一戸建てやマンションなどの不動産を購入する際は、資産価値にも注目することが重要です。資産価値が高ければ、将来売却する場合にも高い価格で売れる可能性が高くなります。
この記事では、不動産の資産価値の算出方法や影響を与える要因について詳しく解説します。最後までお読みいただくことで、資産価値の高い不動産を購入するためのヒントを得られるでしょう。


「資産価値」の意味

不動産の資産価値とは、その不動産が持つ「現時点での価値」のことです。同じ物件でも、新築時と築30年後では価値がまったく異なる場合があります。築年数が経過していても資産価値を維持、または高めているビンテージマンションなど一部の例外を除き、一般的には売却する時期が早ければ早いほど資産価値は高くなります。
また、不動産の資産価値は、土地の価値と建物の価値の2つから構成されています。土地の価値は年数が経過しても大きく変化しにくいです。しかし「新駅ができたことで利便性が増し、引っ越して来る人が増えた」など、周辺地域の変化により需要が増した場合は、価値が上がる可能性もあります。
一方、建物の経年劣化により資産価値が減少します。
なお、不動産の資産価値は「売却価値」と「収益価値」に分類することが可能です。
売却価値 | その不動産を売却した際に得られる価格 |
収益価値 | その不動産から得られる収益(家賃収入など) |
これら2つの価値が高い物件は、将来的にも資産価値が下がりにくく、利益を生み出しやすいと考えられます。ただし、リーマンショックや東日本大震災のように経済活動に大きな影響を与える出来事がある場合は例外です。
資産価値の計算方法

不動産の資産価値は「土地の価格+建物の価格」で計算されます。
例えば、土地の価格が3,000万円、建物の価格が1,000万円の場合、資産価値は4,000万円となります。
実務では、土地と建物の価格をそれぞれ計算してから合計する方法が一般的です。
建物の価格は「再調達価格(耐用年数-築年数)÷耐用年数」で計算されます。
再調達価格 | 現時点で同じ状態の建物を再度購入したり、建てたりする場合の価格のこと |
法定耐用年数 | 国が定めた、固定資産を利用できる期間のこと |
建物の構造別の再調達価格の目安と法定耐用年数(住宅用)は以下のとおりです。
建物の構造 | 再調達価格(目安)/㎡ | 法定耐用年数 |
---|---|---|
木造 | 110,000~170,000円 | 22年 |
軽量鉄骨造(厚さ3mm超~4mm以下の場合) | 110,000~180,000円 | 27年 |
鉄骨造(厚さ4mm超の場合) | 140,000~190,000円 | 34年 |
鉄筋コンクリート造 | 170,000~210,000円 | 47年 |
不動産の資産価値をより正確に求めるには、不動産鑑定士などの専門家による鑑定評価が必要です。ここでは代表的な以下3つの鑑定評価方法について解説します。
- 取引事例比較法
- 原価法
- 収益還元法
取引事例比較法
取引事例比較法は、周辺にある同様の不動産の取引事例をもとに資産価値を算出する方法です。
例えば、評価対象の不動産が「床面積70㎡、○○駅から徒歩8分、築10年のマンション」であれば、同条件に近い物件の取引事例をもとに評価します。この方法では、以下の計算式を用いて資産価値を求めます。
事例不動産の単価(㎡)×(査定不動産の評点÷事例不動産の評点)×査定不動産の面積(㎡)×現在の流動性比率=資産価値
「評点」は、査定不動産の条件に似た事例と比較・評価して算出される点数です。また「流動性比率」は、対象不動産が売れやすいかどうかを示す数値を指します。
実際の成約価格を用いるため「眺望が良い」「日当たり抜群」などの数値化しにくい要素も含めて資産価値を評価できる点がこの方法の大きなメリットです。
原価法
原価法は、所有している建物を新築した場合の費用をもとに資産価値を計算する方法です。築年数の経過による価値の減少(減価償却)を考慮することが特徴です。
原価法による資産価値は「積算価格」と呼ばれ、以下の計算式で算出されます。
単価×総面積×残存年数(耐用年数-築年数)÷耐用年数=積算価格耐用年数は法定耐用年数を用いるため、建物の構造によって異なります。原価法のメリットは、周辺地域に取引事例がない場合や、注文住宅のように類似条件の物件が見つかりにくい場合でも資産価値を算出できる点です。
収益還元法
収益還元法は、対象不動産が収益物件の場合に、将来生み出せる収益をもとに資産価値を求める方法です。特に賃貸マンションやアパートの資産価値評価に広く使われています。
収益還元法には、直接還元法とDCF法の2つの計算方法があります。
直接還元法 | 年間の家賃収入から割り戻し計算を行うことで資産価値を求める方法。 年間家賃収入÷還元利回り×100=資産価値 |
DCF法 | 賃貸経営が見込める限界年数の合計収益や売却時の査定価格を織り込んだ上で割り戻し計算を行い、資産価値を求める方法。 (X年後の合計収益)÷(1+年間割引率のX乗)=資産価値 |
建物の資産価値と土地の資産価値

