住宅購入時から長く住んでいる自宅でも、自身や家族の高齢化などの理由から先々のリフォームを考えることがあるかもしれません。特に家の中のちょっとした段差などは、若いうちは負担にならなくても、年齢がかさむと転倒の原因となる可能性が生じるため危険です。そこで、このコラムでは、バリアフリーリフォームのポイントや各種補助金についてご紹介します。
この記事を読んでわかること
- バリアフリーリフォームは自宅の安全性を高くするために有効
- 手すりの設置や段差の解消など、事故防止を意識し快適に暮らせる環境につながる
- 介護保険による費用助成や自治体独自の補助金制度が活用できる
- 利用できる制度は最新情報を確認し、早めにリフォーム計画を行うことが望ましい
バリアフリーとは
バリアフリーとは、障害となるものを取り除くことを指しますが、家の中をバリアフリーにすることで、生活しやすくなるメリットがあります。例えば、高齢者や小さな子ども、病気療養中の方がいる場合、家の中の少しの段差にもつまずく可能性があり危険です。安心して自宅で暮らせるように、バリアフリーが有効な対策になるでしょう。
ここからは、バリアフリーについて次の2つの視点からご紹介していきます。
- バリアフリーにリフォームするタイミングは?
- バリアフリーリフォームが必要かどうか
1.バリアフリーにリフォームするタイミングは?
自宅をバリアフリーにリフォームするタイミングについて、次の5つのタイミングがあります。もちろん必ずしもこれらのタイミングで行う必要はありませんが、ひとつの目安となるでしょう。
- 50代になったとき
- 子どもが独立したとき
- 定年退職したとき
- 住宅のメンテナンスが必要なとき
- 身体の衰えなど変化を感じたとき
・50代になったとき
50代になると、急激に足腰に痛みを感じる方が増える傾向にあります。一般的な定年退職の年齢である60歳頃を迎えるにあたり、現役世代よりも身体に不調を抱える人も少なくないため、まずは簡単なリフォームから検討しても良いでしょう。例えば、階段に手すりをつけて転倒防止を図るだけでも、費用面も負担が軽く生活の質は向上します。
・子どもが独立したとき
子どもが独立して夫婦二人世帯になることで、老後について考え始める方も多いでしょう。一般的に子どもが独立する時期の親の年齢としては、40代後半から50代頃にかけてが多いようです。前述したバリアフリーリフォームを考えるタイミングである「50代になったとき」と重複することから、50代に入り子どもが独立したタイミングは大きな目安となるといえます。
・定年退職したとき
定年退職したタイミングで、退職金等を使って老後生活に備えたバリアフリー化を検討するのもおすすめです。定年退職した段階では、まだ健康で先のことを考えられないかもしれません。しかし、長寿化が進みつつある日本においては、長生きを前提に定年後のセカンドライフを長期的な視点で考えておく必要があるでしょう。定年退職を迎え、これからの自身や夫婦、家族の人生を考えていくうえで、バリアフリーリフォームを実施するのに良いタイミングだといえます。
・住宅のメンテナンスが必要なとき
特にバリアフリーを考えていない時期であっても、例えばトイレやお風呂など故障などでリフォームを実施する場合、同時にバリアフリー対応にリフォームするのもおすすめです。いずれはバリアフリーリフォームをするかもしれないという観点で考えると、前倒しで実施しておくと万が一バリアフリー化が必要な状態になった時に安心でしょう。
・身体の衰えなど変化を感じたとき
ご自身で身体の衰えを感じた時期は、バリアフリー化を検討するタイミングです。例えば、住宅購入時から不自由だと感じている住宅設備を早期に改修しておくと生活の質が向上します。急なめまいや体調不良で、階段やトイレなどに手すりを設けたいと考えることもあるかもしれません。このような場合には、バリアフリーリフォームを検討する最適なタイミングといえるでしょう。
2.バリアフリーリフォームが必要かどうか
普段の生活において、以前より段差につまずきやすくなったり、手すりが欲しいと感じたりするようになったら、バリアフリーリフォームの検討がおすすめです。他にもバリアフリーにした方が良い場面として、以下の6つを参考にしましょう。
