素住宅 | 5,000万円 | 4,500万円 |
ZEH水準省エネ住宅 | 4,500万円 | 3,500万円 |
省エネ基準適合住宅 | 4,000万円 | 3,000万円 |
例えば、500,000円の所得税を納めているAさんは、長期優良住宅を購入し、2023年に入居開始しました。ローンを組んだ金額は5,500万円です。この場合の計算式は以下のとおりです。
5,000万円(控除対象借り入れ限度額)×0.7%(控除率)=350,000円(年間控除額)
Aさんの所得税納付額は500,000円のため、所得税から全額控除可能です。年間控除額が所得税から控除しきれない場合のみ、住民税からも控除されます。
住宅ローン控除の手続きの流れ
- 必要書類を用意する
- 税務署で確定申告書に記入し、提出する
- 確定申告後およそ1ヵ月程度で還付金が振り込まれる
上記の3ステップが、住宅ローン控除を受けるために必要な申請方法の流れです。必要書類は準備するのに時間がかかるものもあるため、余裕をもって用意し、不備が無いように注意しましょう。2年目以降も確定申告が必要な場合は、同様の流れで申請を行います。
2年目以降から控除可能な13年目までは必要書類が減るため、準備期間が短くなり、申請方法も簡単になるでしょう。会社員などで2年目以降に年末調整を利用する方は、必要書類を企業側に提出するだけで、手続きが完了します。
住宅ローン控除を利用する際に注意したいこと
住宅ローン控除を利用する場合、要件を満たし、基本的な申請方法を把握しておくことが重要です。ここでは、これら以外にも把握しておきたい3つの注意点を解説します。最悪の場合、控除が受けられない可能性もあるため、知識として身につけておきましょう。
転勤で居住していないと適用できない
住宅ローン控除は、あくまで居住用の住宅に住んでいることが基本条件です。そのため転勤などで住んでいない場合は、控除対象外となります。ただし、ご自身は転勤のため別の家に住んでいるが、住宅ローン控除対象の住宅に家族が住んでいる、短期の転勤のため、その年の12月31日までには戻ってくる、などの場合は、住宅ローン控除を受けることが可能です。
転勤などが理由で、ローンを組んで購入した住宅に誰も住んでいない場合は、控除対象外になります。しかし、住宅に戻ってきた際にきちんと手続きを行うことで控除が再開されるため、居住年数を把握し、損のないよう手続きをしましょう。
繰り上げ返済により要件を満たさなくなると適用外に
住宅ローン控除を受けるにあたり、10年以上の返済期間があることという要件が設けられています。そのため、ローンを繰り上げして支払い継続期間が10年未満になるとこの要件から外れ、控除が受けられなくなります。繰り上げ返済を考えている方はこの点を押さえておきましょう。
住宅ローン控除とふるさと納税は併用に注意
確定申告をする場合には、ふるさと納税を計算したあとに住宅ローン控除の計算が行われます。また、確定申告でのふるさと納税額控除対象は、住民税と所得税の両方です。そのため、住民税よりも控除額が多くなると、控除額が全額適応されない場合がある可能性があります。
こういった問題を起こさないためには、ふるさと納税の申請をワンストップ特例制度で行うのがおすすめです。ワンストップ特例制度では、控除対象が住民税のみとなるため、住宅ローン控除への影響が少なくなります。しかし、住宅ローン控除申請1年目の場合、ワンストップ特例制度は利用不可のため注意しましょう。
以上のようなさまざまな注意点があるため、住宅ローン控除の相談や住宅ローンの借り換えなどを検討する際はプロに相談するのもひとつの手段です。中でも、クレディセゾンが提携する「iYell(いえーる)」グループ提供の「住宅ローンの相談窓口」がおすすめです。住宅ローン控除に関する相談を含む、住宅のお金にまつわる悩みに寄り添ってくれます。
おわりに
住宅ローン控除は、住宅購入やリフォームのための費用負担を軽減できるお得な制度です。税制改正によって内容が変更された部分があるため、きちんと把握してしっかり活用しましょう。住宅ローン控除を受けるための基本的な要件はもちろん、簡単な計算方法や注意点、手続きの流れなどを把握しておくと失敗の可能性が少なくなり、スムーズな手続き完了が目指せるはずです。ご紹介した内容を参考に住宅控除に関する最新の情報を理解し、この制度を有効活用しましょう。