不倫相手のご主人や奥さんから慰謝料請求されたら、とても不安な気持ちになることでしょう。しかし、冷静さを欠いたまま対応して、あとで後悔したという体験談を耳にすることも少なくありません。そこで、このコラムでは慰謝料請求された際にやってはいけないこと、確認すべきことをご紹介します。正しい対処法についてもまとめていますので、慰謝料請求されて困っている方はご一読ください。
- 不倫で慰謝料を請求された場合、まずは自身に支払い責任があるか、請求された金額が妥当かを確認することが重要。不貞行為がなかったり、夫婦関係が既に破綻していたりする場合は、支払い責任がないことがある。
- 慰謝料請求に対して無視したり、感情的に反応したりすると、減額交渉が難しくなる可能性があるため、冷静になって内容を確認し交渉の方向性を検討することが大切。交渉がスムーズに進めたい、または相手方とのやり取りが負担に感じる場合は、弁護士に依頼するのがおすすめ。
- 示談書に自分の希望を反映させたい場合は、自身で作成することにより自分の要望を明確に伝え、交渉過程での自身の立場を強化することができる。
不倫で慰謝料請求された場合に起こり得ること
慰謝料請求の内容証明郵便が届いた、あるいは相手の配偶者から請求された場合、どのようなことが起こり得るのでしょうか。考えられる可能性を見ていきましょう。
慰謝料は相場より高額に
慰謝料を請求された際に焦って対応すると、相場より高い金額を支払ってしまう可能性があります。慰謝料の額には決まりがなく、相手方が相場を大きく上回る金額を請求することもあるからです。
不倫により、相手の配偶者を傷つけたことが事実だったとしても、請求されたとおりの金額を支払う義務はありません。しかし、実際にはご自身の配偶者や職場などに不倫の事実を知られたくなくて、相手方の言い値で支払ってしまう方も少なくないのです。
もちろん、相場より高い慰謝料でも、ご自身が納得しているのであれば問題はありません。しかし、請求されたままの金額で支払うことに法的義務はないため、まずは冷静になることが重要です。
生活や仕事に影響が出る
生活・仕事などに影響が出ることもあります。慰謝料の支払い期日が近づいてくると、金額が相場より高くても「何とかして支払わなければ」という気持ちに支配されてしまうことがあるでしょう。
また、職場不倫の場合は、職場環境を著しく悪化させた、会社のイメージダウンにつながったなどの理由で解雇される可能性もあります。これらのケースは、多額の借金をかかえて生活が苦しくなる、自己破産に追い込まれるなど、その後の人生にも影響を及ぼしかねません。
不倫で慰謝料請求された際にやってはいけないこと
慰謝料請求されたときは、冷静になることが重要です。やってはいけないことを以下にまとめましたので、参考にしてください。
請求内容をそのまま受け入れてしまう
前述のように、相手方の言い値で払うという法的義務はありません。配偶者や職場に事実が知られることを恐れて、受け取った書面にすぐに署名したり慰謝料を支払ったりすることがないようにしましょう。
また、口頭での約束も同様です。仮に署名していなかったとしても、相手方が録音していた場合は合意が成立したと判断されることがあります。
心当たりがあっても、慰謝料の支払いが必要なケースに該当しない可能性があります。そのため、請求されたときにはすぐに動こうとするのではなく、後述するポイントについて考えることが重要です。
慰謝料請求の書面を無視する
すぐに署名しないことはもちろん重要ですが、無視は避けましょう。無視を続けていると誠意がないと判断されて、交渉が困難になったり裁判になったりする可能性が高くなります。
さらに、裁判になると、裁判所に出向く、書類を作成するなどの大きな負担も覚悟しなければなりません。
感情をぶつけてしまう
慰謝料を請求されたことに驚きや怒りを感じて、感情に任せて行動することは避けましょう。不適切な行動や発言をしてしまうと、不利な状況になる可能性があります。
場合によっては相手方が強引に接触してくることもありますが、感情のままに動くと慰謝料を増額されるといったトラブルにつながりかねません。「不倫相手のご主人や奥さんを傷つけてしまった」という意識を持って対応することが大切です。
相手方に嘘をつく
慰謝料請求されたときは、相手方がすでに不倫の証拠を握っている可能性があります。不倫したことが事実である場合、嘘をつくことで慰謝料の減額交渉が難しくなるだけでなく、増額されてしまうといった問題が発生することも考えられます。