大前提として、不動産の価値は建物と土地とで分けて考えられます。
マンションの場合、土地は敷地権として区分所有者全員で共有しているため、建物と別々に処分できません。したがって、マンションの資産価値は主に建物としての評価に依存します。
一方、一戸建ての場合は、建物よりも土地の資産価値が高くなることもあります。建物とは異なり、土地は経年劣化しないためです。
ここで、建物と土地の資産価値の決まり方について説明しましょう。建物の資産価値には、減価償却が大きく影響します。
減価償却とは「使用や時間の経過によって生じる有形固定資産の価値の減少分を見積もり、耐用年数に割り当て、費用として配分する会計上の手続き」のことです。建物は時間が経つとともに劣化し、資産価値も低下する現象を、会計上の数値にも反映させる考え方です。当然、減価償却が毎年行われると、資産価値も徐々に減少します。
一方、土地の資産価値は築年数の影響をほとんど受けず、主に「路線価」によって決まります。
路線価は「路線(道路)に面する標準的な宅地の1㎡当たりの価額(千円単位で表示)」であり、国税庁のWEBサイトでも確認可能です。
また、路線価から実勢価格(実際に取引価格)の参考値を求めることも可能で、その際は「路線価による土地の評価額 ÷ 0.8 × 1.1(または1.2)」で算出します。
不動産の資産価値にかかわる5つの要素

土地や建物などの不動産の資産価値は、さまざまな要素に左右されます。
ここでは、資産価値にかかわる重要な以下の5要素を解説します。
- 土地の面積や形状
- 建物の築年数やデザイン・内装設備
- 立地の良さやエリア
- 経済的な要因
- 社会的な要因
土地の面積や形状
土地の面積が広いほど資産価値は高くなります。また、土地の形状も重要です。土地は形状により「整形地」と「非整形地」に分類されます。
整形地 | 長方形もしくは正方形に整えられた形の土地のこと |
非整形地 | 旗竿地やL字型・三角型の土地、崖地や傾斜地・高低差のある土地など、形が整っていない土地のこと |
非整形地は、同じ面積の整形地と比べて価格が安く、税務上の評価も下がる傾向があります。
建物の築年数やデザイン・内装設備
建物の築年数やデザイン・内装設備も資産価値に影響を与える要素です。築年数の経過による建物の劣化は避けられないため、一般的には築年数が浅いほど資産価値は高くなります。
また、デザインも重要な要素のひとつです。奇抜なものよりも、シンプルで流行り廃りのないデザインのほうが好まれる傾向にあるため、資産価値も高くなります。ただし、有名な建築家やデザイナーが手がけた建物は、多少変わったデザインでも好まれるため、資産価値も落ちません。
内装設備も重要です。浄水器やディスポーザー、食洗機、ダウンライト、ピクチャーレール、食器棚など生活に必要な設備が備わっている場合、資産価値は高くなります。オール電化の家も人気があり、評価が上がりやすいでしょう。
立地の良さやエリア
立地の良さやエリアも、不動産の資産価値に大きく影響します。例えば、以下の条件が揃っていると資産価値が高くなります。
- 最寄り駅までの距離が近い
- ターミナル駅までのアクセスが良い
- 利用できる電車やバスの路線数が多く、利便性が高い
- 周辺環境が充実している(コンビニやスーパー、病院、学校が近くにある)
特に、評判の良い小学校や中学校の学区内にある物件は、ファミリー層に人気で資産価値が高くなる傾向にあります。不動産を選ぶ際は、学区情報も調べてみると良いでしょう。
経済的な要因
不動産の資産価値は、金利動向をはじめとする経済的な要因によって変動します。例えば、日本ではマイナス金利政策により住宅購入者が低金利で住宅ローンを組めるようになった結果、住宅需要が増加し、不動産価格の上昇につながりました。また、大規模災害などの影響で建築資材不足や人材不足が深刻化し、資材価格や人件費が高騰したことも不動産価格上昇の一因です。
さらに、金利や災害以外にも、経済成長率、インフレ率、失業率といった要因が不動産市場に大きな影響を与えます。経済が好調な場合、不動産への投資意欲が高まり、価格が上昇する傾向があります。
一方で、世界的な金融危機が発生した場合などには、景気の悪化によって不動産価格が大幅に下落する可能性もあります。実際に、リーマンショック時には日本でも多くの企業が経営破綻し、不動産価格が大幅に下落しました。
社会的な要因
人口動態や社会情勢などの社会的な要因も、不動産の資産価値に影響を与えます。例えば、都市部への人口流出が続く地域では不動産価格が下落傾向にある一方で、東京都など人口流入が続く地域では上昇傾向にあります。
さらに、東京オリンピックなど大規模なイベントの開催が決まると、開催地周辺でインフラ整備や都市機能の強化が進み、不動産価格が上昇するのが一般的です。また、こうしたイベントを契機に不動産投資家の投資意欲が高まり、価格上昇の一因となる場合もあります。地方都市では、大型商業施設の建設や再開発プロジェクトによって、不動産価格が上昇するケースも見受けられます。
一方で、日本では人口減少と少子高齢化が進んでおり、住宅需要の減少や求められる住宅タイプの変化により、不動産価格が下落する可能性も考えられます。そのため、不動産購入を検討する際は、人口増加や再開発が期待できるエリアを選ぶことが重要です。
資産価値のある家とは?

