マイホームのイメージを掴むためにモデルハウスを見学される方もいらっしゃるでしょう。その際、気に入ったモデルハウスに出合ったら「物件をそのまま購入したいけど、可能なの?」」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。モデルハウスは展示用に建てられていますが、展示期間が終了すると、一般的な一戸建てよりもリーズナブルな価格で購入できる場合があります。
しかし、モデルハウスの購入には注意点があり、事前に知らないと損をしてしまう可能性もあります。本コラムでは、モデルハウスを購入するメリット・デメリットや、失敗しないための注意点について詳しく解説します。
- モデルハウスには、住宅展示場と分譲地2種類があり、どちらも展示期間が終了すると購入可能です。
- 住宅展示場のモデルハウスを購入する場合、建物を移設・再建築するための土地が必要です。
- 分譲地のモデルハウスは、土地と建物を含めて購入できるため、売買契約が済めばすぐに住み始められます。。
- モデルハウスは、新築住宅や注文住宅の購入よりも費用が安いうえに、実際に見学することで生活のイメージが湧きやすいというメリットがあります。


そもそもモデルハウスとは?

モデルハウスとは、ハウスメーカーが自社の住宅をアピールするために、展示用に建てた物件です。主にマイホームの購入を検討している方に向けて、内装や設備などを実際に見学してもらうために建設されます。展示を目的とした一時的な建築物であるため、期間が終了すると、解体・撤去されることもありますが、販売されるケースもあります。
モデルハウスには、大きく分けて2種類があります。
- 複数のハウスメーカーが集まる「住宅展示場」に建てられたモデルハウス
- 宅地として区画整理された「分譲地」に建てられたモデルハウス
どちらのモデルハウスも、展示期間が終了すると購入可能です。
モデルハウスを購入する4つのメリット

モデルハウスを購入する場合、以下のようなメリットがあります。
- 実物を見て購入できるため生活をイメージしやすい
- リーズナブルな価格で購入できる
- 家具や家電などがついてくるケースがある
- 分譲地のモデルハウスならすぐに住み始められる
それぞれのメリットについて詳しく解説していきます。
実物を見て購入できるため生活をイメージしやすい
通常の住宅購入では、図面や完成予想図で内装や外装をイメージする必要があります。部屋の広さや収納スペース、動線などは完成するまで体感できないため、入居後にギャップを感じるかもしれません。
一方、モデルハウスは実際の内装や間取りなどを実際に見学できるため、モデルハウスは、購入前から入居後の生活を明確にイメージできます。完成後の内装や外観を確認してから購入できるため、入居後に不満を感じにくいのが特徴です。
リーズナブルな価格で購入できる
モデルハウスは展示用物件として建てられ、多くの方が見学や宿泊体験で出入りします。wそのため、一般的な住宅よりも割安な価格で売り出される傾向にあり、リーズナブルな価格で購入可能です。
また、モデルハウスは分譲地なら建築から約1年、住宅展示場なら3年〜5年展示した後に販売されます。完成から数年が経過し中古物件扱いとなることも、通常よりも安く購入できる理由のひとつです。さらに、展示期間終了後に売れ残っている場合は、値引き交渉に応じてもらえるケースもあります。、ハウスメーカーの住宅をなるべく費用を抑えて購入したい方におすすめです。
家具や家電などがついてくるケースがある
モデルハウスは見学者が魅力的に感じるように、最先端の家具や家電を設置しています。ハウスメーカーにもよりますが、モデルハウスを購入すればこれらの設備もそのままついてくるケースがあります。つまり、ハイグレードな家具や家電を入手できる上に、新生活にかかる費用を削減できるのです。
また、家具や家電付きのモデルハウスなら、ハウスメーカーが考案した統一感のある部屋をそのまま引き継げます。インテリア選びに自信がない方や、強いこだわりがない方に適しています。
分譲地のモデルハウスならすぐに住み始められる
分譲地のモデルハウスは、売買契約を終えて展示期間が終了すればすぐに入居可能です。注文住宅のようにハウスメーカーの担当者と何度も打ち合わせをしたり、工事の完了を待ったりする必要がありません。
そのため、賃貸契約の終了が近い方や転勤などの都合で、できるだけ早く引っ越したい方におすすめです。
モデルハウスを購入する4つのデメリット