そのため「証拠を握っているわけではないだろう」との考えから「肉体関係はない」と相手方に伝える行為は、大変危険です。相手方が最初から証拠を提示してこなかったとしても、何らかの情報を握っていると考えて行動しましょう。
不倫で慰謝料請求されたときに確認したいこと
既婚者との不倫で慰謝料請求されたときに確認したいポイントは、以下の2つです。
- 慰謝料を支払う必要があるのか
- 慰謝料の金額が相場と比べて妥当であるか
慰謝料を支払う必要があるのか
確認すべきポイントの1つ目は、慰謝料を支払う必要があるのかということです。
民法第709条には、「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」と記されています。
つまり、不倫相手とお互いに好意を持って会っていたとしても「相手方の権利を侵害している」「不倫に故意・過失があった」という条件を満たしていなければ、慰謝料の支払い義務はありません。
それでは、判断のポイントと支払う必要のないケースを見ていきましょう。
参照元:民法
不貞行為があったか
まずは、不貞行為があったかどうかです。相手方が「浮気された」「不倫された」と感じていたとしても、不貞行為をしていなければ慰謝料請求が認められないことが通常です。
不貞行為とは、性行為や性交類似行為のことを指します。つまり、不倫相手と会っていた事実があっても、頻繁に連絡を取り合っていた、食事に行ったというケースは不貞行為に当たりません。また、キスをしていた、手をつないでいたなどの場合も同様です。
ただし、肉体関係がなかったとしても、不倫相手と親密な関係が続いていれば、権利を侵害したとして慰謝料請求されてしまう可能性があります。状況によっても変わってくるため、ご自身で「問題ない」と判断することは避けましょう。
不倫以前の夫婦関係はどうだったのか
不倫相手とその配偶者の夫婦関係がもとから破綻していた場合は、不貞行為の事実があっても、原則として慰謝料を支払うべき理由にはなりません。
不倫した時点で夫婦関係が成り立っていなかったのであれば、精神的苦痛を感じることがない、つまり権利の侵害がないためです。夫婦関係の破綻は、不倫前から別居していたか、離婚について協議していたか、夫婦間の接触があったかなどにより判断されます。
なかでもメインとなるのが別居の有無です。しかし、状況によっては破綻していないと判断されることもあるため、どういった判断になるのかについては弁護士に相談することをおすすめします。
相手が既婚者だと知っていたのか
前述のように、故意・過失があったかどうかも重要なポイント。相手が既婚者であることを知らずに不倫していた場合、故意・過失が認められないため支払いは不要です。
例えば、マッチングアプリで出会って既婚なのかを確認できる状況になかった、独身だと言われて交際していたなどのケースがこれに当たります。また、夫婦関係が破綻していると告げられて交際していた場合も、支払う責任がありません。
ただし、配偶者がいることに気づける状況があった場合は、故意・過失が認められることもあるため、ご自身のケースが故意・過失に当たるのか不安な場合は弁護士に相談してみましょう。
不貞行為がご自身の自由意思であったのか
相手と性行為をしたことがあっても、それがご自身の意思でなければ支払いは不要です。脅迫や暴力により、意思と関係なく無理に性行為をさせられたケースなどが該当します。
慰謝料の金額が相場と比べて妥当であるか
慰謝料を支払う必要があったとしても、金額が妥当なのかの確認は必要です。
民法では、不倫をした際に慰謝料を支払う責任があると定められていますが、金額や期限については触れられていません。相手方が感情に任せて高額な慰謝料を請求することも可能なので、金額を相場と比べてみることが重要です。
過去の裁判事例をもとにした、不倫による慰謝料の相場を表にまとめました。慰謝料額は、不倫によって相手方夫婦が離婚・別居したのかどうかがポイントとなっています。
【不倫による慰謝料の相場】
相手方夫婦が離婚した場合 | 200万~300万円程度 |
相手方夫婦が別居した場合 | 100万~200万円程度 |
相手方夫婦が離婚・別居しない場合 | 50万~100万円程度 |
ただし、以下のようなケースでは慰謝料が相場よりも高額になることがあります。
【慰謝料が高額になりやすいケース】
- 不倫している期間が長い
- 肉体関係を持った回数が多い
- 相手方夫婦の間に子どもがいる
- 自分あるいは不倫相手が妊娠した
- 自分から積極的に不倫をした
- 慰謝料の交渉をする際に誠意のない対応をしたなど
これらのケースは相手方に大きな精神的苦痛を与えたと判断され、相場よりも高額の慰謝料を支払わなければならない可能性があります。