- 階段の上り下りがつらくなった
- 段差でつまずくことが増えた
- 浴室の床がすべって転びそうになった/転んだ
- 手すりが欲しいと感じるようになった
- 介護や車椅子が必要になる可能性がある
- 車椅子や杖での移動になり出入り口が狭く通りにくい
バリアフリーリフォームのポイント
自宅をバリアフリーにリフォームする際に意識したい3つのポイントについてご紹介します。
- 事故を予防するための工夫
- 生活しやすい家づくり
- 介護する側も動きやすい空間
1.事故を予防するための工夫
バリアフリーリフォームの最も重要なポイントといえるのが、段差を解消することで移動中につまずいたり、転んだりするのを防ぐことです。住み慣れた家にこれからも長く安全に住み続けるためには、バリアフリーリフォームをした方が良いでしょう。
例えば、夜間、暗くて見えづらい場所などでつまずかないよう、階段や寝室の足元に人感センサー付き照明を設置するなどの工夫があります。
2.生活しやすい家づくり
サポートが必要な人の度合いによって、必要に応じてスロープを設置して動きやすくすることや、適切な場所に手すりを設置し、住みやすい環境を整える工夫が必要です。また、車椅子でも使いやすい動線を意識し、居室間の段差を解消し移動をスムーズにすることや、出入りしやすいドアに付け替える工夫もあります。
3.介護する側も動きやすい空間
介護が必要になった場合、介護者が移動や移乗の介助がしやすいようスペースを確保する工夫が必要です。車椅子で介助する場合、車椅子1台分のスペース確保だけでなく、介助者(介護する側)が方向転換や切り返しができるような広めのスペースも確保しましょう。
取り入れやすいバリアフリーのリフォーム
バリアフリーリフォームは、居住者の負担を減らしたり事故を未然に防いだりするために行うものです。ここではバリアフリー化におすすめのリフォーム箇所をご紹介します。
- 手すりを設置する
- 段差をなくす
- ドアを交換する
- 間取りを変更する
- 床材を交換する
- 車いすでも使いやすい洗面台に交換する
1.手すりを設置する
手すりの設置は、バリアフリーリフォームの中でも比較的費用がかからない種類の工事です。手すりを利用する方の身長や手の動作などを総合的に勘案し、設置する高さなどを決めていきます。設置場所として、トイレや浴室、脱衣所、居室、廊下、玄関などです。
2.段差をなくす
高齢になると、自宅内での転倒事故は増加する傾向にあります。現役世代のうちは感じなかったわずかな段差も、家族の高齢化や、病気療養を経験すると、危険な個所となるのです。
前述した手すりの設置で解消できる段差であれば様子を見て構いませんが、可能であれば段差そのものをリフォームする方法も良いでしょう。
3.ドアを交換する
高齢になると、ドアの開け閉めで一苦労することがあります。高齢化が進むと握力が低下することから、従来の開き戸(手前か奥にドアを開閉するタイプ)が利用しづらく感じることが原因です。
段差解消のバリアフリーも含めて考えると、床にレールの埋め込まれた引き戸(ドアノブが無く左右にスライドさせて開閉する扉)に交換することで、これらの負担は軽減されるでしょう。
4.間取りを変更する
間取りの変更は比較的大掛かりなバリアフリーリフォームになりますが、間取りを変更することで暮らしの質はかなり向上します。例えば、寝室のすぐ近くにトイレを設置することで、高齢者が日常的に移動する距離を短くできるでしょう。
高齢者は、自分でできることは自分で行うことが健康増進のひとつです。排泄に関しても、動線が良いのであれば高齢者が自分で行き来できた方が、高齢者本人も安心できるでしょう。
5.床材を交換する
高齢者の転倒など万が一に備え、床材をより安全なものに交換するリフォームがあります。硬い床の場合は、ちょっとした転倒でも骨折などの原因となるため、床材を滑りにくくクッション性の高い材質に変更すると、もしものことがあっても安全です。
6.車椅子でも使いやすい洗面台に交換する
将来的に車椅子の利用が必要となった場合に、洗面台を交換するというリフォームがあります。車椅子での洗面台利用は、立って使うよりも配慮が必要です。