一方、モデルハウスの購入には以下のデメリットもあります。
- 設備や内装に傷がついている場合がある
- 新築住宅ではなく中古住宅になる
- 人気のモデルハウスは抽選販売の可能性もある
- 住宅瑕疵担保責任保険の対象外となる
それぞれのデメリットについて詳しくチェックしていきましょう。
設備や内装が傷ついている場合がある
モデルハウスには展示期間中に不特定多数の方が訪問するため、内装や家具、家電などが傷ついているケースがあります。さらに、宿泊体験を実施しているモデルハウスでは、多くの方がトイレやキッチン、浴室などを使用しており、水回りにも傷や汚れがついているかもしれません。
そのため、価格や受け渡し期間以上に新しさや綺麗さを重視する方には、モデルハウスの購入は不向きです。
新築住宅ではなく中古住宅になる
分譲地のモデルハウスは約1年、住宅展示場のモデルハウスは3〜5年展示されます。国土交通省の定める「住宅の品質確保の促進等に関する法律」では、新築住宅は「建設工事の完了の日から起算して1年以内、かつ人の居住の用に供したことがないもの」と定義されています。
そのため、基本的にモデルハウスは新築ではなく中古一戸建て住宅として扱われます(参照:住宅の品質確保の促進等に関する法律 – 国土交通省)。「新築でマイホームを購入したい」と考えている方には不向きかもしれません。
また、モデルハウスに付帯する家具や家電には通常保証期間がありますが、展示期間中に時間が経過しているため、受け渡し時には保証期間が終了している可能性があります。この点も購入前に確認が必要です。
人気のモデルハウスは抽選販売の可能性もある
モデルハウスの数は限られており、人気物件は抽選になります。特に住みやすいエリアの物件や有名ハウスメーカーの物件は人気で、当選確率が1%を下回るケースもあります。
抽選に外れれば、新たに物件を探さなければなりません。そのため、人気物件の購入を考えている方は、抽選に外れた場合のことも考えて、複数のモデルハウスをピックアップしておきましょう。
住宅瑕疵担保責任保険の対象外となる
新築住宅を販売するハウスメーカーや不動産会社は、住宅瑕疵担保責任保険への加入が義務付けられています。これは、新築住宅に傷や不具合があった場合に、補修を担当した事業者に保険金が支払われる制度です。
しかし、中古住宅となるモデルハウスはこの保険の対象外となる場合があります。そのため、万が一建物に不具合があった場合、補修費用を自己負担しなければならない可能性があります。
なお、モデルハウスでも中古住宅を対象とした「既存住宅瑕疵保険」に加入できる場合があります。しかし、既存住宅瑕疵保険の保険期間は最長5年であり、新築を対象にした保険よりも保証期間が短い点に注意が必要です。
参照元:住宅瑕疵担保責任保険について – 国土交通省、既存住宅売買瑕疵保険について – 国土交通省
モデルハウスを購入する2つの方法
モデルハウスの購入方法は、その建物が住宅展示場のものか、分譲地のものかによって異なります。ここからは、住宅展示場と分譲地でモデルハウスを購入する方法をそれぞれ説明しましょう。
住宅展示場のモデルハウスを購入して自分の土地に移設する方法
住宅展示場で公開されているモデルハウスを購入すると、展示期間満了後に解体・移設工事が行われます。購入者の所有する土地へ移設し、再建築されるため、このようなモデルハウスは「リユースホーム」とも呼ばれます。
そのため、住宅展示場のモデルハウスを購入する際は、移設先の土地を確保する必要があります。また、建物の大きさや地域の建築制限によっては、再建築ができない場合もあるため、事前にハウスメーカーの担当者に確認しましょう。
分譲地のモデルハウスをそのまま購入する
住宅地など分譲地に建てられたモデルハウスは、約1年の公開期間が終わると購入可能です。解体や移設が不要で、購入後はすぐに引き渡しが完了するため、「現地モデルハウス」とも呼ばれます。
分譲地のモデルハウスは再建築が不要なため、土地を用意する必要がありません。すぐに住み始められるので、早めの入居を希望する方に適しています。
モデルハウスを見学する際のチェックポイント