参照元:株式会社アシロ
不倫で慰謝料請求された際の対処法
不倫で慰謝料請求された場合は、どのように対応すれば良いのでしょうか。請求された際の流れを知って、正しく対処できるようにしておきましょう。
慰謝料請求の内容を確認
まずは、相手方がどこまで具体的に知っているのか、請求されている慰謝料額はいくらか、支払い期限はいつなのかを確認しましょう。また、慰謝料請求の書面作成者名も、相手が弁護士を立てているかどうかを知る鍵になるため重要です。交渉・話し合いは、書面作成者が弁護士であれば弁護士と、行政書士・不倫相手の配偶者であれば不倫相手の配偶者と行うことになります。
ご説明したとおり、支払い期日は法律で決められたものではありません。しかし、相手が弁護士を立てた場合は、期日を過ぎたらすぐに訴訟に移ることもあり得ます。そのため、すぐに支払いをしない場合も、無視したと判断されないように一旦返答するなど何らかのアクションが必要です。
交渉方法・交渉内容を決定する
次に、相手方との交渉をご自身でするのか、弁護士に依頼するのかを決めます。「交渉がうまくいくか不安」「相手方と直接やり取りしたくない」という場合は、法律の専門家である弁護士に依頼することも検討しましょう。
交渉内容については、そのまま支払うのか、減額するのか、支払い期限をいつにするかなどを決めておきます。
弁護士に不倫トラブルを相談したときにかかる費用の目安について、以下の表にまとめたので参考にしてください。なお、下記の弁護士費用は、300万円以下の慰謝料を請求された場合の目安となっています。
【不倫トラブルにかかる弁護士費用の目安】
初回相談料(30分ごと) | 5,000~10,000円程度 |
着手金 | 請求された金額の8%程度 |
報酬金 | 減額できた金額の16%程度 |
300万円の慰謝料を請求されて、弁護士が100万円まで減額した場合の着手金・報酬金を見てみましょう。着手金は300万円の8%なので24万円、報酬金は200万円の16%なので32万円となります。当初の請求額300万円と比べると、慰謝料100万円と合わせても156万円。
この場合、他に相談料がかかったとしても、結果的に支払い金額を大きく減らすことができます。相談料を節約したい場合は、無料相談に対応している弁護士事務所を探すのもおすすめです。
参照元:千林法律事務所
慰謝料について相手方と交渉する
相手方との交渉では、一般的に減額を目指して金額・支払い期限について話し合うことになります。
金銭的な事情から支払えない場合は、相手方にしっかりと謝罪したうえでその旨を伝え、どのくらいなら支払えるのかを丁寧に説明しましょう。
一括で支払うのが難しい場合は、分割払いの交渉をします。ただし、分割払いは相手方にとってはリスクのあるものです。そのため、全額支払うつもりがあることを真摯な態度で伝えることが重要です。
不貞行為をしていない、故意・過失がない場合は、支払わない方向で交渉します。このケースでは、事情を丁寧に説明しましょう。注意したいのが、故意・過失がないという理由で支払いを拒否する場合です。不倫相手が既婚であると知らなかったのであれば支払う必要はありませんが、相手方の証拠により気づける状況があったと判断された場合は、支払わなければいけません。
なお、ご自身での交渉手段としては面会・電話・メール・手紙などがありますが、回答までに検討する時間が取れるメール・手紙がおすすめです。即時の回答を求められる面会・電話は避けた方が良いでしょう。
慰謝料についての交渉は慎重な対応が求められますが、弁護士に依頼することで負担を減らすことができます。
示談書を作成する
話がまとまったあとは、示談書を作成します。不倫した側・不倫された側どちらが作成するという決まりはありません。細かい文言や表現などを反映させたい場合はご自身で作成しましょう。
おわりに
ご説明してきたように、不倫で慰謝料請求された際に焦って行動するのはおすすめできません。まずは落ち着いて支払う必要があるのかを考え、請求金額を相場と比較しましょう。相手方との交渉が不安な場合は、弁護士事務所に相談してみるのも選択肢の一つです。無料相談なども利用しながら、解決の糸口を見つけていきましょう。
また、結果として慰謝料を支払う必要が発生した場合に、「身内には相談できない」「すぐにまとまったお金を用意できない」等の事情がある場合は、カードローンを利用するのも選択肢の一つです。
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