「資産価値のある家」は人気が高く、高値での売却が期待できます。
マンションと一戸建てで、価値が高いと判断される条件は異なるので、それぞれのポイントを解説します。
マンションの場合
資産価値のあるマンションとされる条件は、以下のとおりです。
- 日当たり、眺望、間取りが良い
- 高層階
日当たり、眺望、間取りが良い
マンションの資産価値には、日当たりや眺望、間取りの良さが大きく影響します。南向きの窓で日当たりの良い部屋は高く評価されやすく、目の前に大きな建物がなく視界が開けていることもポイントです。ランドマークや海が見えるのも、プラス評価につながるポイントです。
なお、特殊な間取りは買い手がつきにくい場合があるため、シンプルで一般的なもののほうが良いでしょう。
高層階
一般的に、マンションは階数が高いほど資産価値も高くなるといわれています。特に最上階は眺望が良く、騒音や虫害が少なく、防犯面でも有利です。加えて、内装がハイグレード仕様であれば、さらに資産価値が高まります。
ただし、南向きの高層階の部屋は夏場の日差しが強く、暑さを懸念する買い手もいるため、北向きで開口部が大きく、眺望が良い部屋が好まれる場合もあります。
一戸建ての場合
一方、一戸建ての場合は、以下の2点に着目しましょう。
- 土地の形状が良い
- 機能性住宅
土地の形状が良い
土地は、同じ面積であっても形状によって資産価値が大きく異なります。一般的に、正方形や長方形の整形地は設計しやすく、いわゆる旗竿地(袋地)などの非整形地よりも高く評価されます。
また、角地で道路に面する部分が多い土地は利便性が高く、資産価値も上がります。日当たりを考慮するならば、道路に接する面が南向きの土地が望ましいでしょう。
機能性住宅
耐震性、防火性、断熱性に優れた機能性住宅は、安心して長く暮らせます。また冷暖房効果が高く、電気代を抑えられるなどの省エネ効果もあり経済的です。そのため、機能性住宅は一般的な住宅に比べて人気があり、資産価値も高くなる傾向があります。
資産価値のある家を探すポイント