購入を希望するモデルハウスを見学する際は、以下のポイントをチェックしておきましょう。
- 建物の構造や間取り・広さ
- 外構
- 収納スペースの有無や位置
- 駅やバス停へのアクセス
それぞれどのように確認すべきか解説します。
建物の構造や間取り・広さ
モデルハウス選びでは、木造や鉄骨造、RC造(鉄筋コンクリート造)などの構造や、耐震等級などの確認が欠かせません。耐震等級は地震に対する強度を示す指標で、一般的に等級が高いほど地震に対する安全性が高くなります。
また、間取りや広さは現在の家族構成だけでなく、将来的な変化も想定して選ぶことが重要です。子どもの成長や在宅勤務のスペース確保など、生活スタイルの変化に柔軟に対応できるかも重要な要素になります。
外構
庭の広さや駐車スペース、フェンスの高さなどの外構も確認しましょう。「車は何台駐められるか」「庭は手入れしやすいか」「隣の家との距離感は十分か」などをチェックしておくことで、入居後に不満を感じにくくなります。
収納スペースの有無や位置
クローゼットや押入などの収納スペースがないと、部屋にタンスやドレッサーを置く必要があります。部屋の一部を収納のために使うことになり、快適性が損なわれます。そのため、モデルハウスを見学する際は、各部屋の収納スペースの有無やサイズ、使い勝手を確認しましょう。
また、大きさだけではなく、可動棚の有無や扉の開閉のしやすさなどもチェックしておくと、入居前から収納スペースの活用方法を考えやすくなります。
駅やバス停へのアクセス
分譲地にあるモデルハウスの場合は、その場所にそのまま住むことになります。公共交通機関へのアクセスは重要な要素です。通勤や通学で利用する最寄りの駅やバス停までの距離や時間も確認しておきましょう。
また、利用する路線の利便性、便数、運行状況なども調べておくことをおすすめします。例えば、「最寄り駅から都心部への直通列車があるか」「乗り換えの回数や時間はどの程度か」「朝夕の通勤ラッシュ時の混雑状況はどうか」などをチェックすることで、通勤や通学にかかるストレスを軽減できる可能性があります。
周辺設備や騒音・臭い
近くにスーパーマーケットやドラッグストア、病院、郵便局などがないと生活は不便です。そのため、分譲地のモデルハウスを見学する際は、生活に必要な施設が近くにあるかを確認しましょう。
また、線路や幹線道路が近いと大きな音が気になるかもしれません。工場が近ければ、臭いが気になる場合もあります。昼間は気にならなくても夜間になると思わぬ問題が発生することも考えられます。そのような点を事前に確認する方法として、一部のモデルハウスでは実際の住み心地を体験できる宿泊体験を実施しています。宿泊体験を利用することで、昼間だけでは分からない夜間の騒音や周辺環境を確認することができます。
失敗しないために!モデルハウスを購入する際の注意点

モデルハウスを購入する際は、以下の点に気をつけましょう。
- 住宅展示場のモデルハウスは土地がないと住めない
- 基礎や土台づくりなどの建築工程を見られない
- 資金計画を立てずに購入しない
それぞれについて詳しく解説します。
住宅展示場のモデルハウスは土地がないと住めない
住宅展示場のモデルハウスは、売買契約後に解体して購入者の土地に再建築します。したがって、移設先の土地がないと購入できません。
また、再建築に際しては、家の広さと土地の広さの関係が都市計画法や建築基準法に違反しないかも確認する必要があります。例えば、その土地のある地域が定めた建ぺい率(土地面積に占める建物面積の割合)や容積率(土地面積に占める各階の床面積の合計)の規制により、気に入って購入したモデルハウスをリユースできないケースがあるのです。
そのため、住宅展示場のモデルハウスの購入を検討しているなら、購入前にハウスメーカーの担当者に問題がないか確認しましょう。
基礎や土台づくりなどの建築工程を見られない
すでに完成しているモデルハウスは、注文住宅のように基礎や土台づくりなどの建築工程を目で見て確かめることができません。購入後に基礎や土台に欠陥が見つかるケースもあるため、ホームインスペクション(住宅診断)を活用しておくと安心です。
費用はかかりますが、専門家の診断によって欠陥がない優良な住宅であることを確認できます。
資金計画を立てずに購入しない
モデルハウスに限らずマイホームの購入では住宅ローンを組むのが一般的です。しかし、資金計画を立てずに契約すると返済が滞って家を手放すしかなくなるおそれがあります。住宅ローンのフラット35を提供する住宅金融支援機構は、令和元年度時点で貸付残高のうち3.2%が回収が難しいリスク管理債権に分類しています。
つまり、3.2%が住宅ローン破綻になっている可能性があるのです。購入したマイホームに長く住み続けるためには、無理のない住宅ローン契約が求められます。
「住宅ローンの適切な金額がわからない」「返済計画が合っているか不安」という方もいるでしょう。そのような方には、住宅ローンの相談窓口への相談がおすすめです。現在の生活だけではなく、今後のライフプランを踏まえた専門家のアドバイスを受けながら、適切に住宅ローンを契約できます。


おわりに
モデルハウスは、購入前から入居後の生活をイメージしやすい、注文住宅や新築住宅購入より費用が安いなどのメリットがあります。一方で、住宅瑕疵担保責任保険の対象外になる、人気物件は抽選になるなどのデメリットもあります。
また、モデルハウスの購入には少なくとも1,000万円以上の費用がかかります。住宅ローン破綻に陥らないためには、今後のライフプランを考慮した資金計画の立案が大切です。
しかし、個人で万全な資金計画を立てるのは難しいため、モデルハウスの購入を意識し始めたら、早めに専門家に相談しましょう。
※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。