例えば、洗面台の高さの工夫や、洗面ボウルを広くすることが必要となりますが、車椅子でも使いやすい洗面台が販売されていますので確認しましょう。
バリアフリーリフォームに使える制度や補助金について
バリアフリーリフォームに使える補助金や助成金などの各種制度ついて、次の3つについてご紹介します。
- 介護保険の高齢者住宅改修費用助成制度
- バリアフリーリフォームの減税制度
- 自治体の補助金
1.介護保険の高齢者住宅改修費用助成制度
要支援もしくは要介護の認定を受けている場合は、住宅改修支援制度を利用するとリフォーム費用が一部支給されるケースがあります。上限は20万円までです。ケアマネージャー等に相談し、必要性があると判断された場合のみ利用できます。主に次のリフォームが対象です。
- 手すりの取付け
- 段差の解消
- 滑りの防止及び移動の円滑化等のための床又は通路面の材料の変更
- 引き戸等への扉の取替え
- 洋式便器等への便器の取替え
2.バリアフリーリフォームの減税制度
対象となるバリアフリーリフォームを行った場合、所得税や固定資産税が減税される場合があるため、事前に確認しておきましょう。
所得税については、一定のバリアフリー改修工事を行った場合、改修後居住を開始した年の所得税額が一定額控除されます。ただし、適用期限は令和5年12月31日までです。
固定資産税は、一定のバリアフリー改修工事を行った場合、工事完了年の翌年度分の家屋にかかる固定資産税が減額されます。ただし、適用期限は令和6年3月31日までです。
3.自治体の補助金
地方自治体によってバリアフリーリフォームに補助金が使えるケースがあり、前述の介護保険適用の改修費用助成制度と重ねて利用できる自治体もあります。いずれも自治体独自で実施しているため、バリアフリーリフォームを検討する際にはまず自治体の最新情報を検索してみましょう。
バリアフリーリフォームを行う際の注意点
バリアフリーリフォームを行う際には、ケアマネージャーなど自治体の介護担当者との話し合いが必要となるケースもあります。
また、リフォームを依頼してすぐに工事開始にならない場合もあることから、早めに検討し見積もりを取り寄せ、費用面を確保しておきましょう。前述のように、リフォーム費用の助成を検討している場合には、その制度の最新情報についても調べる必要があります。
申請期限や事前に準備が必要な書類については特に注意が必要です。
1.利用できる制度や補助金をあらかじめ調べる
前述した高齢者住宅改修費用助成制度は、工事着工前に申請する必要があります。他にも事前に申請しなければならない補助金制度も多いため、あらかじめ調べてからリフォームを行いましょう。
なお、資金に不安があるという場合は、24時間365日申し込みができる「セゾンのリフォームローン」がおすすめです。担保や保証人不要で申し込み、最短2営業日に審査結果がわかるので、お急ぎの方でも安心して利用できます。
また、スロープに水回り、ドアや間取りの変更など大掛かりなリノベーションを行う際には、「セゾンの不動産フリーローン」が良いでしょう。自宅以外の不動産を担保に2,000万円から融資してくれるので、バリアリフォームを含めて建物全体を快適にリノベーションできるのが魅力です。
2.早めに計画する
車椅子での生活が始まると、廊下や出入り口が狭くて通りにくく、急いでバリアフリーリフォームを始める場合もあるでしょう。
しかし、焦ってリフォームを行うと失敗したり、満足できなかったりするケースも考えられます。これらのことから、なるべく早めに専門会社に相談して、バリアフリーリフォームの検討をすることが望ましいでしょう。
おわりに
バリアフリーリフォームは、自宅をさらに暮らしやすくするためにおすすめの方法です。特に段差の解消や手すりの設置は、健康であっても安全性が高くなり、暮らしの利便性が向上します。高齢者や車椅子の利用者がいない場合でも、早めに対策しておいて損はないでしょう。
バリアフリーリフォームを検討した方が良いタイミングとしていくつか例を挙げましたが、それらも参考に早めにリフォーム計画を立てることがおすすめです。