資産価値のある家を探す際のポイントは、マンションと一戸建てで異なります。
両方のケースについて、資産価値のある家を探すためのポイントを解説します。
マンションなら、管理やメンテナンスの良いマンションを選ぶ
マンションを選ぶ際は、管理体制やメンテナンスの状況に注目しましょう。
管理会社がしっかりと対応しているマンションは、資産価値が長期的に維持される可能性が高まります。
具体的には、以下の点を確認しましょう。
- 共用部(エントランス、エレベーター、ゴミ捨て場など)の清掃が行き届いているか
- 軽微な故障があった場合、迅速に修理対応してくれるか
- ご近所トラブルがあった場合、迅速に対応してくれるか
- 定期点検や大規模修繕工事などの計画がしっかり立てられ、定期的に見直されているか
つまり「ご自身やご家族が住みやすそうだと感じられるか」が重要なポイントです。
一戸建てなら、資産価値のある土地を選ぶ
一戸建てを選ぶ際は、資産価値のある土地に建てられているかを重視しましょう。建物は経年劣化により価値が下がりやすいですが、土地は大規模災害がない限り、基本的に大きな価値の下落はありません。そのため、最寄り駅から近かったり、複数の路線が利用できるエリアにあったりなど、立地の良い土地に建つ建物を選ぶことが重要です。
建物が劣化した場合でも、解体して更地にしたり、新築を建て直したりして活用できるためです。土地の立地については、以下の点を確認しましょう。
- 最寄駅までの距離
- 最寄駅から利用できる路線の数
- 家から駅までの治安(街灯があるか、人通りはどのぐらいか)
- 高速道路やバイパスの出入り口は付近にあるか
- スーパー、コンビニ、銀行、病院などの生活に必要な施設があるか
- 最寄りの小学校、中学校までの距離はどのくらいか
資産価値の維持において重要性が増している要素

前述のポイント以外にも、不動産の資産価値を維持するための要素はいくつか存在します。ここでは、時代の変化に伴い重要性が増している要素について解説します。
災害リスク等への備え
近年、地震や豪雨などによる災害が頻発しており、住宅購入者の間で災害リスクへの関心が高まっています。そのため、資産価値を維持するには災害に強い地域にある不動産を選ぶことが重要です。例えば、自治体のホームページで公開されている「ハザードマップ」を活用し、洪水や地震のリスクが低い地域を選ぶようにしましょう。また、防犯意識の高まりから、治安の良さやセキュリティ設備の充実度も重要な評価基準となっています。
高性能住宅へのシフト
世界的な脱炭素の流れやエネルギー価格の高騰を受け、高い住宅性能が求められています。例えば「断熱・気密性能が高く冷暖房効率が高い住宅」や「太陽光発電や蓄電池を備えた省エネ住宅」などが挙げられます。一定の基準を満たす住宅は「住宅ローン減税」などの税制優遇を受けられる場合があり、経済的メリットも期待できます。また、地震対策として、免震・耐震構造を採用した住宅であることも資産価値を高める要素です。
人口増加への取り組み
再開発や宅地開発、企業誘致など、人口増加への取り組みが行われている地域を選ぶことも重要です。例えば、東京都台東区では上野駅周辺の再開発が急速に進んでおり、高層マンションの建設も相次いでいます。このような地域では人口増加が期待され、不動産価格の上昇も見込めます。
行政サービスの充実
子育て支援や高齢者介護といった行政サービスが充実している自治体を選ぶことも重要です。例えば、出産祝い金や保育料の補助、子ども医療費の無償化などの制度を導入している自治体は、子育て世帯が流入しやすいエリアと考えられます。また、高齢者世帯にとっては、医療機関や介護サービスが充実していることも重要です。
不動産の資産価値と売却額は同じ?
不動産の資産価値と売却額・査定額は異なる点に注意が必要です。一般的に、実際の売却額・査定額は資産価値より1~2割高いとされますが、必ずしもそうなるとは限りません。
売却価格は相対的に決まるため、タイミングによっては想定より成約価格が下がる(または上がる)場合があります。
つまり、購入希望者が多ければ価格は上がり、少なければ下がると考えましょう。売却価格を高くしたい場合は、新生活がスタートする直前の2~3月を目標に売却活動の準備を進めるのがおすすめです。
住宅購入や住宅ローンを検討している方はプロに相談を!
不動産を購入する際は、できるだけ資産価値の高い物件を選べば、将来高値での売却が期待できます。
物件の見極めや資金計画の立て方は、知識や経験がないと難しいかもしれません。失敗しないためにも、まずは気軽にプロに相談してみましょう。
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おわりに
不動産の資産価値はさまざまな要素に左右されるため、簡単には求められません。また、資産価値が高い物件であっても、不動産の需給状況によって売却価格が想定より低くなる場合もあります。一戸建てとマンションで着目すべきポイントが異なる点にも注意が必要です。
自宅購入で資産価値を重視する場合は、なるべく早くプロに相談し、連携を取りながら慎重に選んでいきましょう。実際に現地を訪れ、様子を確認することも重要な情報収集です。
※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。